その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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そこまで厳しいものではありませんけど……


水の叱責

 水曰く、「不毛な争い」が終わって僕はリーナさんに話しかけた。

 

「アメリカ支部の理事が僕たちの実力を知りたいって嘘ですよね? 単純にリーナさんが見たかっただけでしょ?」

 

「さすが元希ちゃん。やっぱり見抜いちゃったんだね」

 

「だってリーナさんが言ってた事は事実なのかもしれませんけど、全員がその考えを持っている訳じゃないですよね? もし全員があの考えなら、今すぐにでもアメリカの魔法協会は理事やらを一新してもおかしくないですし」

 

「そうなのよね……あの考えは主に若い協会メンバーが持ってる考えで、年寄りたちは未だに国籍重視の考えなのよ」

 

「リーナ! どさくさで何処触ろうとしてるの!」

 

「え? 元希ちゃんの下半身だけど」

 

「何でキョトンって顔してるのよ!」

 

 

 涼子さんが止めてくれたから気付いたけど、リーナさんの手は僕のズボンに伸びていた。いや、ズボンというよりはベルトか……脱がされるところだった。

 

「国籍重視だからアメリカ支部は成長しないって何で気付かないのかしらね」

 

「ここで愚痴っても仕方ないでしょ? それに元希君はアメリカには連れて行かせないからね」

 

「恵理、怖い顔しなくても連れて行かないわよ。最悪元希ちゃんの子供を身篭れば問題無いんだしね」

 

「「大有りよ(です)!」」

 

 

 恵理さんと涼子さんが揃って怒鳴ったので、僕たちは耳を塞いだ。授業が終わってるんだから教室に戻るのが普通なんだけど、この三人が出入口を塞いでる状況なので、僕たちはこの場所から移動出来ないのだ。

 

「元希、こっち来なよ」

 

「そうする……」

 

 

 三人の争いが再び激化しそうになったので、僕は炎さんに招かれるまま三人から離れた。

 

「しかし元希はやっぱ凄いね」

 

「なに、いきなり?」

 

「元希様、先ほども仰られておりましたが、異次元に使い魔を召喚するのは至難の業なのですよ」

 

「それを元希さんはあっさりとやってのけたんですから」

 

「ボクたちにはきっと無理だろうし、多分だけど早蕨先生や理事長以外にあの魔法が使えるのは元希君だけだと思う」

 

 

 そうだろうか……なんとなくだけどリーナさんも使えるんじゃないかと思っているのだ。もちろん確証は無いし、リーナさんに使い魔が居るかも分からないけど。

 

「のう元希や」

 

「如何かしたの?」

 

「あの窓から外に出れそうじゃが……水奈と美土は無理そうじゃの」

 

「水様だって無理ではありませんか?」

 

「ワシは自分の身体を水に変えられるからの。隙間さえあれば何処でも通れるのじゃ」

 

「そんな事しなくても、あの三人を止めればいいだけだよ」

 

 

 僕は三人の言い争いを止める為に三人に近づいたのだけども、そのまま三人に引っ張られる形になってしまい、激痛で意識を手放したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に気が付いたの時に見たのは、見たことのない天井だった。えっとここは何処だろう……

 

「やっと起きたか」

 

「水? ここは……保健室?」

 

「そうじゃ。お主は一時間ほど意識を失っておったのじゃ」

 

「そうか……また気絶しちゃったんだ」

 

 

 手加減はしてくれてたはずなんだけど、三人に引っ張られて痛さから逃れる為に意識を手放したんだっけ……

 

「あの三人はしっかりと叱っておいたから心配するな。それよりも立てるかの?」

 

「多分大丈夫……ところで一時間も意識を失ってたの?」

 

「時計を見れば分かるじゃろうし、そんな事で嘘は吐かんぞ」

 

 

 水に言われ僕は時計を見上げる。確かに一時間は過ぎていた。

 

「また授業に出られなかった……」

 

「大丈夫じゃろ。元希になら水奈がノートとやらを見せてくれるじゃろうし」

 

「そうなんだけどさ……」

 

 

 ノートを見せてもらえるのはありがたいんだけど、質問するたびに抱きつかれるのは勘弁してもらいたいんだよね……美土さんに頼んでも同様にされるだけだし、炎さんと御影さんはそもそも教えるのが苦手らしいし。

 

「秋穂とやらに頼んでみたら如何じゃ?」

 

「秋穂さんは必要以上に僕を子供扱いするから……」

 

 

 質問して理解できたと判断されると、何故だか頭を撫でられるのだ。見た目も秋穂さんの方がお姉さんっぽいから仕方ないんだけども、あくまでも僕と秋穂さんは同い年なのだ。子供扱いは止めて欲しいのだ。

 

「まぁ諦めて誰かに聞くしかないからのぅ。我が主には知り合いなど他に居ないからのぅ」

 

「居るけど、健吾君は普通科だしね……」

 

 

 結局は抱きつかれるか子供扱いされるかで悩み、結局抱きつかれる方を選ぶんだけどね……だって子供扱いはホント嫌だから。

 

「そろそろ次の授業になってしまうぞ。大丈夫ならさっさと教室に向かうとするかの」

 

「……ところで何で水が付き添ってくれてたの?」

 

 

 僕の代わりに授業を聞いてくれれば後で教えてもらえたのに。

 

「主様の居ない教室になぞ、興味は無いわ。だから保健室におったのじゃ」

 

「そう……じゃあ僕はもう大丈夫だから教室に向かおうか」

 

 

 まだ少し腕が痛いけども、意識もしっかりとしてるしこれ以上寝てる訳にも行かないので僕はベッドから立ち上がり保健室を後にした。

 

「そういえば三人を叱ったとか言ってたけど」

 

「気絶した主様を見ておろおろした挙句に『既成事実のチャンス』とかつぶやいておったからの。さすがに叱りもするわ」

 

 

 ……仮にも教師でしょうが。なんてことをつぶやいてるんですか。

 僕は心の中で三人にツッコミを入れて教室に戻ったのだった。




不毛な争い……
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