その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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どう展開させていくか……それが悩みどころです


粒子の検証

 水が粒子を採取して戻ってくる間、僕は別の式に辺りに不審な粒子が無いかを探させた。万が一学校の側にも同じような粒子が検出されれば、手掛かりじゃ無い可能性もあるし、もしくはここも安全では無い可能性だってあるのだから。

 

「とりあえず学校周辺には不審な粒子はなさそうだね」

 

「もう調べ終わったんですか?」

 

「そんなに大変な作業じゃないしね」

 

 

 僕がそう答えると、バエルさんは驚いたような顔をした。いったい何があったんだろう……

 

「バエルさん?」

 

「いえ、学校周辺を調べるだけでも大変だと思うんですが、それを謎の粒子を探すなんて……普通の魔法師には大変な作業だと思うんですけど……やっぱり元希さんは凄いんですね」

 

「そりゃ元希は全属性魔法師だからな。あたしたち何かとは比べ物にならないって」

 

「何で炎さんが自慢げなのかは分かりませんけど、元希様ならこれくらいは朝飯前ですものね」

 

 

 炎さんと水奈さんが誇らしげに僕の隣に立って胸を張る。何で僕の事をここまで嬉しそうに話せるんだろう? 友達だからかな?

 

「ところで元希さん」

 

「なに? 美土さん」

 

「水ちゃんが発見した謎の粒子ですが、元希さんはそれがどんなものだと思ってるのですか?」

 

 

 美土さんの質問に、僕は少し考えた。

 

「未知の魔物の痕跡か、それとも自然発生した新種の何かか……見てみないものには何とも言えないよ」

 

「当然。元希君の言うとおりだね」

 

 

 僕の答えに、今度は御影さんが胸を張って同調した。しかし何でみんな僕の答えにこんなにも誇らしげに胸を張るんだろう……

 

「元希君、そろそろ水様が戻って来ます。他の人に覚られないよう、検証は理事長室で行いますので」

 

「分かりました。それじゃあ行きましょうか」

 

 

 涼子さんに言われ、僕たちはぞろぞろと理事長室へ向かう。普段なら不審に思われるかもしれないけど、僕たちがまとまって登校してきたのは既に学校中に知られている。まぁ僕と恵理さんと涼子さんは遅れて来たんだけども。それでも僕ら三人が学外から登校してきた事はそれだけで驚きだったらしいのだ。

 

「でも元希君、調べるって言っても私たちじゃ何の粒子か分からない可能性だってあるんじゃないの?」

 

 

 秋穂さんがふと思い出したかのように訊ねてくる。

 

「確かに分からない可能性も少なくないよ。でも、それ以上に魔物の痕跡なら放っておけない。朝感じ取った気配が本物なら、あれは危ないからね」

 

 

 前に僕たちが狩った大蟹以上に危険な気配、しかもその気配を完全に消せるかもしれないのだ。放っておけばここら一帯が危険に晒されてしまうのだ。

 

「姉さん、来たわよ」

 

『入ってちょうだい』

 

 

 涼子さんが形式的にドアをノックして、恵理さんが何のためらいもなく入室の許可を返す。普段ならノックせずに入っても文句は言われないけど、今回は事情が事情だから仕方ないんだろうな……

 

「主様、戻ったぞ」

 

「うん、水お疲れ様」

 

「それで、これが謎の粒子……」

 

 

 僕が水を労っていると、その横から炎さんが顔を覗かせて水が搾取してきた物を見ていた。

 

「これ、ワシが主様に感謝されている横から無粋なヤツじゃの」

 

「頭撫でてるだけじゃんか」

 

「主様に撫でてもらうのは至福のひと時なのじゃ!」

 

 

 良く分からないけど、水は炎さんを睨みながらも僕の手を求めるように頭を動かしている。

 

「まぁそれは置いておくとして、これが何なのか早速調べなきゃね」

 

「リーナ、お願い」

 

「任せて。こういうのは私の得意分野だからね」

 

 

 リーナさんが集中しはじめ、彼女の周りに粒子が舞う。リーナさんの得意としている魔法の一つは検索。例え未知の物だとしても、それが何処に属するかくらいは調べる事が出来るのだ。

 

「………」

 

「リーナ?」

 

「これは、この世界の物じゃない……別次元の存在?」

 

「何よそれ……」

 

 

 恵理さんが口を開き驚きの声を漏らした。いや、恵理さんだけが口を開けたのだ。だって別次元の存在を、そんなに簡単に受け入れられる訳が無いのだ。

 

「つまりあの辺りに次元の切れ目があるって事? それで別次元の魔物が一瞬だけ現れたって?」

 

「そうなるかしら。だってこの粒子はこの世界に現存するサンプルの何処にも当てはまらないんだもの……未発見なものなんて最早存在しないと言われてるこの世界でこの結果……次元が違うって考えた方が良いわよ」

 

 

 リーナさんの言うように、この世界において未知の生物はほぼほぼ存在しないとされているのだ。この粒子が未知の生物の物だとしても、絶対に確認されている生物とどこかしら合致する部分があるのだ。それが一切ないというのなら、全くの新種か別次元の生物か、って事になる。

 

「とりあえずあの辺り一帯は封鎖しておかないとね」

 

「既に結界魔法は貼っておいた。主様から預かった札での」

 

「万が一って言って渡したんですが、役に立ちましたね」

 

 

 その場しのぎの結界で長続きしないんだけども、あそこまで向かう時間くらいは保てるだろう。僕たちは急いで学校からあの場所に向かう事にした。




またしても盛り上がりに欠ける……

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