投稿空いてすみません…!一応良い訳をすると、学校が忙しくて…ハイ…
砂が風に乗り、時折口や鼻に混じる。
その不快感に既に彼女たちは慣れていたため、普段ならばどうということは無かったが、傷ついた今の彼女達には、多少なりとも障りとなった。
その上、直射日光が容赦なく照り付ける。
…コガネ達は、漸くの想いでアビドス高等学校の校舎まで戻って来ていた。
約2時間ほど前。
コガネと先生を除く皆、全員ボロボロであり、故に先生は直ぐに移動に移るのは無謀であると判断し、そのため少しの休憩を挟んでから学校に帰還する判断をした。
その判断に反対する者はいなかったため、約10分程の休憩を取ることとなった。
日陰となりそうな場所を探し、奥空アヤネよりドローンで運ばれてきた補給品の中身であるシートを広げて、簡易的な休憩所をコガネと先生で作成した。
「…よし、これでいいだろう」
”ふぅ…うん、お疲れ様。…みんな、出来たよ!”
コガネは手をパンパンと鳴らし、砂を落とす。
先生は汗を拭いながら、近くに腰かける皆に声をかけた。
「うへぇ~お疲れ様、コガネちゃん~。先生も、ありがとねー」
「…うむ、流石私の王、仕事が速いな」
「休憩所を造る速さが王である事と関係があるとは思えんが…」
気の抜けた返事を返す小鳥遊ホシノと、もはや無条件にコガネを褒めちぎっているラニが同時に立ち上がり、他の皆もよろよろと続いた。
「ほ、ホシノ先輩…どうしてもうそんなに余裕なのよ…」
「ラニさんも、あんなに過ごそうなビームを受けていたのに、もう平気そうです…」
「ん…」
皆の疑問になるべく簡潔に纏めた上で答えるならば、それは一概に”強いから”である。
小鳥遊ホシノはご存知の通り”キヴォトス最高の神秘”であり、故に回復の速度も周りの殆どを上回る。
ラニは”月の王女”であり、魂のみの存在である。
人形の体の損傷はそのままだが、コガネの”神を殺す武器”により与えられた魂へのダメージは、既に大部分が癒えている。
…そもそもコガネに殺す気などなかった、というのも大きいが。
皆が腰を下ろした後、コガネの対面へと座ったラニに、コガネが話しかけた。
「…確認なのだが、最近のヘルメット団の襲撃…それはお前の仕業か?」
「…ああ、お前たちが来る前に、なるべく対策委員会とお前の力を削りたかったからな」
皆、なんとなく予想は出来ていたため、驚きは少ない。
ラニの以前の目的とも合致する…”コガネを殺す”という目的と。
ただ、どうしても分からなかったのが…
「一体どうやって、ヘルメット団を雇ったのだ?」
この世界に来たばかりの筈であるラニが、それこそ大企業によって雇われているカタカタヘルメット団を雇い直せるほどの金額を用意できる筈はない…そのような思いから、コガネは聞いた。
が、その思いは、全くもって予想とは異なる答えによって裏切られる。
「それがだな…実を言うと、私はこの世界で起業をしていてな」
「…そうか、この世界で起業…起業!?!?」
コガネは思わず、オウム返ししてしまう。
その様子に、ラニは面白そうに目を細め、口元を僅かに緩ませた。
壁に寄り掛かり、こちらの会話に耳だけは向けていたらしい黒見セリカが、がばっと身を起こした。
「え!?ラニって社長だったの!?」
…無理も無いだろう。
彼女らは少なくとも、ラニやコガネが別の世界から来たという事は何となくは把握している。
それも、会話の内容から鑑みるに、己らの世界程文明的な世界とは異なる世界。
何方かと言えば、それこそゲームなどの創作物でしか見ることのない、
ファンタジー的傾向のある世界だと思っていた。
そのように思っていた世界からの訪問者が、およそその世界観とはかけ離れているように思われる、言うなれば”現実的”な単語を言ったのだ。
そして、この驚きは他の者も同様のようであった。
先まで、十六夜ノノミの太腿の上で「うへ~、ノノミちゃんの膝枕だ~」などといった事を言いながら惚けていた小鳥遊ホシノも、
「社長か~…社長!?」
と、一瞬表情をキリとしたものにした後、驚きに変わった。
その小鳥遊ホシノを太腿に置きつつ頭を撫でていた十六夜ノノミは、一瞬こそ驚きを見せども、直ぐに表情が切り替わり、何時もの朗らかな笑顔となった。
「わぁ!ラニさん、社長さんなんですか~!?此方に来てまだ短いでしょうに…凄いですね☆」
コガネの考えていることも、或いはこれに類するものであった。
ラニは皆の反応を見て…特にコガネの反応を見て、嬉しそうにしている。
「ふふっ、良い反応をしてくれるな、私の王。皆も、そんなに意外だったのか?」
「あ、ああ…いや、どういう事だ…!?む…いや、言葉の通りなのだろうが…この世界に来てまだ僅かだろう!?」
少なくともコガネは、キヴォトスで目覚めてより、まだ一月程度。
その程度の期間で、そこまで大きな企業になれるとは到底思えなかった。
が、その予想はある意味では当たっていたらしい。
「…?私は既に半年は経っているが?」
…半年。確かにコガネにはそう聞こえた。が、それはあり得なかった。
以前ラニは、「コガネの後を追いキヴォトスに来た」の旨の発言を言っていた。
なれば、コガネよりも長い時間をキヴォトスにて過ごしているのは必然にあり得ない。
暫くの間思案していたので、ラニより声をかけられた。
「どうした?」
「…ラ二よ、お前は此方に来てから半年経っている…と言ったな?」
「…そうだが、それがなんだ?」
「私は、此方に来てから一か月しか経っていない」
「…何だと…?」
先程までコガネの反応を面白がっていたラニだったが、表情が瞬間に切り替わった。
そしてそれは、話を聞いていた周りも同様。
「え?つまりどういう事…?」
『約五か月もの時間差…?一体どういう…』
「…あり得ない。私は確かに、お前の後を追って此方に来た…」
そこまで聞いて、コガネはある仮説を考え付いた。
「…”私が目覚めるのが遅かった”…?」
…コガネは、気が付いたら砂嵐の中に立っていた。
コガネのキヴォトスでの記憶は、あれが始発となっている。
ラニがそれ以前よりキヴォトスに居たという事は、コガネの意識の始発が、コガネがキヴォトスに現れてより約五か月後に訪れたのだと考えれば…一応の辻褄は合う。
だが、それには大きな疑問も伴う。
そしてその疑問を、砂狼シロコが代弁する。
「コガネは…そんなに長い間寝ていた…?」
そう、約五か月間もの睡眠、或は意識の喪失…それは昏睡や遷延性意識障害などの深刻な状態に分類される。
この場の皆も、その単語こそ知らずとも、抱く感情は似たようなものであろう。
「…ッ!待て、それなら私にも心当たりがあるぞ」
何か思案を始めていたラニが、決に至ったのか突如に顔を上げ、その旨を伝える。
「私が此方に来て直ぐの頃、何故だか私の"器"の反応が全く無くなったのだ」
"器"…つまりは、"小さなラニ"の事である。
小さなラニはあくまでも、ラニが一時の間宿っていただけの、ラニを精巧に模した小さな人形。
だが、その残滓のようなものはまだ残ってらしく、ラニはそれを辿ることが出来るらしい。
「そして…今より丁度一月前、その反応が再び現れた」
一月前…つまりは、コガネが目覚めた辺りである。
『無関係…とは、とても思えませんね…』
唯一この場に居ない奥空アヤネが、己の見解、そして皆の総意でもあるそれを、改めて言葉に起こした。
コガネの意識の起点が、今より約1ヶ月。
そしてラニが小さなラニの反応を再度受け取ったのも、同じく、一ヶ月前。
偶然であるという線も捨て切れないが…憶測、抱かずにはいられなかった。
…と、補給品が入っていた箱に腰かけ、ここまでの会話を黙って聞いていた先生が、ここで口を開いた。
”うーん…みんな、そのことについて考えるのは、後でも良いんじゃないかな?今はあくまで休憩なんだし、真剣な話は後にでも…ってことで”
「…確かに、休憩の時間にこのようなことを考えていても仕方ないな。続きは、また後にでも行おう」
元々コガネは、ラニがヘルメット団を雇った方法についてだけ聞き出すつもりであったのだが、予想外にも話は広がり続けてしまった。
その内容がコガネとしても興味を引くものであったのは間違いないが、無理して休憩中に話すようなことでもない。また今度、話を切り出せば良いだろう。
と、コガネが会話の矛を収めたところで、次は、いつの間にか十六夜ノノミの太腿より起き上がっていた小鳥遊ホシノが、ラニに向き言った。
「そうだね~。それじゃ、おじさんからラニちゃんに質問があるんだけど…あぁ、今回はそこまで真面目な話じゃないと思うよ~」
「…ほう、お前から私に…なんだ?」
…結果から言えば、少なくともコガネからしてみたら、確かに小鳥遊ホシノの言う通り大した話でもなかった。
「ラニちゃんとコガネちゃんって…どういう関係なの…!?」
最後の方、やたらと語気が強くなっていた気がしたが、触れはしなかった。
「私と私の王が?…ふっ、わざわざ言う必要があるか?」
ラニは何故やら自慢げに笑い、コガネをチラリと見た。
「…まぁ、ラニが今も言った通りだが。私とラニは主従関係…いや、それも元か。…今は、”神と王”。もっと正確に言うなれば、”神とその伴侶”だ」
コガネが目を細めて言うと、唐突に周囲が静まり返った。
その変化にコガネが戸惑っていると、黒見セリカが何時もの如く大声を出した。
そしてそれは、奥空アヤネを含むこの場の者達の総意でもあっただろう…。
「アンタ達結婚してんの!?!?!?!?」
…驚きに目を見開き、そして頬が若干赤に染まっている。
周囲を見れば、どうやらそれは周りも同様であるという事を確認できた。
質問主である小鳥遊ホシノはなんとなく予想していたらしく、それでも紅潮している。
「う、うへぇ~…やっぱりだったかぁ~」
「け、結婚ですか…!?学生で!?こ、コガネちゃん…その…わ、わんぱくなんですね☆(?)」
”落ち着いて?ノノミ!なんか危なそうに聞こえるから!”
「ん…コガネ、思ったよりやる…」
「それも危なそうに聞こえるわよ!」
『み、皆さん落ち着いて下さい…!?』
静けさとは一転、何時もの喧騒が展開された。
ワイワイガヤガヤ…以前ならば、見えぬ壁一枚を介して見やるだけであったそれ。
…ある一時を境に、壁が降りてしまったそれ。
だが今は、壁などどこにもない。
一つ歩を踏み出せば、その中に平然と混ざることが出来る。
コガネは未だ自慢げに胸を張るラニを見やる。
「ラ二」
ラ二はコガネに声をかけられ、嬉しそうに振り返る。
「どうした?私の王よ」
「…悪くない連中であろう?」
「…」
ラニは笑みを穏やかなものとしつつ、喧騒を見やった。
「…そうだな。私の王が私のことなど忘れ、うつつを抜かすのも頷けるというものだ」
「す、すまなかった…」
コガネが慌てて頭を下げるのを見て、ラニは僅かに笑い、言った。
「ふふっ…冗談だ」
…余談であるが、エルデンリングプレイヤーならばご存じであろうが、自分以外にも使用できる回復手段はかなりある。
故に、本来であれば態々休憩の時間を用意などせずとも、それこそぬくもり石などを使用すれば、その時間を大幅に短縮できた。
コガネがその手を使わなかったのは、偏にラニと対策委員会の距離を縮める会話を、より自然に始めるための施策に過ぎない。
…そして、現在に移り、場面はアビドス高等学校へ。
時刻はすっかりと夕方となり、砂漠の凸凹とした輪郭を夕日が、真っ黒…そして赤へ、少しずつ変色させていた。
長時間に及ぶ移動、普段ならばなんの障りともならなかったが、休憩したとはいえ、積み重なったダメージは斯様に簡単には癒えない。
故にコガネとラニ、そして小鳥遊ホシノを除く一行はすっかり疲労困憊となっており、何故やら特にダメージを受けてもいなかった先生の疲労が最も大きかった。
漸く校門に辿り着き、殆どの者はその場で崩れ落ちた。
「や…やっと着いた…」
”ゼェ…ゼェ…み、みんな…お疲れ…”
「せ、先生が一番大変そうです~…!早く校舎に運びましょう!」
「それなら、私がおんぶしていく」
「うへぇ、シロコちゃんも相当キツイでしょ?おじさんが行くよ~」
「え、絵柄が凄まじいことになりそうだな…」
「私と戦っていた時とは大違いだな…。私達を除く外の人間が貧弱であるというのはこういうことか」
思い思いの会話の後、校舎の玄関がシャーっと開き、皆が見やると、そこには何やら…台車を複数台背後に待機させた奥空アヤネが居た。
「あ、あはは…皆さん、お疲れ様です」
彼女は苦笑気味に言った。
「あ、アヤネちゃん…!?何それ…?」
その”何それ”は当然、背後の台車群に向いている。
…まぁ、その時点でコガネには、なんならそれ以外の皆にも、その用途は何となく分かったのだが。
「ご…ごめん…人を乗せて運べそうなものがこれぐらいしか無くて…」
「…成程、これに乗せて運ぼうという事か」
皆の見解を、コガネが改めて言葉に起こした。
「ん、運ぶのにちょうど良さそうなのが来た」
「さぁ、先生!此方の台車に乗って下さい☆」
言いながら、十六夜ノノミは台車の一台をガラガラと音を立てながらコンクリート製の地面を滑らせた。
”ゼェ…ヒィ…あ、ありがとう…”
先生は台車に腰かけ、息を整え始めた。
「本当に拉致みたいになってる…」
「よーし!それならおじさんが先生を運んであげるよ~!」
小鳥遊ホシノは…何故やら袖をまくりながら言った。
”あ、あの~…ホシノ?何故袖をまくる必要が…”
「うへぇ、しっかり捕まっててね~?先生」
小鳥遊ホシノは台車のハンドルを握り…走り出した。
”うわああああぁあ!?!?!?”
ラニの回復速度が早い云々の話は完全捏造ですが、まぁあってもおかしくはないかなと思ってます。
…アッ、pixivはこちらになります…。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29464175