その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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学生たちが怒ります


放たれた暴言

 僕は日本支部の拠点にやって来て御影さんにこれから放つ魔法についての説明をする事になった。影の魔法なので結界に光魔法が無いと結界ごと破壊してしまいかねないのだ。

 

「つまりボクが結界に光属性を持たせれば良いんだね?」

 

「うん。出来れば強力な魔法を織り込んで欲しいんだけど」

 

「ボクは光魔法では中級くらいまでしか使えないけど」

 

「中級ってBランク?」

 

「うん。雷はまだ使えないもん」

 

 

 雷を操るのはAランク以上の光魔法だもんね……やっぱり高校一年生では使えないんだ。

 

「じゃあそれでお願い」

 

「分かった。炎たちは如何するの?」

 

「炎さんたちは結界の強度を高めて欲しいって。日本支部の人たちもお願いします」

 

 

 いくら嫌ってるとはいえ恵理さんと涼子さんも日本支部の人たちにもお願いするって言ってたし、協力してくれるよね。

 

「我々はこれ以上強力な結界は作れないぞ」

 

「じゃあ一瞬だけで良いので集中してください。合図は僕の使い魔が出しますので」

 

「水様が? 元希様、合図とはどの様なものなのですか?」

 

「水が空に向けて水を放つから、そのタイミングで結界に全神経を集中してください」

 

「分かったわ。それじゃあ元希さんも頑張ってくださいね」

 

「アタシたちも頑張るからね」

 

「お願いね。日本支部の皆さんもお願いします」

 

 

 日本支部の皆さんにも頭を下げてお願いして僕は恵理さんと涼子さんが待っている場所に戻ろうとした。だけど振り返った直後に背後から炎さんの怒号が聞こえてきた。

 

「アンタたち、今元希の事化け物って言ったよね? 何でそんな事言うのさ!」

 

「炎さん、落ち着いてください。此処で怒鳴っても仕方ありませんわ」

 

「そうそう。問題発言はしっかりと録音してありますし、あの大型モンスターを倒し終わったらキッチリと説明してもらいましょう」

 

「悪いのは日本支部の人たち。元希はただ理事長の言葉を伝えに来ただけ」

 

 

 如何やら小声で日本支部の誰かが僕の事を『化け物』って言ったのか……やっぱり全属性魔法師ってのはそう思われるんだ。

 

「四人共、僕は大丈夫だから。でも後で説明はしてもらいますから」

 

 

 恵理さんが日本支部の人たちにしていた、笑っているのに怒ってる感じの表情を僕もやってみた。そうすると日本支部の人たちは黙って頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっとした騒動があったけども、それ以外は特に問題が無かったので恵理さんと涼子さんの場所に戻ってきた。本部で話してきた通りの事を水にも話して合図をお願いした。

 

「そういえば元希君、ちょっと時間がかかったけど何かあったの?」

 

「確かに気になります。まさか日本支部の連中が何か言ったの?」

 

「如何なんじゃ元希?」

 

 

 何でみんな怖い顔してるのさ……別に僕が言われた事なんて気にする場面じゃないと思うんだけどな……

 

「えっと……日本支部の誰かが僕の事を『化け物』って言ったらしくて、炎さんが激昂しただけだよ」

 

 

 それ以外には何も無かったし、後で説明してもらえると言ってもらえたし今気にする事じゃ無いしね。

 

「やっぱり日本支部のヤツらは気に入らないわね」

 

「姉さんと私だけじゃなくって元希君まで『化け物』扱いするなんて……こうなったら一緒に日本支部の連中も消し去ってあげようかしら」

 

「物騒ですから止めてください……」

 

 

 冗談に聞こえなかったのは気のせいだよね? 本気で日本支部の皆さんも消し去ろうなんて思って無いですよね?

 

「で元希よ、合図と言ってもタイミングが分からないと出来んぞ?」

 

「そっちの合図は僕が出すから大丈夫。水はその合図で空に水を」

 

「了解じゃ。頼むぞ元希」

 

 

 早くしないと他の頭が出てきちゃうし……とりあえず今はさっきまでのダメージが残ってて大人しくしてくれてるけど、そろそろ動き出しちゃうだろうしな……

 

「じゃあ行くわよ。いい加減あの頭を見飽きたし」

 

「そうね。じゃあ元希君、合図は任せるわよ」

 

「はい」

 

 

 大型モンスターを倒す為に準備をしたので、全属性魔法師三人で一気に片付る事にした。でも僕はフォローしか出来ないだろうけど……

 

「「「闇よ、時空を切り裂き全てを飲み込め」」」

 

 

 詠唱を終える前に僕は水に合図を出した。水が水を吐き出して炎さんたちに合図を送った。結界の強度が増され、御影さんの光魔法が結界に織り込まれてるのを確認して僕は一つ頷いた。これだけの強度があれば影の禁忌魔法に耐えられるだろうな。

 

「「「『ブラック・ホール』」」」

 

 

 禁忌魔法『ブラック・ホール』でヤマタノオロチを時空の狭間に閉じ込める。一人で使っても恐らくはこの魔物は倒せないだろうと恵理さんが言った為に僕たち三人で魔法を放ったのだ。

 恵理さんの予想通りヤマタノオロチはゆっくりとブラック・ホールに飲み込まれ始める。でもやっぱり抵抗は激しくなって暴れだす。結界の強度が高まってるとはいえそれは一時的なものだ。一撃が禁忌魔法並みの威力の攻撃が何発も放たれれば結界は崩壊する。

 

「元希君、結界に綻びが出始めてる」

 

「分かりました」

 

 

 ブラック・ホールに耐えてたのと、ヤマタノオロチの攻撃で結界に限界が来たんだろうな。一箇所にヒビが入っている。

 

「光の壁よ、全てから我らを守れ『エンジェルウォール』」

 

 

 防御魔法を放ち攻撃から結界を守る。表現はちょっと変だけどあの結界が壊されるとお終いだからね。僕の防御魔法で何とか耐えられて、禁忌魔法ブラック・ホールでヤマタノオロチは時空の狭間に飲み込まれていった。これでとりあえずは大型モンスターの討伐は終わったんだよね……ちょっと疲れたな。




自分が言われたのに無関心な元希君……

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