歓迎会も終わり、さぁ寝ようと思ったら恵理さんと涼子さんに手招きされてしまった。
「なんです? 僕もう寝ようかと思ってたんですが……」
「明日の朝、もう一度あの場所に行こうと思ってるんだけど、元希君も来るわよね?」
明日の朝か……確かに何度も調べるに越したことはないけども、僕まで行く必要はあるのだろうか?
「行けたら行きます」
「行けないなんて事があるんですか?」
「いや、今日の両隣が……水とリンなんですよね……水は元々抱きつき癖が見られましたし、リンの登場でその癖が強まる可能性が……」
自分で言ってて何だか嫌だな……出来れば大人しくなる方向に進んでもらいたいんだけども、おそらくは無理だろうな……
「そっか。テントでリンの事が分かると良いわね」
「一緒に寝るだけで正体が分かるなら苦労しませんって」
「そっちじゃ無くて、相性とかよ」
「相性?」
そんなものは出会ってすぐに分かってる気がするんだけど……一目見ただけでリンは僕に懐いたのだ。それなりに相性が良く無きゃそんな事は起こらないはずだ。
「とりあえず、私たちは捜査に行くからね。元希君もこれそうだったらよろしく」
「分かりました。それじゃあ、お休みなさい」
「はい、お休みなさい」
恵理さんと涼子さんに就寝の挨拶をして、僕は自分のテントに戻った。
「遅いぞ、主様!」
「元希、遅い!」
「えっと……ただいま?」
テントに戻るや否や、水とリンの熱烈歓迎に遭った。歓迎会の時もそれほど息が合ってる感じは無かったのに、何でこんな時だけ息ピッタリなんだろう……
「良かったですね、水さん。リンちゃん。元希さんが帰ってきてくれて」
「バエルさん……見てないで助けて下さい……」
「ほら二人とも、元希さんが困ってますよ」
「おお、済まぬ主様」
「元希、困ってる?」
バエルさんに注意されただけで、水とリンは僕から離れてくれた……いったいこの短時間で何があってバエルさんの言う事を訊いてるんだろう……
「とりあえず、今日はワシとこの小娘が主様の隣で寝るからの」
「小娘違う。リン」
「まぁまぁ二人とも、とりあえず寝るんでしょ? 僕も疲れたから早く寝ようよ」
ちょっと強引だったかもしれないけど、水とリンを寝袋に入らせる事に成功した。ちなみに、疲れているのは本当なので、僕も早めに寝たかったのだ。
「それじゃあ、お休みなさい」
そう呟いて、僕の意識は急激に夢の世界へと旅立っていく。冗談抜きで、疲れてたんだなって思えた瞬間だったのだ。
夢の世界へ旅立ったはずなのに、僕は何かを見ている。
「誰……水?」
水は偶に龍の姿で寝ている時がある。その所為で色々と大変な事にもなるんだけども、それほど大きい感じはしていないので、今日は大人しめで龍の姿になっているのだろう。
「むにゃむにゃ……主様は渡さぬからの……」
「どんな夢見てるんだろう……って、あれ? 水は人間の姿のままだ……」
寝言を発した水の方を見れば、何時もの少女の姿をした水がそこに寝ていた。
「おかしいな……水じゃないとすると、誰が……」
首を傾げて反対側を見ると、そこにはまだ子供なのか、小さな人ならざぬ者がいた。
「これが、リンの正体……? 魔物というよりは精霊のような気配だ……」
あの雑木林一帯を覆っていた気配と、今のリンの気配は同じだ。という事は、リンはやはり雑木林一帯に時空の狭間を作りだした犯人という事になるのだが……
「とても悪さをするような存在には思えない……」
そう、今のリンにはそれくらいの神々しさがあるのだ。だけどあそこら辺一帯の生物の存在を消していたのなら、やはり悪さをしていたという事になるのだろうか?
「分からないな……」
「元希よ、ワタシは何も悪い事してない」
「えっ?」
「ワタシは、林に害なす者たちを時空の狭間に送っただけ。あのまま放置していれば、あの林はダメになっていたから」
「リン……なの?」
僕の問い掛けに対する答えは無く、またそれ以上リンと思われる声も聞こえなくなってしまった。
「あのまま放置していたら、あの雑木林がダメになる?」
リンの言っている事が本当だとすれば、あの雑木林には何かしらの痕跡が残されているはずだ。僕はそう思い立ち上がろうとしたが、身体が言う事を訊いてくれなかった。
「そうか……これは夢だったんだっけ……」
夢で見た事を現実とごちゃまぜにするのは良くないけど、これが単なる夢で終わらせる事が出来る内容では無いのも事実。僕は自分の身体に覚醒を命じ、恵理さんと涼子さんの捜査に同行しようと決心したのだった。
次回正体の推測を元希君が立てます。