その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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ただ寝てるって本当に暇なんですよね……


退屈しのぎ

 人間と言う物は生きているだけでエネルギーを消費する生き物だ。寝ているだけだろうがなんだろうが、お腹は空くのだ。

 

「何か作りますね」

 

「ワシも食べるからの」

 

「分かってるよ。水も手伝って」

 

「ヤブヘビじゃったか……」

 

 

 手伝いが嫌なのか、水は苦々しげな表情を浮かべた。別に本格的に水に作らせるつもりは無いんだけどな……

 

「私も手伝いますよ」

 

「いえ、バエルさんは自分も大変なのに僕をおぶってここまで帰ってきてくれました。だからこれくらいは僕がしますよ」

 

「ですが……」

 

「諦めろ、バエルよ。我が主様は意外と頑固じゃからの」

 

「水はご飯いらないんだね」

 

「いると言っておろうに! おちおち冗談も言えんのか!」

 

「僕も冗談なんだけど?」

 

 

 普段言いくるめられる事が多いので、僕も冗談で水を撃退してみたんだけど……まさか本気に取られるとは思わなかったな……

 

「さて、それじゃあ水は野菜を洗ってね」

 

「絶対に食べるからの!」

 

「分かってるって。ちゃんと水の分も作るから心配しなくていいよ」

 

 

 初めの方は水だけ飲んでれば大丈夫だったのに、最近ではご飯も食べるようになったのだ。まぁ一人分増えるくらいじゃ手間は変わらないしね。

 

「そういえば、恵理さんたちはお昼如何するんだろう?」

 

「あやつらもいい大人じゃ。自分で何とかするじゃろ」

 

「そうだろうけどさ……何時もお弁当だからちょっと気になって」

 

 

 自分たちで作ったのだろうか? それとも購買で買うのだろうか?

 ちょっと気になったけど、外出禁止だし、水に確認しに行ってもらうのも駄目だしね。まぁお昼抜いたくらいで倒れるような生活はしてないだろうし大丈夫だろう。

 

「それじゃあ、早いところ作っちゃおうか」

 

 

 それほどお腹は空いてないけども、魔力回復には恐ろしいくらいのエネルギーが必要なのだ。油断して一食抜いたりすると、それこそ身体中のエネルギー全てを魔力回復に持って行かれ、他の事が出来なくなったりする。確か教科書にそんな事が書いてあったような気もするからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お昼を済ませてからは、本当にする事も無く僕もバエルさんも部屋でのんびりしていた。こんな時に何か時間をつぶせる趣味があれば良かったんだけども、僕もバエルさんも趣味に興じる時間なんて無かったし、たとえあったとしても別の事にその時間を使っていただろう……

 

「ねぇ水、何か無いのかな?」

 

「テレビでも見てれば良いじゃろ。もしかしたらあの化け蟹の事が分かるかもしれんぞ?」

 

「もし分かってたら僕たちにも情報は入ってくると思うよ? 何せ関係者だし」

 

「そうじゃの。じゃが、あやつらに常識は通用せんぞ? 主様や恵理、理恵を化け物扱いするような輩共じゃからの」

 

 

 そう言えば水のお母さんも、日本支部の人たちに殺されたんだっけ……しかも無実の罪で……

 

「じゃが暇つぶしにはやはりテレビじゃ。ニュース以外にも何かやっておるじゃろうしの」

 

「……水、随分とテレビが好きなんだね」

 

 

 僕はそれほど見ないし、恵理さんや涼子さんも見ない。だからこの寮のテレビは殆ど使われる事が無かったんだけども、最近はリーナさんや水が使ってたようなのだ。

 

「しかしまぁ、最近のテレビと言うのはマンネリ? 気味じゃとリーナが言っておったしのぅ。ワシは十分面白いと思うのじゃがな」

 

「随分と暇してるんだね……」

 

「主様が自由にしてくれるのなら、ワシだって学外に出て遊びたいがの。じゃが今のところワシが自由に動けるのは学内のみじゃ。時間と共に退屈になってしまうのは仕方ない事なのじゃよ」

 

「自由にして、そのまま帰ってこない可能性だってあるわけでしょ? だからまだ駄目。僕がもう少し気配探知が上達してからね」

 

「心配せんでも、ちゃんと帰ってくるのじゃがの……ワシは元希を好いておるから」

 

「っ……まさか水ちゃんまで……」

 

「バエルさん?」

 

 

 水の突然の告白に、僕ではなくバエルさんが驚いた。何をそんなに驚く事があるのかとも思ったけども、何となく触れちゃ駄目な気がしてスル―する事にした。

 

「バエルも大変じゃのぅ。ただでさえ出遅れて居るのにライバルが多くて」

 

「ねぇ、何の話なの?」

 

「お主の話じゃが、お主には関係ない話じゃ」

 

「?」

 

 

 僕の話なのに、僕には関係ないの? ますます訳が分からないけども、やっぱり触れる事が憚られたのでこれ以上は深追いしない事にした。

 

「やはりあの化け蟹の事はニュースになって無いようじゃの」

 

「まだ不確定要素が多いからじゃないの? 分かればさすがに報道すると思うけど……」

 

「主様たちが迅速に対応したから怪我人は無かったし、隠すほどの事柄でも無いと思うのじゃが……それほどまでに日本支部の人間共は恵理や涼子の活躍を世間に知られたくないのか……」

 

「如何いう事?」

 

「全属性魔法師を世間に認めさせると、今まで自分たちが化け物扱いしていた事に対するバッシングがあると思っておるのじゃろうよ」

 

「……恐ろしく自分本位だね、日本支部って」

 

「いきなり何処か別の国での戦闘に加われとかがざらにあると言っておったしの」

 

 

 水から色々と情報をもらいながら、僕とバエルさんはただテレビを眺めていたのだった。




水が現世に毒されている……
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