【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いた   作:荼枳尼天

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恐ろしい夜が来ました…

 

 

 昼のノウハウを活かして驚くべき速度で火を起こしたナナイ。

 開けた土地の中心に居を構えたナナイはどんどん暗くなっていく周囲を見回していた。

 

「夜…夜だよ〜…恐ろしい夜が来ました…」

 

:人狼ゲーム始まったな

:実際オオカミがナナイの敵

:ここら辺は魔獣出ないから安心

 

「まじゅう?モンスター的な?」

 

 前提として彼女はゲーム初心者でありサブカルにある程度触れているとはいえ、ゲームの知識は基本的なものしかない。

 

:違う違う。モンスターは魔物でね?

 

「まもの…?まじゅうとちがうの…?」

 

 このゲームは基本的なMOBの分類として、動物、魔獣、魔物の3種類が存在している。

 そしてナナイは魔獣と魔物の区別が付いていない上にモンスターとして認識している。

 

:魔獣とは、魔力を持つ動物の事で魔力の塊で尚且つ人に強い憎悪を持つ魔物とは明確に区別されます

:有識者キタ━(゚∀゚)━!

 

「???」

 

:魔獣は魔法を使える動物、魔物はモンスター。おk?

 

「おっけー!」

 

 ナナイは小難しい話を一蹴しその直後の噛み砕いた説明に飛びついた。

 

「魔獣と魔物はいないんでしょ?じゃあオールオッケー!」

 

 パチパチと爆ぜる焚き火の音が辺りに響く。

 ナナイは息をついて夜空を見上げた。

 

 

「楽しい」

 

 配信結晶が夜空に向けられた。

 散って舞う火の粉、暖かい火の光が夜空を彩っている。

 火を恐れて狼は近寄ってこない。当然、他の動物も。

 初日とは違う平和な夜をナナイは満喫している。

 とはいえ、だ。

 この場を動けないのは変わらない。

 

 アイテムボックスから根菜と木の実を取り出して齧る。

 相も変わらず野性的な渋みが口いっぱいに広がる。

 

「まっず…w」

 

:でしょうね

:根っこだし

:でもさぁ…

:いいなぁ…!!キャンプでサバイバル…!

 

「いいでしょー。でも、美味しい食事なしにキャンプは語れない…!」

 

 今の食事はいくつかの根菜と適当な木の実のみである。

 料理という料理を作れる設備も材料もないのではしばらくこの野生食事を続ける他ない。

 

「そのためには、何が必要でしょうか?」

 

:え?え?

:あー、料理道具!

:知識

 

「そう、体力ですね?」

 

:???????

:草

 

「寝ます」

 

:?…?!

:え?

 

 流れるように、焚き火のそばでナナイは就寝した。

 あまりにも大胆なその寝姿にリスナー一同の心は一瞬凪ぐ。

 そして、爆発した。

 

:お、おおおお!まて、待って!寝てもいい…いや良くないけど…!

:焚き火!時間制限がああああ!

:一人で眠りこけるなああああ!

 

◇◇◇

 

 翌朝。

 何の因果か、ナナイは無事であった。

 燃え尽きた焚き火が黒い跡を残し、炭の残骸は朝露に濡れている。

 

「んが」

 

:起きたか…ついに

:…よかったな…乱数に味方されて

:運が良かった。

:俺たちが寝れなかったわ。ゲームの中で夜通し手遊びとか初めての経験だわ

 

「おはようございます……今日は…えー…あー…まあ、いっか」

 

 あくびをひとつ。

 

「…あ、ゲームか。ゲームの中で寝るのは初めてだなぁ」

 

 初めての経験。

 ひとまずは夜を超えたナナイ。

 本当に運だけで乗り越えたのか、ナナイがそれを知るのは少し先の話である。

 

 立ち上がり、体を伸ばす。

 相も変わらずワイルドなインナースタイルだが朝日の影響か妙に様になっている。

 

 ふかふかの土を踏みしめる。

 

「うん。野菜、薬草を回収して〜…あ、リスナーたちに目標言ってたっけ?」

 

:知らない

:初見です

:たしかやけに遠大な目標を掲げてた気がする。

 

「あーしの目標は、畑を作ること」

 

:畑?

 

「紆余曲折ありまして、畑を作りたいんだ」

 

(でも、昨日の夜の景色。すごかった。楽しかった)

 

 ナナイはもう既に、魅了されている。

 夜空に散らばる星の光に、煌々と燃える火に、大地に萌ゆる植物たち。

 日常では味わえない、非日常。

 もう畑を作って、はい終わり、という訳には行かない。

 

「もっと、楽しみたいんだよね。畑作って、家作って…もっと、もっと」

 

 ナナイは手を握り込んだ。

 計画をすることが楽しい。

 これから実現していくんだと、決意するのが楽しい。

 

「そうと決まれば…!」

 

 握った拳を朝日に突き出して気炎を上げながら、ナナイはこう締め括る。

 

「テントだあああ!!」

 

 

:???

:てんと…え?テント?

:畑作ります!→テント作ります!WHY?

 

「冷静に考えて、狼がいる森で裸寝はないでしょ。ハハッ!」

 

:そうだよ。そうだよ?

:ん?うん。うん?

:そうだね。それを昨日の夜に考えついてくれませんか?

:俺たちの徹夜なんの意味があったの?

:↑これは考えるまでもなく意味無いでしょ

 

「それじゃ、簡単なテント立てちゃおっか」

 

 そう言ってからナナイは周囲を探索し始めた。

 この開けた本拠地、あるのは自生した野菜、薬草と数本の樹木。

 ナナイが目をつけたのは樹木。

 アイテムボックスから石斧を取り出す。

 

「いよし」

 

:何する気だ原始人

:いやいやいや

 

「ォ゛ラ゛ァ゛アアアッ」

 

 バカァンッ

 石が樹木の表面に叩きつけられ、硬質な音がバッカロア湖に響き渡る。

 そして、樹木の表面に傷を残したあと、石斧は砕け散った。

 

「あああああ゛ッあーしのウッドデストロイヤーがアアアッ!!」

 

 ドワーフの力が遺憾無く発揮された結果、砕けた石斧は素材にすら力が行き渡り、無情な音を響かせゴミすら残さずに光の塵となった。

 

「ガクッ」

 

 そして、最初に作った力作が消え去ったナナイは膝をつき項垂れる。

 

:草

:草

:草

:おはようございます〜…朝から元気っすね〜

 

「ば、馬鹿な…!呆気なさすぎる…!簡単すぎる…!………まあ、劣悪だししゃあないかぁ…」

 

 木の表面に出来た傷を撫でるナナイ。

 劣悪な完成度の石斧、耐久力はほぼ減っていなかったが一撃で砕けた。

 ただ、斧が砕けるほどの力を加えた一撃は確かに傷を残していた。

 

「…もっと効率的な方法はある…んだろうけど…でも!斧を何本も用意すれば切れる…!」

 

:いや、いい感じの木の棒3本掛け合わせて枝葉被せりゃテント完成だろ

 

「あ、がぁ」

 

 そのコメントを見た瞬間、ナナイは力を失い額から地面に滑り込んだ。

 そう。実際問題、今の時点でログハウスなど不可能だし、そもそもテントに丸太は使わない。

 思考回路が回っていなかったのか、はたまたとりあえず木を殴りたかったのか。

 だが確かに言えるのは、正論を言われたナナイは大体…

 

「早く言ええええ!!」

 

:石斧がありゃ木の棒3本なんて楽勝だったのに

:なんなら素手で行けそう

:R.I.P.ウッドデストロイヤーさん。

 

「ウッドデストロイヤーアアアアアアッ!!」

 

 天に吠えるナナイ。

 朝日が歪んで見えるのはきっと気のせいである。

 




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