その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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元希君たちが頑張ってます


完全包囲

 次元の切れ目がありそうな場所にはあらかた結界を張り終えて、僕たちもテントがある場所へと戻る事になった。万が一結界を破りうる相手ならば、結界が無くても現れればすぐに分かるだろう。それ以外でも結界内に不審な生物が現れれば、結界を張った僕たちにはすぐに分かるようになっている。だから結界の側で監視するような事は不要なのだ。

 

「大分結界を張ったわね」

 

「学園に近いですし、私たちが今拠点としているテントにも近いですからね。どっちに向かわれても厄介ですし、張り漏らしが無いか最後に確認しておいた方が良いでしょう」

 

「そうですね。万が一張り漏らしがあったら大変ですしね」

 

 

 主に学園に向かわれた時、破壊行動などされたら修復したりするのにまた魔法を使わなければいけない。修復魔法は一年生では僕以外使う事が出来ないし、そもそも生徒に修復させる事ではない。

 だけども僕は当事者として関わっているので、万が一校舎などが壊されたらその修復作業に駆り出されるのは間違いない。だから結界の張り漏らしが無いかしっかりと確認しておかなければいけないのだ。

 

「今日は何も現れないかもしれないけど、油断しないでいましょうね。私や恵理、涼子は兎も角、元希ちゃんは実戦経験が圧倒的に不足してるからね」

 

「分かってます。僕はまだ実戦と呼べる戦闘は二回くらいしか経験してませんからね」

 

 

 一回目は学校近くの湖に現れたヤマタノオロチ、二回目はショッピングモールに出現した大蟹だ。水の相手を実戦に含めていいのなら、三回になるんだけども、あれは仮想空間での戦闘だったしな……実戦とは呼べないだろう。

 

「涼子ちゃんはすぐに仮想空間を構成出来るように、この後は結界の維持に魔力を使わなくて良いわ。その分私たちがフォローするから」

 

「万が一大型モンスターで、しかも未知の相手だった場合のみ、異次元に強制転移します」

 

「そんな事が出来るんですね……」

 

「仮想空間と大して変わらないわよ。ただし、大きな違いは、怪我をしたらちゃんと痛みがある事かしらね。仮想空間では怪我しても大丈夫だけど、異次元はそうはいかないから注意ね」

 

「分かりました」

 

 

 最悪の場合のみの注意事項だが、万が一最悪の事態だった場合にこの説明を受けて無かったら無茶をしたかもしれないから、これは必要事項だったのかもしれない。

 

「さてと、それじゃあ晩御飯が私たちを待ってるわよ」

 

「姉さん、少しはしゃぎ過ぎですよ……」

 

 

 既に頭が晩御飯の事でいっぱいになっている恵理さんに、涼子さんが溜め息を吐きながらツッコミを入れた。でも、確かにこれだけ結界を張ったから、お腹が空いちゃうのも仕方ない事だと僕は思うけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎さんたちが用意していくれていた晩御飯を食べ終え、全員で食器や調理器具の片づけを進めて行く。今のところ結界には異常は見られないし、謎の気配も今のところは何処からもしていない。

 

「主様、この後は全員で風呂かの?」

 

「何かしたい事でもあるの?」

 

「いや、ただ風呂ならワシはゆっくりと入りたいと思っただけじゃ。今日は色々と疲れたからのぅ」

 

 

 確かに、今日は水にも色々と働いてもらった。ゆっくりとお風呂に入りたいという気持ちも分かる。でも、一人でゆっくりとお風呂に入るなんて、僕が許しても恵理さんが許してはくれないだろう。

 もしそれが許されるのなら、僕だって一人でゆっくりとお風呂に入りたいし……

 

「今日はみんなでゆっくりお風呂で疲れを取りましょう。もちろん元希君も一緒だからね」

 

「僕が一緒じゃゆっくり出来ない人もいるんじゃないでしょうか?」

 

 

 僕はゆっくりと視線をバエルさんに向けた。彼女なら僕の味方になってくれるだろうし、実際そうなると確信していたから。予想通りバエルさんは僕と同じ考えだったけども、今回も多数決という数の暴力に屈した……民主主義なんて嫌いだ……

 どれだけ悪態を心の中で吐いたところで、この状況が変わるわけでもない。既に僕とバエルさん以外は服を脱いでお風呂に向かっている。僕とバエルさんは揃って小さくため息を吐いて、それぞれ脱衣所へと向かう事にした。

 

「本当に、みんな僕を異性だと思って無いんじゃないのかな……」

 

 

 目の前で服を脱ぎ出すとか、普通の女の子はそんな事恥ずかしくて出来ないと思うんだけどな……特に異性の前なのだから――年頃の女子とか関係なく、異性の前で服を脱ぎ出すなんておかしいのではないのだろうか?

 僕はそんな事を考えながら結界を張った位置へと意識を向ける。今のところおかしな事は起こって無いし、謎の気配もあれ以降感じる事は出来ない。

 

「気のせいならそれでいいんだけどね……だけど、あの粒子が検出された以上、勘違いでは済ませられないだろうし……」

 

「おーい! 元希遅いぞー!」

 

「炎さん!? こっちは男子の脱衣所だからね?」

 

 

 炎さんが僕を迎えに来た、のは良いんだけども、脱衣所まで突入されるのは恥ずかしい。だから僕は大声で炎さんの足を止めて、すぐに湯船に向かう事にした。結局は見られるんだけども、着替え中に見られるのはより恥ずかしいのだ……




回復したばっかに忙しい元希君……

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