例のヤマタノオロチ騒動から暫く、授業以外でモンスターと戦闘する事は無かった。それだけ平和なんだろうけども、実際は高校一年生の僕たちには依頼が無いだけであちこちにモンスターは出現しているのだ。
「元希様、今日の放課後はお暇でしょうか?」
「今日? 特に予定は無いけど……何かあるの?」
最近変わった事と言えば、水奈さんがこうして放課後の予定を聞いてくるようになった事だろうか。前までは炎さんが聞いてきたんだけども、最近は水奈さんか美土さんが僕の予定を聞いてくる。
「皆さんでお買いものでもと思ってるのですが、よろしければ元希様もご一緒にいかがでしょうか?」
「お買いもの? でも、女の子だけの方が買いやすいんじゃないの?」
「ご心配していただかなくても大丈夫ですわ。それに、元希様のご意見も頂きたいと思っていますので……」
「そう? じゃあ僕も行こうかな」
クラスメイトや秋穂さん、バエルさんもお買いものに行くのに、僕だけハブられるのは悲しいからね。寮に戻ってもする事無いし……
「あらあら、元希さんも来るのならおしゃれしていかなくてはいけませんね」
「なんだよ~! アタシたちだけならおしゃれしないっていうの、美土は?」
「だって炎さん。幼馴染同士でおしゃれしてもつまらないじゃないですか」
「確かに……でも、美土は普段からおしゃれだと思う」
「それでは元希様、着替えてから校門に集合ですのでお忘れなく」
「う、うん……」
ものすごいスピードで四人が教室からいなくなってしまった……一緒にお出かけするのに、なんだかハブられた気分がするのは何でだろう……
部屋に戻って着替えてから、僕は校門へと向かう。僕の隣には同じように部屋に戻って着替えたバエルさんが立っている。私服姿になると、一層お姉さん感が増すのは僕の気の所為なのだろうか……
「おっ、やっぱり寮生は早いなー。アタシが一番だと思ってたのに」
まずやってきたのは炎さん、何時も通りのボーイッシュな格好で現れた。
「炎さんは無頓着なだけですわ」
「いきなり何を言ってるの? 水奈もおかしいわね」
「妄想に耽るのは何時もの事だと思うけど……」
「昔からだもんね」
他の人たちも順々に校門に集合した。それにしても、みんな似合ってるな……
「おっ? 元希、もしかしてアタシたちに見惚れてるのか? ウリウリ、もっと近くで見ても良いんだぜ?」
「炎さん、元希様を抱きしめるのは私の権利ですわ!」
「あら~? わたしも元希さんを抱きしめたいですわ~」
「……ボクも」
わらわらと僕の側に寄ってくる魔法大家のご息女たち……秋穂さんも同様に近寄ってきているのだけども、何となく秋穂さんが一番怖い気がするのは気のせいでは無いはず……
「と、ところで! 今日は何処に行くんですか?」
「ん? ……今日は全員の服とかを見ようって事になってるんだけど、誰もバエルには言わなかったの?」
「誘ったのは炎さんですわよね?」
「その炎が言ってないのなら、誰も言ってないわよ~?」
「また肝心な事を言ってないんだ」
「炎も変わらないわね」
幼馴染である四人が炎さんの事を見ながらしみじみと呟いた。その呟きを聞いて炎さんが苦笑いを浮かべた。
「ホント、昔から知ってるって強みでもあり弱みだよね……変わってないのはみんなも同じなんだけど、集中砲火されると恥ずかしい……」
「だったら気をつける事ですわね。炎さんは抜けてるんですから」
「水奈だって妄想癖はそのままですわよ?」
「美土は洗い物が下手なまま」
「御影は相変わらず感情が分かりにくいのよね」
「秋穂だって大雑把じゃないか」
「「………」」
幼馴染五人の指摘合戦を、僕とバエルさんはポカンとした表情で眺めていた。付き合いが長い相手など、僕にもバエルさんにもいないのだ。
「……とりあえず、行こっか」
「そうですわね」
「お互いに恥ずかしい事を知ってるのは困るわ~」
「腐れ縁って怖い……」
「改善してるつもりなんだけどね……」
付き合いが長いからこそ、お互いが変わってないのがすぐに分かるのだろう。そんな相手がいる事を羨みながら、僕たちはショッピングモールへと向かう事にした。
「元希とバエルもそのうちアタシたちと言い争えるくらいの付き合いになるって」
「そうですわね。少なくともあと二年半は一緒なのですから」
「その先もずっと一緒がいいわね~」
「でも、元希君は難しいかもしれない」
「そっか……元希さんは男の子だものね」
「えっ、そっち!?」
てっきり全属性魔法師だからだと思ってたけども、まさか性別の違いだったとは……
「そういえば、最近この付近で大型モンスターが出現するって噂があるらしいんだよね」
「そうなんですの?」
「いや、詳しい事は知らないけど……」
「あくまで噂ですわよね。またタイミング良く……いえ、悪く? 私たちがいる傍で大型モンスターが現れるなんて事は……」
水奈さんが『無い』と言いきれなかった事に、僕は一抹の不安を覚えた。だってすっごくありそうだし、そんな事思ってると本当に起こりそうだと思ったからだ。
元希君じゃなきゃハーレムデートだと思うんだろうけどもな……