黄金のアーカイブ   作:寿司神 寿司丸

13 / 13
13話です。
注意点ですが、今作のラニ(に限らずオリキャラ以外のキャラ達)は俺の「こうあって欲しいナァ…」って考えが根底にあります。ので、「ラニはこんな事言わねぇよカス」って思うことがあっても、ご容赦いただけると幸いです。


『神と王、そして帰還』

…その奔流は、確かにラニに直撃した。

 

「ぐッ…ァ!?」

 

ラニは大きく弾き飛ばされ、壁に激突…だが、それ自体はダメージとはなっていないようだ。

 

…この世界に来て、ラニはヘイローを得た。

 

ラニはそれを好ましく思っていなかったが、確かに恩恵を受けており、素の耐久性も大きく上昇している。

 

故に、その一撃では到底、死するには至らなかった。

 

…それでも、大ダメージであることに変わりは無い。

 

目立った欠損こそないが、それでも、ラニの人形体は今の一撃で酷く損傷を受けていた。

 

壁に叩き着けられ、地に伏せていたラニは、ずるずると起き上がり…

 

奔流の根本を見据えた。

 

「…私の、王。何故…」

 

目は見開かれ、手足が震えていた。

ラニは、コガネが己を攻撃するなど、到底考えていなかった。

…確かに、ラニはコガネを、信頼していたのだ。

 

それでもコガネに対策委員会の始末を頼まなかったのは…

…コガネを守ろうとするが故、であったのかもしれない。

 

コガネはUIを開き、装備を切り替え…アビドスの制服を着た。

 

「…すまない。ラニよ。お前の要望に応えることは、やはり出来ない」

 

…目を泣き腫らし、目尻が赤みがかったその目を、覚悟に染めて。

 

コガネは、ラニを見据えた。

 

「私はもう、ここの皆を”大切”に思ってしまった。…これは、お前を裏切る行為だ。

…本当に、すまない」

 

…ラニは口元を引き結んだ。

 

「…それならば、余計何故、拒んだ」

 

声の震えは、怒りが故か。それとも…。

 

「…私たちがここに居るままでは、お前の…た、いせつも…!皆、失われるのだぞ…!」

 

…ラニの声は、本編では聞いたことがない程、感情を表に出していた。

 

「…そうだな。先までの私も、そう思っていた…だが、思い直した」

 

コガネは、先の奔流の衝撃がまだ落ち着いていないのか、未だに茫然としている先生を見た。

先生は茫然としつつもその視線に気が付き、慌てた様に気を持ち直す。

 

「先生は…私に、信じても良いと、確かにそう言ってくれた。それに…」

 

コガネは、ラニの元にゆっくりと歩き出した。

ただ、その言葉を届けるために。

 

「…来るなあッ!お、まえなど…!もう…私の王では…ない!」

 

…コガネは一度、自分でやったことは無いが、ラ二のイベントの最終盤でラニを攻撃した場合の動画を見ていた。

その時でさえ、ここまで声を荒げては決してなかった。

 

ラニの手元には杖はない。

先の衝撃により弾き飛ばされて、手を伸ばしても届かない距離に落ちている。

…だが、構うことなく、魔術を放つ。

触媒を無くして放たれた氷の礫は、以前とは比べ物にもならぬ程威力が落ち込んでいた。

 

…礫がコガネの肩にぶつかり、淡く砕け散る。

それに構うことは無く、コガネは悠々と歩を進める。

ラ二が魔術にて足掻くが、その全ては有効とは決してならず、ついに眼前まで迫ることを許してしまった。

コガネがラニを見下ろし、ラ二が見上げる形。

 

「…あぁ…」

 

ラニは人形の体故、涙は決して流れない。

だが…左頬に走った亀裂は、コガネにはその時、涙に見えて…。

思わずコガネは屈みこみ、指で拭った。

 

「…何のつもりだ?今更、私を捨てたというのに…」

 

「私が…お前を捨てた?それこそあり得ない」

 

「違う。お前は…私を捨てたのだ…!」

 

「…だから、違う。私は、お前も、対策委員会の皆も、両方を取るためにここまで来た」

 

「どういう…」

 

…コガネは、先の言葉の続きを、やっと口にする。

 

「私は、お前の王だ。誰が、何と言おうと、な。…お前の障壁は全て、私が取り除こう。かの意思が相手であろうと…私は負けぬよ」

 

考えてみれば簡単な事であった。

 

”大いなる意思”だろうと、何であろうと、己が勝てば、済む話なのだ。

限界まで追求した自機。磨き上げたプレイスキル。

以前の世界では、それらは結局自己満足としかならなかった。

 

…だが、ここでは違う。

漸く手に入れた守りたいもの。それらを守るために、その力が役に立つ。

 

…これ以上の幸福はなかった。

 

ラニは目を見開き、細々と零す。

 

「そんなことが…出来るはず…いや、だが…お前なら…」

 

「ああ。何のために王があると思っている。…神たるお前の敵を、悉く排除するためだ」

 

…コガネは立ち上がり、ラニに向けて、手を差し出した。

 

「さぁ、共に行こう。…我が神よ」

 

それは、嘗てラニがコガネにしたのと、同じように。

 

その、差し伸べられた手を、数秒ラニは凝視し、そして…溜息を吐いた。

 

「…はぁ…。…フフッ、お前は最初からそうだったな」

 

「…何がだ?」

 

「いやな、お前が私の塔に来た時、私はお前を、私の暗き道より遠ざけようと、わざとあのような誘いをしたのだが…お前はあの誘いに乗った。

…お前が奇人であるという事は、その時からとうに分かっていたつもりだったのだが…フフッ、お前の奇人ぶりは、想像以上だな」

 

…ラニは、その青白い顔を、僅かに綻ばせた。

 

「…そうなのか?私からしたら、この上なく魅力的な提案に聞こえたのだが」

 

「だろうな。…奇人のお前が、あの提案を受け入れるのは、今思えば当然だったな…」

 

ラニの左頬の亀裂は、もう既に、涙跡には見えなかった。

 

「…私を、期待させてしまったのだ。我が王よ。…今回は大目に見てやるが、もう、期待を裏切ってくれるなよ」

 

ラニは、伸べられた手に、二つの己の手を重ねた。

 

「分かっている。我が神よ」

 

コガネは、ラニを引き上げた。

 

そこに。

 

”おーい!”

 

先生が笑顔で、腕を振り、走り寄ってくる。

 

”終わったんだよ…ね?”

 

「ああ、貴公のお陰でな。感謝するよ、先生。貴公の激励が無ければこうはいかなかっただろう」

 

コガネは思ったことをそのまま感謝の意として伝えた。

 

”うん、役に立ったみたいで、私も嬉しいよ”

 

先生は、コガネの後ろに隠れたラニを見た。

 

「…なんだ」

 

”えっと、ラニ、で良いんだよね?”

 

「…そうだが」

 

”…困ったことがあったら、いつでも私を頼ってくれていいからね”

 

先生は、少し屈んで、ラニに視線を合わせて言った。

 

「…ふん、無用だ。私には既に王が居る」

 

”そっか…じゃあ、コガネも、困ったことがあったら…”

 

「ああ、言われずとも、そうするつもりだとも」

 

コガネが言えば、先生は顔を綻ばせた。

 

 

 

…その背後には、ラニとの激戦によりボロボロとなった対策委員会の皆が、地面に転がりながらその光景を見ていた。

 

「…良くわからないけど、終わった…のよね?」

 

体力を使い果たし、起き上がれない黒見セリカが、誰に聞くでもなく、確認した。

 

「うへ~…そうみたいだねー。…それにしてもコガネちゃん、あんな可愛い子を囲ってたなんて、意外と隅に置けないなぁ」

 

今回の戦闘において、最も活躍したとも言える小鳥遊ホシノが、場を和ませた。

 

「そ、そこなの…?でもまぁ、確かに、意外ではあったかも…」

 

「ん~?何々、セリカちゃん、もしかして妬いてる~?」

 

「はぁ!?そ、そんなわけないじゃん!」

 

「ん、露骨な反応」

 

大の字になり寝転ぶ砂狼シロコが、揶揄うように言った。

 

「…ふふ。コガネちゃーん!!すみません、私達、動けそうにないので、少し手伝ってくれませんか~☆?」

 

十六夜ノノミは、今の日常を心底楽しむように言った。

 

『皆さん、本当にお疲れ様でした…コガネさん、すみませんが、よろしく頼めますか?』

 

奥空アヤネはいつも通り、くたびれた様子で言った。

 

”みんな、お疲れ様”

 

「ああ、分かった…貴公ら、相当手ひどくやられたな…ラ二よ、もう少し手加減してやっても…」

 

「…ふん、良くもお前が言えたな。私に対しては、一切の加減をしていなかったというのに」

 

「す、すまない…あの時は、その、本当に私の攻撃がお前に通じるか分からなかったから、出来るだけ強化を重ねて少しでも可能性を上げようと…」

 

「…フフッ、なんだ、お前の武器が神をも殺すことを考えれば、私を傷つける事ぐらい容易に想像できたと思うが?」

 

「…確かに、そうであったな…」

 

「だが、それも今となってはどうでもいいことだ。…そも、アレが無ければ、私は止まっていなかったであろうからな」

 

「…だが…」

 

「…あぁ、分かったから、私の王よ。そんなに悲しそうな顔をするな…」

 

ラニが、コガネの手を握った。

 

「え、なに。なんで手伝ってもらうって話だったのに、目の前でイチャついてるところを見せつけられてるの!?」

 

「う、うへぇ~…これ、ホントのやつだよ~…おじさんにはちょっと刺激が強すぎるな~…」

 

「す、すまない…すぐに助けよう。ほら、掴まりたまえ」

 

コガネはまず、黒見セリカに手を差し伸べた。…その様子を、不愉快そうに見る者が一人。

というより、無論ラニだが。

 

「…」

 

「あ、あの~…嫉妬するのは分かるんですけど、出来れば早く起こして欲しいな~って…」

 

苦笑いしながら言う十六夜ノノミの手を、ラニは話途中で少々乱暴に掴み、引き上げた。

 

「…ほら、これで満足か?」

 

「はい、ありがとうございます…。意外と力あるんですね…」

 

「ああ、そうだが?それとも何か?私に力が無いように見えたか?」

 

ラニは、敵意を隠そうともせず、あからさまに刺がある言い方で言った。

 

その後ろから…。

 

「ん、こっちも嫉妬してる。分かりやすい」

 

「…黙っていろ、犬耳」

 

言いながらも、ラニは砂狼シロコに手を差し伸べた。

その手を掴み、立ち上がりながら砂狼シロコは言った。

 

「…ありがとう。でも、私は、犬じゃなくて狼」

 

「…そうか、狼、か」

 

ラニは、僅かに目を細めた。

 

「どうしたの?」

 

ラニは砂狼シロコの耳を見ながら言う。

 

「いや…なんでもない、少し…昔を思い出しただけだ」

 

何も言わずに、たった今残りを助け起こしたコガネの元に歩き出した。




コガネ「勝てば良かろうなのだアアアアァァ!!!」
ラニ「我が王♡」

なんか知らんけどラニの被弾ボイスを何回も書き直してました。
具体的には
「”がッ…ァ!?”…違う、ラニはこんな汚く喘がない。
”なッッ!?!?”…違う、もっと喘いで欲しい…()」
って感じのをめっちゃやってました。

喘ぐ:苦しそうに、せわしく呼吸する。息を切らす。重圧や貧困などに苦しみ悩む。(https://kotobank.jp/word/%E5%96%98%E3%81%90-422122より)

…アッ、pixivはこちらになります…。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29438740
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