テントに戻った僕は、恵理さんと涼子さんに今日あった事を報告する為に少し離れた場所に移動した――バエルさんにおんぶしてもらったままで……
「それで、何で元希君はアレクサンドロフさんにおんぶされてるのかしら?」
「えっと……結論から言えば、魔法を放ったら動けなくなりました」
「魔法? でも、元希君は既に体内の魔力を完全に回復させてましたよね? いったいどんな魔法を使ったら動けなくなるんですか?」
僕の説明不足なセリフでは、涼子さんは納得してくれなかった。もちろん恵理さんも、バエルさんも不満顔で僕の事を見ている。もちろん、説明を省略したままでは済まないとは思ってたけど、ここまで責められるとは思ってなかったな……
「えっとですね……あの雑木林をリンと散策していたら、急にリンが僕の意識の中に入って来まして……」
「ちょっと待って! それって、リンが神様として機能しているって事?」
「いえ……今のリンは何も覚えていない、僕たちが接してきたリンです。ただ、あの場所でだけ一時的に僕の身体を使って神様として動けた、んじゃないかと」
何とも曖昧な話だけども、身体を乗っ取られた僕だったわけが分からないのだ。だからこれ以上踏み込まれても説明は出来ない。
「……元希君の身体を使い、荒れた土壌をどうにかしようとしたのかしら?」
「そうですね。リンに身体を乗っ取られた後、僕の頭の中に、僕が知るはずの無い魔法が浮かび上がって来ましたので」
「その魔法を使ったから、元希君はアレクサンドロフさんにおんぶされていたのかしら?」
「バエルさんだったのは完全なる偶然ですよ。僕が最後の魔力――いえ、あの時残ってた魔力を振り絞って飛ばした念話を、バエルさんと秋穂さんがキャッチして、僕たちを発見してくれたんです」
僕はあそこまで正確な念話を飛ばした覚えはないのだけど、それは別に言わなくても良いだろうと思い省略して話す。だってこれ以上心配させたくないから。
「それで、その魔法というのは、元希君はまた使えるのかしら?」
「いえ……詠唱も覚えてませんし、もう一度使えと言われましても……」
「つまり、リンに身体を乗っ取られた時にしか使えない、と言う事かしら?」
「おそらくは。あっ、その魔法のおかげで、あそこら辺一帯の土壌は元に戻りました」
一番重要な報告はこれだろう。僕の身体どうこうよりも、あそこら辺一帯の土壌問題が解決した事がなによりの報告だと僕は思ったのだけど、恵理さんも涼子さんもさして興味を示してくれなかった。
「そう。まぁこれで良かったのかもね」
「元希君が土壌問題を解決してくれたとしれば、あの辺りの農民たちは魔法師の事を認めてくれるでしょうね。これで姉さんの気にしていた問題の一つが解決しましたね」
「本当は私自身で解決したかったんだけど、元希君のおかげだし善しとしましょう」
「あの……何の話なんでしょうか?」
今まで聞くに徹していたバエルさんが口を開く。正直言えば、僕も何の事だか気になったので、この質問に僕は頷いて便乗する事にした。
「ほら、魔法師の事を嫌ってる人がいる事は授業で話したでしょ?」
「はい、聞いてます」
「僕の場合は、魔法師の間でも嫌われてるみたいですけどね」
自分と違う存在に畏怖を抱くのは仕方ない事だろうけども、同じ魔法師なのに、僕や恵理さん、涼子さんの三人はその同じはずの魔法師たちからも忌み嫌われている……というのは言い過ぎだろうか?
「そして、あそこら辺一帯の農民たちは、お年を召している人たちが多いから、余計にその傾向が強かったのよ」
「姉さんが何とかしてお年寄りたちの心を開こうと努力していたところに、今回の問題が発生しました。この問題を解決出来たら一気にお年寄りたちの誤解も解けるのでは、と思っていたんですよ」
「つまり、土壌を守った――正確には元に戻したのは魔法師ですよ、という事をアピールしたかったんですか?」
僕のセリフに、恵理さんが苦笑いを浮かべながら頷いた。
「身も蓋も無い言い方をすれば、そのつもりだったのよ。魔法師は敵じゃない、味方なんだと教えてあげようとしたのよ」
「食糧問題は普通の人間でも魔法師でも同じですからね。食物を買い取らせてもらえないと困るんですよ」
「学園の食糧は産地直送ですものね」
酪農などは学園でやっているので、ある程度は補えるが、農耕などは本腰を入れて始めたばかりなのだ。ノウハウなども教えてもらっているところなので、ここで付近の農民たちとの間に軋轢が生まれると困ってしまう。魔法師としてではなく、霊峰学園理事長としても頭を悩ましていたんだろうな。
僕は説明が終わったので一礼をして二人の前から移動しようとした――のだが、まだ思うように身体が動かせなかったので、結局はバエルさんにおんぶされて移動する事になったのだった。
ハーレムなんだけど、羨ましくないのはなぜだろう……