その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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新キャラ登場。今回は男です


きっかけは…

 ヤマタノオロチ討伐は、如何やら新聞にも取り上げられたらしく学園内は何時もより騒がしい感じがした。

 もちろん討伐したのがこの学園の理事長と教師である恵理さんと涼子さんだからと言う事もあるんだろうけども、僕に対する視線も何本かあるのはきっと気のせいでは無いんだろうな。

 

「のぅ元希や。さっきからチラチラと見られておるぞ」

 

「分かってるけど、別に敵意じゃないし気にしないよ」

 

 

 日本支部の人たちには『化け物』と言われたけども、学園の人たちの視線は畏怖よりも興味が強い視線が多いし、直接声をかけてくるような事も無いし気にしなくて良いかなーって思ってたんだけど、水は気になるようでさっきから居心地が悪そうだった。

 

「ちょっと良いかな?」

 

「?」

 

「君だよ。そこの小さな男子君」

 

「僕?」

 

 

 呼ばれてるのが僕だとはすぐに分からずにいたら、特徴を言われもう一度呼ばれた。僕の周りには男子が数人居たけども、少なくとも小さなと形容されるような体格では無かった。つまり間違いようが無く僕の事を呼んだんだろうな。

 

「君だろ? この『ヤマタノオロチ』討伐に加わってたこの学園の新入生ってのは」

 

「そうですけど……」

 

「やっぱり」

 

「誰なんじゃお主は」

 

 

 随分とフレンドリーな態度に呆気に取られていたら、水が僕の代わりに話しかけてきた男子に聞いてくれた。

 

「おっと、俺は普通科の一年我妻健吾だ。君が魔法科トップ入学の東海林元希だよな?」

 

 

 同い年だったんだ……その割には随分と大人っぽいし、僕より20cm以上大きいような気がする……

 

「おーい! 聞いてるか?」

 

「ふぇ? あっ、ゴメン……」

 

「まぁ良いけど。いきなり声かけられたらそんなもんか」

 

「えっと……我妻君だっけ? 僕に何か用だったの?」

 

 

 魔法科の生徒と普通科の生徒は交流の機会があまりないから卒業まで同級生を知らないなんて事もざらにあるって恵理さんが言ってたように、僕も普通科に知り合いは居ない……いや魔法科にも知り合いは殆ど居ないんだけど……

 

「魔法科のトップがどんなヤツなのか気になってたんだよ。それでこの新聞だろ? どんなヤツなのか見てみようと思って声をかけたんだよ」

 

「そうだったんだ……でも僕が気になってたって?」

 

 

 正直僕は噂される事なんて無いと思うんだけど……

 

「魔法科に知り合いが居るんだけど、今年のトップ入学が男子だって聞いてな。女子が多い魔法科で男子がトップてのも珍しいのにそれがぶっちぎりだって言うしな」

 

「そんなもの?」

 

「天狗になってるのかと思ってたけど、随分と大人しいんだな」

 

「ゴメン……」

 

「何で謝ってるんだよ?」

 

 

 我妻君が気にしてるけど、僕は謝るのが癖のようになってるんだよね……

 

「まぁ仲良くやってこうぜ。魔法科と普通科のトップ同士」

 

「お主、トップじゃったのか」

 

「……さっきから気になってるんだが、この子誰だ?」

 

 

 我妻君が水を指差して首を傾げる。まぁ無理も無いよね。見た目は完全に女の子なのに、しゃべり方がこんなだし……

 

「随分と無礼じゃのぅ。まぁ元希、教えてやれ」

 

「えっとね……この子は水って言って、この学園の近くで祭られていた水竜の子供なんだ。訳あって僕の使い魔って事になってるけど」

 

「へーやっぱ東海林って凄いんだな」

 

「僕の事は元希で良いよ。みんなそう呼んでるし」

 

「そっか。じゃあ俺の事も健吾で良いぜ」

 

「うん」

 

 

 こうして健吾君と朝のHRギリギリまでおしゃべりして教室に向かった。良く考えたら僕同性の友達って始めてかもしれないな……むしろ此処に来るまで友達って呼べる相手が居なかったんだけど……

 

「随分と悲しいのぅ、元希の過去は」

 

「しょうがないでしょ。田舎に魔法師が居なかったんだし、僕の両親だって魔法師では無かったんだから」

 

 

 田舎にいきなり魔法師が生まれて大騒ぎだったらしいし……まぁその後は便利に使われてたんだって今は思うけど……

 

「元希、遅かったね」

 

「何かあったんですか? 少し嬉しそうですが」

 

「あっ炎さん、水奈さん、おはよう」

 

 

 教室に着いて声をかけてくれた二人に挨拶して、僕は健吾君の事を話した。

 

「そうだったんですか。良かったね、元希さん」

 

「だから美土、隙を見つけて元希君をすりすりするのはズルイ。ボクだって元希君にすりすりしたいんだから」

 

「そんな事言ったらアタシだってすりすりしたいぞ!」

 

「私もですわ!」

 

 

 助けを求めようとしたけども、炎さんも水奈さんも冷静な状態では無かった。僕は視線を水に向けたけども、水は気付かないフリをして視線を僕から逸らした。

 

「おはようございます……風神さん、元希君を放してあげて下さい」

 

「分かりました」

 

 

 涼子さんが教室に来てくれたおかげで、漸く僕は美土さんのすりすりから解放された。健吾君みたいに身長があれば僕もすりすりされなくて済むのかな……あれ? 何だか僕浮いてるような……

 

「早蕨先生! わたしに元希さんを放せと言っておきながら先生が抱きしめて如何するんですか!」

 

「ズルイよ先生!」

 

「ボクたちだって元希君とスキンシップ取りたいんですから」

 

「良いんです! 先生特権ですから」

 

 

 なんですかそれは……結局涼子さん対魔法大家四人による僕の取り合い(?)で朝のHRの時間は潰れてしまった。争うのは良いけどせめて僕を放してから争ってくれないかな……中心に居るのは怖いんだよね……




元希君が夢見る身長の持ち主を出してみました。

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