注意点ですが、今作のラニ(に限らずオリキャラ以外のキャラ達)は俺の「こうあって欲しいナァ…」って考えが根底にあります。ので、「ラニはこんな事言わねぇよカス」って思うことがあっても、ご容赦いただけると幸いです。
…その奔流は、確かにラニに直撃した。
「ぐッ…ァ!?」
ラニは大きく弾き飛ばされ、壁に激突…だが、それ自体はダメージとはなっていないようだ。
…この世界に来て、ラニはヘイローを得た。
ラニはそれを好ましく思っていなかったが、確かに恩恵を受けており、素の耐久性も大きく上昇している。
故に、その一撃では到底、死するには至らなかった。
…それでも、大ダメージであることに変わりは無い。
目立った欠損こそないが、それでも、ラニの人形体は今の一撃で酷く損傷を受けていた。
壁に叩き着けられ、地に伏せていたラニは、ずるずると起き上がり…
奔流の根本を見据えた。
「…私の、王。何故…」
目は見開かれ、手足が震えていた。
ラニは、コガネが己を攻撃するなど、到底考えていなかった。
…確かに、ラニはコガネを、信頼していたのだ。
それでもコガネに対策委員会の始末を頼まなかったのは…
…コガネを守ろうとするが故、であったのかもしれない。
コガネはUIを開き、装備を切り替え…アビドスの制服を着た。
「…すまない。ラニよ。お前の要望に応えることは、やはり出来ない」
…目を泣き腫らし、目尻が赤みがかったその目を、覚悟に染めて。
コガネは、ラニを見据えた。
「私はもう、ここの皆を”大切”に思ってしまった。…これは、お前を裏切る行為だ。
…本当に、すまない」
…ラニは口元を引き結んだ。
「…それならば、余計何故、拒んだ」
声の震えは、怒りが故か。それとも…。
「…私たちがここに居るままでは、お前の…た、いせつも…!皆、失われるのだぞ…!」
…ラニの声は、本編では聞いたことがない程、感情を表に出していた。
「…そうだな。先までの私も、そう思っていた…だが、思い直した」
コガネは、先の奔流の衝撃がまだ落ち着いていないのか、未だに茫然としている先生を見た。
先生は茫然としつつもその視線に気が付き、慌てた様に気を持ち直す。
「先生は…私に、信じても良いと、確かにそう言ってくれた。それに…」
コガネは、ラニの元にゆっくりと歩き出した。
ただ、その言葉を届けるために。
「…来るなあッ!お、まえなど…!もう…私の王では…ない!」
…コガネは一度、自分でやったことは無いが、ラ二のイベントの最終盤でラニを攻撃した場合の動画を見ていた。
その時でさえ、ここまで声を荒げては決してなかった。
ラニの手元には杖はない。
先の衝撃により弾き飛ばされて、手を伸ばしても届かない距離に落ちている。
…だが、構うことなく、魔術を放つ。
触媒を無くして放たれた氷の礫は、以前とは比べ物にもならぬ程威力が落ち込んでいた。
…礫がコガネの肩にぶつかり、淡く砕け散る。
それに構うことは無く、コガネは悠々と歩を進める。
ラ二が魔術にて足掻くが、その全ては有効とは決してならず、ついに眼前まで迫ることを許してしまった。
コガネがラニを見下ろし、ラ二が見上げる形。
「…あぁ…」
ラニは人形の体故、涙は決して流れない。
だが…左頬に走った亀裂は、コガネにはその時、涙に見えて…。
思わずコガネは屈みこみ、指で拭った。
「…何のつもりだ?今更、私を捨てたというのに…」
「私が…お前を捨てた?それこそあり得ない」
「違う。お前は…私を捨てたのだ…!」
「…だから、違う。私は、お前も、対策委員会の皆も、両方を取るためにここまで来た」
「どういう…」
…コガネは、先の言葉の続きを、やっと口にする。
「私は、お前の王だ。誰が、何と言おうと、な。…お前の障壁は全て、私が取り除こう。かの意思が相手であろうと…私は負けぬよ」
考えてみれば簡単な事であった。
”大いなる意思”だろうと、何であろうと、己が勝てば、済む話なのだ。
限界まで追求した自機。磨き上げたプレイスキル。
以前の世界では、それらは結局自己満足としかならなかった。
…だが、ここでは違う。
漸く手に入れた守りたいもの。それらを守るために、その力が役に立つ。
…これ以上の幸福はなかった。
ラニは目を見開き、細々と零す。
「そんなことが…出来るはず…いや、だが…お前なら…」
「ああ。何のために王があると思っている。…神たるお前の敵を、悉く排除するためだ」
…コガネは立ち上がり、ラニに向けて、手を差し出した。
「さぁ、共に行こう。…我が神よ」
それは、嘗てラニがコガネにしたのと、同じように。
その、差し伸べられた手を、数秒ラニは凝視し、そして…溜息を吐いた。
「…はぁ…。…フフッ、お前は最初からそうだったな」
「…何がだ?」
「いやな、お前が私の塔に来た時、私はお前を、私の暗き道より遠ざけようと、わざとあのような誘いをしたのだが…お前はあの誘いに乗った。
…お前が奇人であるという事は、その時からとうに分かっていたつもりだったのだが…フフッ、お前の奇人ぶりは、想像以上だな」
…ラニは、その青白い顔を、僅かに綻ばせた。
「…そうなのか?私からしたら、この上なく魅力的な提案に聞こえたのだが」
「だろうな。…奇人のお前が、あの提案を受け入れるのは、今思えば当然だったな…」
ラニの左頬の亀裂は、もう既に、涙跡には見えなかった。
「…私を、期待させてしまったのだ。我が王よ。…今回は大目に見てやるが、もう、期待を裏切ってくれるなよ」
ラニは、伸べられた手に、二つの己の手を重ねた。
「分かっている。我が神よ」
コガネは、ラニを引き上げた。
そこに。
”おーい!”
先生が笑顔で、腕を振り、走り寄ってくる。
”終わったんだよ…ね?”
「ああ、貴公のお陰でな。感謝するよ、先生。貴公の激励が無ければこうはいかなかっただろう」
コガネは思ったことをそのまま感謝の意として伝えた。
”うん、役に立ったみたいで、私も嬉しいよ”
先生は、コガネの後ろに隠れたラニを見た。
「…なんだ」
”えっと、ラニ、で良いんだよね?”
「…そうだが」
”…困ったことがあったら、いつでも私を頼ってくれていいからね”
先生は、少し屈んで、ラニに視線を合わせて言った。
「…ふん、無用だ。私には既に王が居る」
”そっか…じゃあ、コガネも、困ったことがあったら…”
「ああ、言われずとも、そうするつもりだとも」
コガネが言えば、先生は顔を綻ばせた。
…その背後には、ラニとの激戦によりボロボロとなった対策委員会の皆が、地面に転がりながらその光景を見ていた。
「…良くわからないけど、終わった…のよね?」
体力を使い果たし、起き上がれない黒見セリカが、誰に聞くでもなく、確認した。
「うへ~…そうみたいだねー。…それにしてもコガネちゃん、あんな可愛い子を囲ってたなんて、意外と隅に置けないなぁ」
今回の戦闘において、最も活躍したとも言える小鳥遊ホシノが、場を和ませた。
「そ、そこなの…?でもまぁ、確かに、意外ではあったかも…」
「ん~?何々、セリカちゃん、もしかして妬いてる~?」
「はぁ!?そ、そんなわけないじゃん!」
「ん、露骨な反応」
大の字になり寝転ぶ砂狼シロコが、揶揄うように言った。
「…ふふ。コガネちゃーん!!すみません、私達、動けそうにないので、少し手伝ってくれませんか~☆?」
十六夜ノノミは、今の日常を心底楽しむように言った。
『皆さん、本当にお疲れ様でした…コガネさん、すみませんが、よろしく頼めますか?』
奥空アヤネはいつも通り、くたびれた様子で言った。
”みんな、お疲れ様”
「ああ、分かった…貴公ら、相当手ひどくやられたな…ラ二よ、もう少し手加減してやっても…」
「…ふん、良くもお前が言えたな。私に対しては、一切の加減をしていなかったというのに」
「す、すまない…あの時は、その、本当に私の攻撃がお前に通じるか分からなかったから、出来るだけ強化を重ねて少しでも可能性を上げようと…」
「…フフッ、なんだ、お前の武器が神をも殺すことを考えれば、私を傷つける事ぐらい容易に想像できたと思うが?」
「…確かに、そうであったな…」
「だが、それも今となってはどうでもいいことだ。…そも、アレが無ければ、私は止まっていなかったであろうからな」
「…だが…」
「…あぁ、分かったから、私の王よ。そんなに悲しそうな顔をするな…」
ラニが、コガネの手を握った。
「え、なに。なんで手伝ってもらうって話だったのに、目の前でイチャついてるところを見せつけられてるの!?」
「う、うへぇ~…これ、ホントのやつだよ~…おじさんにはちょっと刺激が強すぎるな~…」
「す、すまない…すぐに助けよう。ほら、掴まりたまえ」
コガネはまず、黒見セリカに手を差し伸べた。…その様子を、不愉快そうに見る者が一人。
というより、無論ラニだが。
「…」
「あ、あの~…嫉妬するのは分かるんですけど、出来れば早く起こして欲しいな~って…」
苦笑いしながら言う十六夜ノノミの手を、ラニは話途中で少々乱暴に掴み、引き上げた。
「…ほら、これで満足か?」
「はい、ありがとうございます…。意外と力あるんですね…」
「ああ、そうだが?それとも何か?私に力が無いように見えたか?」
ラニは、敵意を隠そうともせず、あからさまに刺がある言い方で言った。
その後ろから…。
「ん、こっちも嫉妬してる。分かりやすい」
「…黙っていろ、犬耳」
言いながらも、ラニは砂狼シロコに手を差し伸べた。
その手を掴み、立ち上がりながら砂狼シロコは言った。
「…ありがとう。でも、私は、犬じゃなくて狼」
「…そうか、狼、か」
ラニは、僅かに目を細めた。
「どうしたの?」
ラニは砂狼シロコの耳を見ながら言う。
「いや…なんでもない、少し…昔を思い出しただけだ」
何も言わずに、たった今残りを助け起こしたコガネの元に歩き出した。
コガネ「勝てば良かろうなのだアアアアァァ!!!」
ラニ「我が王♡」
なんか知らんけどラニの被弾ボイスを何回も書き直してました。
具体的には
「”がッ…ァ!?”…違う、ラニはこんな汚く喘がない。
”なッッ!?!?”…違う、もっと喘いで欲しい…()」
って感じのをめっちゃやってました。
喘ぐ:苦しそうに、せわしく呼吸する。息を切らす。重圧や貧困などに苦しみ悩む。(https://kotobank.jp/word/%E5%96%98%E3%81%90-422122より)
…アッ、pixivはこちらになります…。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29438740