浮かんでしまったッ!アイディアがッ!
…窓から差し込む光を視界で捉え、朝の到来を直感した。
体を起こすと、見慣れぬ景色がコガネの視界を走った。
コガネは前夜のことを思い出す…。
確か…小鳥遊ホシノと遭遇し、アビドス高等学校の生徒となることになり、取り敢えず校舎に居てくれ、とのことでここで泊まることになった…のだったか。
コガネは先まで、空いた教室の一室で寝ていた。
外に出ようと思い、扉を開けると…。
「うわっ!?」
「…ん、出て来た」
「わあ、見事な装飾の鎧ですね☆」
「お、おはようございます」
「うへ、おはよう、コガネちゃん」
…対策委員会の面々が居た。
上から、黒見セリカ、砂狼シロコ、十六夜ノノミ、奥空アヤネ、そして小鳥遊ホシノである。
「貴公らは…」
「うへ~、ここ、アビドス高等学校のみんなだよ~。君にとっては…先輩にあたるかな~?」
「…ふむ、成程、先達方か。では、改めて…私は落葉コガネだ。ここアビドス高等学校に新たに転入する運びとなった。よろしく頼もう」
コガネは『恭しい一礼』と共に挨拶した。
「ど、どうも…私は黒見セリカ。一年生よ。…その、よろしく」
黒見セリカは動揺しつつも礼を返した。
「ん、砂狼シロコ。二年生。よろしく」
砂狼シロコはいつもと変わらぬ調子で挨拶を返す。
「初めまして、コガネちゃん!私は十六夜ノノミ、シロコちゃんと同じく二年生です☆」
十六夜ノノミが朗らかな調子で言った。
「こんにちは、コガネさん。私は奥空アヤネです。セリカちゃんと同じく一年生です」
奥空アヤネが、真面目な雰囲気で言った。
対策委員会の面々が居るということは…やはり、今の時間は対策委員会編第一章で正しいだろう。
…各々が、それぞれの挨拶を終えた時。
「…というか、みんな気になってるだろうから言うんだけど…」
そこで黒見セリカが口を開く。
「…アンタは…何者なの…?」
「ふむ、まぁ聞かれるだろうな。だが、ホシノには既にある程度教えたと思ったのだが…何も聞いていないのか?」
小鳥遊ホシノに視線が集中した。…中でも奥空アヤネの目の圧は凄まじかった。
「ホシノ先輩…?」
「うへぇ!?い、いやぁ~…皆にはサプライズみたいに紹介したかったっていうか~…」
コガネは考えた。
成程、先程廊下でこちらに向かっていたのは正にその最中だったという訳か。
「それにそもそも、そこまで多くのことはおじさんも教えてもらってないよ~…?」
「そうなんですか?なら、ここで改めて話してもらいましょう☆」
「うーむ…話すと言っても、以前ホシノに話したこと以上のことはそこまでないのだがな…?」
「いや、あるでしょ…。まず何よその鎧…」
「これか?これは死の力を宿した刃を振るう、黒き刃という者たちの…」
「…ちょ、ストップストップ!」
コガネの話している途中に突如黒見セリカが割り込んできた。少なからず驚かれるのはコガネも予想していたが。
「なんか…凄い物騒なこと聞こえた気がするんだけど…!?」
「ん…死の力…」
「うへ~、思った以上に厄介そうなのが出て来たねぇ…」
「…まぁ、彼女らが物騒なのは同意しよう。彼女ら程優れた戦闘集団を、私は知らない」
「ど、どうしてそんなものを着ているんですか…?」
「あぁ、黒き刃の装束は消音性に優れていてな、故に、敵に気取られることなく動き回ることが出来るのだ」
「ん、思ったよりも実用的な理由だった」
嘘である。確かに消音性に優れているのはかなりの利点だが、それ以上に見た目が好きだから身に着けている。
そして何より、”例の遺灰”との共闘感を演出できる、というのが大きい。
「そもそもホシノ先輩は、コガネから何を聞いたの?」
砂狼シロコが聞いた。
「いや~、本当にそこまで多くのことは教えてもらって無いんだけどね?確か、生と死の狭間の世界から来たとかって…」
「せ、生と死の狭間!?」
「コガネちゃんって生と死の狭間の状態なんですか…?」
十六夜ノノミが戸惑いを隠し切れずに言った。流石に今の説明ではそう捉えられては仕方もないだろう…。
「いや、私がそうという訳ではないのだが…そうだな、もう少し、狭間の地について詳しく説明するとしようか」
コガネが、その後に「場所を改めてもよろしいか?」と聞こうとした矢先。
タタタタタッ!!
「な、何!?」
「ッ!」
黒見セリカが、静かなるやり取りを切り裂く乾いたその音に驚き、砂狼シロコは警戒を始める。
「これは…」
「皆さん、大変です!武装集団がこちらに接近しています!恐らくカタカタヘルメット団です!」
「…これから新入生の話を聞こうとしてたってのに、空気の読めない子たちだねぇ」
コガネは突然の事に驚き、というより困惑を隠しきれなかったが、カタカタヘルメット団の仕業だと聞いて、場違いにも安心した。
というのも、その程度の戦力ならば、元々の対策委員会の面々だけでも事足りたであろうからだ。
「…失礼、今がどういった状況なのか、教えてもらってもよろしいか?」
「そ、その…少し厄介なお客様達が来た、という感じです…」
奥空アヤネは、何故かはぐらかすように言った。
「ん?アヤネちゃん、どうしてわざわざ隠す必要があるのぉ?」
「いや、来て早々に襲われてる学校なんて、良い印象を持つ方が少ないでしょ…」
唯一、同じく一年生である黒見セリカのみがその意図を理解できていたようで、そのまま伝えた。
…せっかく隠していたというのに、そのまま話すのはどうかと思うが。
「成程。ならば心配せずとも良い。私は荒事には慣れている。…なんなら、追い払うのに協力しても良いが、どうする?」
「そう?なら、手伝ってもらおうかな~。正直、おじさん達も資源が底をつきかけてるからね~」
「ほ、本当に良いんですか…?」
「あぁ。それに、ここはこれより私の居場所となる場所だ。居場所を守るのは、当然の事であろう?」
「はーい、それではコガネちゃんも一緒に行きましょう☆」
「ん、お手並み拝見」
「…というかコガネちゃん。銃は?」
…あくまで設定に忠実に、答えた。
「…?なんだ、それは?」
「…うへ~」
…コガネが対策委員会の面々と共に校舎外に出ると、そこには先日のヘルメットを被った集団…カタカタヘルメット団がこちらに向かって来ていた。
「アビドスゥ!今回こそは校舎を明け渡してもらうからな!覚悟しやがれ!」
「全く懲りないわね…!返り討ちにしてやるわ!」
黒見セリカが啖呵を切る中、小鳥遊ホシノはコガネを気にかけていた。
「うへぇ、コガネちゃん…武器はあるって言ってたけど…どこにあるのぉ…?」
コガネの手にはそのような物は握られていない。更に言えば、身に着けているわけでもないようだ。
他から見れば、武器の所在について気になるのは当然であろう。
「あぁ…そうだな、今回はこれを使うか」
…コガネが念じると、視界の大部分を覆う形でUIが表示され、コガネは”とある武器”を選択した。
「…うへぇ!?」
コガネの両手には、非常に重厚な、もはや”岩の塊”とも呼べる程の頭部を持った、槌が二振り、握られていた。
「…”巨人砕き”。巨人戦争の際に用いられた、対巨人用の武器だ」
以前は相当な焦りの中であったため考える暇も無かったが、生徒に物理的な傷を残す武器を使用するのはなるべく控えるべきだと、コガネは判断した。
故に、コガネが”脳筋ビルド”で最も多用していた武器にして、一撃で気絶可能であろう相当な威力、そして生傷を残さずに制圧可能な武器、として、”巨人砕き”を選択した。
流石に相応の手加減もするため、後遺症や傷を残すことは無い…筈である。
「えそれ何処から出て来たのよッ!?」
「何も無い所から出て来た…?」
「う、うへぇ…聞きたいことは山程あるけど、取り敢えず今は後にしようか~…」
黒見セリカ、砂狼シロコ、小鳥遊ホシノは三者三様の反応を示し…どうやら十六夜ノノミは驚きのあまり固まってしまったらしい。
それはどうやら敵方も同様のようで、騒めきがコガネまで届いてきた。
…実の所、コガネが巨人砕きを選択したのは、初披露での印象を強める意図、更に敵方の動揺を強める意図もあった。
ので、この反応は想定通りかつ、狙い通りでもある。
「…では、行こうか」
『は、はい!皆さん、戦闘開始して下さい!』
オペレーターを務める奥空アヤネが、通信越しに言ったことが、開戦の狼煙となった。
「な、何をしているお前達!攻撃しろ!」
リーダーらしき赤ヘルメットが叫び、敵は動揺しつつも陣形を組み、射撃を開始する。
「一人増えたからと言って、数的有利はこちらにある!数で押せ!」
「…ふむ、正しい判断だな。確かに数的有利不利程、戦況を左右する事柄もないだろう」
「褒めてる場合じゃないでしょ!?」
すんでのところで遮蔽に隠れ、被弾を免れた。
対策委員会の面々と共に、射撃から隠れる。
…皆の顔を見ると、皆余裕の少ない表情をしており…どうやら本当に物資は限界寸前らしい。
ということならば、とコガネが口を開いた。
「…みんな、私に作戦があるのだが」
皆の視線がコガネに向いた。
「何?作戦って…」
「いや、実はそこまで大層なものでもないのだがな…」
…コガネは口角を僅かに上げると、手元に”淡く発光する鈴”を出現させた。
「…増えたのは、決して一人だけではない」
チリーーーン…
…コガネが鈴を鳴らすと、”三匹の透き通った狼”が現れた。
”遺灰・はぐれ狼”
「今度は何…犬!?」
「犬ではない、狼だ」
「ん、ライバル」
「うへぇ…もう驚かないよー…」
「わぁ!可愛いですねー☆」
十六夜ノノミが一匹を撫で始めようとしたので、早めに指示を出す。
「…行け。素早さで攪乱せよ!」
三匹が遮蔽より飛び出し、弾丸を避けつつ陣形に飛び込んだ。
「うわっ!?なんだこいつ等!?」
「犬!?う、撃てねぇ!」
…遺灰。強い未練や呪い、または何らかの理由により還樹の理より外れた魂が宿った灰。
それらは”霊喚びの鈴”によって霊体として呼び出され、かつての戦いや生前の記憶、生業を思い出す。
はぐれ狼の遺灰は何より、その素早さと手数、三体召喚出来るというのが強みである。
それらに加え、相手は生徒のため、もしかしたら犬(狼だが)を撃てない者が居る可能性も考えたが…どうやら上手く嵌ったらしい。
「今だ!行くぞ!」
コガネが遮蔽より飛び出したことで、対策委員会も後に続いた。
コガネは、はぐれ狼により乱れた陣形の中心に向かい、跳んだ。
「ふんッ!」
「な、あァッ!?」
二本の巨人砕きを同時に地面に振り下ろした。
脳筋ビルドの十八番、ジャンプ攻撃である。
その衝撃には凄まじいものがあり、直撃させずとも衝撃波のみで付近に居た敵を吹き飛ばし、転がすに至る。
「…次、はぁッ!」
腰を低く構え、二本を横に振り回す。
それは、敵が咄嗟に間に挟んだであろう銃を容易に粉砕し、そのまま吹き飛ばした。
「す、凄い…」
「ん、負けてられない!」
後から続いた黒見セリカ、砂狼シロコが円を描くように射撃を回避しつつ、確実に着弾させていく。
「クソッ!やられっぱなしじゃ…い゛っ!?」
「させません!」
ガガガガガガガガガッ!!
十六夜ノノミのガトリング、その銃口が火を噴き、集団を蹂躙した。
「クッ!?ま、まだ…ダァッ!?」
…最後の一人となったリーダーはなおも諦めずに武器を持っていたが、音を消し背後より忍び寄ったコガネに気が付かなかった。
…黒き刃の鎧、音を立てぬスケイルアーマー。
それを着込みつつ敵の背後より忍び寄り、数多の敵を、この攻撃にて屠ったものだ。
リーダーの背を打ち、体勢を崩させる。
…続く、二撃。
「がはっぁ!?」
”致命の一撃”
感覚任せに放ったそれは、容易に意識を刈り取った。
人数が一気に増えてそれに比例して書くのがもっと難しくなりました☆
ちなみにこの時のコガネちゃんは、爪のタリスマンを装着しており、ジャンプ攻撃の威力を高めていました。
…アッ、pixivはこちらになります…
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29369113