異世界の魔王と召喚少女   作:Revak

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第3話

 

 朝食を食べ、顔を洗って歯を磨いた三人は冒険者協会に入っていった。

 

 目的は単純にこの世界での金銭の会得の為である。

 レイは男で飲食不要だが、普通に暮らす場合食事代や宿代がかかる。

 そのため金を得る必要があるが、身元不確かな人間が出来る仕事はその日限りの現場仕事ぐらいで、金を多く得る事は出来ない。

 だが冒険者は誰でも歓迎する代わり死者が多い仕事だ。

 

 

 

 

「なんだとてめぇ!」

「やんのかゴラ!」

 

 そして入った途端喧嘩が始まった。

 ドワーフの男とヒューマンの男の喧嘩だ。

 周りは止めることなくむしろ「やったれやったれ!」と喧嘩を促し戦いやすいようテーブルや椅子をどけている。

 

「ひぇぇ……」

 

 シェラがそう小さく悲鳴を上げた。

 

(おーやっとるやっとる)

 

 レイはかつて冒険者として活動していたことがあった。

 その時は女だったのでよく野郎どもに絡まられてた。

 

 三人は喧嘩を横目に二階に上がろうとする。

 依頼の受付や新規登録は二階からである。

 

 しかし階段の前に画面が五月蠅い男が居た。

 

 黄金色の全身鎧を纏っているが頭部だけは露出している。

 金髪碧眼の優男と言った雰囲気の男であった。

 

「はっはー! 俺は! エミール・ビュシェルベルジェール! すべての女性と女性の味方の味方である!」

 

(なんだこいつ)

 

 レイは狂人か? と怪訝な目を向けた。

 

 レムとシェラも少し困った顔をした。

 

「そして問おう! 君は……レムちゃんとシェラちゃんにとって何なのか!」

「面倒な親か其方は……まぁ答えるが。余は単なる仲間だ。それ以上でも以下でもない……これでいいか?」

 

 レイがじろりとエミールを睨む。

 

「本当です。レイは私の仲間です」

「私たちの、でしょ?」

 

 レムとシェラが笑顔で言った。

 

「……ふむ。問題はなさそうだ」

 

 エミールはレベル五十の怪力戦士という二つ名を持つ戦士だ。

 平均レベルが低いこの世界ではレベル五十もあれば一流の戦士である。

 

「ならばいい! 俺はエミール・ビシュシェルベルジェール! すべての女性と女性の味方の味方である! ──何かあれば俺を頼るといい!」

 

 エミールがレイに問いかけたのは単純に冒険者であるレムとシェラに近づいた男が悪人でないか見る為だ。

 噂では二人を奴隷としてうっぱらうなんてことも聞いたため、直接問いかけたのだ。

 そしてエミールはレムとシェラの笑顔を見てこれなら問題ないと判断したのである。

 

 そしてエミールは去っていった。

 

 なんだったんだ、とレイは疑問に思いつつ階段を上がって二階に上がった。

 

 二階には受付が三つある。

 ドワーフの三つ子の受付が居り、それぞれ上級、中級、下級クエストの受付だ。

 青色、黄色、赤色の服を着ている。

 

「新規登録はどれだ?」

「青色の服を着ている人のところです」

「そうか」

 

 シェラが「実は私も冒険者協会に来るの初めてなんだよねー」と言いながら青色の受付のところに行く。

 

「ねぇ、私が先に登録していい?」

 

 とシェラが言った。

 

「好きにしろ」とレイが言うとやったー、と喜んで登録をしていく。

 

「ではこちらにお名前と出身国をお願いします」

「はーい……シェラ・L・グリーンウッドで、グリーンウッド王国……と」

 

(──その名前、お前王族じゃないだろうな)

 

 国の名と同じ苗字などどれだけの厄ネタかわからない。

 

「それと、最後に血判をお願います」

「はーい……これ痛いんだよねぇ」

 

 そう言ってシェラは渡されたナイフで親指を少し切って血を付けた。

 

「あ、レム。何か治癒系の召喚獣いない? 回復してよ」

「貴女なら鍔でもつけとけば治るでしょ」

「えーケチー」

 

 レイは女同士の会話って面白いなと思いつつ受付に進んだ。

 

「新規登録を頼む」

「わかりました。此方に名前と出身地をお書きください」

「わかった」

 

 レイは提出された紙に名前と出身地をかく。

 この世界の文字も翻訳用のアイテムを装備しているので読み書き可能だ。

 

 特に嘘をかく必要はないので書いた。出身地は異世界の名前にしておいた。

 

「では血判を」

「うむ」

 

 レイは肉体操作で痛覚をオフにしてから指を斬り、血判を押して肉体操作で再生させた。

 この再生は外見こそ治るがHPは回復しないという面倒な使用がある。

 

「……はい。ありがとうございます。冒険者としてまずはレベルの測定を行います。戦士、射手、魔術師のどれかのレベルを測定します。何にしますか?」

「戦士で頼む」

「わかりました……お連れの方はどうしますか?」

「私は勿論召喚士で!」

「魔術師ですね。ではこちらの鏡に触れて魔力を流してください」

 

 受付がそう言い壁の方にあった鏡を指さした。

 その鏡は曇っており、何も映っていない。

 

「ふっふーん。いきなりレベル五十とかいっちゃうかも」

「……貴女では精々レベル十程度でしょう」

「む、言ったなー。レムよりレベル高くしてやる!」

 

 そう言ってシェラは鏡に触れ、魔力を込めた。

 すると曇りが下の方から解消されていく。

 

「この映りですと……レベル三十ですね」

「おお! ──レムのレベルは?」

「……私のレベルは四十です」

 

 レムが小さい胸を張ってどや顔をした。

 

「がーん……すぐ追い越すからね!」

「貴女では一生かかっても無理ですよ」

 

 レムが煽った。

 

「それじゃあ戦士の方は、下で測定します」

「道具を使う感じか?」

「いえ。指定の戦士の方と戦って測定してもらいます」

「そうか」

 

 四人で階段を降りると受付嬢がエミールに声をかけた。

 

「エミールさん。この人のレベル測定をお願いしてもいいですか?」

「ん? はっはー! いいぞ、俺が測ってやろう!」

 

 そして周囲の冒険者たちが椅子とテーブルをどけていく。

 

「……ここで測るのか?」

「はい。専用の場所はないので……」

「……まぁいいが」

 

 狭くはないが障害物が多いので困りそうだ、とレイは思いつつエミールと対峙した。

 

 エミールは剣を抜いて構えている。

 

「そちらは武器が無いがいいのか?」

「余はモンク……クラップラー、まぁ素手戦闘に特化している。武器などいらん」

 

 そう言って自然体のまま構える。

 

「では──行くぞ!」

 

 エミールが突撃し、斬りかかって来た。

 レイはそれを軽くよける。

 二度、三度と避けるとエミールが剣に力を込めた。

 

 この世界には武技と呼ばれる技能がある。

 発動にはスタミナだったりHPを消費するなど多種多様な物があるが、エミールが今発動しようとしている武技はスタミナを消費する物だ。

 

 強化された下段からの切り上げがレイを襲う。

 

 レイはそれを片手で弾いた。

 

「今度はこちらから行くぞ」

 

 レイはそう言い本人にとっては蠅が止まるような速度で──この世界ではまさしく神速と言われる速度でエミールに接近。

 そのまま腹を殴った。

 

「あっ」

 

 やっべ、と思った時にはもう遅い。

 エミールは綺麗に吹っ飛び、奥の箱にぶつかって箱が無残な姿になった。

 

「すまん。大丈夫か?」

「も、問題ない……」

 

 エミールは頭から箱に突っ込んだというのに無事をアピールし立ち上がった。

 

「うむ。測定は終わり! レイ、お前のレベルは……百以上だ!」

 

 その言葉に冒険者協会内がざわついた。

 この冒険者協会で表向き一番強いのはエミールだ。そんな彼のレベルでも五十である。

 それがポットでの新人がレベル百以上というエミールの倍以上のレベルと来た。ざわつかない訳がない。

 だが、それでもある程度の納得はあった。何せエミールをただの一撃で吹っ飛ばしたのだから。

 

「今の音なに?」

 

 そこに二階の吹き抜けから少女がレイたちを見下ろして来た。

 

 少女の名はシルヴィ。このファルトラ市の冒険者協会の協会長だ。

 

「うむ! 協会長。レベル測定をしていたんだがとんでもない新人が来たぞ! レベル百を超える戦士だ!」

「へー……それじゃあさ、ちょっとこっち来てくれない? 話したいことがあるからさ」

 

 そうしてレイたちは協会長の執務室に向かった。

 

 

 協会長の執務室でレイたち三人が座る。

 何故か真ん中にレイ、左右にレムとシェラだったのでレイは内心あばばばばとなりつつも肉体操作で冷静な表情を浮かべたままにしておいた。

 向かい側にはシルヴィが座る。

 

「それでさー、君を家で採用するの難しいんだよねー」

 

 たはーとシルヴィは笑った。

 

「……強者だと持て余すか?」

「いや? というよりは君は僕程度の下に着きたくないだろう?」

「……なるほどな。だが余は気にせんぞ。組織のトップとは組織を円満に運営する者であって上から押さえつける者ではない。それは暴君と呼ぶのだ」

「……君が気にしないというのならいいけど」

 

 シルヴィは鋭い目でレイを見た。

 レイはそれに対しなんかこいつ裏がありそうだなと見抜いた。

 

「それでは、何か適当な依頼でも受けようか」

「ん、これからよろしくねー」

 

 そうしてレイたちは部屋を出た。

 

 レイは二階からなんとなく下を見た。

 そこには先日戦ったガラクの姿があった。

 

(……面倒だな)

 

 ここで殺す訳にはいかんしなぁ、と思いつつ配下の一体に追跡するよう命令を出した。

 レイはモンクだけでなく指揮官系のクラスも収めている。

 その特殊能力(スキル)で遠くに居ても配下に指示を出せるし、配下と視界を共有したり情報を共有できるのだ。

 

 そしてクエストボードを見る。

 

「あ、この依頼とかどう?」

 

 そう言ってシェラはある依頼書を見た。

 

 その依頼にはマダラスネイクの目玉の入手、という依頼だった。

 

「マダラスネイク……どこに生息するモンスターだ?」

「人食いの森の浅瀬に居るモンスターです。ですが人食いの森は魔物が多数いる危険地帯です……依頼主は魔術師協会のようですが……」

 

(罠か?)

 

 レイはその可能性を考えた。

 だが、魔術師協会の名ならその可能性は低いか、と思い直した。

 しかし念のため受けておくか、と三人はこの依頼を受注した。

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