今朝は涼子さんが僕の箪笥を漁っててビックリしたけども、とりあえず何も盗られなかったので善としよう。朝食を済ませてみんなで仲良く登校する事にした。
「いや~元希の料理、すっごく美味しかった~。今度アタシたちのお弁当も作ってよ」
「そうですわ! バエルさんだけズルイです」
「でも、仕方ないと言えますよ。バエルさんは早蕨荘の住人で、わたしたちは違うんですもの」
「元希君の料理を一人占めはさせない」
「でも、元希さんって本当に家事が得意だったんだね」
この前までは水と二人で登校って事が多かっただけに、こんな人数での登校なんて新鮮でなんだか楽しい。ちなみに教師陣は職員会議とかで先に学校に行っているのだ。お弁当は僕が届けるんだけど、たまには学食で済ませてもいいと思うんだけどな……
「なんだ、元希。随分とハーレム状態じゃねぇか」
「あっ、健吾君。ハーレムって?」
あんまり聞いた事の無い単語だったので、僕は首を傾げて健吾君に訊ねる。
「今のお前の状況だって。見ろ、どっち向いても美少女じゃねぇか。許すまじきリア充だろ」
「リア充ってなにさ?」
「リアルが充実してるって意味だよ。つまりは青春を謳歌してるって意味だ」
何となく意味が違うような気もするけど、僕は今が充実してるとは思ってない。楽しいのは確かだけども、何時でも遊びに行ける訳じゃないのだから。
「ま、俺は気にしないけどな。でも、魔法科の連中がなんて思うかね。まぁ気をつけろって言っても、元希の方が強いんだろうし大丈夫だろうけどな」
「う~ん……何となく嫉妬の視線は感じてるけど、みんなが気にしてないのならいいんじゃない?」
そもそも僕の状況がうらやましいって? とんでもない誤解だよ、それは……このメンバーの相手をまとめてするなんて、これほど大変な事は無いよ……
「元希さん、大丈夫ですか?」
「え、はい。大丈夫ですよ、バエルさん」
唯一の救いは、バエルさんがこうして心配してくれる事だろうか。似た境遇で育った事もあるのだろうけども、バエルさんは比較的僕に同情的なのだ。
「おーい! そろそろ教室に行こうよ!」
「分かった! じゃ、健吾君」
「おぅ。またな」
昇降口が違う為に、健吾君とはここでお別れ。そもそも普通科と魔法科では棟も違うので、同じ学校に通っているのに会う事はめったに無い。もちろん会おうとすれば会えるのだが、今のように偶然会うなんて事は滅多に起こる事ではないのだ。
「今のって我妻だよね。普通科トップの」
「うん。仲良くしてもらってるんだ」
「元希さんにも同性のお友達はいるんですね」
「……前に紹介しましたよね?」
確かに魔法科には同性のお友達はいないけどもさ……僕は物悲しさを感じながら教室へと足を進めたのだった。
涼子さんにはHRでお弁当を渡せたけど、恵理さんとリーナさんには渡しに行くしかない。僕は二人分のお弁当を持って理事長室へと向かった。
多分だけどリーナさんも理事長室にいると思うんだよね。根拠は別に無いんだけど……
「失礼します。S-1の東海林元希です」
『どうぞ』
理事長室に入る前に、ノックをして自分の名前を告げる。恵理さんは別に気にしなくてもいいって言うけども、最低限の礼儀は守らなければ。
「あっ、やっぱりリーナさんもいた」
「お? 何かな、元希ちゃん」
「これ、二人のお弁当です。今朝渡せなかったので」
僕は恵理さんとリーナさんにそれぞれお弁当を手渡して理事長室を辞すつもりだった。だけども、この二人相手に一瞬でも隙を見せたのが間違いだった。
「う~ん、やっぱり元希君は私のお嫁さんね~」
「駄目よ恵理。元希ちゃんは私のお嫁さんとしてアメリカに連れていくんだから」
「あの……僕まだ授業が残ってるんですけど」
急いで教室に戻らなければいけないのに、この二人には僕を解放してくれるつもりはなさそうだった。もし涼子さんがいてくれたら状況は変わってたんだろうけども、生憎今理事長室に涼子さんの姿は無い。
「それじゃ、どっちが元希君の旦那にふさわしいか勝負よ!」
「受けて立つわ!」
「立たないでください! そして、僕は男なんですけどね!?」
何で女性の恵理さんとリーナさんが旦那の地位を掛けて勝負するのかも、僕がどちらかのお嫁さんになるのが前提なのかも分からないまま、僕は何とか理事長室から逃げ出した。
時間ギリギリだったけども授業には間に合ったんだけども、涼子さんたちに心配されてしまっていた。
「随分と遅かったですが、何かあったのですか?」
「ちょっと理事長室に行ってまして……色々ありました」
それだけで涼子さんには伝わるだろうし、あの惨劇を口にするのはなるべく避けたかった。
「それでは、元希君も来ましたので授業を開始します」
水の姿は教室に無かったけども、彼女は授業に出なくても問題は無い。僕はそう思い授業に集中する事にしたのだ。
あっ、六月になってた……