さっき三話目にあったミスを修正しました。
明らかに「あ、これミスだな」ってやつあったら提示していただけると幸いです。
注意点なんですが、今回はかなり妄想が含まれます。ご容赦くださいィ…。
コガネは目の前の光景が信じられなかった。
だって…だって、私は、こんな事をされて良い人間ではない。
私は生きていてはいけない人間のハズなんだ…でなければ、”あのような仕打ち”を受けた道理が無い。
…だというのに。
「「「「「コガネ(ちゃん)(さん)!入学おめでとう!!」」」」」
コガネの遥か前方、体育館のステージ前。対策委員会の皆が、一人は後ろから、コガネを祝福していた。
昼間にも関わらず、体育館の照明が特段にコガネの視界の輝度を上げた。
それにより更に明確となった景色は、ステージ前にある、たどたどしいながらも暖かい…そのような飾り付けをされた一つのテーブルを中央に置いた。
「これは…?」
コガネの結ばれた口元より、零れ落ちるように言の葉が垂れた。
「これは、って、どう考えても歓迎パーティーでしょ」
茫然とするコガネの後ろより、ツンとした調子の声が聞こえた。
「…だれの…?」
「はぁ?アンタのに決まってるじゃん」
コガネは暫く何も言えなかった。
いくら、いくらこの子たちが優しくても、まだ出会ったばかりの私にここまで…?
コガネは何とか理由を考えようとした。
考えようとして…肩を突然に押され失敗した。
「は、早く行きなさいよ!」
黒見セリカのその口調は、コガネの記憶上にも刻み込まれた、あのツンデレ口調。
コガネは不器用ながらも、内に優しさを抱えたその口調が好きだった。
…コガネは歩き出した。
その際の”歩み”は何故やら、とても慣れぬ行動のようで、一歩一歩を確かめるように足元を見つつ歩いた。
気が付くと、コガネはテーブルの前に居た。
紙製の飾り、複数の机をテーブルクロスで無理矢理一つにまとめた、テーブル。
その上には六つに分けられた紙コップと、その大本と思われる紙コップの束。
各々で調達してきたのだろうと思われる、バラバラな飲み物と菓子類。
正に学校や家で行うような、パーティーテーブルであった。
コガネはテーブルの後ろで控える、対策委員会の面々に視線を向けた。
「一体何故…」
問う訳ではなく、ただ疑問が漏れた。
その疑問に小鳥遊ホシノが答えた。
「それ、聞いちゃう?いやねぇ、正直に言っちゃうと、このアビドスに新入生が来てくれるなんて…おじさん、予想してなくてねぇ…」
そこで小鳥遊ホシノは一度切り、奥空アヤネ、黒見セリカを順に見てから、続けた。
「今年二回目になっちゃうけど、コガネちゃんのために新入生歓迎パーティーをもう一度やろう!って思ってみんなに相談したら、どうやらみんなも同じように思ってたらしくてね~」
「今日のために、みんなで計画を練ってたんです☆」
「最終的には、お菓子とジュースをみんなで持ってきて、それを食べたり飲んだりしながらお喋りしましょう…という感じになりました。ノノミ先輩が持ってきたジュースの値段を聞いた時は驚きましたね…」
「ん、コガネには驚かされてばかりだったから、今日は驚かせられたみたいで、嬉しい」
…なんということだ。
コガネは皆の想いを聞いてから、一人、己の見当違いを恥じていた。
アビドスの皆は、優しいんだ。
ホシノの時もそうだったじゃないか。
私が彼女らに”捨てられないように…”、”嫌われないように”、行ってきた全ての意識や行動は、全くもって無駄であった。
己の権能の初披露の時は、そのインパクトを上げるため…”捨てるという選択肢を出させないように”わざと巨人砕きを選んだ。
狭間の地について聞かれたときは、なるべく”一目置かれるように”、全て正直に語った。
私がイメージを崩したくなかったのも…全てはこのためだ。
前のように見捨てられないため、己の価値を、己の異質さを、”得体の知れなさ”を証明しようとし続けていた。
…彼女らは、そのようなことをせずとも、きっと私を見捨てなかったであろう。
そのことに、コガネは気が付いた。
「…何よ、折角準備したんだから、もっと嬉しそうにしてもいいんじゃないの?」
黒見セリカが不満そうに、でも不安を滲ませながら言った。
言われて、コガネは自嘲の渦より、一旦の退避を成功させる。
その先に待っていたのは
「…」
「ちょ、ちょっと!?なんで泣くのよ!?」
…漸くの解放であった。
「す…まない、わた、私は…このような歓迎を受けた事が、無くて…嬉しかったのだ」
コガネは涙ながらにそう言った。
「う、うへぇ、そんなに喜ばれるとは思ってなかったなぁ…ま、取り敢えず座りなよ~」
小鳥遊ホシノが、コガネの背をさすりつつ、椅子の一つに座らせた。
コガネが、滲む視界を上げると、対策委員会の皆もどうやら席に着いたようだった。
「じゃあ、改めて…コガネちゃん、入学おめでと…」
「す、すみません!!緊急事態です!!」
突然に、奥空アヤネが叫んだ。
「カタカタヘルメット団が…類を見ない大勢で攻めて来ています!」
…その声は、静まった体育館に良く響いた。
黒見セリカがまず、その沈黙を破った。
「…なんで、今なのよ!?昨日来たばかりでしょ!?」
そう、カタカタヘルメット団が最後に襲撃に訪れ、最後に撃退したのは昨日。
今までの統計上ではあるが、カタカタヘルメット団は二日連続で襲撃に訪れることは滅多になかった。
コガネは知り得ないことではあるが、故に彼女らはそのタイミングを狙い、此度の歓迎パーティーを開催したのだが…。
「…アヤネ、今回の敵の数は?」
砂狼シロコは静かに、ただし確かな苛立ちを募らせて問うた。
その問いに対し、奥空アヤネは顔を青ざめさせて答えた。
「…普段の…三倍近く、百名は軽く超えています…」
「あいつら…!一体どこからそれだけ集めたっての…!?」
「…弾薬の残りも、もうほとんど無いってのに…」
先程までの雰囲気とは一転、状況はあまりに絶望的。
その落差は彼女たちの心に影を落とすのには十分であった。
…ただ一人を除いて。
「…私が行こう」
コガネは制服の袖を用い、目元に溜まった涙を乱暴に拭いた。
彼女の心は今、影などというものとは無縁であった。
彼女はただ、嬉しさの中に居た。
己を確かに受け入れてくれる場所、人達との出会い。
…もはや躊躇う理由など無かった。
「歓迎してやろう」
今回いつもよりボリューム少ないです…。
次回への布石だと考えていただければ…。
はい、という訳で思ったよりも過去が重そうなコガネちゃんでした。
コガネちゃんの過去については後程。
アッ、pixivはこちらになります…
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29391383