本業は絵を描くことだったはずなのに小説に全シフトしたせいで全く描けてません☆
「…みんな、お疲れー!」
カタカタヘルメット団を撃退し、コガネ達は元居た空き教室…ではなく、対策委員会の部室に集まっていた。
現在は、超簡易的な祝勝会のようなものの真っ最中である。
「いやぁ~、みんなすごかったねぇ~。おじさん、出る幕無かったよぉ」
「ん、コガネが出してくれた狼達のお陰で陣形が乱れてたから、攻撃しやすかった」
「本当にねー…いや、アレ本当に何だったのよ…」
黒見セリカより疑問が飛んできたので、正直に話した。
コガネは基本的にだが、狭間の地に関することを聞かれた際はなるべく正直に話すようにしている。
「ん?あぁ、あれは遺灰と言ってだな、霊が宿った灰なのだが、霊喚びの鈴を鳴らすことで一時私を主とし、霊体を召喚できるのだ」
「コガネさんって召喚とかできるんですか…!?」
「ま、まぁハンマーも召喚してましたからね…」
通信越しであった奥空アヤネが改めて驚き、十六夜ノノミはもはやそういうものとして受け入れようとしているようだった。
「うへぇ…霊、かぁ」
「…それよりも、です。コガネさん」
奥空アヤネの纏う雰囲気が変わり、コガネは身を引き締めた。
少なくとも気に障るようなことはしていないはずだが…と冷や汗の中思考したが、どうやらコガネの思うような内容ではなかったらしい。
「一先ず、今はコガネさんの入学手続きをしないといけません。それに、その他にもやることはたくさんありますが…」
「えぇ~?どうせ六人しかいないんだから、そんなこと気にしなくてもよくな~い?」
…コガネは安堵した。
グループの内の一人に嫌われ、爪弾きにされるなど考えたくもなかったからだ。
コガネはふと、何故自分がこの子たち相手にこのようなことを考えているのか、疑問に思ったが、深く考えないようにした。
「良くありません!そもそも、入学、転入の手続きを正式にしていないと、いざという時に連邦生徒会の扶助が受けられないんですよ!?」
「ありゃ?そうだっけ?」
「そうだっけじゃありません!」
…その後も奥空アヤネによる説教は続いた。
曰く、てめぇが言ってくれなかったせいで事前に必要な手続きが全く進んでねぇんだよ何だよサプライズって、だの、なんでてめぇ委員長なのにんな事も知らねぇんだよ殺すぞ、的な内容であった。
始めはのらりくらりと躱していた小鳥遊ホシノだったが、終わる頃には最初と比べるまでもなくげっそりとしていた…。
サプライズの件は完全にホシノが悪いので、此方から手出しすることは無いだろう…。
どうやら皆もその思考だったようで、苦笑いしつつ我関せずを貫くようだった。
…コガネの口の端は、僅かにだが上がっていた。
『嗚呼、良いなぁ。青春って』
…翌日、コガネの入学に必要な手続き類を完了させ、現在は体育館にて、コガネの学生証の写真を撮影する場面であった。
小鳥遊ホシノより、丁寧に畳み込まれた白基調の制服を手渡され、コガネが受け取る。
「んじゃ、改めて…。アビドス高等学校にようこそ、コガネちゃん」
小鳥遊ホシノが微笑みつつ言った。
小鳥遊ホシノを先頭に後ろに固まる対策委員会の面々も、コガネの入学を歓迎しているようだ。
「あぁ…これから、よろしく頼もう」
コガネが制服をしみじみと眺めていると、脳裏にある文章が浮かんできた。
アビドスの制服
アビドス高等学校の生徒が着用する制服。
アビドス高等学校の校章が備えられた白基調のシャツに水色のネクタイが特徴。
防具としては頼りないが、制服とは本来組織的な動きを助長する目的がある。
故に制服とは、つまりまったくそれでよいのだ。
白の中の水色は、砂漠の中の孤泉を彷彿とさせる。
この意匠はアビドスの砂漠化以前よりあったものであろうが、
今の彼女らにとっては或いは、希望の象徴となっているのだろうか。
「…__い、お~い、コガネちゃん?」
呼ぶ声が聞こえ、コガネは現実に意識を向け直す。
「あ、あぁ、すまない。少し感慨に浸っていてな…」
「うへ、そんなに嬉しかったぁ?それならおじさんも嬉しいなぁ」
…コガネは困惑しつつも、先の文章の”既視感”に意識を向けた。
あの文章は…エルデンリングに限らず、コガネがやり込んできた
恐らくだが、これすらも”エルデンリングのシステム”によるものだろう。
どうやらコガネは、この世界で何かしらの物を手に入れた際に、それを紹介するフレーバーテキストが脳裏に表示されるようだ。
「では、早速着替えるとしよう」
…一先ずの決に至ったコガネは、早速制服に着替えることにした。
その時、何故か黒見セリカがコガネに話しかけてきた。
「更衣室の場所、分からないでしょ?私が連れて行くわ。丁度忘れ物もあったし」
コガネは黒見セリカに道案内を頼むことにした。
「感謝する。…では、行ってくる。先に準備をしておいてくれ」
「はい!最高の会場を用意するので、任せてください☆」
「ちょ、ちょっと!ノノミ先輩…!」
…たかが学生証の写真撮影程度で、会場?
コガネは訝しんだが、特に追考すること無く、出入り口に向かい振り向いた。
「では、行こうか」
「う、うん。みんな…頼んだわよ…!」
黒見セリカの呟きは、しかしコガネの耳に入ること無く、体育館の広大な空間に溶けた。
そしてコガネは黒見セリカと共に、体育館の入り口を出て行った。
…時刻は未だ午後過ぎ辺り。
影と光の二色に染められた廊下を、二人は歩く。
…誰も話さず、ただ硬質の床に靴を踏み当て発生する音のみが、彼女らを包んでいた。
勘違いしないでいただきたいが、彼女らは決して仲が悪いわけではない。
かと言って、特別に良いわけでもない。
…つまるところ、互いに気まずいだけである。
黒見セリカはまだしも、コガネはお察しの所もあるやもしれないが、元より人付き合いが苦手である。
強制的に普段とは異なる口調となり、またそれに付随するロールプレイ感、予てより考えていた事が現実で可能な優越感。
これらが総合的に影響したことで、彼女はこの世界でも遜色のないほどに話せているように”見えているが”、その実態は未だ変わっておらぬのである。
が、黒見セリカは異なったようだ。
「あ、あのさ。…どうよ、この学校は!?」
黒見セリカは元より、新たな同級生とも呼べるコガネともっと距離を縮めるべく、この役回りを”立候補”したのだ。
このままではいけないと思い、静寂を切り裂くことに成功した。
対策委員会の面々のコミュニケーション能力は概ね、初対面の人物とも問題なく会話可能な程度にはなっており、それは黒見セリカも例外ではなかったのだ。
「ッ、あ、ああ。…みな、良い者達だ。私のような新参者であろうと、分け隔てなく接してくれる…」
完全に予想外という訳ではなかったし、期待していたことではあったが、コガネは一瞬目を丸くして、その後に、本音を吐露した。
コガネにとって彼女らは、未だに”創作の中の人物”という印象は拭え切っておらぬ。
が、実際に会い、話し、彼女らの体温を間近で感じた事すらある今は…その印象すら揺らいでいた。
故に既に、ただの創作物へ向けるにしては、些か異様ともいえるようなそれを、確かにコガネは抱きかけていた。
「…素晴らしい学校だな。ここは。皮肉、という訳ではないし、改善したいことなのは理解している上で言うが…私は今の雰囲気が大好きだよ」
…人が少ない、というのは、必然的に繋がりを生む。
人というのは、どんなに取り繕うとも、繋がりを求める生物である。
コガネとて、例に漏れない。
「ふぅん…ま、確かに分かる気がするわ。それ」
黒見セリカは少し前を歩きつつ、続ける。
「私たちは数は少ないけど、その分みんながみんなの事を想っていると思うし…あッやっぱり今のナシ!」
てっきりそのままいい雰囲気を保ってくれるものと思っていたコガネは、突然の変わりように再び目を丸くする。
「み、みんなの事が大好きってことじゃ…絶対に無いんだからねッ!?」
「…ッック…ククッッハハッ…!クハッハハハッ!!」
「なっ何がおかしいのよ!?」
突然の変わりように加え、急にあまりにも無理のある仮面を張り付けたことにより、コガネは耐え切れずに爆笑した。
「いやッすまないッククックッ…それでこそ貴公だなッ…ククッ…」
笑い混じりに放った良い訳とも取れぬそれは、黒見セリカの放った抗議の言の数々に溶けていった。
「じゃ、少ししたら戻ってくるわ。それまでに着替えておいて」
「ああ。分かった」
彼女らは更衣室に辿り着き、一時の別れを迎えた。
コガネは更衣室に入り、一瞬「…どうせ六人しか居ないのに、何故わざわざ更衣室で着替える必要が…?」と考えたが、深く考えることなく、受け入れることとした。
コガネはスケイルアーマーの一部にそれとなく触れてから、ようやく気が付いた。
「…これ、どうやって外すのだ…?」
鎧の着方、外し方。
そのようなものを、元はただの一般人であった彼女が知っているはずもなく、暫く途方に暮れる。
偶に鎧に触れ、ガチャガチャとどうこうしてみても、全く外れる気配はない。
…扉の向こうより足音が止まった。その後に黒見セリカの声で「開けていいー?」と聞こえて来た。
どうやら、コガネがもたもたしている間に、黒見セリカが帰ってきてしまったらしい。
「す、すまない…もう少し待ってくれないか?」
「鎧ってそんなにかかるものなのね…分かったわ。…あまり待たせないでよね!」
今まで構築してきたイメージが崩れてしまいそうで、慌てて拒否してしまったが、次の瞬間に浮かんだアイデアにより、その「しまった」は意味を霧散する事となる。
コガネはUIを表示させ、すぐ下に表示された項目に意識を向ける。
するとずらりと表示されたそれらの中より、一つを選択した。
次の瞬間には、その姿は切り替わっていた。
重厚であるつつも、どこかシャープで洗練された印象を与える黒いスケイルアーマーは消え、代わりにあったのは白いシャツ。
水色のネクタイまでもが完璧に装着され、一瞬にして姿を転じさせた。
コガネは次に、別の項目を選択し、同様の操作を行った。
すると、再び一瞬にしてその姿を転じさせた。
黒い光沢を纏うその足甲は消え、代わりに黒い下地に白い網目模様のスカート。
肌を多く出し、すらりと長い脚が露わとなった。
…正しく、アビドス高等学校の制服の姿となったのだ。
コガネは何故この方法を暫くの間思いつかなかったのか、何度目かも分からぬ失望を初日以来に初めて己に感じつつ、黒見セリカが待つ出入り口に歩いた。
「すまない、待たせた…なんだ?それは…」
黒見セリカは何やら、大きな箱を抱えていた。
特に文字が書いてあるわけではなく、中身が何かは現時点で推し量ることは出来なかった。
「さっきも言ったでしょ、忘れ物。…さ、行きましょ」
「ああ」
コガネは不審に思いながらも、幾度目かも分からぬ”深く考えない”を用い、黒見セリカに付いていった。
…ふと、黒見セリカが振り向き、言を零した。
「…ふーん…え、なんで手のヤツまだ付けてんの…?」
言われてから気が付いたが、コガネはまだ手甲を付けていた。
ここに来てから全く外していなかったので、よもや大した違和感とも感じていなかった。
「…まぁ、そうだな…何と言ったか…そう、”キャラ付け”のようなものだ」
イメージを崩したくなく、苦し紛れに言った事ではあるが、実際にキャラ付けとしてはかなりアリだとコガネは思っていた。
これより大半の時間は制服で過ごすことになるということに加え、ここアビドス高等学校では”モブ生徒枠”というポジションであることは許されない。
故に飾り気のない制服だけのままでは、少しばかり個性に欠ける…。少なくともコガネはそう考えていた。
そこに、キヴォトスにおいて二例の無い西洋風の手甲は…この上ない個性となる…これから更に趣向を凝らせば、もっと個性的な生徒となれるだろう。
コガネは近い未来の内にこのような結論となっていた。
「きゃ、キャラ付け!?アンタもそういう事考えるのね…ちょっと意外だわ…」
…結果として、イメージを崩したくないというコガネの思惑は失敗に終わったらしい…。
今日はなんかセリカ主体のお話になりました。
俺は対策委員会の中でセリカが一二番目ぐらいに大好きです…結局王道ツンデレが最強なんだよね…
アッ、pixivはこちらになります…
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29378631