バエルさんから貰った魔力を有効活用し、僕は体力を回復させ前線に復帰する。水やリン、シンが頑張ってくれたお陰で、弦間喜三郎の気力が削がれているのが僕でも分かる。
「何じゃお主、戦線離脱したんじゃないのか」
「ワシが助けたんじゃよ小僧。我が主様を甘く見る出ないわ! しかもお主、我が母を討伐するよう命じたようじゃないか。楽には死なせんから覚悟するのじゃな」
「なるほど。お前さんはあの邪神の子供か。大人しく倒されておればよかったものを」
どうやら水と弦間喜三郎の間にも、因縁めいたものがあるようだった。
「ところで元希。お前、体力も魔力も消耗してたように見えたが、どうやって回復したんだ?」
シンがその事を聞いてきたので、僕は顔を赤らめて視線を逸らした。
「なるほどな。何でお前がモテるのか、俺には理解出来ん」
「黙りなさい愚弟。しかし元希、あの行為で回復出来るのは魔力だけ。その割には体力も回復してるように見えるのですが」
「うん。バエルさんに魔力を分けてもらってから、僕は別次元で体力を回復させてたから。この次元と時間の流れる速さが違うから、こっちではそれほど時間を使わずに復帰出来たわけ」
「随分とチートな能力を持ってるようじゃな。やはり解体して儂の力に――」
「無駄だ、その考えは」
僕が復帰したからくりに感心し、僕一人に狙いを定めた弦間喜三郎の腹に、シンの爪が突き刺さった。あえて人の姿で戦っていたが、シンもリンも、とっくに元の姿――神様へと戻れるくらいに回復しているのだ。
「人の姿をしてるからって油断し過ぎだぜ、爺さん」
「ま、まさか……この儂が……このようなところで……」
「沢山の子供の命を喰ってここまで生きたのでしょう。もう貴方が生き続ける意味など無いのです。シン、せめてもの情けです。もう一撃で終わらせなさい」
「人遣いの……ん? 神遣いの荒い姉? まぁいいか。了解しましたよ、姉上」
神の姿へと完全に変化したシンは、その大きな爪を弦間喜三郎の頭目掛けて振り下ろす。既に腹からの出血が多く身動きが取れない弦間喜三郎は、悲鳴を発することなく絶命した。
「あらら、美味しいところは元希君の召喚獣に持ってかれちゃったわね」
「誰が倒そうが関係ありませんよ、姉さん。これで霊峰学園を狙う魔法師も減るでしょうし、大将が討ち取られたと知れば、残党たちもいなくなるでしょう」
「何時までも死骸を村に残しておくのも悪いから、別次元に飛ばしちゃいましょうか」
この光景を映像化して、敵本陣へ光魔法を駆使して弦間喜三郎が死んだことを伝えると、日本支部の人たちは降参を申し込みそれぞれの任務へと戻っていった。
後で分かった事だが、日本支部の人たちも今回の暴動――と言うことになっている――には反対する人が多くて、出来るだけ早く帰りたいと思っていたようだった。
「これで、平和になるのかしらね」
「激動の一年でしたから、少しくらい大人しくなるんじゃないですか?」
僕もこれで冬休みを満喫する事が出来るのかな……
「何か忘れてるような気がするんだよね……」
弦間喜三郎を倒したことは、念話で炎さんたちにも報告している。それなのに僕の胸のあたりはもやもやしている……これはいったい何なのだろう?
最強の魔法師も、老いには勝てないと言う事で