君こそ一番わるいやつ   作:深紫Sιn姉

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04:バイブ(後編)

さて映画の席を予約した圭と天羽は、”なぜか”客がほとんどいない館内にて、ど真ん中の一番いい座席に腰掛けて、二人してポップコーンを頬張っていた。

 

「衣緒さん。この映画って怖いやつですよね……」

「そうだよー。もしどうしても怖かったら、一緒に途中退室しちゃおうかー」

「い、いえ! 衣緒さんが隣なら、大丈夫です」

「ふふふ、気づいたら隣に誰もいなかった——なーんてね?」

「……いじわるはしないでください」

 

それにしても休日の映画館だというのに周りにはほぼ人がいない。というか、黒服姿の怪しい人が何人も座っているが、本当の劇場はここだった?(名推理)

 

「いや、それにしても映画といったらポップコーン」

「美味しいです。キャラメル味」

「うんうん、この当たり外れのある感じがクセになるよねえ。まるで人生みたいだ」

「ハズレは……あまり引きたくないですけどね」

「いやいや、長く生きてきたけどハズレもあながち悪くないものだよ?」

「衣緒さん、まだ高校生ですよね?」

「実は千年前から生きてたりする!」

「はいはい、こわいこわい」

 

そんな感じで圭からあしらわれつつ、ジュース……ではなく緑茶をずずずーっと吸う。

 

「途中でトイレ行きたくなっちゃうかも」

「飲み過ぎは厳禁ですよ?」

「緑茶は利尿作用があるから仕方ないよ〜」

「漏らさないでくださいね」

「おお! 言うようになったあじゃないか圭ちゃん」

「ふふっ、お返しです」

 

ぶぶーん。

音ともに、ホール内が暗くなり広告が始まった。

 

 

□■□■□

 

 

「その……四宮はこういうところは初めてか?」

「はい……会長。正直に言って、チケットの買い方も存じ上げませんでした」

「ああ、それは問題ない。今回ので覚えただろうし、今の俺たちの任務は警戒観察だ。気を抜かないで……いや、今の時間くらいゆっくりするか」

「——! いいんですか?」

「特に悪いことなんて起きていないしな。あれも天羽庶務の悪ふざけだったのだろう。ほら、ポップコーン食べるだろう? 塩味だ」

「はい、それでは失礼して……ぽりっ」

 

それは、四宮かぐやにとって。

初めての映画館という趣ののったしょっぱさだった。

 

「美味しいです……。ちなみに会長?」

「ん、どうした四宮?」

「会長はこういった、いわゆるホラー映画は得意なのですか?」

「…………だ」

「え?」

「……実を言うと、めちゃくちゃ苦手だ。特に虫だとかああいった大群は映像でも恐ろしい」

「意外、ですね。会長でも苦手なものはあるんだ」

「ああ、そういう四宮はどうだ? ホラー映画は」

「私は特に……まあ。びっくり系は苦手ですが」

「そ、そうか」

 

白銀御行は、この映画で失神しないと覚悟を決めた。

それもそのはず、好きな人の前で恥ずかしい姿を見せるわけにはいかないからだ!

 

 

□■□■□

 

 

3。

2。

1。

 

——上映開始。

 

映画館の大型スクリーンに映し出される、配給会社の不気味なロゴマーク。

そして、じっとりと湿った空気を思わせる重低音。

ドドンと、陰鬱な文字でタイトルが浮かび上がる。

 

——『脳内侵略(ブレイン・インフェクション)』

 

スクリーンから放たれる青白い光。

それだけが、薄暗い劇場の座席をぼんやりと照らす。

その瞬間——。

 

『——ガサッ。……ギチ、ギチギチギチ……ッ!』

 

劇場のスピーカーから、耳元で這い回るような生々しい嫌な音が響いた。

画面には、人間の耳の穴からうねうねと這い出る『それ』の描写。

極小の寄生虫が、宿主の神経をジャックして肉体を意のままに操るという、エグい映像美の本格ホラー。

 

「ひえっ……!」

 

隣の席で、圭が小さく息を呑んで肩を跳ねさせた。

そのうなじには、天羽が貼ったあの「血行促進装置(仮)」が仕込まれている。

 

そして——。

劇場の照明が完全に落ち、スクリーン以外の光が消え、画面に眩い光が照らされた時。

 

ピピッ!

 

「……っは、あ……っん⁉︎」

 

圭の身体が、弓なりに跳ねた。

 

暗闇。

それは、この機械の真価を発揮する場面。

周囲の光がゼロになった瞬間、センサーは最大の感度を叩き出す仕様になっていたのだ。

つまり、今は何かが光るたびにセンサーが拾う。

そしてそれを止めるスイッチは今ここにない。

 

(うそ……なんで、こんな時に……っ!)

 

映画の劇中では、画面の人間が寄生虫に脳を支配され、痙攣しながら奇怪な笑い声を上げ始めている。

 

しかし、本当に痙攣しているのは圭そのもの!

おお、びくんびくん。もしかして、首の辺りにパラサイトが住み着いてしまったんじゃないか?(正解)

 

「圭ちゃん?  もしかして映画怖かった?」

「ち、違っ……違います、これ、違うんです……んっ、本当に。くぅ……っ!」

 

小声で、天羽が心配気に声をかける。

そしてポップコーンを抱えたまま、両手で自分のスカートの裾をぎゅっと握りしめる圭。

スクリーンから響く「ギチギチ」という不気味な寄生虫の咀嚼音と、圭の口から漏れる甘い喘ぎ声が最悪のハーモニーを奏でる。

 

(やばい、これ本当にやばい……っ! 脳みそまで溶ろけちゃう……!)

 

映画のホラー演出で周囲の観客(ほぼ怪しい黒服たち)がスクリーンに釘付けになっているのが、不幸中の幸いか、あるいは地獄か。

誰も隣の異変には気づいていない。

だが天羽だけは、圭の様子をじっと観察していた。

 

「い、いお……さんっ、これ、とって……はずして、ください……っ!」

「えー今? まだ始まったばかりだよ?」

「むり、です……こんなの、頭おかしくなっちゃう……あっ、んぁ……っ⁉︎」

 

映画の緊迫したシーンとは裏腹に、別の意味で絶叫しそうになる圭。いやこれ嬌声というのでは?

あまりの強烈な刺激。

圭の瞳には仄かに甘い涙が浮かんでいた。

 

 

□■□■□

 

 

一方その頃、少し離れた座席。

 

「…………っ‼︎」

「会長……?」

「……何でもない。何でもない映画だな、ハハハ」

「そうですか? 私はむしろ、このようなホラー演出には技術的感銘を受けていますが……」

「そうだな、深い作品だな」

 

白銀はほぼ白目で映画を見ていた。

四宮はそれに気づかず、監督視点だ。

 

「あ、画面のあれは何でしょう。人間の耳から足が生えているような……会長?」

「ウン タラタ カンマン」

 

精神的に追い詰められた白銀御行。

彼は仏の力に頼って、不動明王を呼び出していた。

 

 

□■□■□

 

 

「あの、衣緒さん……っ」

「んー?」

「私、その、ちょっと……。どうしても、トイレに行きたくて……」

 

限界を迎えた圭。

彼女が、小刻みに震えながら立ち上がろうとした。

しかし、最大出力のパッチ(隠語)。

暗闇の中で歩こうものなら、快楽のままロビーを歩くことになり、絶対におかしな声を漏らすだろう。

 

「えー、今立つのはもったいないよお。クライマックスの面白いところなのに」

「そういう問題じゃありませんっ……‼︎」

「じゃあいってらっしゃい」

「その……。こ、腰が。砕けて歩けないんです……」

 

必死の形相でこちらの袖を掴みすがりついてくる圭。

その潤んだ瞳は、完全に男を惑わすそれだった。

 

「しょうがないなあ。じゃあ、ここでボクに捕まってな? じゃないと、転んじゃうよ?」

「……っ! うう……申し訳ないです——っん⁉︎」

 

絶え間なく送られ続ける振動に、涙目で唇を噛み締めながら、天羽の服の裾をぎゅっと掴む圭。

これは側から見れば、”お持ち帰り”だった。

二人は映画館の暗い通路を、まるで泥酔したカップルのようにして進む。

圭の足はがくがくと生まれたばかりの子羊の震え、一歩ごとに膝が折れそうになっている。

 

「はあ……はあっ……んく……!」

「もう少しだよ。女子トイレ、すぐそこ」

「衣緒さん……ご、ごめんなさいっあ——⁉︎」

「ふふ、圭ちゃん謝らなくていいよ」

「で、でも……」

「圭ちゃんは可愛いから、許してあげる」

「い、衣緒さん……!」

 

天羽は後ろから圭の腰をそっと支えてくる。

その手のひらの熱が、圭の身体にじわりと染みる。

 

「ほら、すぐそこだよ。スッキリしてごらん」

「はい……すぐ戻ります……」

「——ふふっ、ごゆっくり。外で待ってるね」

 

ようやく女子トイレの個室に滑り込む圭。

彼女はドアを閉めた瞬間、へたり込んだ。

そのまま下着を脱ぎ、用をたす形となる。

 

(ふぁぁ……っ、やっ……と……!)

 

ようやく誰にも見られずに一息をつける。

そう思ったのも束の間。

うなじのパッチが最大出力を叩きだす。

 

「——ひゃぁんっ⁉︎ あっ、あっ、だめぇ……っ!」

 

甘く電流のような振動。

圭は両の手で口を精一杯に塞いだ。

それでも漏れ出る甘い吐息。

それが狭い個室に反響する。

 

「んっ……んぅっ。はあ、はぁあっ……!」

 

腰が勝手にびくんびくんと跳ねる。

太ももが内側から痙攣し、膝ががくがく音を立てる。

 

(こんなの……おかしくなる。……頭、真っ白に)

 

もはや映画のホラーなどどうでもよかった。

今、圭の脳を侵略しているのは、「快楽」そのもの。

 

「衣緒さん‼︎ たしゅけてっ——! もう無理ぃ、頭がおかしくなっちゃうぅっ⁉︎」

 

下腹部に膨大なエネルギー集まる。

限界だと悟った圭は天羽に助け請うた。

だがこのエネルギーは超新星爆発する。

 

(あっ……もう、ダメだ——)

 

それを最後に、圭の意識は深く沈んでいった。

 

 

□■□■□

 

 

とある濃密な匂いのする空間。

 

「はあっ……はっ、くっ……!」

 

少女の荒い息遣いが、静かな室内に響く。

先ほどから何度も繰り返されるソレに、彼女の理性はすっかりと溶けかけていた。

 

「どう? 桃。ボクの新作、すごいでしょ?」

「うるさい……っ! 衣緒。今日一体何してた⁉︎」

 

少女の身体が大きく跳ねる。

シーツをぎゅっと両手でつかみしめて耐えている。

 

ピピッ、と電子音が小さく鳴り響く。

 

「っ——! あ、うぅ……っ!」

「ふふふ、昼間に白銀さんの妹さんでテストしたパラメータを、桃専用に手直ししてみたんだよね」

「お前……本当に……後で覚えてろよ——っ⁉︎」

「えー? こんなに気持ちよさそうなのに」

「気持ちよく……なんて、誰が……っ!」

「じゃあ出力あげるか」

「——それはダメぇっ⁉︎」

「…………ふーん?」

 

その一言で、少女は枕に顔をうずめた。

紅く染まった顔を見られないよう隠すために。

しかし、少年はその顎を優しく。

だが逃がさないようにしっかりと持ち上げる。

 

「桃。目を逸らさないで。可愛い顔が見たいな?」

「……ばか衣緒」

 

潤んだ瞳で見据えてくるその表情。

それは普段の強気とはかわり、儚くて愛おしい。

 

「白銀さんの妹は素直でよかったなあ?」

「……っ、私以外のやつの話をするな……!」

「ふふ……でもやっぱり。桃が一番可愛いね」

「……勝手にしろ。でも浮気したらころす」

「ボクは桃一筋だよ?」

「……ふんっ。口で言うだけは誰でもできる」

 

嫉妬したように顔を背ける少女。

 

「じゃあ今度一緒に映画見に行く? 二人だけで」

「…………いく」

 

それはきっと。

甘くてとろけてしまいそうなほどに。

 

 

□■□■□

 

 

「圭ちゃん、替えの下着買ってきたよ」

「ありがとうございます……」

「圭ちゃん、機械の暴走を止められなくてごめんね」

「いえ、私こそ迷惑をかけてごめんなさい……」

「謝らなくていいんだよ。何も悪くないんだから」

「でも、せっかく遊びに誘っていただいたのに……」

「——圭ちゃん?」

「はい……何でしょう?」

「ボクは圭ちゃんが好きだよ。だからまた必ず一緒に遊ぶ。それだけは命に賭けて誓うよ」

「っ——!」

「圭ちゃん、外で待ってるからね」

「は、はい゛っ……!」

 

白銀圭、乙女の涙を流す。

 

全ての原因は彼——天羽衣緒にあるというのに。

わる〜い男だ。それなのにまるで、

白馬の王子様のように見えてしまうのだから。




時系列が狂う〜^のは、もはや気にしないことにした
欲張りなので次回は早坂愛が出てくるかも?

ランキング計算式の非公開の係数ってなに……?
今までの小手先の技術は、もはや意味をなさない
なぜなら誰にもシステムがわからないから!
ハーメルン戦国時代は、目隠しプレイに入った‼︎
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