なんてこった!あまりに筆が乗りすぎて一日に二本も投稿できちゃったゾ!
まぁ、俺の推しが出て来たからね…仕方ないね…。
…それは、あり得ぬ光景。
決して、必ず、あり得ないこと…。
コガネは、目の前に広がる光景を前に、そのような感想しか持てなかった。
己にとっての”最上”が、決してもう会えぬと思っていた者が、現実で目の前にいる。
「私の王…本当に久しぶりだな。…なんだ、意外と反応が悪いな。もっと喜ぶものと思っていたのだが」
ラニは、呆然と立ち尽くすコガネを前に、不満そうに告げた。
コガネは、何とか文章を形成し、喉を通らせ、吐き出した。
「…ラニ、何故ここに居る?ここは狭間の地ではない…一体どうして…」
「簡単な事だ、…お前を追って、私はここに来た。正確には、お前が持っている私の器を、だがな」
ラニの器、そしてコガネが持っている物。コガネは直ぐに思い至った。
”小さなラ二”だ。
あれはあくまでラ二の姿を模しただけのただの人形だが、それでもラ二が一時宿っていたのは事実。
冷たさは既に失われているが、僅かながらに残滓のようなものが残っていたのではないか?
コガネは一応の仮説を出したが、それでも何故ここに来れているかの説明とはならない。
コガネが考えていると、ラ二は、コガネが更に頭を抱える、驚くべき真実を告げた。
「…星と冷たい夜の旅。その途中、お前が突然に掻き消えたのだ。その様子だと…覚えてはないようだがな」
「…何だと…!?」
つまりは、今の己、そしてラ二は、”星の世紀”エンドの後の状態。ということである。
コガネ自身、最後に残っていた記憶も、”星の世紀”を回収した時の光景だった。
無関係とは…到底思えなかった。
その最中、置いてかれ気味となっていた皆が、漸くの想いで口を開いた。
「…何を、言っているの?アンタは、誰なのよ!?」
「…君が何者かは分からないけど、コガネちゃんは私たちの仲間だよ。何のつもりで現れたのかは知らないけど、出来れば帰ってもらえれば助かるんだけどな~?」
黒見セリカが、小鳥遊ホシノが、いつもとは全く異なる様子で、コガネを守ろうとする。
『皆さん、少し落ち着いて…!まずはあの人の目的を聞かないと…!』
「…もう、なんとなく分かりますけどね」
「…コガネを、連れ戻しに」
奥空アヤネが、十六夜ノノミが、砂狼シロコが、ラ二を睨む。
「…それもあるがな、対策委員会。実際の所はこれだけではない」
ラ二が、一旦コガネより視線を外し、対策委員会の皆に視線を移した。
「…私たちがこのままこの地に留まれば、いずれは必ず、この地は滅ぶであろう」
”…それは、どうして?”
ラ二は平然と、キヴォトスの終末を予言した。それに対し先生も、警戒をしつつ冷静に問う。
「…ほう、お前が先生か。私達と同じく、最近この地に訪れたと噂の。…良いだろう。教えてやる。
…”大いなる意思”に、目を付けられるからだ」
コガネは突然の知っている単語に驚き、目を見開く。
”それは…何なの?”
「…”大いなる意思”は、私達の故郷、狭間の地がおかしくなった元凶…のようなものだ。
黄金の流星を齎し、狭間の地を自らに都合の良い場に作り変えた…その際に用いた”エルデンリング”は、今は私たちに宿っている。…ここにいつまでも留まっていたら、奴に見つかり、この地は巻き添えとなるだろう」
…あまりの、真実。皆は、一時言葉を失った。
だがラ二は構わずに続ける。
「だからといって、直ぐにここからは立ち去れない。…それは、私達が、この世界の”律”…のようなものに縛られているからだ。…実際に、私の王の頭上に浮かぶソレ。そして、私の頭上にも…恐らく、浮かんでいるであろう。”ヘイロー”が」
コガネは、ゆっくりとラ二の頭上に視線を移した。先まで一切気が付いていなかったが…そこには、光の輪が浮かんでいた。
…生徒同士では、ヘイローの判別は出来ない。故に、コガネには他の者に浮かぶ輪と同じものにしか見えなかったが、確かにヘイローがあった。
「…この律より逃れるには、今の肉体より逃れる他ない。…即ち、”一時の死”が必要なのだ」
…死。
それは、キヴォトスにおいては、殆どの者から最も縁遠い概念。
そして、最も忌避される概念。
その場の、コガネとラ二以外の全ての生徒より、血の気が消える。
「…ちょ、ちょっと待ちなさいよ!…つまりそれって…」
『コガネちゃんを、殺す…って事ですか…!?』
改めて言葉に起こされると、実感が違った。
皆は焦りつつもコガネとラ二の間に入ると、全身を用いてコガネを庇った。
「させませんっ!そんなこと、絶対に!」
十六夜ノノミが叫んだ。その叫びに、ラ二は冷ややかに答える。
「安心しろ。あくまで一時の死だ。…私と同じように、新たな器を用意さえすれば、魂をそちらに移せる。…この地に留まることは、決してできないがな」
”…駄目だよ。それは。それだけは絶対に…!”
先生はコガネの傍に立った。
そして、すっかり小さくなった肩に、その手を置いた。
”大丈夫だよ。コガネが犠牲になる必要は絶対に無い。…そして、それは君もだよ”
先生はラ二を見据える。その目は、決意と覚悟に満ちていた。
「…正気か?今のお前達からすれば、私は敵以外の何者でも無いだろうに。…だが、関係はない。確かに私では、私の王と正面から戦ったとて、対等となった今の”私の王”には決して勝てぬだろう。だが…」
ラ二は、静かに降りて来た。
そして、手元に細身の杖を出現させた。
「お前達が相手ならば、私だけでも十分だ」
杖の先端の、三日月の意匠。その中心に埋め込まれた、氷の結晶を思わせる輝石が、冷気を帯びた。
対策委員会が武器を構え、対抗しようとした、その時。
「…もう、良い」
コガネが、静かに声を上げた。
「…もう良いって、何がいいのさ?」
「…もう、良いんだ。私は…ここでも、生きてはいけないらしい」
『何を、言ってるんですか…?』
「ラ二、私は大人しく、この命を…」
「いけません!!」
コガネがよろよろとラ二の方に向かおうとした所を、十六夜ノノミが止めた。
「止めないでくれ、ノノミ。…ラ二は、私に対して嘘を吐くような者ではない。それは私が一番知っている。
…私がこの世界に居ては…皆の世界が、滅ぶのだぞ?」
”いや、そんなことには絶対にさせないよ。…大丈夫。責任は全部、私が負うからね”
「…責任を先生が負う…?それこそ筋違いだ。私が、私のせいで世界が…皆の日常が終わるなど…!そんなことは決して!私は…許せないッ!」
…コガネは膝から崩れ、ただ慟哭した。
「コガネ…ちゃん」
「…コガネ…」
皆は初めてだった。コガネのこのような姿など。
…だが、実際にそうなのだ。
コガネは喋り方こそ褪せ人に引っ張られているが、その中身はあくまで、ただ一人の少女なのだった。
ラ二は、そんなコガネの様子を見て、悲しそうに目を細めてから、言った。
「…すまない。本当に、すまない。私の王よ。…だが、これしか、方法はないのだ…」
ラ二はコガネに歩み寄ろうとした。
だが、
BANG!
砂狼シロコが、ラ二を確かに狙い、弾丸を放った。
しかし、ラ二の体は弾丸が命中する直前にその体を霧となし、別の場所に再構成した。
霧の中より姿を現したラニは、忌々し気に砂狼シロコを睨む。
「…そうか。まずはお前たちを片付けねば、私の王は取り戻せないか。…ならッ!」
ラ二は杖の先端を輝きに沈めた。
そしてその輝きの奔流より、凍てつく冷気の礫が放たれた。
”輝石の氷塊”。
「!」
砂狼シロコはすんでで回避し、その勢いのままラ二を中心とした時計回りを描いた。
ダダダダダダッ!!
そのままアサルトライフルによる連射を浴びせるが、その悉くが先程のように回避された。
「当たらない…!」
「…言っただろう?お前達では、私には勝てない」
「加勢します!」
「コガネちゃんは渡さないよッ!」
「アンタなんかに、コガネを渡して溜まるもんですか!」
『支援します!』
対策委員会の他の皆が砂狼シロコに加勢する。
その全員に先生による”シッテムの箱”の指揮が齎され、基礎能力が上昇する。
…だが、その全てを嘲笑うかのように、攻撃が決して当たらない。
黒見セリカのアサルトライフルが、十六夜ノノミのガトリングが、小鳥遊ホシノのショットガンが、爆撃が、ドローンの射撃が、全てが、霧の中に溶けるのみ。
「なんで、当たんないのよ!?」
黒見セリカが叫ぶ。
…その問いに答えるならば、それはラニの特殊な性質に由来する。
彼女は現在、魂のみの存在である。故に俗世のあらゆる干渉を跳ねのけ、全ては無為に帰すのだ。
…このままでは、戦闘が一方的となるのは必然であった。
ラニは杖を薙ぎ、空に大きく陣を出現させた。
その陣より凍てつく霧が溢れ出し、ラニの姿を隠れさせる。
”氷の霧”。…その中、ラニは杖の先端より、異常に長い冷気の剣を生じた。
これは、ラニに敗れ、騎士となったとある竜が編み出した、冷たき剣。
”アデューラの月の剣”。
ラニが大きく振りぬくと、冷気の斬撃が霧を引き裂き、対策委員会に襲い掛かった。
「!みんな!私の後ろに!」
小鳥遊ホシノが普段とは異なる切羽詰まった様子で叫び、盾を構えた。皆は小鳥遊ホシノに従い、小鳥遊ホシノの後ろに下がる。
…瞬間、冷気の斬撃と小鳥遊ホシノの盾が、凄まじき音を立て激突する。
ギャリギャリギャリギャギャギャ!!!
斬撃が甲高い音色を響かせつつ、防御を削る。
が、小鳥遊ホシノの盾もまた、尋常ならざる耐久性を持つ、もはやオーパーツとも呼べる代物である。
最終的にその衝撃を殺しきり、斬撃が霧散した。
「はぁ…はあっ…!」
「ホシノ先輩ッ!大丈夫…?」
小鳥遊ホシノは膝を着き、明らかなる疲労が伺えた。
黒見セリカが心配から駆け寄るが、小鳥遊ホシノは直ぐに持ち直し、立ち上がった。
「…だい、じょうぶ!それよりもみんな、警戒を怠らないで!何か打開案を考えないと…!」
…対策委員会の皆が奮闘する中、コガネは一人、茫然とその場を眺めていた。
「…私は、どうすれば」
この設定を明かすためにここまで書き続けてきたまであるかもしれない…。
…アッ、pixivはこちらになります…。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29428737