学園を襲う脅威を取り払ったはずなのに、僕は胸のあたりがもやもやしている。何か、大事な事を忘れてるような気がするんだけど……
「さて、とりあえず早蕨寮に戻ろっか。アレクサンドロフさんは私が背負って行くから」
「やはり年老いた伝説は、その年相応の力しかなかったみたいですね。元希君が魔法大家を説得してくれたお陰で、楽に勝てました」
「あっ……」
思い出した。魔法大家と秋穂さんの家が中立を決める代わりに、僕は戦いが終わった後五人に会う約束をしていたんだっけ……でも、その程度じゃこのもやもやの原因だとは思えないんだよね……まっ、いいか。今は疲れをいやす為に寮でゆっくりしよう。
「それでは元希、私と愚弟は元いた土地の守護に戻るので、ここでお別れだ」
「一応世話になった礼は返したからな」
「うん。ありがとうね、シン」
止めを刺したシンにお礼を言うと、少し顔を赤らめて視線を逸らされた。
「お前にお礼など言われる筋合いはない。さっさと俺の目の前から消えろ」
「素直じゃないわね。だから貴方は愚弟なのよ」
「姉上!」
リンとシンの見送りを受けて、僕は転移魔法で早蕨寮に戻ってきた。
「やれやれ、やっと我が家に戻ってこれたわい」
「水? あっ、そっか。あの土地を治めていたのはシンだもんね」
シンが戻ってきた以上、水があの場所に留まる理由は無くなったのだ。
「それにしても主様、随分とえげつない魔法を使うようになったんじゃな」
「あれは、少しでも犠牲者を減らす為に仕方なく……」
「分かっておるわい。大を救うためには小の犠牲はやむを得ないものじゃ。ましてや傀儡にされた魔法師を葬り去るのもまた、救う手段だと言う事もな」
「水……」
僕の考えを理解してくれた水に、僕はお礼として水魔法を浴びせさせた。
「久しぶりの水浴びじゃ! 主様、もっと遠慮なく放つが良い!」
「せめて庭でやってくれないかしら? 水は兎も角、私たちはかかったら寒い思いをすることになるんだから」
「だってさ」
恵理さんに注意されて、僕と水は庭へ向かう事にした。
「それにしても、意外とあっけなく終わったね」
「主様が神を従えていたなどと、あヤツらも思ってなかったのじゃろうて。それに、所詮昔の人間じゃったのだから、幕切れはあっけないものよ」
水の言葉に納得しながら、僕は水魔法を水に向けて放ち続ける。
「元希!」
「炎さん? それにみんなも……どうかしたの?」
会う約束はしているけど、それは今すぐじゃなくても良いと思っていたので、まさかこっちに来るとは思ってなかったな……
「終わったんだってな」
「うん。元凶は倒したよ」
「では元希様、約束を果たしていただきたいと思いますわ」
「約束って、みんなと会う事だよね?」
「違いますよ。戦いに勝利したら、わたしたちの中から誰か一人を選んでもらうという約束ですわ」
「まさか、覚えてないの?」
「………」
そう言えばそんなことを言われたような気も……
「さあ元希君、私たちの中で、誰と付き合いたいの?」
「それは、私にも権利があると思うのですが」
「ば、バエルさんまで……」
その後ろでは、恵理さんと涼子さんが楽しそうに僕の決断を見守っている。最終大戦が終わったと思ってたのに、最後に大変な決断を迫られちゃったよ……
元希君は誰を選ぶのか……