【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いた 作:荼枳尼天
肩に先程作った【鋸斧】を担ぎ、【狼革のポンチョモドキ】を翻して歩くナナイ。
:絵面よ
:こわい
:狼ずきん
インナーの上にポンチョを着用し、裸足で闊歩している。時折、【鋸斧】を素振りしており、誤解を恐れずに言うならば、
:ヴァイキングやん
:蛮族
:角の着いた兜付けたら完璧にソレ
「うるさいなぁ」
口を尖らせてボヤいたあと、探索を続ける。
辺りは既に斜陽に包まれている。
「やっぱり、夕方の探検は危険かなぁ」
:そりゃもう
:バカ湖は狼しか出ないけど森の奥は…どうなんでしたっけ
「馬鹿っつったかよお前?!」
:バッカロア→バカ
:バカみたいにでかい湖→バカ湖説もある
:ナナイを罵倒した訳じゃねえ!
「ああそう。馬鹿って言われたのかと思ったよ〜」
:バカとは思ってますけどね
:草
:バカではある
「んだとゴラァ!!」
バッカロア湖には、敵性MOBは狼しか出ないとされる。
:バカ湖の奥の森、NPCたちにはバッカロア森林と呼ばれている場所にはゴブリンやスライムがいます
:そこら辺は他の初期地点とは変わらんのね
:もちろん、他のモンスターがいる可能性はあります。ただバカ湖は馬鹿みたいに大きい湖なので調べきれているとは断言できません。
「なげーわ寝てた」
:草
:草
:ナナイちゃんが反抗期に…
「べ〜」
舌を出して結晶におどけるナナイ。
ただ、リスナーの言っていた通り、狼しか出ない領域は湖近辺のみであり森の奥に出てくるモンスター、魔物はゴブリンとスライムしか判明していない。
「夜に出てくる魔物は?」
:ゴブリンは一日中出没する
:スライムは昼のみ
:バカ湖は街から遠いわ広いわで、街に行ったあとわざわざ戻ってくるやつがいない
「まあ確かにあの湖ってデカくて広いよね」
:初心者のうちは街の近くでファームした方が実入りいいのよ
:それなりの費用使って戻ってくるメリットがあるかがわからん
:バカ湖に行くこと自体が結構賭け
「…なんか、夢ないなぁ」
初心者のうちは金もなく、野営の道具を少ない金を注ぎ込んで買い、何日もかけてバッカロア湖に来る事自体がプレイヤー達にとってはやる意味が薄い。
そのため、バッカロア湖に来てしまったプレイヤーは可能な限り早く街を目指し、人によっては成長が遅れたことを理由にそのキャラクターを捨ててしまうこともある。
確かにバッカロア湖をホームにする奇特な人間はいるが、情報を秘匿していることもあって判然としない。
そして情報を嬉々として公開する側の人間は、バッカロア湖をバカ湖と揶揄して地雷認定、情報の拡散は悪い方に加速したわけである。
要は、少ない金をかけてわざわざ悪評しか聞かない場所に来るやつは居ないという話である。
なんとも、夢のない話である。
探索は続く。
【自然物鑑定】を繰り返し行い、必要なものかそうじゃないか関係なくアイテムボックスに収集していった。
【野生の根菜】×9
【野生の果菜】×4
【石】×14
焚き火用の【枯葉】×24と【朽木】×3
【スキル【自然物鑑定】のレベルが上昇しました】
【情報の精度が上昇します】
【今まで鑑定できなかった自然物を鑑定できるようになりました】
「ひょ?お、おお?!来た!来た!鑑定さんのレベルアップ!」
:ひゃ?
:ひゅ?
:ひょ?
:草
:どんくらい情報精度が上がるんだ?
「うっさい!しつこい!2回目!!【自然物鑑定】!」
【野生のキャロトン】
・ 効果 : 満腹度回復3% 水分値回復3%
・レア度 : Common
・ 食用
・ 栽培可
・ 品質 : 中
・ 備考 : 水分が豊富な土地でよく見る。野生下の最高品質。
「…増えすぎじゃない?」
:ついにレア度が来たわね
:武器にあるのに野菜にゃねーんだなって勝手に納得してたわ
:↑それお前が【武器鑑定】持ってるからやろ
:サイトには載ってるのに鑑定育てなきゃわからん要素
「えーっと…効果は…へー、これ喉の乾きを回復してくれるんだ?レア度はコモン…って、どれぐらいレアなの?」
:そこら辺にありふれてます
:コモン分からないマ?
「失礼な。SSRぐらいならわかるよ」
追加された情報は効果、レア度。
備考の情報が少し変化した。
「あとは、今まで鑑定できなかった物が鑑定できるようになった…かぁ」
:鑑定できなかったもの…?
:そんなんあったっけ?
「まあそれは追々探して…ん?」
辺りはもう暗闇に包まれている、はずだった。
勾配を上り、木の幹に手を預けて顔を出せばそこは別世界のようだった。
数個の光の玉がふわりと浮かび辺りを照らしている。
その下では小さな池がチロチロと水音を鳴らしている。
月の光が木々の間から降り注いで幻想的な雰囲気を作っている。
「きれい…」
ほう、と息をつき座る。
「ね、あの光の玉なに…?」
:わからん。
:鑑定してみたら?
「あ、あ、うん。そっか。【自然物鑑定】」
【鑑定できません】
「なんでやねん…自然にあるじゃんかー!!」
浮いている光の玉を鑑定しようとしたが何故か鑑定できない。
:レベルが足りない?
:それか、この光の玉を鑑定する専用のスキルがあるとか?
:↑そうかも
「うーん…ん?」
リスナー達のコメントに頭を捻っている間、あるものが目に入った。
「……なにあれ」
木のコブに指をかけて立ち上がる。
尻の下敷きにしていたポンチョの土を払ってから、【鋸斧】を担ぎ直した。
勾配を降りて、光る玉の間を通りながら池に近づいていく。
なぜか横を通り過ぎる度に光る玉がナナイに対して距離を取る。
「……なんか、引かれてない?」
:光る玉「ドン引き〜」
:まあ蛮族だし
:獣の革を被った幼女とか冷静に考えてこわい
「ただの光の玉がそんな冷静に考え………考えてる…?」
チラリと、光の玉を見る。
「ち、違うの!あーしは知らなくて…!バッカロア湖が街から遠いなんて…!それを知らなかったから…あーしはそのしわ寄せでこんな生活を…強いられているんだ!!」
その言葉…ネットミームに光の玉はさらに距離をとった。
:草
:なに?なにしてんの?
:なんで光る玉にネットミームで話しかけてんの?
:ばかなの?ねぇ、ばかなの?
:言え!誰が教えた!!
:リスナーの誰かでーす
:さすがにおもろい
「う、うう…くそう……いずれリベンジを…!」
なにやら知性を感じる存在に初っ端から嫌われたことを理解したナナイは涙目で、元々の目的であった対象に目を向ける。
:洞穴?
:まさかこれって…
:ああ!
「ダン…ジョン…?」
:なんで疑問形?
「いやだってただの洞窟じゃないの…?」
実際、ナナイが想像していたダンジョンはコレとは様相が異なる。
マチュピチュ、ピラミッド、アンコールワット…などなど世界遺産を筆頭にした世界的に有名なゲームでも迷宮として扱われるものを想像していた。
断じて、このような洞窟ではない。
:入りゃわかる。
:そもそもこんな序盤のロケーションに古代遺跡なんぞ設置しないだろ
:草
「まあ…確かに。入ればダンジョンかそうじゃないかがわかるよね」
落としかけた肩をどうにか元の位置に戻してから【鋸斧】を構える。
仄かに光る洞窟の奥に、ナナイは進んで行った。