その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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この時期にはあんまりほしくないかも……


人の温もり

 突然の告白に混乱して意識を失い、僕は朝まで目を覚まさなかった。何時もの事、ではあるのだけども、この意識を失う感覚は何度体験しても気持ち悪いのだ。

 

「うーん……なんだか温かい……」

 

 

 布団の中にいるのだから、温かいのは当然だろう。だけど僕が感じたのは布団の温かみではなく、別の温かみだったのだ。

 

「……ふえぇ!?」

 

 

 完全に覚醒し、周りを見渡すと、僕はバエルさんに抱きしめられるように眠っていたのだ。

 

「えっ、えっ!? 何で!? 何で僕バエルさんに抱きしめられてるんだ? てか、何でバエルさんが僕の布団に入ってきてるの!?」

 

 

 覚醒した頭は、一瞬で大混乱に陥った。まぁ無理はないだろうな……もしこの状況で混乱しないような男がいるなら僕の前に今すぐ名乗り出てほしいくらいの状況なのだ。

 

「と、とりあえず離れなきゃ……」

 

 

 僕はゆっくりとバエルさんの抱擁から抜け出そうと、身体を捻ったりしてみる。だけど……

 

「うーん……好きですよ」

 

「(何の寝言ですか! てか、更にきつく抱きしめないでくださいよー!)」

 

 

 僕が抜け出そうとしているのに気づいてか、バエルさんの抱擁が更にきつくなる。そうなると当然、僕の身体がバエルさんの身体に密着するわけで……

 

「(なんか色々と柔らかい……だ、駄目だ! この状況から何としても抜け出さないと!)」

 

 

 多分だけど、涼子さんが僕の部屋を――僕の箪笥を漁る可能性が大いにある。だから急いで部屋に戻って未然に防がないといけない。

 僕はその一心だけでバエルさんの抱擁から抜け出そうと奮闘する。だけど、努力すれば努力するほど、バエルさんの抱擁はきつくなる一方で、僕は遂に抜け出す事を諦めた。

 

「(恵理さんやリーナさんがストッパーになってくれる事を祈ろう……)」

 

 

 こちらはほぼ間違いなく、僕の部屋に侵入するであろう二人が、涼子さんの暴走を抑えてくれる事を祈りながら、僕はバエルさんの温かみで眠くなってしまった。

 

「(今日くらいはいいよね……)」

 

 

 朝食の準備は交代で行うので、毎日僕が作る必要は無い。それに安静にしてろと言われて、どうせキッチンから追い出されるのだから、今日くらいはゆっくり寝かせてほしい。僕は眠りに落ちて行く頭でそんな事を考えていたのだった。

 

「お休みなさい……」

 

 

 誰に告げるでもなく、僕はその言葉を言い夢の世界へと落ちて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めて、まず気付いたのは誰かの視線だった。僕はその視線の方へと目を向けると、バエルさんが僕を見詰めていた。

 

「えっと……おはようございます?」

 

「おはようございます。えっと……なんだかすみませんでした」

 

「何の事ですか?」

 

 

 いきなり謝られても、僕には何の事だか分からない。バエルさんは申し訳なさそうに僕を解放すると、もう一度謝罪の言葉を口にした。

 

「本当にごめんなさい。抜け出そうとしていた元希さんを、私は更に強く抱きしめてたようでして……」

 

「自覚してたんですか?」

 

「はい……いえ、夢でも同じような事が繰り広げられてたので、多分現実でもそうなんじゃないかと思いまして。そうしたら案の定、私が元希さんを抱きしめていまして……」

 

 

 如何やら夢の中でも僕はバエルさんに抱きしめられていたらしい……昨日の告白から大胆過ぎやしませんかね、バエルさん……

 

「元希さんの体温が気持ちよくて、ぐっすり眠ってしまいまして……本当に申し訳ありません」

 

「い、いえ……僕もバエルさんの体温に負けて寝ちゃいましたし……僕もごめんなさい」

 

 

 変な気持などはお互い無かったのだけども、やっぱり異性とくっついていたというのはそれなりに恥ずかしい。僕とバエルさんはそれ以降言葉を発する事無く、そして僕はその気まずさから逃げ出すように自分の部屋へと向かった。

 

「……何してるんですか、三人は?」

 

「えっと……おはよう?」

 

 

 自分の部屋に戻って中を見ると、僕の部屋で寝ていた涼子さん、どこかから忍び込んだのであろう恵理さんとリーナさんが、僕の衣類の入っている――主に下着が入ってる場所――箪笥を開けて中を漁っていた。

 

「召喚獣に攻撃されるのと、僕に直接魔法を浴びせられるの、どっちがいいですか?」

 

「じょ、冗談よ! それに、私とリーナは涼子ちゃんの暴走を止めてただけなんだから!」

 

「姉さんとリーナが暴走してたんでしょうが! 私は今回は何もしてませんからね!」

 

 

 姉妹喧嘩が繰り広げられたけども、僕は真実を知っているだろう第三者の名前を呼んだ。

 

「水、どっちが本当の事を言ってるの?」

 

「どっちも嘘じゃな。三人揃って主様の箪笥を漁っておったわ」

 

「なっ!? 水、何処から!」

 

「ワシはひそかに主様からこの部屋の監視を命じられておったのじゃ。そこの隙間に隠れての」

 

 

 水からの情報で、三人共同罪である事が判明した。

 

「……はぁ、三人共今日一日ご飯抜きです」

 

 

 攻撃するのは可哀想だったから、僕はそう告げて朝ごはんの準備に向かった。だって三人がここにいて、バエルさんが部屋にいるんだから、誰も作って無いってことなんだもん……




何で眠くなるんだろう……
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