その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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かなりの重傷です…


絶対安静

 安静にしているように恵理さん、涼子さん、リーナさんからキツク言われてしまった僕とバエルさんは学校に行く事も認められなかった。

 

「そんなに重傷だとは思わないんだけどなぁ……」

 

「仕方ないですよ。強権を発動されてしまったら、私たちに逆らう術はありませんし……」

 

「でも、身体が痛い訳でもないのに大人しくしてろ、と言われても……」

 

「元希さんは、私よりも重傷だとは思うんですけど……」

 

 

 互いに互いを監視する為に、僕とバエルさんは同じ部屋に寝かされている。普段なら緊張やら警戒やらで落ち着かない気持ちも、バエルさん相手なら穏やかになっている。それでも、同じ部屋で寝るのは緊張するのだけども……

 

「別に枯渇した訳じゃないですし、リーナさんの応急処置で何とかなってるんですけど……」

 

「それでも、禁忌魔法を長時間放ち続けるのは大変だと思いますし、思った以上に魔力は消費されると思いますよ」

 

「まぁ、凍らせた後すぐに気を失っちゃったんで、何とも言えないんですけどね……」

 

「私も似たようなものですよ。自分の脚で立って歩く事が出来なかったですし……」

 

「でも僕をおぶったって……」

 

「あれは無我夢中でして……」

 

 こんな状況でも、バエルさんは自分の心配より先に僕の心配をしてくれる。生来からなのか、それとも何かきっかけがあったのかは分からないけど、心配させてしまうのは心苦しい……もちろん僕もバエルさんの事を心配してるんだけど。

 

「まったく、我が主様とロシア娘は無茶をするのぅ」

 

「水……いたんだ」

 

「当たり前じゃろ。ワシはお主の使い魔、主が大変な時くらいは傍におるわ!」

 

「……ありがとう」

 

 

 水なりの心配の言葉だと分かるのに、ちょっとだけ時間がかかったから、僕がお礼を言うまでちょっと間が出来てしまった。

 

「なんじゃ、素直に礼など言われるとむず痒いのじゃがのぅ……まぁ悪い気はせんがの」

 

「てか水、君がここにいるのは僕たちを心配して、だけじゃないでしょ?」

 

「まぁの。実は恵理と涼子に頼まれたのじゃ。主様とロシア娘が無理をせぬように監視してくれとな」

 

「信用ないなぁ……それから、いい加減その『ロシア娘』って呼び方、変えたら? 一緒に生活してるんだし」

 

「そうじゃのぅ……ではバエルと呼ぶかのぅ」

 

 

 水の呼び方は、名前か特徴から持ってくるかのどちらかなのだ。ちなみに健吾君の事は『普通科のデカイの』と呼んだりしている……何とも不思議な呼び名なのだ。

 

「まぁお主らが無理をせぬのなら、ワシはノンビリと過ごすだけじゃがの」

 

「だいたい、何を指して『無理』なのさ? 歩いたりする分には問題ないんだけど?」

 

 

 だから基本的に日常生活は送れるのだ。寝る必要も無いし、運動制限をされる必要も無いのだ。

 

「お主らは『自分より他人』じゃからのぅ。困った輩を見つければ躊躇なく魔法を使うじゃろ。それが自分自身の負担だと分かっておっても」

 

「「………」」

 

 

 水の言い分に、僕とバエルさんは反論する事が出来なかった。だってまったくもってその通りだったからだ。

 

「だいたいのぅ、お主たちは国から期待を受けておる魔法師じゃろうが。もっと言えば元希、お主は世界中から注目されておる魔法師じゃ。そんな二人が無理や無茶を繰り返してると知られたら、少なくともこの学園にはいられなくなるんじゃぞ? それでも良いのか?」

 

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 

 この学園にいられなくなる、それはかなり嫌な事だ。でもそれ以上に、水が本気で僕たちの事を心配してくれていた事に僕は驚いた。

 

「分かっておるなら良いがの。じゃが、少しは自分の事も考える事じゃ。特にバエル、お主も……」

 

「っ!? お、お願いですから黙っていてください!」

 

「分かっておるよ。ワシは乙女の味方じゃからの」

 

「? 水、何の話?」

 

「我が主様にはまだ早い話じゃよ」

 

 

 いったいなんだっていうのさ……バエルさんには出来て僕には早いって、僕とバエルさんは同い年なんだけどな。

 

「とにかく、恵理とリーナ、それから涼子の許可が出るまでは安静にする事じゃな。もし安静を破った場合、どうなるかワシにも分からんからな」

 

「怖い事言わないでよ……それに、出たくても結界が張られてるからね。出た瞬間に涼子さんにバレるよ」

 

 

 何処まで過保護なんだ、と思うけども、それだけ心配されているんだと言う事だ。その心配を裏切る事は僕にもバエルさんにも出来ない。

 

「そのせいでワシも自由に外出出来ないのじゃがのぅ。ワシが結界を通っても涼子がすっ飛んで来る仕組みなんだそうじゃ。まったく迷惑なものを張ってくれたものじゃ」

 

「それで寮にいたんだ……」

 

「お主らが心配じゃったのも嘘では無いがの。じゃが四六時中監視するような無謀者ではないと言う事も分かっておるからの。だから少しくらいは外に出たかったと言うのが、偽らざぬ本音じゃがの」

 

「あとで涼子さんに頼んでみるよ」

 

 

 水の心配に感謝するのと同時に、外出出来ない不便さを水にも味あわせるのは可哀想だと思って、僕はそう提案したのだ。

 

「約束じゃからの!」

 

 

 如何やら本気で外に出たいらしい……涼子さん、水だけでも自由にしてあげられませんかね?




無茶ってすごい…

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