その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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暫定的ですけどね


無害認定

 一日中水とリンは何となく言い争っては僕を挟んでにらみ合い、そしてまた言い争う、と言う事を繰り返していた。実害は無かったから良いけど、あの争いごとに何で僕を巻き込むんだろう……いや、僕の事で争ってるのだから仕方ないのかもしれないけど、僕としては二人(?)には仲良くしてもらいたいんだよね……

 

「やっほー元希君。今日は大変だったみたいだね」

 

「秋穂さん……大変って言葉で済ませられるか微妙なくらい大変でしたけどね……」

 

「噂は聞きました。その、彼女は本当に未確認な粒子を持っていたんですよね?」

 

「それは間違いないですよ。恵理さんと涼子さんがしっかりと確認しましたし」

 

 

 いくら寝ていたとはいえ――この世界の生物ではないとはいえ、女の子の身体を僕が調べるのは色々とマズイ事だと思って、調べてた時は僕は理事長室を退室していたから「しっかり」と表現するのは難しいけど、それは瑣事なのでバエルさんには言わないでおいた。これ以上余計な不安を煽りたく無かったからね。

 

「それで、『リンちゃん』だっけ? その子は今どこにいるの?」

 

「リンなら炎さんたちと学食にお菓子を食べに行きましたけど……」

 

 

 女の子同士での話があるらしく、珍しく僕はのけもの扱いだけど、今はそれがありがたかった。一日中リンと水のにらみ合い、言い争いに巻き込まれたくなかったからだ。

 

「元希さんは彼女をどうするべきだとお思いですか?」

 

「害が無いならこのままでも良いと思ってる。もちろんリンが記憶を取り戻し、破壊活動をするような子だったら仕方ないとは思うけど、処分したほうが良いと思うけどね」

 

 

 僕の「処分」という単語に、秋穂さんとバエルさんの肩が跳ねた。およそ高校生が使うような意味での言葉では無かったからだろうな。

 

「今のところは問題ないから、そんなに怯えないでくださいよ……僕だってしたいわけじゃないんですから」

 

「そ、そうよね……元希君が好き好んでそんな事したがらないわよね」

 

「元希さんは優しいお方ですからね。ですが、あまり情が移ってしまうと大変なのではありませんか?」

 

「うん、それはあるかもね……だから、害が無い事を祈りたいよ」

 

 

 そう答えたタイミングで恵理さんから通信が入った。

 

「ゴメン、呼び出しだ」

 

「呼び出し? ……あぁ、理事長先生たちね」

 

「頑張ってくださいね」

 

「何をするかは分からないけどね」

 

 

 バエルさんの応援に苦笑いで応えて、僕は理事長室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理事長室の中には、僕の予想に反して恵理さんしかいなかった。てっきり涼子さんやリーナさんもいるものだと思ってたのに。

 

「えっと、他の人はいないんですか?」

 

「ええ。呼んだのは元希君だけだし」

 

「そうなんですか……」

 

 

 猛烈に、突然に冷や汗が全身をめぐった。今の恵理さんの視線、嫌な予感しかしないんだよね……

 

「日本政府に報告は済ませたわ。一応は無害認定を下したけど、万が一の場合は私たちの一任するそうよ」

 

「万が一……つまりはそう言う事ですか?」

 

「ええ。派遣するのが面倒なんでしょ。アイツらはそういう連中なのよ」

 

 

 この間の化け蟹騒動の時、話の分かりそうな日本支部所属の人がいたけど、恵理さんの中では日本支部の人たちは全員が同じのようだ。

 

「そ・れ・で」

 

「は、はい?」

 

 

 来た。さっきの嫌な予感はこの後に続く「何か」への警告だったのだろう。それが分かっても僕には何も出来ないんだけど……

 

「リンちゃんが正式にこの場所で生活する事が決まったわけだし、今日は盛大に歓迎会をしなきゃね」

 

「……一応確認しますけど、それはみんなで準備するんですよね?」

 

「私たちは会場の準備をするから、元希君には主だった物の買い出しと調理をお願いするわ」

 

「僕一人で、ですか?」

 

 

 自分で言うのもなんだが、僕一人では買った物を持ちかえるだけの力が無い。非常に情けない事なのだが、僕の腕力は炎さんより低いのだ。

 

「そうね……A組の岩清水さんとアレクサンドロフさんを連れていったら? あの二人はまだリンちゃんと面識無かったし、いきなり慣れるとも思えないしね」

 

「そう…ですね……分かりました。秋穂さんとバエルさんに連絡してみます」

 

 

 さっき別れたばっかだが、食堂に向かう感じでも無かったし良いと思う。普通なら先に面通ししておいたほうが楽なんだろうけども、リンは少々特殊な状況下にあるので、誰か親しい相手がいる時に会わせた方がスムーズに事は進むだろう。

 この場合の親しい相手、と言うのが僕じゃなきゃ先に会わせたんだけどな……炎さんたちとは仲良くやってるっぽいけども、それでも初対面の相手と会う時の恐怖心を和らげるまでにはいかないんだろうな……

 

「さっきから百面相してるけど、何か考え事?」

 

「リンの事でちょっと……何で僕にはすぐ懐いたんでしょう?」

 

「やっぱり私と涼子ちゃんが寝てる時に色々やり過ぎたんだと思うわよ。だから私たちには警戒心を抱き、元希君には抱かなかったんだと思う」

 

「何したんですか!」

 

 

 当然の如く、僕の質問には答えてもらえなかった。まぁ、答えてもらっても困ったんだろうけどもね。




もう少ししたら、大きく発展出来る……かな?

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