その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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いよいよ学園生活スタートです


入学式

 入学式当日、僕は制服に着替える為部屋の鍵を掛けた。この間は理事長にベルトを締められるという恥ずかしい事をされちゃったけど、これなら理事長でも部屋に入ってくることは出来ないからね。

 

「念のため早く着替えよう。理事長なら何でもありな気がするし……」

 

 

 世界的に有名な魔法師で僕と同じ全属性の魔法を扱える人。そんな人がドアの鍵くらいで対処出来るとは思って無いから急ごうとしたのだけど、それは既に遅かったのだと、僕は思い知る事になった。

 

「元希君、そんなに慌てると怪我するわよ?」

 

「り、理事長!? 何処から!? 鍵は閉めたのに……」

 

「ふっふ~ん。元希君、この部屋は一階で庭と繋がってるのよ? さて何処から入ったのでしょうか」

 

「窓の事忘れてた……」

 

 

 魔法師云々とか考える前に、初歩的なミスを僕はしていたのだった……田舎暮らしが長いから鍵を掛ける習慣が無いんだよね……それに僕の実家は貧乏だったからよけいに……

 

「ほら、早く着替えないと遅刻しちゃうわよ? 学年主席が遅刻だなんて格好付かないわよ」

 

「あうぅ……」

 

 

 新入生答辞は普通科のトップがやってくれるからいいけど、学年主席なんて僕の柄では無いんだけどな……岩崎さんか氷上さんに代わってもらいたいよ……

 

「元希君、ご飯の準備が出来ましたから早く来てください」

 

「あっ、はい」

 

 

 ドア越しに早蕨先生が話しかけてきたので、僕は着替えを再開しようとしたのだが、何時の間にか着替えは終わっていた。

 

「あ、あれ?」

 

「油断大敵よ」

 

「うわぁ!?」

 

 

 僕は何時の間に脱がされて何時の間に着させられたのだろうか……これが上級魔法師の力なのかな? それともただの変態さん?

 

「元希君、如何したの?」

 

「な、何でも無いです……」

 

 

 鍵を開け廊下に出ると、もの凄いスピードで理事長が僕を追い抜いていった。

 

「また! 姉さん、元希君の部屋に忍び込むのはやめなさいとあれほど言ったでしょ!」

 

「だって~。元希君が可愛いからつい」

 

「つい、じゃありません! 大体姉さんは……」

 

「涼子ちゃん、あまりブツブツ小言ばっかり言ってるとオバサンみたいよ?」

 

「オバッ!? 姉さんより若いんですからね!」

 

 

 ……僕の事で揉めてたんじゃないっけ? 何時の間にかただの姉妹喧嘩になってるよ……

 

「あの、ご飯は……」

 

「っ! そうでしたね。姉さんと喧嘩してる場合ではありませんでした」

 

「そうそう。元希君、一緒に食べましょうね~」

 

「あうぅ……」

 

「姉さん!」

 

 

 あっさりと抱きしめられ身動きが取れなくなった僕を、早蕨先生は助けてくれませんでしたが、代わりに足を持たれました。

 

「あの、早蕨先生?」

 

「姉さんだけズルイです! 私だって元希君の事抱きしめたいんですから」

 

「なら、日程を決めましょう。それなら文句無いでしょ?」

 

「公平にお願いしますよ」

 

 

 また僕の意思を無視して僕の事を決めないでくださいよ……入学式だというのに、二人には何も変わらない一日なんだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学式に出席する為に、僕は普通科の体育館を訪れた。本来ならこの場所に授業で来る事は無いんだけども、集会とか式典とかは普通科の体育館で行われるので、その時だけ魔法科の生徒もこの体育館に足を踏み入れる事が出来るのだ。

 

「あっ、元希~!」

 

「岩崎さん、おはようございます」

 

「かったいな~。友達なんだからもっと気軽に挨拶しなよ」

 

「で、でも……」

 

「炎さんの言う通りですよ、元希様」

 

「あっ、氷上さん……」

 

 

 既にクラス発表がされてるため、席は決まっている。S-1のクラスメイトである風神さんも光坂さんも既に席に座っていた。

 

「皆さん早いですね」

 

「だから遠慮しすぎ、タメで良いよ」

 

「でも……僕は基本的にこのしゃべり方だったから……」

 

「もう少しフレンドリーでも良いと思いますよ、元希さん」

 

「風神さんまで……頑張ってみるよ」

 

 

 何とかそう返して、僕は空いてる席に座ろうとしたのだが、何だかA-1の人に見られてるような気がする……

 

「あれがS-1なの?」

 

「男の子よね、それでS-1?」

 

「意外と可愛いじゃない」

 

 

 何で僕を形容する言葉は「可愛い」なんだろう……これでも男なんだけどな……

 

「元希君、気にする事は無いよ。君は間違いなく可愛い男の子なんだから」

 

「光坂さん、それ慰めになってないよ……」

 

 

 むしろ止めに近いような気もするんだけど……

 

「ねぇ元希」

 

「何、岩崎さん?」

 

「そうそれ。『岩崎さん』じゃ距離感じるんだよね~。前に言ったように『炎』で良いって」

 

「で、でも……」

 

 

 正直僕は異性の事を名前で呼んだ事など無いのだ。そもそも同年代の女の子と話すのも殆ど無かったんだから仕方ないけどね……

 

「アタシたちも元希の事は名前で呼んでるんだし、今更遠慮するなって」

 

「私たちが勝手にお呼びし始めたのですがね」

 

「でも、わたしたちも名前で呼んでもらった方が嬉しいですよ。苗字はあまり好きじゃ無いですしね」

 

「『あの魔法の大家の』って反応をされるからね」

 

 

 皆苗字は好きじゃ無いのか……それじゃあ嫌な思いをさせるのも悪いよね……

 

「えっと……炎さん、水奈さん、美土さん、御影さん、これからよろしくお願いします」

 

「よろしくー! ホントならさんも要らないんだけどね」

 

「さすがにそれは……」

 

「そうですわよ。名前を呼び捨てにされるなんて、まるで元希様と……」

 

「水奈さん? 妄想が過ぎますわよ」

 

「また始まった」

 

 

 なにやら急にくねくねし始めた水奈さんの事を、三人は呆れたように眺めている。いったい何があったんだろう……

 

『それでは今より、第○○回私立霊峰学園入学式を開会します』

 

「おっと。水奈、そろそろ現実に戻ってきな」

 

「すみません、少々取り乱しました」

 

「何時もの事ですよ」

 

「そうそう。もう見慣れた」

 

「……ちょっとビックリしたけどね」

 

 

 正直ちょっとでは無いのだが、此処は三人に合わせておいた方がいいだろうと思ってそう続けた。

 

『最初に学園理事長からお祝いのお言葉を頂きます』

 

 

 進行役は如何やら早蕨先生のようだ。やっぱり凄い人だって本当なんだな……でも何で普通科の男の子は早蕨先生を見て目をハートにしてるんだろう?

 

「あっ、理事長さんだ」

 

「壇上からでも分かるオーラ、凄いですわね」

 

「あの若さで理事長になったのですから、それくらいはあると思いますよ?」

 

「魔法師としても優秀だからね」

 

 

 理事長の言葉を聞きながら四人の評価を聞いて、僕は今朝のあの行動をした人が凄い人なんだと改めて自分に言い聞かせる。何か僕を見てウインクしてるし……

 

「美しい……」

 

「女神様……」

 

 

 さっきまで早蕨先生に見蕩れてた普通科の男の子が、今度は理事長に見蕩れてる……やっぱり二人は凄い人なんだな~。

 

「元希君、それは少し違うよ」

 

「うえぇ!?」

 

 

 御影さんにツッコまれたけど、僕今何も言ってなかったよね……




暫くは平穏な授業風景が続く予定です。
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