コミュ障最強剣士、すれ違いで追放され世界滅亡の危機なので幼馴染と一緒にみんなの誤解を解きます! 作:七福燈
「それで……まとめたぞ……」
アザヤカがあまり使い慣れていない部分の脳みそをフル回転させ、メモにあったことを全てまとめあげた。ワインはそれに対して「ああ」と返事をした。
「まず皿を二十枚割ったってのはパーティメンバーのやつが不審者に見られてたから手伝いを代わったら、嫌がらせでそいつに足を引っ掛けられたんだよな」
「そうだ」
「で、聖剣を質屋に預けたってのは…………」
この一件に関しては、ワインの常識の足りなさや素直すぎる性格が災いして起こったことだとアザヤカは感じていた。
ワインとアザヤカは、サンブライトという田舎の街で過ごしてきた人間だ。サンブライトにあるものといえば、畑と山とたまにドラゴンベビーベアである。ドラゴンベビーベアはとても恐ろしい、見つけたら死んだふりなどをせずに目を合わせながらゆっくり後ずさりして逃げよう。
閑話休題。ともかく、二人はそういったところの出身なのである。都会には全く慣れていない。普段泣かないワインでも、大都会の魔導停車場の地下に迷い込んだ時は「このまま永遠に地上に出られないのではないか」と泣きかけたくらいだ。
そんな彼だからか、質屋が質屋であることに最初気が付かなかったようだ。
『ここは沢山武器があるな……面白い武器屋だ』
『お、お客さん、それ……!! あんたが持っているの、相当すごい剣なんじゃないかい!?』
『ああ、凄い。これは仲間たちと見つけた素晴らしい剣だ』
真顔ながらも少し得意げに堂々と見せたワインを見て、悪徳な質屋の店員はワインがこの街の人間ではないとすぐに気がついた。
『お客さん……良かったらその剣、うちに預けてみないかい? これだけ珍しいから……ヒィ〜ヒッヒッ!! いや〜私も見られて嬉しくってねえ!!』
『預ける、とは預けるということか』
『ええ!! そういうことです!! もうその間、たっぷり可愛がりますから、ええ!!』
ワインはこの時、店を武器屋だと勘違いしていた。店員のことも、剣の手入れを申し出る心優しい親切な人だと思っていた。そして「可愛がる」と言われた時は、「なるほど、仲間のトスカ・ミュシャも武器を磨く時に可愛がると言っていたな」と考えていた。
『じゃあこちら、お預かりしている間の……まあ、保証金みたいなものですから!!』
『俺が君に預けるのに金を受け取る訳には』
『いやいやいや!! それじゃあこっちも商売になりませんから!! ほらほら、受け取って!!』
『そういえば預けるというのは具体的にどのくらいの期間』
ここまで言ったところで無理やり追い出され扉を閉められた。
そして後にそこが質屋だったと気がついたのである。
「…………お前、それはマジで完全に騙されてるからな」
「知らなかった、とても親切なように見えたから……」
「お前のそれマジでいつも信用できないんだよな」
ワインは基本的に他人を嫌わないため、人のことをよく「親切だ」と言う。困ったことに、いいように使われている時も、気づかないうちに嫌がらせをされている時も言う。
「あとお前も別にバカではねえんだから金受け取った時に気がつけって!!」
「流石にそこで何かがおかしいと思った。しかし、店員がだな……」
ワインが思い出す。
『ヒィ〜ヒッヒッヒッ……!! こんな珍しい剣、なかなか見られませんよぉ……!! 本当に……!! 本当に素晴らしい剣ですねぇ〜……!!』
「と、言いながらとても喜んでいたため彼は武器のファンなのかと思った」
「いやそれカモれて大喜びしてるだけだからな」
そして三つ目、作戦会議中に寝たという話についてアザヤカが尋ねた。
「いや作戦会議中に寝るのはマジでヤバいけどさ……お前、学舎の授業中とかで寝ていたこと一回もなかったよな?」
「無かった」
「なんか、そういうお前が作戦会議で寝るってあんま想像できねーんだけど……」
だが、この件についてだけは、ワインは詳しく語ろうとしなかった。
ワインがこうやって言おうとしない時、何か事情があるのだとアザヤカは知っていた。彼は、自分の悪い点を無理やり隠そうとする人間では無い。
「……これに関しては、やっぱ言えねえか?」
「話す場合は本人に了承を取りたい」
「本人に了承?」
「ああ」
その返事を聞いて、アザヤカはそれ以上問い詰めるのをやめた。やはり、なにか事情があるのだろうと確信したからだ。
そして、「こうだ」と一度決めたワインは良くも悪くも曲げないことが多い。反論を受け、それが納得のいく意見ならば自身の考えも変えることが多かったが、彼なりに譲れないものがあるようだ。
「……んじゃ今は聞かねえわ」
「ああ。ありがとう、アザヤカ」
「たださ、お前もこう……色々理由があんのにそれ言わねーで誤解されたまんまなの良くねえと思うぞ?」
そこで、ワインの目が見開かれた。
「なるほど、誤解されていたのか」
「そうじゃねえと追い出されねえってお前めちゃくちゃ強いんだし!! ……というか、マジでなんで言わなかったんだ!?」
ワインがその言葉に対して少し悩んだ様子を見せた後、アザヤカを見て言った。
「俺は、理由を話すと『それは言い訳だ』と言われることが多い。だからだ」
アザヤカは、その言葉でまた幼い頃のワインを思い出した。
『ワインくん!! なんで宿題忘れたの!? 今日中って言ったでしょ!!』
『おとうさんがお酒をこぼして宿題にかかってしまい、うつしなおしていたら遅れたからです』
『言い訳しないの!! 先にごめんなさいでしょ!! それに、先に言わないのもおかしいです!!』
『授業中はたち歩いてはいけないため、たち歩いて良い授業後にいおうとおもっていました』
『また言い訳!!』
……過去、学舎の先生とそんな会話をしていた。
こういったことは、この一回だけではなかった。幼い頃のワインはこのように「言い訳をするな」と怒られることが多かった。本人もなんとか学習しようとしたのか、理由を話す前に「ごめんなさい」と必ず言うようにした。だが、次は「何が悪いかわかってるのか」と返されていた。
そのため、彼は事実のみを言い、謝罪を求められたら謝罪を行うというスタイルになった。
「おそらく彼らは、俺の常識のない行動に怒っているのだろうと理解できた。だからこそ、言い訳と思われるようなことを言うのは避け事実のみを言うべきだと思った」
「……なんか色々わかったわ」
アザヤカは、ワインの不器用さを理解していた。そして、彼の素直さも理解していた。
「そういった経緯だ。聞いてくれてどうもありがとう、アザヤカ」
そして食事を終え、話してほしいと言われたことも一通り話したワインは、代金を置いて帰ろうとした。
「……あのさ!」
その腕を、アザヤカが掴んだ。
「お前さ、このまま誤解されたまんまでいいのかよ!?」
アザヤカは、ここまでの彼の話を聞いて感じたことがあった。
おそらくワインは、仲間のことはちゃんと大切だったのだろうと。
仲間のプライバシーを守るため、自分自身が行ったことについての理由を話さないこともあった。そして、剣を預けた時も「仲間たちと見つけた素晴らしい剣」と紹介をした。
だからこそ、アザヤカは世界が滅亡する危機を回避するという目的の前に、一人の友達として、ワインが本当にこのままで良いのかと考えていた。
ワインが目を細めた。
「…………」
「ワイン……」
「仲間は皆、常識を知らない俺に対して様々なことを教えてくれた。日常ですべきこと、礼儀など。そして俺のことを強いと褒め、妖魔の討伐に成功した時は喜んでくれた」
ワインは、あまり表情の変わらない人間だった。
「だからこそ、皆ともう冒険に行けないのは残念だと思っている」
しかし、今こうやって仲間のことを語っているときは……
少しだけ、寂しそうに見えていた。
少なくとも、アザヤカはそう感じていた。
「……だったら!!」
だからこそ、アザヤカは決意した。
「アタシが間に入って!! お前と元仲間のやつらを、一回ちゃんと話させるようにしてみるから!!」
アザヤカがワインの目を見た。
「お前も、ちゃんと話した上でもっかいパーティに戻れるか考えねーか!?」
ワインが、驚いてまた目を見開いた。
そして少しの間俯いたあと、アザヤカへと言った。
「…………もしも、できるのならば」
「皆と話して、もう一度仲間に入りたい」
ここでようやく、ワインが自分の意思を示した。
ワインはリーダーのカフカから「このパーティに居続けることは難しい」と言われ、それを受け入れた。
しかし、その事実を受け入れることと、「もう共に旅ができない」という悲しさまで受け入れられるかは別だった。ワインは、彼らとともに行動できなくなることを理解し、敢えて何でもないように振る舞っていた。
だがやはり、ワイン彼寂しく思っていたのだ。
感情表現が苦手で、言えなかっただけで。
「……だったら!!」
アザヤカが、赤メッシュの入った髪を揺らしてバンッ!! とワインの背中を叩いた。
「アタシとお前で、なんとかみんなの誤解を解いていくために作戦会議するぞ!!」
……こうして。
世界滅亡を回避し────大切な友達のすれ違いと誤解を解くための、アザヤカとワインの奇妙な冒険譚が、ここから始まることとなった。