【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いた   作:荼枳尼天

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お前むーしょく

 

 

 焚き火の前。

 インベントリから数個の木の実を取り出して口に放り込みながら配信水晶に話しかける。

 

「もぐもぐ……よし。ここを第一キャンプ地とする!今んとこ焚き火しかないけどッ!」

 

: おおお

: 焚き火作って終わりじゃないよねそりゃ

: 焚き火しかないキャンプ地、ヨシッ!!

 

「うん。みんなには言ってなかったけど、あーしの目標は畑を作ることだからね」

 

 ここで初めて、リスナー達とナナイの目標を共有する。

 それを聞いたリスナーの反応は千差万別だった。

 

: 畑作るって言ったってなぁ

: できるんかね

: 街でも農作業の情報なんて聞いたことないで

: マイホーム要素があるってのは噂で聞いた

 

 リスナー達の反応にナナイの脳裏に不安が過ぎる。

 が、畑の予習ぐらいはナナイもしてきた。

 

「えーっと、まずは土地の吟味だよね!木漏れ日が映えてー、自然の水源を利用した機能美を併せ持つさいきょーの畑!畑の傍にマイホームも建てたい!やっぱりログハウス!」

 

: この子は一体何を言っているんでしょう

: 先行き不安だな

: 土地ならいくらでもありそう

 

 土地ならいくらでもある。

 これは本当にそうで、見渡す限りの森林で土地の吟味だけで一日使えそうなレベルだ。

 

「土地はいっぱいあるけどやっぱり奥まった秘境みたいな場所がいいな!みんなも田舎に住むの、憧れない?」

 

: あー

: 都会生まれの田舎への憧れね

: 近くにコンビニないから言うほど良くないぞ

 

「あーしは憧れるね!だからー…土地探しどうしよう」

 

 焚き火という課題をクリアし、夜を乗り越える準備はできたが次の課題として『畑の土地』探しが生まれた。

 これがかなり難しく、ナナイもどうしたらいいか分からなくなってきていた。

 

(本当にどうしよう。森林の奥まった場所と言っても夜に出てきたような獣がいる場所だったら住むなんて土台無理だし…昼の内に探索できる範囲に土地がなかったらどうしよう)

 

 園芸部入部のための畑作りだ。

 時間をかけたくないというのが本音だったが今の状況が楽しいと感じるのも事実。

 土地探しに何日もかけたくないのも本当だった。

 

「みんな。安全にここら辺を探索する方法分からない?」

 

: バッカロア湖って初期地点だから魔獣出んよな

: バッカロア湖自体が安全ていう見方もできる。

: 近辺なら動物しか出ないから対策は火で十分じゃない?

: 出るとしても狼とかかね

 

 コメントの反応にナナイは安堵する。

 昨日のような突然死は夜以外はないと考えていいかもしれない。

 ただ続くコメントも正論を言っていた。

 

: とは言っても奥まった場所でしょ?

: 夜までにドワーフの足でたどり着けるかと言われると…

: バッカロア湖広いからなぁ

 

「あー…やっぱり時間の問題があるよね」

 

 ナナイは焚き火に目を落とす。

 

(火、持って歩けないしなぁ…)

 

 夜になれば、あの暗闇と獣。

 昨日の死を思い出し、背筋がぞわりとする。

 

(戦うのも無理だし…スキルもないし…)

 

 結局のところ。

 

(逃げるしかないんだよね、今のあーし)

 

 そうなると――

 

「遠く行きすぎたら帰れないじゃん…」

 

 消極的な手段しか取れない現状でナナイが取れる手段といえば動き出しをはやくすることのみ。

 今は探索するしかない、と焚き火に残りの枯葉を放り込んでから立ち上がれば、ひとつのコメントが目に入った。

 

: なんか、流れで焚き火起こしたけど、探索して夜になりそうになったら火起こせば良かったのでは?

 

「………」

 

 そのコメントに体が固まる。

 

(…たし、かに?)

 

「い、いやいやいや!え?焚き火…する必要…ないね。夜じゃないし」

 

 思案する。

 太陽も直上を過ぎてゲーム内では14時~15時程だろうか。

 ではこのコメント通りに動けば1時間以上は探索に回せていたことになる。

 

(……あー…そうじゃん。ログインしてすぐ火を起こす必要なかったじゃんッ)

 

「もっと…もっと早く言ってよね!!もう火付けちゃったよ!火つけるまで1時間強かかってるんですけど!!」

 

: 探索しながら時間見た方が良かったね

: 今更というか、配信しなきゃ発想すらしなかったのでは

: 逆ギレやめてね

 

「もういいよ!探索するよ!こんな!こんなキャンプ地なんて要らなかったんだい!」

 

: ちゃんとお日様見るんやで

: 土台と火口は持っていきなされ

: 気をつけるんやで

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

: 配信設定でこの素寒貧ステータス隠さないの?

 

「素寒貧言うな。え?隠せるの?」

 

 そもそも隠そうという発想がなかった。

 

: 魔法あるのになんで火付けガチ勢やってんだろって思ったけど

: チュートリアルで魔法習得するから…

: 悲しいね、ナナイ…

 

「うん!配信と一緒!隠す必要が無くなったよ!!!(泣)」

 

 探索序盤、昨日取得した【自然物鑑定】を駆使しながらアイテム収集をしているとリスナーに指摘される。

 素寒貧と言われたステータスはこれだ。

 

━━━━━

name.ナナイ

Lv.1

species.土人族Lv.1

job.無職 Lv.1

strength.8

endurance.8

agility.5

dexterity.6

spell.10

 

passive skills

【道具作成】

active skills / 残Pt.9

【自然物鑑定】Lv.1 

━━━━━

 

: お前むーしょく

: 魔法未所持ナナイ、迫真のspell10振り

: プレイヤーレベルも種族レベルも職業レベルすらも1だからね

 

「魔法使ってみたかったんだもん!無職言うな!あと初心者なんだからレベル1も仕方ないでしょ!」

 

 ステータスはゲーム開始初日、ナナイが独断と偏見で振り分けをしており魔法使いたいから魔力高めで!とspellを10にした結果、晴れて死にステータスとなってしまったわけである。

 ステータスを隠す意味がよく分からないナナイはわざわざ隠す気もないが、チュートリアルで魔法を習得できるというコメントに思わず頭を抱えた。

 

(チュートリアル重要度高すぎるよ…)

 

「【自然物鑑定】」

 

 これまで行ってきたようにほとんど脳死で【自然物鑑定】を繰り返す。

 

『石』

『枯葉』

 

 するとスキル習得時と同じような電子音が鳴ったあと、ナナイの耳にアナウンスが届いた。

 

『スキル【自然物鑑定】のレベルが上昇しました』

『情報の精度が向上します』

 

(情報の精度?)

 

「なんか【自然物鑑定】がレベルアップしたみたい」

 

: おーついに

: 役立たずがそれなりになる瞬間

 

「役立たずやめてね。これでも結構助かったんだから」

 

 事実、野菜を識別してくれたのはこのスキルだ。

 ナナイにとってしてみれば役たたずなど言語道断。サバイバルには欠かせない必須スキルである。

 

 試しに昨日手に入れた人参(仮)に鑑定をかけてみる。

 

【野生の根菜】

・ 食用

・ 栽培可

・ 品質 : 低

・ 備考 : 水分の多い土地で見られる

 

 どうやらこのようなUIも配信で見れる仕様のようでリスナーたちが反応する。

 

: え、こんなちっちゃくても食えるんだ

: 根っこですやん

: なんでも拾っちゃうのやめな???

: 栽培できんの?!?!

 

「すっっご!!レベルが2になるだけでこんなにわかるの?!」

 

 今までは野菜ということしか分からなかった鑑定の進化にナナイは感動するが、リスナーの反応は冷ややかだ。

 感動そのままにずんずんとナナイは森を進んでいく。

 木漏れ日を浴びながら倒木を乗り越え、鑑定をして野菜を回収して、少しだけ周囲を警戒しながら。

 

 探索の成果は以下の通りだ。

 

【野生の根菜】×10

【野生の薬草】×2

【野生の木の実】×11

 

「この薬草。…かなーりいいものじゃない?ん?どうなんだね?諸君」

 

:んなこと言われましても。

:まだまだ始まったばかりですしお寿司

:サバイバル勢いないこともないけど配信してて情報あけっぴろげにしてる奴はあんまおらんのよ

 

「いやだってこれ見てよ」

 

【野生の薬草】

・薬用

・栽培可

・品質 : 極低

・備考 : 魔力が豊富な土地で見られる。

 

「薬用だよ〜ん?」

 

:迫真の極低に目を向けろ

:効能分からんぞ

:毒草説あると思います

 

「……まあ、たしかに」

 

 現状の【自然物鑑定】のレベルでは、この薬草にどのような効能があるかはわからない。今のところナナイにとってもリスナーにとってもただの草だ。

 だがナナイが見ていたのは栽培可という文字である。

 

「でもまあ、栽培できるし、とりあえずね」

 

 そう言ってナナイは歩き出した。

 動物がいれば、危険かそうじゃないかに関係なく息を潜め、危険そうな植物を見つければ触りもしない。

 警戒らしい警戒をしつつゆっくりと進んでいく。

 

 斜陽が森を赤く染めていく。

 さすがのナナイも焦燥を隠せなくなっていた。

 

「…まずいなぁ…」

 

:戻る?

:夜の外とか任務以外だと出ないぞ…

:まだレベル低いし無理しなくてもいいんじゃ…?

 

「…うーん…森の中でも火は付けられる…からもう少し……………ん?」

 

 ナナイは小高くなっている斜面をかけ登り、木に手をかけて目の前の景色を食い入るように見つめた。

 少し開けた土地、だが緑が禿げている訳ではなく、むしろ豊富。

 自然物鑑定をしてみれば、根菜、初見の野菜、薬草すら自生している。

 

・備考 : 水分の多い土地で見られる。

 

 満たしている。はずだ。これ程自生している。

 

・備考 : 魔力の豊富な土地で見られる。

 

 満たしている。絶対に。

 

「こ、ここ、ここがいいでしょ!根菜!薬草!しかも…」

 

【野生の果菜】

・食用

・栽培可

・品質 : 低

・備考 : 水分、魔力ともに豊富な土地で見られる。

 

「新しい野菜だぁ!」

 

:ナスっぽい野菜きちゃー!

:根っこ野菜以外が見つかったああ!

:この土地は水分も魔力も満たしてる…ってコト…?!

 

「ここを、本拠点とする…!!」

 

 土地を見定めたナナイ。

 自然物鑑定をもとに決めただけで理想とは遠い。

 だが前途多難であろうとナナイは止まらない。

 




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