その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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リンが入る事によって変更します


テント変え

 恵理さんに命じられ、僕は秋穂さんとバエルさんと一緒に歓迎会の為の食材の買い出しに出かける事となった。買い出しと言っても、だいたいが学校で手に入るものなので、さほど大変では無いのだけども。

 

「歓迎会か~、確かに仲良くなる為には必要だよね」

 

「炎さんたちはある程度は仲良くなってるみたいですけど」

 

「でも、元希君の話を聞く限り、水とは上手くいって無いんでしょ?」

 

「そうなんですよね……何であんなに仲が悪いんでしょう?」

 

 

 あってすぐに喧嘩を始めるし、暫く一緒にいても一向に仲良くなる素振りが見えないし……

 

「多分ですけど、どちらも元希さんの事が好きだからじゃないでしょうか?」

 

「僕の事を? でも、それなら二人で仲良くしてくれた方が僕は嬉しいんですけど……」

 

「独占欲が強いのかもしれませんよ? 他の方々は自分の気持ちに折り合いをつけて、上手く付き合ってますが、あの二人は元々人ではありませんので……いえ、リンちゃんはまだ分かりませんけど」

 

「おそらくは人間じゃないと思いますけど……そんなもんですかね?」

 

 

 バエルさんの推測に、僕は首を傾げた。僕なんて取り合う価値なんて無いと思うんだけどな……

 

「そうそう、元希君」

 

「はい? なんですか、秋穂さん」

 

 

 明らかに何か悪い事を思いついたかのように、秋穂さんが僕の名前を呼んだ。

 

「リンちゃんだけど、どのテントで寝泊まりするの? 元希君以外にはそれ程懐いて無いんだよね?」

 

「元々十一人だったんですから、空いてるテントで良いのではないでしょうか。僕以外に懐いてもらう絶好の機会だと思いますし」

 

「でも、そうなるともう一回テントの割り振りを考え直さないといけないんじゃないの?」

 

「僕はそれでも良いですが、他の人がなんて言うか……」

 

「大丈夫よ。私が何も言わせないから」

 

 

 元々僕と同じテントの秋穂さんがそう言ってくれるなら、僕としても心強いものがある。炎さんもそれほど執着しなさそうだし、問題は涼子さんかな……でもまぁ、大人だし教師だから分かってくれるよね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い出しを済ましてテントが張ってある場所まで戻り、さっき秋穂さんたちと話した事を全員に伝えた。殆どの人がテントの割り振り変更に賛成してくれたけども、案の定涼子さんが難色を示した。

 

「涼子ちゃん、多数決で決まったんだから諦めなさい」

 

「……分かりました。でも、もう一回元希さんと同じテントで生活する権利を獲得してみせます!」

 

 

 気合いで何とかなるのなら、最初から賛成してくれてもよかったんじゃ……まぁ色々と面倒な事が起きないメンバーが良いな、僕的には……

 

「それじゃあくじを引いてください。もちろん、魔法で元希君が引いたくじを透視して、それと同じ番号を引こうなんて事は考えないでくださいね」

 

 

 秋穂さんの注意事項に、恵理さん、涼子さん、そしてリーナさんが視線を逸らした。もしかして、そんな事を考えていたのだろうか……

 

「ワタシ、元希と一緒」

 

「ダメだぞ、リン。こういうのは公平じゃなきゃ意味が無いんだ」

 

「そうなのか? でも、元希と一緒、良い」

 

「それは皆さん思ってますけど、くじ引きと言うのはこういったものなのですわ」

 

 

 随分と仲良くなってるな……とてもいい事なんだけども、相変わらず僕にはベッタリなんだ……水が見せられないような顔してるし、こりゃリンと同じテントになったら大変だな……

 

「後は元希君とバエルちゃんだけね」

 

「へ? ……あぁ、すみません」

 

 

 考え事をしてたので、くじを引くのを忘れていた。てか、何時の間に他の人は引いたんだろう……

 

「じゃあ開いてください」

 

「僕は三番です」

 

 

 つまり移動無し。昨日までと同じテントで生活出来るのだ。

 

「あら、残念」

 

「姉さんとリーナと光坂さんとですね」

 

「アタシは水奈と美土と秋穂とだね」

 

「て事は……僕とバエルさんと水とリン?」

 

「主様の隣はワシじゃからの!」

 

「ワタシ!」

 

「あ、あはは……」

 

 

 とりあえずリンと水と同じテントだったので、くじ引きの結果で喧嘩する事は無かったけども、別の意味で凄い事になりそうな組み合わせだな……

 

「幼馴染が揃ったし、夜は楽しそうだね」

 

「ボクだけ別のテント……しかも教師陣と一緒……」

 

「御影さん、頑張ってくださいね」

 

 

 美土さんの微妙な励ましに、御影さんは力なく頷いた。あのテントは色々と大変そうだな……まぁ、こっちもそんな事言えた義理ではないのだけども……

 

「ワシじゃ!」

 

「ワタシ!」

 

「あの……元希さんの隣は二つあるので、お二人で仲良くしてはどうでしょうか?」

 

「「………」」

 

 

 バエルさんの提案に、水とリンが固まった……もしかして、思いつかなかったのだろうか?

 

「じゃが、それじゃとお主が除け者になるじゃろ? お主かて主様の事を少なからず想っておるのじゃし」

 

「うん、除け者、ダメ。バエル、元希の隣」

 

「えっ? ですが、お二人が争うくらいなら、私は隣じゃなくても平気ですよ」

 

「では一日毎に交換じゃな」

 

「仕方ない。リンはそれで構わない」

 

 

 本人抜きでまた話が進められている……別に良いけど、せめて僕の意思を聞いてからにしてほしいよ……




構図的に、お兄ちゃんを取りあう妹二人、その三人を微笑ましげに見守るお姉ちゃん、みたいな感じになってしまった……

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