【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いた   作:荼枳尼天

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乙女的にNO!

 

 

 

 

「よっと…死んじゃったけど…うん、見慣れた砂利浜だ」

 

 

 太陽はピカピカと地面を照らしていて体温を適度に温めてくれている。

 

 前回との差異を確かめるためにステータス画面を開けば、自分の体を示すUIの防具の欄からぼろ布が消え野性味あふれるインナーが丸見えになってしまっていた。

 

 腹筋が割れているため比較的?ワイルドなファッションと言えないでもない状態だが乙女的にはNO!を突きつけたい状態になってしまった。

 が、人がいないからいいかと文明人にあるまじき妥協点を見つけてしまい、このまま行動することにした。

 

 今回重視すべきはおそらくいるであろう獣の対処と前回以上の進展である。ナナイが試そうとしているのは人間の原初の発明品である【火】である。

 松明を作れればいいのかもしないがあれは燃料がなければ作れないという話を話半分に聞いたことがある。

 燃料など文明の産物は文明すら知らないという様相の彼女には入手できない類のものであった。

 

 とはいえ、火があれば野獣などは遠ざけられる、はずなので焚火程度は用意したい。

 

 

「というわけで!ナナイの!10分クラフト!!」

 

 

 今回用意するのはいい感じに出来上がった細長く鋭い【石ナイフ】と太い【木の棒(アイテム)】二本、はずみ車用の適当な【倒木(小)(アイテム)】それと植物繊維100%の紐である。

 まずは多大な労力を使うであろう倒木からはずみ車を作成するフェーズに入っていく。

 火おこし器を一からつくる経験などないため文字通り低木が朽ちたのであろう倒木を石ナイフでどうにかいい感じのサイズにしようと端を切ろうとする。

 

 ぐりぐり、すりすり。

 

 

「あ、むりでは?これは…」

 

 

 そもそも、この石ナイフは鋭いとはいえ倒木を寸断できるほどの性能はないわけで。

 ひとまずそこらに散らばっている小学生の戦利品に見えてきたごm…素材たちをインベントリに収納する。

 

 だがこれでは止まらないのもナナイの強み。サブプラン用意のためにステータスUIを眺める。そして見つけるのは赤いエクスクラメーションマーク、いわゆるビックリマークであった。

 

 箱のようなアイコンに重なるそれが気になったナナイはおもわずそれをタップする。

 前提として、このゲームはMMORPGでありMMOには切って捨てられない概念がある。リリースして幾許かたったもののまだまだこのゲームは新作ゲームと呼ばれるものでありまだまだ新規参入がある状態である。

 

 …と長い前置きをしたが、ここで皆さんに聞きたいのは「事前登録した覚えがないのに事前登録特典をもらえた」という経験があるかどうかという話である。

 

 ナナイが見たのは事前登録特典、新規参入特典と書かれた二つのメールだった。速攻でメールを開封すれば、事前登録特典はガチャ10連分!と銘打たれている魔煌石×100と回復ポーション×3、武器スキンガチャチケットが納入されており、ナナイが知らない概念でタコ殴りされたものの、目を白黒させながら新規参入特典に目を通す。

 こちらにも魔煌石×10が入っており、ガチャ好きのナナイは目をキラキラさせる。

 ガチャがあるのならガチャ用UIもあるはず!と探ってみるも見つからず、石の説明を見てみると【街の専用施設で使用可能!!】という文言を見て一瞬で興味を無くした。

 そんな石の他にも回復ポーション×3、道具スキンガチャチケットと、冒険者記録水晶というアイテムが同梱されていた。

 

 メールの開封とともにインベントリに収まる仕様のようでまとめると、

 

・ 魔煌石×20

・ 回復ポーション×6

・ 武器スキンガチャチケット

・ 道具スキンガチャチケット

・ 冒険者記録水晶

 

 これらが新たに手に入れたアイテムであることがわかった。

 ナナイの気を引いたのは《冒険者記録水晶》という見慣れないアイテムだった。

 インベントリから取り出してみると、文字通り手のひらサイズの透き通った水晶で、側面には小さなボタンがふたつ付いている。

 

「記録ってことは……セーブ?」

 

 乏しいゲーム知識からそんな結論にたどり着いたナナイは、深く考えず片方のボタンを押した。

 

 ぽう、と水晶が青白く光る。

 

 次の瞬間、ふわりと宙へ浮かび、ナナイの肩口あたりに寄り添うように静止した。

 

「わっ……綺麗……これでセーブできたかな?」

 

 すると視界の端に小さな通知が現れる。

 

『冒険者記録水晶を起動しました』

『映像記録モード:ON』

 

「……映像記録?」

 

 どうやらこれは、記録装置のようであった。

 視界に映る景色や音声を保存する結晶──初心者向けの補助アイテムのひとつらしい。

 

「よくわかんないけど……畑の成長記録には使えそう!」

 

 深く考えるのをやめたナナイは、青白く輝く水晶を連れたまま、次の作業へ意識を切り替えた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

『配信 Part.1』

#女性 #バッカロア湖 

 

:初見です

:あ、詐欺初期地点難民さんオーッスwww

:枠の名前がテンプレートそのままで草

:タグも弄ってないねw

:初見

:あれー?おーい

:もしかしてコメント見えるようにしてない?

:ゲーム初心者にしても……配信結晶の使い間違いなんてベタなことやってるね

:さすがに草

:ちょっと誰か教えてやりなよー

:にしてもなんで蛮族スタイルなんだwww

:全身ボロ布筋肉ムキムキロリっ子…ゴクリ

:yes!ロリータ!Noタッチ!

:ドワーフはロリじゃありません!!

:おまわりさんコイツらです。

:この子街目指さないの?

:定住しようとしてない?

:独り言の内容からして夜に備えて火をたこうとしてる。

:独り言多くて何やろうとしてるかわかるの助かる。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「さて…やっぱり棒と板でいけるっしょ!!!」

 

 と、気付かず配信をしているナナイは先程しまった倒木を取り出す。

 これをどうにか板にしたい。

 

「これを板に…いや、平たくして安定させたい」

 

 欲を出すには少し時間が足りなかった。

 もう既に太陽は真上を通り過ぎようとしている。

 ここで欲をかけば獣が出る夜になってしまう。

 

 かと言ってこれを平たくするには道具が…

 

「そういえば!Howtube(動画サイト)で言ってた!木材は繊維が縦に入ってるから切れ目さえあれば裂くことは簡単だって!!!」

 

 と、キャンプ経験があるとはいえ肝心のサバイバル経験がない彼女はショート動画から得た知識でゴリ押しをしようと考えた。

 

 そんな彼女が取り出したのは今の相棒である石斧だった。

 

「フンッ!!」

 

 倒木の断面が上になるように太ももで固定して、目測で中央に当たりを付けた彼女は気炎を滾らせて石斧を叩き付けた。

 彼女の目論見通り、石斧の刃が断面に入り、切れ込みが出来上がった。

 

「よーしよしよし…ゴクリ…行けるか?…いや…やるしかなぁいッ!!!」

 

 そして彼女は切れ込みに両手の爪を引っ掛けて、現状の彼女が出せる全力で横に引き裂いた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

『配信 Part.1』

#女性 #バッカロア湖 

 

:いったー!!!wwww

:草

:草

:草

:ゴクリ(口音)

:あれ?この子配信に気付いてないんだよね?www

:配信適性高すぎるwwww

:やはり『はうつべ』には人生の全てが詰まってるんだなぁ…

:あんな雑な方法で綺麗に縦に裂けてるのも芸術点高い

:板にはできないという苦肉の策だったんだろうけど…それはそれとして絵面がwww

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 比較的綺麗に裂けた倒木を前にナナイは感動した様子で呟く。

 

「ほああああ!!すっごい!やっぱり『はうつべ』はすごいんだ!」

 

 安定するようになった縦割りにされた倒木の断面を下にして次は石ナイフでグリグリと凹みを作る。

 棒で摩擦させる箇所だ。

 

「んっしょ…んッ……ヨシっ!」

 

 凹みに、昨日のログインで発見したいい感じの木の棒を宛てがえば完璧なフィット感がナナイを襲った。

 

「完璧!!見てよこのフィット感!!!えっうそ…天才?全部目測だよっ?!」

 

 自分の才能に戦々恐々としつつも、ナナイは本来の目的を思い出し倒木を足で固定してから棒を両手で回し始めた。

 

「ふはっ、ふははっ!フー⤴ハッハッハッハ!!!これで『火』はあーしのモノだぁ!!」

 

 有り余る筋力にものを言わせて棒を回せばすぐに摩擦熱によって煙が立ち始める。

 

「アッ!煙が!やった!ほんとにこのゲームってなんでもできるんだ!煙が立った!火が!火がでるぞおおお!!」

 

 煙がたち、ナナイは棒を回すのをやめて様子を見る。

 これで火が手に入る。

 

 そう考えて疑わないナナイを前に無情にも煙は消えてしまった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

『配信 Part.1』

#女性 #バッカロア湖 

 

:『んッ』の辺りまで女性配信者の面目は立ってたのに…

:ツッコミどころが濁流のように押し寄せてきて草すら生やせなかった

:火はッ!俺のものだァ!!wwww

:なんでもできるクオリティ故に火口がなければ火は起こせないと…

:草なんだよなぁまじで。

:これが当人にとっては独り言なのまじで面白い

:フー⤴ハッハッハッの所から顎にダメージ来るほど笑ってる

:目測はいいんだけど知識の雑さがwwww

:フッと消えていく煙の無情感よwwww

:配信者だなぁwww

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 煙を上げていた口から煙が消え、やっとナナイが現状を理解した。

 

「あ…ひ…火?着いてない。なんで?」

 

 凹みの縁に黒く焦げた木くずが僅かに残っており、それを指でつつけば崩れて消えていく。

 その様子は哀愁漂うもので、影の指しているナナイの表情も相まって茶化せる雰囲気でもなくなっていた。

 

「うっ…でも!一回くらい失敗したから何よ!まだまだッ!」

 

 傍らに退けていた木の棒を再び口に宛てがい回し始める。

 次第に煙が上がり始めるが、先の失敗を踏まえたナナイは止まらない。

 無心で煙が上がっていようが摩擦熱を高め続ける。

 

「うおおおおおおっ!!!止まらない!限界突破だあああッァッ」

 

 ポキッ

 

 軽快な音と共に、いい感じの木の棒が分かたれただのゴミと化す。

 折れて使い物にならなくなった枝と消えつつある火種を前に呆然としていると、また煙が消えてしまった。

 

「んもおおおおおおっ!誰かチャッカマンちょうだいよおおー!!」

 

 




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