その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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納豆の日、らしいです


温泉作り

 くじの結果、僕と同じテントで寝泊まりするのは、炎さん・秋穂さん・涼子さんの三人に決まった。他の六人はかなり悔しそうな顔をしていたけど……別に寝るだけなら日替わりでも良いのではないだろうか?

 

「それじゃ、とりあえず晩御飯の準備ね。そろそろ逃げ出した二人も帰ってくるでしょうし」

 

「本当に逃げ出したんですか? もしかしたら本当に綺麗な水源があるのかもしれませんし……」

 

「万が一本当に綺麗な水源があったとしても、それはテントを張った後でも探しに行けたでしょ? あの二人は料理なんてめったにしないんだから」

 

「それは……そうですけど」

 

 

 水もリーナさんも、二人とも寮では滅多にキッチンに立たない。出来ない訳ではないのだが、基本的面倒くさがりなのか、僕や涼子さんに任せる事が多いのだ。恵理さんには頼まないらしいが、多分頼んでも代わってくれないからだろう。

 

「今日はみんなで作るからね。サボったり逃げ出したりしたらご飯抜きだから!」

 

「なんじゃと!?」

 

「別に逃げてないわよ!」

 

「ほら、すぐそこにいた」

 

「恵理……お主、謀りおったな」

 

 

 すぐそこに隠れていた水とリーナさんは、恵理さんの嘘に引っかかって姿を現した。まぁそもそも、僕と恵理さんと涼子さんは、すぐそこに二人が隠れていた事には気がついていたんだけどね……くじ引きの時、気配が完全に漏れ出てたから……

 

「じゃ、二人も出てきた事だし、みんなで作るわよ!」

 

 

 意気込んだ恵理さんに、僕たちは素直に従う事にした。もちろん、苦手な人には包丁は持たせず、洗い物や安全な作業を頼む事で参加させたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初日であり、若干キャンプっぽいと言う事で、晩御飯はカレーだった。意外だったのは炎さんが三杯も食べた事だ……僕とあまり変わらない体型なのに、何処にそんなカレーが入ったのかは不思議だ……

 

「そういえば理事長先生」

 

「なにかしら?」

 

「風呂ってどうするんですか?」

 

「そう言われればそうですわね。まさか無しなんて言いませんわよね?」

 

「大丈夫よ。私たちは魔法師、しかも上級が何人もいるんだから」

 

 

 そう言って恵理さんは、僕と涼子さん、そして水に目線を向けた。

 

「まず、涼子ちゃんが穴を掘って、そこに水が水を張ります。そして最後に元希君が熱した岩を放り込めば、立派な温泉の出来あがり!」

 

「……姉さんは何をするんですか?」

 

「私はお風呂周りに虫よけの結界と防音の結界を張るのよ。裸になると刺される可能性が高くなるでしょ?」

 

 

 言ってる事に不自然な感じは無いけども、恵理さんが言うと何故か胡散臭いように聞こえるのは何でだろう……

 

「岩を放り込む、って言われても……僕にそんな力は無いですよ……」

 

「魔法でどうとでもなるでしょ? 風でも何でも、岩を動かせれば何でも良いのよ」

 

「主様は非力じゃからの」

 

 

 気にしてる事をあっさりと……まぁ事実だから反論は出来ないけども……

 

「それじゃあ残りのみんなで晩御飯の片づけをするから、三人はお風呂の準備、お願いね」

 

「分かりました。どの辺に作ります?」

 

「テントから少し離れた場所で良いわよ。でも、あんまり深く作ると大変だから、程よい深さでお願いね」

 

「分かってます。姉さんやリーナではないので、悪ふざけはしませんよ」

 

 

 確かにその二人なら悪ふざけをしそうだな……てか、僕は別の場所で嫌な予感がしてるんだけども……

 

「広さはどれくらいにします? 数人が入れる程度で良いんですか?」

 

「何言ってるの、涼子ちゃん! 早蕨荘のルールを忘れたの?」

 

 

 ほらきた……ここは早蕨荘じゃないんだから、そのルールは適応されないはずなのに、恵理さんは楽しそうにそんな事を言いだす。もちろん反論は試みようと思うのだが、他のみんなが嬉しそうな顔をした時点で、僕の負けが決定したも同然なので諦めた……

 

「それでは、それなりの広さで作りますね。水様、問題はありませんよね?」

 

「大丈夫じゃ。ワシもみんなで入る事には賛成じゃしの」

 

「僕は嫌だな……」

 

 

 誰にも聞こえない程度の声で呟いたのだけども、すぐ隣にいた涼子さんにはバッチリと聞かれてしまった。

 

「姉さんが言いだしたら誰も止められませんからね。元希君も諦めて下さい」

 

「……嬉々とした顔で言われても説得力が無いですよ」

 

 

 涼子さんも、一緒に入る事に賛成しているのだ。だから僕を慰めるフリをして諦めを申し出てきただけに過ぎないのだ……言われなくても諦めてはいますが。

 

「まぁまぁ主様よ。主様の立派な分身を見せつける良い機会ではないか」

 

「そんな機会は無くて良いよ!」

 

 

 水の思いっきりズレた慰めに反論しながらも、僕は岩を作り出し熱している。お風呂に入る事自体は嫌じゃないし、何とかして一人になれる空間が作れないか考えているのだ。

 

「(この岩を境に、男女で別れるのが一番かな……でも、納得はしてくれないだろうな……)」

 

 

 普通女性の方が異性との入浴は嫌がると思うんだけど、何でここのみんなは喜んで一緒に入りたがるのだろうか? バエルさんは若干恥ずかしそうにしてるのに、他の人は別の理由で頬を染めているように見えるのは、きっと僕の勘違いではないと思う……




何でも出来るってこんなに便利……

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