その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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大家ってズルイ……


早蕨荘での新ルール

 部屋に戻ってのんびりしようと思っていたら、廊下の角から涼子さんが手招きをしていた。普通に声を掛けてくれればいいのに、何で手招きなんだろう?

 

「何かありました?」

 

「ううん、そんなに心配しなくても大丈夫よ。これからバエルさんの歓迎会用の料理を作るんだけど、元希君も手伝ってくれないかな?」

 

「いいですけど、何を作るんですか?」

 

 

 僕が作れるのは本当に家庭料理くらいだ。それ以外を作れと言われても僕には無理なんだけどな……

 

「そっちも心配する必要は無いわよ。普通に日本食だから。元希君も思う存分腕を奮ってくれて構わないからね」

 

「腕を奮うって……僕はそこまで料理上手ってわけじゃないですよ」

 

「まぁ謙遜しないの。本当はロシア料理でもって思ったんだけど、時間も食材も無いからね」

 

 

 そりゃそうだ。バエルさんの転入についての資料が来たのが今日の放課後。そして転移魔法で日本に連れて来るように命じられたのがついさっきだ。その前には授業もあったし、買い物に行ってる時間など無く、また構内で売っている食材のほとんどはロシア料理と関係ないものなのだ。

 

「日本支部の連中は転移魔法を使えないからね。その大変さがわからないのよ」

 

「まさか先に転移魔法を使ってバエルさんの事を覗き見しにいってたなんて日本支部の人たちも思いませんよ……」

 

 

 この点だけは僕たちにも責任はあるだろうし。

 

「それじゃ、バエルさんの相手は姉さんとリーナに任せて、私たちは晩御飯の準備を始めましょうか」

 

「そうですね。……ところで、水は何処に行ったんですか? さっきから姿が見当たらないんですが……」

 

 

 バエルさんの案内をする時に、また別行動をするって言って何処かに行ったんだけど、まだ帰ってきてないのかな?

 

「水様でしたら、庭先で何かしてましたけど」

 

「そうですか。寮の敷地内にいるなら大丈夫です」

 

 

 水の行動範囲はこの学園の敷地内のみだからそれほど心配はしてないけど、さっきみたいに泥だらけになられるのもね……寮のそばにいるならすぐにお風呂に入らせればいいだけだしそれほど心配はしなくてもよさそうだった。

 

「さぁ元希君! 愛情たっぷりのご飯を私たちに食べさせてください!」

 

「趣旨が変わってませんか!? バエルさんの歓迎会用の料理のはずですよね?」

 

 

 箍が外れたのか、涼子さんは調理中終始ハイテンションだった……もしかしてお酒でも呑んでたのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮の案内が終わり、恵理さんたちが食堂にやってきた。なんだかバエルさんが疲れてるように見えるのは気のせいだろうか?

 

「準備終わった?」

 

「もう少しです。……ところでリーナさんは?」

 

「リーナなら水と一緒にお風呂の準備をしてるわよ。水を張るのは何とかなるけど、温めるのはね水一人じゃ無理だし……」

 

 

 

 まぁそうだろうな……水は魔法師じゃないんだし。

 

「準備出来たらみんなでお風呂だからね。もちろん元希君も一緒だから」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 僕は後で一人で入りますから……」

 

「ダメよ。元希君、早蕨荘のルールを忘れたの?」

 

「そんなルールは無かったですよね!?」

 

 

 僕が最初に聞いたルールは、食事はみんなでと夜十時以降の外出は禁止の二つだけだったはずだ。それなのに何時の間にかルールが増えていたのだ。

 

「この早蕨荘の大家は誰かしら、元希君?」

 

「……恵理さんです」

 

 

 大家特権を使われたらもう、僕に逆らう術は残されていない……下手に逆らって追い出されたら僕は住まう場所がなくなるのだから……

 

「バエルちゃんもいいわね?」

 

「は、はい……」

 

 

 若干……いや、かなり顔を赤らめてはいるけども、バエルさんも恵理さんに逆らう事はしなかった。彼女は僕と状況が似てるからな……恵理さんに出ていけと言われたら他に住むところがないのも含め……

 

「歓迎会の前に親睦を深めましょうね」

 

「「はぁ……」」

 

 

 僕とバエルさんの気乗りしない返事が重なる。その事に恵理さんは興味を示す事無く、出来あがっていたおかずをヒョイと摘まんで口に運んだ。

 

「姉さん! 摘まみ食いは行儀悪いですよ!!」

 

「いいじゃない一つくらい。この食材は私の稼ぎで買ったものなんだからさ」

 

「そういう問題じゃありません! 生徒の前なんですから、もう少し理事長らしく威厳あるところを見せてくださいよ……摘まみ食いなんて子供っぽいことを」

 

 

 怒るところそこなんですか、涼子さん?

 僕は心の中でツッコミを入れ、更なる摘まみ食いを防ぐために出来あがった料理にラップをして恵理さんから離れた場所に置いた。

 

「むぅ……まぁ仕方ないわね。それじゃあお風呂に行くわよ!」

 

「やっぱり僕は後で……あ~れ~」

 

 

 入ると言おうとしたけども、恵理さんに力任せに持ち上げられて、僕はそのままお風呂場に連れて行かれた……助けを求めるため涼子さんとバエルさんに手を伸ばしたけども、二人とも合掌するだけで助けてはくれなかった……

 

「元希よ、何故恵理に担がれてるのじゃ?」

 

「……摘まみ食いを阻止したらこうなった」

 

「は? 何の事じゃ?」

 

 

 水は首を傾げて問いかけてくるけども、恵理さんの顔を見て納得したように二度、三度頷いた。

 

「相変わらず恵理は子供っぽいのぅ。大方涼子に怒られた腹いせに我が主をからかったんじゃろう」

 

「そんな事無いわよ? 元希君が反抗的だったから従わせるために運んできたんだから」

 

「反抗的? ……なるほど、そういう訳か」

 

「元希ちゃん。あきらめも肝心だからね?」

 

「うぅ……」

 

 

 何で男の僕の方が恥ずかしがってるんだろう? 普通異性とお風呂って言ったら女性の方が恥ずかしがるんじゃないの?




次回お風呂です……
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