【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いた 作:荼枳尼天
「従魔契約おめでとうございます」
「ありがとう!」
「きゅっ!」
ぱちぱち、と控えめに手を叩くユーウェルに1人と1匹は答える。
【従魔契約】の影響か視界の隅、ナナイのHPとMPの上に【ナディア】の名前とHPとMPが追加されている。
願いの魔法を使った際に使い果たした魔力、MPはすっからかんだが、ナディアの表示が追加されたという、変化にナナイは笑顔を抑えられない。
ナディアはナディアで元気いっぱい。
ナナイの足を伝って肩に、そしてフードに収まった。
「…んふ、それじゃ、そろそろ行くよ」
「はい。カーバンクルたちは準備が整うか、はたまた好奇心に任せてか、いずれかの理由で貴女の拠点を訪問するでしょうから、それまで待っていてあげてください」
「うん!ありがとう。ユーウェルくん!また来るね!」
そう言って、ナナイはカーバンクルの楽園をあとにした。
◇ ◇ ◇
礼園学園。
一限も終盤に差し掛かり、生徒たちも佳境に入った授業を黙々と受講している。
バァンッ
そんな音とともに駆け込んでくる人物がいた。
「っすみません!お、遅れました…ゲホッ…はぁはぁ」
髪のセットはできておらず、化粧も普段より薄い。
七世結衣だ。
制服もヨレヨレで如何にも走ってきました、という雰囲気を隠さない。
「お、おう…早く座りなさい。隣の人にノートを見せてもらいなさい」
「はい…げほっ」
ヨタヨタと自席まで歩き、ドサッと座る。
隣に座るカマンボーも驚いていた。
「ど、どうしたのん?」
小声で何故遅れたのかという質問を投げる。
「…そ、それが…」
(言えない。さっきまでゲームしてたなんて…)
ゲーム内の時間が2倍に加速されているとはいえ、普段の2倍近くプレイすれば寝る時間は確保できるはずもなく。
カーバンクルの楽園を出たあと、ナナイは現実時間を確認したのだが、もう学校が始まる時間であり、血の気が引いた様子でテントまで戻りログアウト。
休もうかとも考えたが、ある意味絶妙な時間だったため急いで登校したわけである。
「…寝ずに色々してたらこんな時間に…眠過ぎて死ぬ」
「あらら…」
目の下にはうっすらとくまがあり、カマンボーも気の毒に思うほど元気がない。
「…休み時間は寝ちゃいなさいな。どうしてもキツかったら保健室で寝るのもありよん?」
「…頑張ってみる…」
その後、一限は何とか最後まで受けきったものの、その後の時間割は悲惨な結果に終わった。
◇ ◇ ◇
『【MMOで今日から川作り】リバー!』
#ギャル #ドワーフ #サバイバル #バッカロア湖
視聴者数 : 4682人
「帰ってきた〜!!」
「きゅー!!」
結局あの後、学校での時間のほとんどが就寝時間に化け、今のナナイは元気いっぱいだ。
穴だらけの【狼革のポンチョモドキ】を翻し、フードにいるナディアと共に吠える。
18時にログインしているため、ゲーム内時間はちょうど昼頃。
燦々と輝く太陽は直上を通り過ぎようとしている。
:わこつ
:おつ
:ついに魔獣テイマーが出たわね
「テイマーって言うと…勉強したよ!動物と一緒に冒険する職業でしょ。…このゲームにはないの?」
:ある
:職業でな
:でも魔獣を従えてるのはナナイしか知らん
「ほぇー…ま、ナディアは最初に世に出た魔獣だからね!」
「きゅ!!」
ねー!とナディアと共鳴するナナイ。
今回、ナナイが目標としていることは、川工事の着手だ。
そこを足がかりにし、工事を進めていく。
とはいえ、これからやってくるであろうカーバンクルの魔法次第という側面もあるため、運頼みともいう。
「それじゃ、壊れてもいいように鍬を何本か作っていくよ!」
そしてフードにいるナディアに、少し思案したあとにこう伝える。
「今から手作業を始めるから、探検して暇を潰してきてね」
「きゅっ!」
伝わったのか、ナディアはフードからするすると降りて、きゅ、きゅ、と鳴きながら拠点内をうろちょろし始めた。
その光景を見届けたあと、工事の着手の為に随分久しぶりに感じる道具作りを開始する。
まずはアイテムボックスから岩を取り出し、切り株に設置。
「岩を切り株に置いて…」
次に鍬の頭にする丁度いい大きさの石を5個地面に置く。
「石の控え〜♪」
鼻歌を歌いながら、頭の石を打つ石も数個取り出す。
早速、とばかりに石を岩に添えて叩き始める。
カツンッ!…ガツッぱき
「……リカバリーきかないレベルで割れた。あれ?」
力を込めすぎたようで石が割れてしまう。
:そりゃもう
:筋力値がべらぼうに上がってますから
:ステータスはもう素寒貧じゃないな、無職だけど。
「無職やめてね。…少し力弱めるかぁ」
気持ち5割程度の力で石を打つ。
ステータスが上がった影響か、どんどん出来上がっていき、ダンジョン探索前とは比べ物にならないほど早く完成した。
「完成!次!」
その調子で加工を進めていき、1時間半程で出した石の加工を終える。
その様子を、探検に飽きたのかどこかから調達してきたのだろう木の実を食べているナディアが見ている。
「次は柄〜」
立ち上がり、拠点の隅に置いてある樹木の方へ歩いていく。
「……あ、そうだ」
アイテムボックスから白い大斧を取り出す。
:うせやろ
:枝打ちにその斧使うか?ふつう
:正気か?
「鉄を斬れる斧なんだからそっちのが楽でしょ〜?」
羽毛のように軽い斧を一閃。
ばらばらばら、と木の幹から多くの枝葉と棒が地面に落ちた。
「うひょ〜。大量大量…!」
落ちた枝葉は乾燥の為にラックに置いておき、木の棒は大多数をアイテムボックスに収納し、鍬の持ち手用の棒を選別する。
「ん〜…これかな。これがいいよね?」
:頑丈そうだし良いのでは
:それよりもそっちやろ
:太くてデカイ
:通報しますた
リスナーと共に選別した4本の太い木の棒を切り株の前に持ってくる。
「石ナイフ〜」
先のダンジョン探検で石斧は全て失ったが道具類は大体残っている。
【石製ナイフ】をアイテムボックスから取り出したあと、木の棒を加工していく。
こちらも筋力ステータスが向上した影響か、石の加工よりも早く終了した。
「全部完成!あとは〜♪」
アイテムボックスから数十本、紐を取り出す。
鍬ひとつに数本紐を用いて、木の持ち手に石鍬の頭を固定する。
「【道具作成】、【道具作成】…」
スキルをかけていき、4本の鍬の目の前で胸を張る。
「4本、完成!!」
【石製鍬】
完成度 : 傑作
石製の鍬4本、いずれも傑作。
「いや〜傑作がいっぱいだよ〜」
これで元々使っていた、壊れかけの鍬を合わせると5本の鍬を持っていることになる。
「それじゃ、行こうか。工事現場に…!」
:お、おう
:…まあ石器ですから…
:鉄器じゃこうはいかないんだからね?!
◇ ◇ ◇
「きゅ〜」
「そうだね〜綺麗だね〜♪」
数個の木の実を口に放り込んで、瓶から水を飲む。
バッカロア湖のほとりに鍬を担いだひとつの人影があった。
「よーし。ふんっ!!」
バッカロア湖は砂利浜の湖。
砂利浜から土に変わる箇所に鍬を入れる。
「んぎぎ…!」
鍬を引き、土を掘り返す。
「よし、ここに穴を掘っていきます」
掘り返した土を両手いっぱいに抱えて、穴を掘る予定の場所ではない場所に積んでおく。
「ど、っこいしょ…!」
土を運んだあと、すぐに鍬で掘り始める。
「やらなきゃ終わんないから、ねっ!」
あまりグダグダしていてもしょうがない。
テキパキと作業を進めていく。
「ふー…土はアイテムボックスに入るのかな?」
:入らんやろ
:入るんじゃない?
:試したことねえや…
掘り返した土を両手に抱え込んで、アイテムボックスに入れようとする。
「…はい、った!やった!」
大量の土が空間の歪みに消えていく。
アイテム名は単純で、【土】だった。
「これで効率的になるぞう!」
鍬を土に刺し、掘り返し、アイテムボックスに入れる。
その単純作業の繰り返し。
「ちちち…きゅ〜」
ナディアは少しずつ深くなっていく穴の縁で木の実を食べていた。
感想ありがとうございます。