その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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この戦い方は疲れるパターン……


化け蟹退治

 いざ化け蟹を倒そうと思っても、僕一人で出来るなんて思えないんだよね……でもまぁ、恵理さんはコキュートス使えないって言うし、涼子さんは結界を張ってるしな……

 

「一応私も氷系の魔法はぶつけとくから、元希君のタイミングで撃っちゃって良いわよ」

 

「分かりました……でも、上手くいく確率の方が低いと思います」

 

 

 実際にコキュートスを使った事が無いのだ、召喚獣で氷狼を出すくらいにしか使った事が無いし、これほど大きいモンスターと対峙した事も無いのだ……

 

「念のためブラック・ホールも使えるように待機しててもらえますか? 無理そうならすぐに切り替えたいので」

 

「分かったわ。涼子ちゃんも聞こえてるわよね?」

 

 

 如何やら恵理さんが念話を飛ばしてるらしく、涼子さんの返事は僕の頭の中にも聞こえてきた。

 

「え? ……分かった、ちょっと待っててね」

 

「何かあったんですか?」

 

 

 いざっ! っというところで恵理さんからストップをかけられた。まぁ意気込んでもあまり意味は無かったから別に問題は無いんだけども……行こうって決心した分、なんだか気合いが抜けてしまった。

 

「あのね、元希君。バエルちゃんと水奈ちゃんも手伝うって言ってるらしいのよ」

 

「あの二人は氷魔法が使えますからね。でも、Sランク魔法は使えるんですか?」

 

 

 もし使えるなら、あの二人も将来的にはSランク魔法師という事になるんだろうけど……

 

「さすがにそれは無理よ。でも、元希君のフォローくらいは出来るはずよ」

 

「そうですね……ですが、二人が抜けると結界が……」

 

「それは大丈夫よ。さっき元希君が治療した日本支部の魔法師たちが結界を保つ補佐をしてくれてるから」

 

「そうですか……じゃあ念のため御影さんも一緒に来てもらってください。涼子さんが動けない以上、ブラック・ホールを使う時に御影さんにも手伝ってもらいたいですし」

 

「そうね……涼子ちゃん、そういう事だから三人を至急こっちに向かわせて」

 

 

 フォローが期待出来る分だけ、僕も少しだけ気が楽になる。でも、少しでも気を抜き過ぎればこの街が……ここら辺一帯があの化け蟹に破壊されるので抜き過ぎないようにしなければ……

 

「ところで、あの蟹って何処から来たんでしょうね?」

 

「さぁ? この辺りの川か何処かじゃないの?」

 

「あんなデカイのがいたらさすがに気がつくと思うんですが……」

 

 

 今まで何処にいたのか気になるけど、今はそんな事を気にしてる場合ではない。とりあえずあの蟹を倒してから、日本支部の人たちに住処を探してもらえば良いだけだし……

 

「元希様、来ましたわ」

 

「ボクも来てほしいって如何いう事?」

 

「えっと……説明すると、まず僕が禁忌魔法であるコキュートスを放つ。水奈さんとバエルさんはそのフォローをお願いしたいんだ」

 

「分かりましたわ」

 

「出来るか如何か分からないけど、やってみます」

 

 

 氷系の魔法師の二人に説明して、僕は御影さんに視線を向けた。

 

「もしコキュートスで凍らせられなかったら、すぐさまブラック・ホールに切り替えるから、御影さんはその時にフォローをしてもらいたいんだ」

 

「でも、ボクはその魔法を使えない……」

 

「あくまで補佐だから。結界が崩れないようにしてもらいたいだけ。指示は恵理さんがしてくれると思うから」

 

「ま、それくらいはしなきゃね。これでも理事長なんだし」

 

 

 恵理さんはこんな状況でも楽しそうに話す。まるで危機なんて無いかのようにふるまうので、僕も自然と緊張がほぐれるのだ。これは恵理さんの計算なのか、それとも素なのか……それは僕には分からないけど。

 

「それじゃあ、行きます」

 

 

 僕は四人から少し距離を取って詠唱を始める。実際に発動させるのは初めてだけど、多分問題無く発動出来るだろうな……

 

「かの者の周りに絶対なる氷結を。全ての熱を奪い永遠の凍結を『コキュートス』」

 

 

 僕の魔法が発動する前に、水奈さんとバエルさんの魔法で化け蟹の周りの温度が下がっている。その上に僕の魔法が発動され、化け蟹の周りはみるみるうちに銀色の世界に塗り替えられていく。

 

「元希君、大丈夫?」

 

「な、何とか……後少しですので」

 

 

 化け蟹が思ってた以上に大きいので、僕も根性で魔法を発動し続ける。化け蟹の回復速度より早く凍らせる事が出来ているので、このままいけば全身が凍って動かなくなるだろう。そうなれば後はその凍った蟹を解体するだけの仕事なのだ。

 

「……よし、これで終わりだ!」

 

 

 最後の力を振り絞って、僕は魔法の威力を最大まで引き上げる。これなら蟹の抵抗すらも上回れるだろう。

 

「あっ……」

 

 

 蟹の全身を凍らせる事に成功したのは良いけど、魔力の全てを注ぎ込んだ為に、僕は立つ事も出来なくなってしまった……重力に従い身体が倒れていく……

 

「危ない!」

 

 

 僕の側にいたのだろう、御影さんに支えられて、僕は身体を地面に打ち付ける事は無かった。でも、意識を保つ事は無理で、そのまま寝てしまったのだ。




回復していく先から凍らせる……ものすごい魔力を消費する戦い方です。

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