その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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タイトル決まらない……


教室までの道程

 入学式が終わりHRの為に各教室に移動する人並みに、僕は飲まれた。ただでさえ背が小さいのに加え、人込みになれていないのが原因だったんだろうな……

 

「うきゅ~……」

 

 

 漸く解放されたと思ったら、既に体育館には誰一人居なかった。もしかして全員に気付かれる事無く僕は人込みにまみれていたのだろうか……

 

「兎に角教室に急がなきゃ」

 

 

 急いた気持ちとは裏腹に、僕は足を進めることが出来なかった。なぜなら……

 

「教室って何処だろう?」

 

 

 本来なら固まって移動するから道に迷う事など無いのだけども、生憎僕はその集団から置いて行かれた身なのでその移動手段は取れない。

 

「影を飛ばして場所を探そう……」

 

 

 そう決めた瞬間、僕は背後に誰かの気配を感じた。

 

「誰! うわぁ!?」

 

「置いてかれちゃったの? しょうがない子ね」

 

「理事長!? 降ろしてくださいよ~!」

 

「だ~め。さぁ、お姉さんと教室に行きましょ」

 

 

 理事長に抱き上げられ、僕は身動きが取れないまま教室まで運ばれていく。いくら僕が小さくて軽いからって、女性に運ばれるのは何だか虚しい気持ちになってくるよ、男として……

 理事長に抱き上げられながら廊下を進んでいくと、各クラスの女子が僕を見て何かを言っている。

 

「あれってS-1の男の子じゃない?」

 

「ホントだ。でも何で理事長に抱き上げられてるんだろう?」

 

「可愛いよね~」

 

「あれで実技トップだって噂だよ?」

 

「人は見かけによらないんだね」

 

 

 また可愛いって言われた……カッコいいと言われたい訳じゃないけど、せめて可愛いと言われないようにはなりたいな……

 

「さぁ、此処が元希君のクラスよ」

 

「何も無い……いや、魔法ですか」

 

「さすがね。S-1の子にしかこの場所は認識出来ないのよ。さぁいきましょう」

 

 

 漸く降ろしてもらえたと思ったら、また抱き上げられた。もう教室に着いたんだからそのまま降ろしてくれれば良いのに……

 

「涼子ちゃん、迷子を連れて来たわよ」

 

「姉さん! 元希君が嫌がってるから降ろしてあげてください!」

 

「しょうがないわね~」

 

 

 漸く解放されたと思ったら、今度は早蕨先生に抱きつかれた。

 

「うえぇ!?」

 

「心配したんですからね」

 

「ゴメンなさい……」

 

 

 素直に謝る事で、早蕨先生は許してくれた。そして僕が席に座る事でS-1の全員がクラスに集まった事になる。

 

「元希、何処で迷子になったの?」

 

「体育館で人込みに飲まれちゃって……」

 

「元希様は小さいお方ですからね」

 

「あうぅ……そうだけども、あと人込みに慣れて無いのもあるんだ」

 

「そういえば元希さんは地方出身でしたね」

 

「だけどあれだけの人込みなら問題無く動けると思うけど」

 

 

 皆はそんな事ないのだろうけども、僕からすればあの人数は恐ろしく感じるんだよ。だって村の人口と大して変わらない人数が一斉に動き出したら、如何すれば良いのか分からなくなっちゃうじゃないか……

 

「兎に角、これで全員揃いましたのでHRを始めます」

 

「ゴメンなさい……」

 

 

 僕の所為でHRが遅れていたのだと自覚してたので、もう一度頭を下げた。そうしたら何だか柔らかいモノに包み込まれた。

 

「あの、早蕨先生?」

 

「元希君はまだこっちの生活に慣れて無いのですから、そんなに気にしなくて良いのよ」

 

「あっー! 涼子ちゃんが元希君を独り占めしてるー!」

 

「姉さんは早く教室から出て行ってください! ここは理事長室じゃ無いんですから!」

 

「そんな寂しい事言わないでよ~」

 

「あの、そろそろ離してください……」

 

 

 何時までも抱きしめられてるのも恥ずかしいし、何だか四人の視線が鋭くなってきてるように感じるんですけど……

 

「それじゃあHRを続けますけど、このクラスは他の五クラスとは違い少数精鋭のクラスです。明後日に行われるクラス対抗戦も、他のクラスは二十九人だけども、このクラスは五人でそれに挑む事になります」

 

「それってかなり不利なんじゃ……」

 

「大丈夫だよ! だってこのクラスには元希が居るんだから」

 

「そうですね。元希様と私たち四人なら人数差など簡単に埋められますわね」

 

「でも油断は駄目だと思うんだけど……」

 

「大丈夫、わたしと御影は回復魔法も使えますから」

 

「ボクはあまり攻撃性の魔法が無いからね」

 

「そういう問題じゃ……」

 

 

 何で皆はこんなにも自信満々なんだろう……僕なんて今すぐ逃げ出したい気分なのに……

 

「元希君は気付いて無いのかもしれないけど、このクラスの五人とA-1のトップとではかなりの差があるのよ。だからそんなに心配しなくても大丈夫なの」

 

「そうなんですか?」

 

 

 早蕨先生の言葉に、僕は少し安心を覚えた。でもどれだけ差があるんだとしても、やっぱり数の差は容易には埋められないと思うんだけどな……

 

「そうよ。それに普通の新入生はまだそれほど魔法を使いこなせる訳じゃないの。そりゃまったく使えない訳じゃないけども、このクラスの五人のように魔物退治を易々とこなせるほどの魔法師では無いのも確かなのよ」

 

「魔物退治って……あれはバーチャルな上に相当ランクを下げてもらっての事ですよ?」

 

「それでもなの。いくら数が居ても、このクラスの子のように、二種類以上の魔法を使える新入生は数えるほどしかいないの」

 

 

 そうだったんだ……それじゃあ四人もかなり凄腕の魔法師って事なんだね。それなら何とかなりそうな気分になってくるよ。

 

「そして何より元希君が居るんだから、このクラスは絶対に負けないんだよ」

 

「早蕨先生の言う通り! 元希、絶対に勝とうね!」

 

「う、うん……頑張るよ」

 

 

 炎さんの勢いに付いていけずに、僕はとりあえず頷く事しか出来なかった。

 

「炎さんの意気込みは兎も角、私たちも負けるつもりはありません」

 

「わたしも頑張りますよ」

 

「ボクも出来る限り援護する」

 

「ほら、元希も意気込む!」

 

「うぇ!? が、頑張ります……」

 

 

 正直僕はあまり戦うって事がイメージ出来てないんだけど、この前の地竜戦のように異空間である体育館で戦うんだよね? それならある程度本気を出しても怪我をさせる事が無いから出来るかな?

 

「もちろんデータ測定も兼ねてるから本気で戦って下さいね」

 

「他のクラスの試合は観戦出来るんですか?」

 

「六クラス纏めて別次元で試合をしてもらうから、観戦は無理ですね」

 

 

 全クラスと戦うのだろうか? そうなると連戦って事になるから魔力の枯渇とかが心配されるんじゃないだろうか……

 

「試合の間にはインターバルを挟むし、二日に分けるから大丈夫だよ」

 

「……ねぇ御影さん、僕口に出してないよね?」

 

「同じ影の魔法師として、元希君の考えてる事は何となく分かる」

 

「うぇ!?」

 

 

 僕ってそんなに分かりやすいんだろうか……ちょっと悲しくなってきたよ……




また戦闘シーンやらなきゃ……苦手なんですよね……

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