その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

58 / 245
見た目は一番小柄ですし、家事能力も高いですからね……


彼はお嫁さん?

 今朝は涼子さんが僕の箪笥を漁っててビックリしたけども、とりあえず何も盗られなかったので善としよう。朝食を済ませてみんなで仲良く登校する事にした。

 

「いや~元希の料理、すっごく美味しかった~。今度アタシたちのお弁当も作ってよ」

 

「そうですわ! バエルさんだけズルイです」

 

「でも、仕方ないと言えますよ。バエルさんは早蕨荘の住人で、わたしたちは違うんですもの」

 

「元希君の料理を一人占めはさせない」

 

「でも、元希さんって本当に家事が得意だったんだね」

 

 

 この前までは水と二人で登校って事が多かっただけに、こんな人数での登校なんて新鮮でなんだか楽しい。ちなみに教師陣は職員会議とかで先に学校に行っているのだ。お弁当は僕が届けるんだけど、たまには学食で済ませてもいいと思うんだけどな……

 

「なんだ、元希。随分とハーレム状態じゃねぇか」

 

「あっ、健吾君。ハーレムって?」

 

 

 あんまり聞いた事の無い単語だったので、僕は首を傾げて健吾君に訊ねる。

 

「今のお前の状況だって。見ろ、どっち向いても美少女じゃねぇか。許すまじきリア充だろ」

 

「リア充ってなにさ?」

 

「リアルが充実してるって意味だよ。つまりは青春を謳歌してるって意味だ」

 

 

 何となく意味が違うような気もするけど、僕は今が充実してるとは思ってない。楽しいのは確かだけども、何時でも遊びに行ける訳じゃないのだから。

 

「ま、俺は気にしないけどな。でも、魔法科の連中がなんて思うかね。まぁ気をつけろって言っても、元希の方が強いんだろうし大丈夫だろうけどな」

 

「う~ん……何となく嫉妬の視線は感じてるけど、みんなが気にしてないのならいいんじゃない?」

 

 

 そもそも僕の状況がうらやましいって? とんでもない誤解だよ、それは……このメンバーの相手をまとめてするなんて、これほど大変な事は無いよ……

 

「元希さん、大丈夫ですか?」

 

「え、はい。大丈夫ですよ、バエルさん」

 

 

 唯一の救いは、バエルさんがこうして心配してくれる事だろうか。似た境遇で育った事もあるのだろうけども、バエルさんは比較的僕に同情的なのだ。

 

「おーい! そろそろ教室に行こうよ!」

 

「分かった! じゃ、健吾君」

 

「おぅ。またな」

 

 

 昇降口が違う為に、健吾君とはここでお別れ。そもそも普通科と魔法科では棟も違うので、同じ学校に通っているのに会う事はめったに無い。もちろん会おうとすれば会えるのだが、今のように偶然会うなんて事は滅多に起こる事ではないのだ。

 

「今のって我妻だよね。普通科トップの」

 

「うん。仲良くしてもらってるんだ」

 

「元希さんにも同性のお友達はいるんですね」

 

「……前に紹介しましたよね?」

 

 

 確かに魔法科には同性のお友達はいないけどもさ……僕は物悲しさを感じながら教室へと足を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 涼子さんにはHRでお弁当を渡せたけど、恵理さんとリーナさんには渡しに行くしかない。僕は二人分のお弁当を持って理事長室へと向かった。

 多分だけどリーナさんも理事長室にいると思うんだよね。根拠は別に無いんだけど……

 

「失礼します。S-1の東海林元希です」

 

『どうぞ』

 

 

 理事長室に入る前に、ノックをして自分の名前を告げる。恵理さんは別に気にしなくてもいいって言うけども、最低限の礼儀は守らなければ。

 

「あっ、やっぱりリーナさんもいた」

 

「お? 何かな、元希ちゃん」

 

「これ、二人のお弁当です。今朝渡せなかったので」

 

 

 僕は恵理さんとリーナさんにそれぞれお弁当を手渡して理事長室を辞すつもりだった。だけども、この二人相手に一瞬でも隙を見せたのが間違いだった。

 

「う~ん、やっぱり元希君は私のお嫁さんね~」

 

「駄目よ恵理。元希ちゃんは私のお嫁さんとしてアメリカに連れていくんだから」

 

「あの……僕まだ授業が残ってるんですけど」

 

 

 急いで教室に戻らなければいけないのに、この二人には僕を解放してくれるつもりはなさそうだった。もし涼子さんがいてくれたら状況は変わってたんだろうけども、生憎今理事長室に涼子さんの姿は無い。

 

「それじゃ、どっちが元希君の旦那にふさわしいか勝負よ!」

 

「受けて立つわ!」

 

「立たないでください! そして、僕は男なんですけどね!?」

 

 

 何で女性の恵理さんとリーナさんが旦那の地位を掛けて勝負するのかも、僕がどちらかのお嫁さんになるのが前提なのかも分からないまま、僕は何とか理事長室から逃げ出した。

 時間ギリギリだったけども授業には間に合ったんだけども、涼子さんたちに心配されてしまっていた。

 

「随分と遅かったですが、何かあったのですか?」

 

「ちょっと理事長室に行ってまして……色々ありました」

 

 

 それだけで涼子さんには伝わるだろうし、あの惨劇を口にするのはなるべく避けたかった。

 

「それでは、元希君も来ましたので授業を開始します」

 

 

 水の姿は教室に無かったけども、彼女は授業に出なくても問題は無い。僕はそう思い授業に集中する事にしたのだ。




あっ、六月になってた……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。