その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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ホントに「小さな」ですけどね


小さな反撃

 即席で人工の露天風呂を作り、僕たちは結局全員一緒に入浴する事になった。どれだけ反対しても、多数決で僕の意見は却下されるのだ……民主主義に託けた数の暴力反対……

 

「そう言えば理事長先生、脱衣スペースはどうするんですか?」

 

「ここは学園の私有地だし、殆ど人は来ないのよ。だから別に気にする必要は無いわよ」

 

「大いにあると思うんですけど……」

 

 

 一応異性である僕がいるんですから、お風呂は兎も角脱衣スペースは別にするべきだと思うんですけど……本当はお風呂も別にしてもらいたいんだけども……

 

「そうなんですか。じゃあ安心ですね!」

 

「元希様の前で……」

 

「あら、久しぶりにスイッチが入りましたね」

 

「入ったね」

 

「いったい何を考えてるんだか……」

 

 

 水奈さんが妄想世界に旅立ったのを、美土さん、御影さん、秋穂さんが半分呆れながら眺めている。

 

「恵理、人払いの結界を張ったわよ」

 

「これで本当に問題なし! さぁ、お風呂に入るわよ!」

 

「姉さん、せめて片づけを終わらせてからにしてください!」

 

 

 僕たちが温泉を作ってる間に片づけを済ましたはずなんだけど、何でまだ残ってるんだろう……

 

「ちゃんと片付けたわよ?」

 

「全然終わってません! 相変わらずいい加減なんですから……」

 

「涼子ちゃんが細かいのよ……」

 

 

 姉妹喧嘩が始まりそうだったので、僕とバエルさんで仲裁して片づけをする事に。何で祝われる僕とバエルさんが苦労しなければならないんだろう……

 

「主様! ワシは先に入ってても良いかの?」

 

「あーうん……ご自由にどうぞ」

 

 

 外でお風呂なんて初めてなのだろうか? 水のテンションが異様に高い。僕はそのテンションについていけないので、とりあえず水の提案を受け容れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 片づけを終え、脱衣スペースだけは何とか別にしてもらい、僕は今お風呂の準備を進めている。と言っても、ただ服を脱いで畳むだけなんだけど……

 

「何でお風呂は一緒じゃなきゃ駄目なんだろう……別にここではエネルギーを使って沸かし直す必要も無いと思うんだけどな……」

 

 

 岩を熱して放り込んだのだ。そう簡単にお湯の温度が下がるとは思えない。まして今は夏だ。多少温度が下がっても許容範囲で収まると思うんだけど……

 

「まぁ僕の意見は却下されちゃったんだし、今更ブツブツ言ってもしょうがないよね……」

 

 

 賛成二人、反対九人で否決、言うまでも無く賛成の二人は僕とバエルさんだ。

 

「元希ー遅いぞー!」

 

「うわぁ!? 炎さん、何でこっちに……」

 

「何でって、遅いから?」

 

「まだそんなに時間たってないでしょ! 何で待てないんですか!」

 

「細かい事は気にするなって! それよりも、早く入ろうぜ!」

 

「全然細かくないですよ……」

 

 

 大雑把なところがある炎さんに、どれだけ抗議しても無駄だとは分かっている。分かってはいるけども、抗議せずにはいられないのだ……

 

「元希連れてきたぜー!」

 

「炎さん、もう少し待てば元希様だって入ってきたんですよ?」

 

「相変わらずせっかちよね~」

 

「昔から変わって無い」

 

「なんだよ! みんなだって早く元希と一緒に入りたかったんだろ? だから連れてきたやったんじゃないか!」

 

「別に少しくらいなら待てるわよ」

 

 

 秋穂さんのセリフに、三人も頷く。だけど炎さんの行動を本気で咎めようとしている訳ではないと、僕も炎さんも分かっていた。

 

「さあ! 泳ぐぞ!」

 

「お風呂で泳ぐのはちょっと……」

 

「そうですよ、岩崎さん。いくら知り合いだけと言っても、最低限のルールは守ってくださいね」

 

「はーい……」

 

 

 涼子さんに注意されて、少し残念そうだけども大人しく従う炎さん。さすがに注意されても無視するほど子供では無かったようだ。

 

「主様! なかなか気持ちよいぞ!」

 

「良かったね」

 

「ところで、湯船は兎も角として、何処で身体とか洗うのかしら?」

 

「その辺で良いでしょ。水なら出せるんだし、元希君になら見られても大丈夫でしょ?」

 

 

 リーナさんの問い掛けに、恵理さんが答える。だけどその答えに、僕は納得出来なかった!

 

「僕が気にしますよ!!」

 

「大丈夫よ。元希君のも何回も見てるんだし、今更気にしなくても良いでしょ?」

 

「気にしますってば!」

 

「別に襲う訳じゃないんだから、そんなにカリカリしないの。それとも、元希君は襲ってほしいのかな?」

 

 

 恵理さんの冗談に、僕は反論する気が失せて行ってしまった……この人には何を言っても駄目なんだと分かってしまったからだ……まぁ、前から何となくは分かっていたんだけども。

 

「水が出せるのは、私、涼子ちゃん、元希君、氷上さん、それと水ね。一応温度調節はするけど、少し冷たいかもしれないから予め了承くださいね」

 

「なんですか、その反対は許さないって勢いの脅し文句は……」

 

 

 とりあえず全員が了承したので、僕たちはそれぞれ身体を洗う事にした。恵理さんやリーナさんが僕の身体を洗おうとかしたけど、冷水で追い返した。それくらいの反撃なら出来るんだよね……




比較的安全な相手が一緒ですけど、平穏無事ではつまらないですよね

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