その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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一応「?」付きでですけどね


告白?

 結果から言えば、爆発も科学実験も行われる事無く晩御飯が出てきた。でも、顔を見る限り、秋穂さんと御影さんがものすごい疲れてるように思えた。

 

「とりあえず、食べられるものが出来たから……」

 

「それだけはハッキリと言える……」

 

「そんなにひどい事は無かったと思うんだけどなー」

 

 

 言葉を聞く限り、炎さんが何かしようとした、という事だけは分かった。

 

「まっ、せっかく作ってくれたんだから遠慮しないで食べましょう」

 

「恵理さん……いたんですね」

 

「私もいますよ、元希君」

 

「私もいるよ、元希ちゃん」

 

 

 料理をしている間に帰ってきたんだろうけども、何で三人共気配を消して帰ってきたんだろう……

 

「そう言えば、元希君とバエルちゃんはちゃんと大人しくしてたのかしら?」

 

「何とか抑えつけたのじゃ……こやつら、掃除をしようとして大変じゃったんじゃぞ!」

 

「何とも二人らしい感じですね……」

 

 

 水の報告を聞いて、涼子さんが納得したように頷く。そこで納得されるのも微妙に複雑なんだよね……まぁいいけどさ。

 

「もう外も暗くなってきてるし、今日はみんな泊まっていってね。部屋はこの前と同じで大丈夫だから」

 

「それって、僕の部屋に涼子さんが泊まるって事ですよね? 今度は大丈夫なんですか?」

 

「元希、『大丈夫』って如何いう意味?」

 

 

 この間みんなが泊まった時、僕はバエルさんの部屋で一晩過ごしたのだ。そして着替えの為に部屋に戻ると、そこには僕の箪笥を漁ろうとしていた涼子さんがいたのだ。涼子さんの為に、その事は他の人には教えていない。恵理さんは知ってるけど……

 

「大丈夫よ。今回は監視として私も元希君の部屋に泊まるから」

 

「それじゃ監視にならんじゃろ。ワシがその役目を引き受けてもよいが?」

 

「水ちゃんは今日一日元希ちゃんとバエルちゃんの監視で疲れてるでしょ? だから私に任せてくれても良いわよ。 何で監視しなきゃいけないのかは知らないけどね」

 

 

 何となくだけど、リーナさんもこの間の事を知ってるような気がする……じゃなきゃこのタイミングでそんな事言い出さないし……

 

「監視なんて無くて大丈夫です! ちゃんと思いとどまりますから!」

 

「涼子ちゃん、そんな事言って、本当は自分だけがあの空間にいたいだけなんでしょ?」

 

「そ、そんな事無いです! そんな事言って、本当は姉さんやリーナ、水様があの空間にいたいだけなのではないですか?」

 

 

 涼子さんの反撃に、恵理さんもリーナさんも水もそろって黙ってしまった。そこで黙られると、僕が恥ずかしいんだけど……

 結局監視は付けずに、この間と同じ部屋割でみんなが泊まる事になった。この前も思ったけど、何で僕は僕の部屋で寝れないんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝から夕方まで僕の部屋でバエルさんと安静にし、夜はバエルさんの部屋で一緒に寝る。年頃の男女なのだから誰か一人でも止めるべきなのだろうけども、何故か僕とバエルさんが同じ部屋だと誰も騒がないのだ。おそらく他の誰かだったらみんなが騒ぐ事、間違いなしなのに……

 

「何か考え事ですか?」

 

「えっ? えぇまぁ……如何して僕は僕の部屋で寝れないのか、とか色々と」

 

 

 微妙に恥ずかしかったので、僕はお茶を濁した。まさか馬鹿正直に今考えていた事をバエルさんに言えるはずもないから……

 

「みんな、元希さんの部屋に泊まりたかったんでしょうね」

 

「如何でしょう? 僕の部屋に泊まっても、何も面白くは無いと思うんですけど」

 

「面白い、面白くないは別だと思いますよ」

 

「そんなものですかね……」

 

 

 好かれてる実感は、さすがに僕でもある。だけど何故好かれてるのか、男としてではなく弟感覚で好かれてるのではないか、という考えが頭の隅にあるので、僕は如何してもみんなの好意が別の意味なのではないかと思ってしまうのだ。

 その事を健吾君に相談したら――

 

「なんだ、その羨ましい状況は! って普通の男子なら言うと思うぜ」

 

 

――と言われた。

 健吾君は所謂「ハーレム」という物に興味が薄いらしく、僕の状況を見てもそこまで嫉妬しないらしい。まぁ、僕から言わせてもらえば、一度にこれだけの女性から好意を寄せられると、嬉しいと思う前に混乱しちゃうんだけど……と羨んでる人たちに声を大にして伝えたい。

 

「私も、少なからず元希さんの事を想ってますし、他の方もそんな感じだと思いますよ?」

 

「想って?」

 

 

 バエルさんの言葉のニュアンスが『思う』ではなく『想う』であると、何故かこの時だけハッキリと分かってしまった……普段そんな事無いのに、何でこんな時だけそんな勘が働くんだろう……

 

「もちろん、『弟』ではなく、『一人の男性』としてですからね」

 

「あ、あうぅ……」

 

 

 そこまでハッキリと言われて、僕は自分の顔が熱くなっていくのを感じた。変化球でも、オブラートに包むでもなく直球でそんな事を言われたら、誰でもこんな事になるだろう……などと他人事のように考えながら、僕は思考がショートして気を失ったのだった。




最後に出たヒロインが真っ先に告白……ある意味定番なんでしょうか?

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