教室で簡単なHRを済ませて、今日のところは解散となった。僕は学校で出来るアルバイトを探す為に掲示板に向かおうとしたんだけども、炎さんたちに捕まってしまった。
「よーし! 親睦を深める為にカラオケに行こう!」
「炎さんはカラオケ好きですよね」
「水奈だってマイク握れば熱唱するじゃないのよ」
「美土だって人の事言えない……」
「あの、僕お金無いんだけど……」
学費や家賃を稼ぐ為にも、僕はアルバイトをしたいんだと言おうとしたら、背後から理事長の笑い声が聞こえてきた。
「元希君、君はSクラスだから学費は免除されるのよ。その代わり緊急時には討伐に参加してもらう事になるけどね」
「聞いてないんですけど……」
「うん、初めて言ったからね」
「姉さん、また元希君に言ってなかったんですか?」
「だってこの反応が見たかったんだもん」
衝撃の事実を告げられて固まってしまった僕を、理事長は強く抱きしめる。学費免除って事は、後は家賃だけ気にしてれば良いのかな?
「家賃も大丈夫ですよ。元希君は全属性魔法師ですので、エネルギー生成をしてくれれば家賃も免除になりますから」
「ホントですか!」
「ええ」
やった! これで勉強に集中する事が出来るんだ! お母さんに負担をかける事も無いんだ!
「じゃあ、そういうわけだからカラオケ行こうよ、元希」
「元希様もご一緒出来るんですね」
「あらあら、水奈ったら嬉しそうにしちゃって」
「ボクも嬉しいよ。でも美土もかなり嬉しそう」
四人に囲まれて、僕は改めて炎さんたちに聞く事にした。
「カラオケって何?」
「知らない? 元希ってどんな生活してきたのさ?」
「えっと……畑で野菜育てたり」
田舎な上に貧乏だったからね。学校と家を往復して、その後は家や近所の手伝いなどで大体一日が終わってたからな……都会の遊びなんて全然知らないよ……
「元希様、今日は思いっきり遊びましょうね」
「お姉さんがお金払ってあげますから」
「えっと、美土さんも僕と同い年だよね?」
「美土はボクたちの中でもお姉さんぶるからね。元希君も気にしちゃ駄目だよ」
「うん……」
「ウリウリ。元希はちっこいからな」
「あうぅ……気にしてるのに」
僕とあまり変わらない炎さんだけども、彼女は女の子で僕は男だ。その僕の方が小さいんだから、やっぱり僕は小さいんだろうな……
「ションボリしてる元希様……」
「あらら、また妄想世界に旅立ってしまったわ」
「水奈、早く行くよ」
「ほら、元希もしゃきっとしろよ」
炎さんに引っ張られて、僕はそのままカラオケに行く事になった。何で皆僕より大きいんだろうな……
人生初めてのカラオケに衝撃を受けて、僕は早蕨荘に帰ってきた。料金は本当に美土さんが払ってくれたんだけども、その代わりにグリグリされた……美土さんは背もおっぱいも大きいから、悲しくなるし恥ずかしくなるんだよね……理事長や早蕨先生もだけど……
「ただいま」
「お帰りー!」
「うわぁ!?」
「もー心配したんだからね。さぁ、お風呂に行きましょ」
「理事長、僕は一人で入れますよぅ……」
「だーめ。お姉さんを心配させた罰だから」
「あうぅ……」
理事長は僕が炎さんたちに誘われてるところに居たはずなのに、何でこんなに心配してるんだろう……
「姉さん、元希君の着替え準備出来たわよ」
「ありがと。さぁ元希君、お姉さんたちと一緒にお風呂に入るわよ」
「その前に、元希君」
「はい?」
「炎と水の魔法でお湯を沸かしてください。お風呂だからそれほど熱くしなくていいですので」
「分かりました」
言われた通りに湯船に水を張り、炎の魔法で適温まで温める。これがエネルギー生成って事なのかな?
「ホントは電気が良いんだけど、元希君使える?」
「えっと……光魔法の上級ですよね? 一応は使えますけど……」
「なら今度からは電気にしましょうね」
「それじゃあ入りましょうか」
えっと、なし崩しになっちゃってるけど、僕は一人で入りたかったんだけどな……
「それで、学園生活一日目は如何だった?」
「人がいっぱいでした……」
「まさか体育館で倒れそうになるなんてね」
「あうぅ……」
入学式の後、人込みに飲まれたのを指摘され、僕は恥ずかしくなって俯く。
「もう、可愛いわね!」
「姉さんだけズルイです!」
「うにゅ~……」
二人に抱きつかれ、僕は押しつぶされそうになる……何でこんなに過激な愛情表現をするんだろう……
「明日はクラス委員を決めたりするだけだし、今日よりは緊張しなくて済むと思うわよ」
「ですが、明後日と明々後日はクラス対抗戦ですからね。元希君にとっては初めての対人戦となります」
「もちろん、架空世界での戦闘だから遠慮しなくて良いのよ」
「あの、理事長、早蕨先生……」
僕の呼び方が不満だったのか、二人は揃って僕のほっぺたをつねる。
「痛いですよ……」
「岩崎さんたちは名前で呼んでるのに、私たちは呼んでくれないの?」
「そうですよ。ちゃんと名前で呼んでくれないと元希君のご飯は抜きです」
「うえぇ!? ……えっと、恵理さん、涼子さん?」
「な~に、元希君♪」
「可愛いですね~」
「あうぅ……」
今度は二人にほっぺにキスをされ恥ずかしくなる……僕は此処に来るまで異性って言えばお母さんや近所のオバサンたちしか居なかったのにな……同年代の女の子は僕の事を女だと思ってたようだし……
「対人戦ですが、ホントに後遺症は残らないんですよね?」
「もちろん。その心配は無いわよ」
「元希君が遠慮する必要はありませんので、思いっきり戦ってくださいね」
「分かりました」
入学式で僕の事を見て何か言ってたA-1の人に、ちゃんと実力があるって事を見せてあげないと!
「いやーん」
「え?」
「元希君のエッチ」
「あ、あわ、あわわわわ……」
拳を握り締めたつもりが、何時の間にか恵理さんのおっぱいに手が当たっていた……
「ズルイです! 元希君、私のも触ってください」
「うきゅ~……」
何で僕はお風呂に入る度に気を失ってるんだろう……いつかゆっくり入れる日は来るのだろうか……
愛されキャラの元希君、何故か羨ましく無いんだよな……