コミュ障最強剣士、すれ違いで追放され世界滅亡の危機なので幼馴染と一緒にみんなの誤解を解きます!   作:七福燈

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こちら主人公とヒロインの手書き立ち絵です。良ければご覧ください。


第一章 ワインとアザヤカ
第1話 ネタバレから始まる物語。吾輩はワインである コミュ力はまだない


 ネタバレしよう。

 

 この物語は、後に英雄と呼ばれるワインという男性が、仲間と協力しクソ強い剣でクソ強い技を出して、クソ強い魔王を滅ぼし世界に平和をもたらす物語である。

 

 だが、現在まさにすれ違いによる事件が起きていた。

 

 魔王を倒す張本人であるワインは、パーティを追放されかけていた。

 

「えっ……と……それじゃあ……」

 

 パーティハウスの一室。リーダーのカフカは、額に滲んだ汗を拭った。

 

 カフカは、一言で表すならば好青年だ。髪の毛は昼空のような水色をしていて、身長は180cmほどである。機動力と索敵能力に優れる斥候で、温和な性格からパーティメンバーからもよく信頼されていた。

 

「じゃあその……今確認したことは、全部事実ってことでいいんだよね……? ワイン……」

 

「ああ」

 

 ワインがいつも通り、いつもの声色で話しながら真っ直ぐにカフカを見た。

 

「事実だ」

 

 五分前のことである。

 

『その……ワイン、ちょっと言いにくいんだけど』

 

『ああ』

 

『前々からその……色々と俺が注意していたことについてなんだけど、他にも色々と問題があって』

 

『ああ』

 

 カフカがリーダー用の椅子に座りながらなるべく穏やかにワインへと尋ねる。しかし、既に額には汗が滲んでおり、緊張が見えた。

 一方のワインは、カフカの緊張も特に気にしない様子だ。カフカが座っている前に立ち、堂々と後ろで腕を組んでいる。

 

『ちょっと……今から確認することが全部事実なら、このパーティは君には合わないと思うから、悪いけど出て行ってもらうかもしれなくて……』

 

 カフカのその言葉に対して、やはりワインは特に緊張した様子も見せず「ああ」とだけ答えた。その淡白さが、またカフカを少し悩ませた。

 

『まず、俺がいない時の宴会の準備中にじっとしてろと言われたのに皿を二十枚割ったっていうのは……』

 

『ああ。割った』

 

『……やっと手に入れた聖剣を質屋に預けたっていうのは?』

 

『ああ。預けた』

 

『作戦会議中に寝た?』

 

『寝た』

 

『……あれは?』

 

『事実だ』

 

『じゃあこれは』

 

『事実だ』

 

 いつも笑顔を崩さないカフカでも、流石に眉間に皺が寄り指で押さえた。

 

 カフカは、Sランクパーティである『翡翠の道』のリーダーを務めながら、なるべく仲間たちの意見に耳を傾けてきた。しかし最近言われることといえば、ワインについての話である。申し訳なさそうな顔をしたメンバーたちがワインについての相談や遠回しな愚痴をよく話すため、彼も内心ヒヤヒヤしながら過ごしていた。

 

(いいや、でもワインの話も聞かないと!! あいつだけが悪いってことは、ないはず……!!)

 

 そのように思ったカフカであったが。

 

『事実だ。誤認も無い。全て実際に起こったことのため、弁解も無い』

 

 ワインが堂々と全てを認めてしまったため、カフカも返す言葉がなくなってしまった。本当のところをいうと、この問題についてもう少し追求をしたい。しかし、こういったケースでこれ以上事情を問いただそうとすると、ただ相手を責めるようなターンが始まってしまう。カフカはそのことを理解していた。カフカは、最初から責めたくてこの話し合いを始めたわけではないのだ。

 

 そしてもっと恐ろしいのは、この一連の話し合いが僅か五分で行われたことである。あまりにもスピーディすぎる。

 

「じゃあ、まあ……その、あれだね」

 

 カフカが何枚かの金貨を入れた袋をワインに差し出した。

 

「うちはちょっと、合わなかったってことで……。仲間には、俺が言っておくから……」

 

「ああ、今まで世話になったヨーゼフ・カフカ。三ヶ月十二日という短い期間だったがどうもありがとう」

 

 これによりワインは全てのやらかしを自白し、パーティからスムーズに出ていくことになった。

 そうして、運命が魔王を倒すルートから外れてしまったのである!

 

 完。

 

 

「いや完結しちゃいけねえだろォーーッ!!!」

 

 

 この危機について真っ先に察知したのは、アザヤカという19歳の女性である。アザヤカ・マリルは、ワインの幼馴染だ。アザヤカが名であり、マリルが姓である。

 

 アザヤカは、身長が175cmほどもある大柄な女性だ。黒髪に血みたいな赤メッシュが刻まれており、地元の喧嘩じゃ負け無しの…………

 

 

 聖女である。

 

 

 だが、その素行の悪さと貧しい家柄のせいで誰にも予知能力を持つ聖女だと信じてもらえず、格闘家を名乗っている。

 

 しかし、彼女には確かに予知の力があった。だからこそ、ワインたちが世界を救うはずだった未来がいつの間にか世界滅亡へと塗り替わっていることにも気がついてしまった。ただし、見えたのは未来の出来事だけであり、なぜそうなったのかまではわからない。

 

 

 

 

『ほんとだもん!! リュウくんが転ぶのが見えたから石どかしたんだもん!!』

 

 聖女の力は、主に三種類ある。

 まず一つ目が回復魔法と浄化魔法を持つ聖女。いわゆるヒーラーである。

 二つ目が強化魔法を持つ聖女。戦場において、バッファーというのは重要な役割だ。

 

 そして三つ目は、予知魔法である。

 

『あいつ聖女って嘘つきたくて変なこと言ってる!!』

 

『ゴリラ聖女じゃんゴリラ聖女!!』

 

『う゛あ゛あ〜〜〜ん!! 嘘じゃないもん!!』

 

 そして、予知能力を持つ聖女は、百年に一人現れればよい方だと言われるほど稀有な存在だった。

 

 そうした聖女は、代々パラディンやプリーストとして活躍してきた神殿の家系……この世界でいうところの〝優れた血統〟を持つ者から現れると信じられていた。

 

 しかし、神のいたずらか、はたまた意地悪か。とある田舎の、とある身長の高い女の子にその能力が宿ったのである。

 

『おうおうアザヤカ!! 意地悪なこと言われたってママから聞いたぞ!!』

 

『リュウくんに嘘つきって言われて叩かれたあ゛〜〜!!』

 

『泣くんじゃないアザヤカ!! いいか、お前は父さんの子だ。一方的にやられて悔しい! って思ったら倍返ししてやるんだ!! 父さんもな、1000G負けたら次は2000G賭けるようにしてるんだぞ!!』

 

 しかし、彼女の両親は優しかった。まさか自分の子供に予知能力があるとまでは思っていなかったが、アザヤカが嫌な目に遭った時は、このように励まし元気づけていた。彼女の父がギャンブルの話をする時は少々目がイッていたように見えたが、ひとまず優しいのは事実だった。

 

 こうして、アザヤカは父の素晴らしいアドバイスと、ギャンブルで金を使いすぎた父をシバキ倒す母、それを観戦しヤジを飛ばす祖母を見て様々なことを学んだ。その優れた教育のお陰で、誰にも信じて貰えない自分の予知能力を隠しつつ、地元じゃ喧嘩負け無しの聖女となったのである。これこそが、我々の世界で言う「三人寄れば文殊の知恵」ということなのかもしれない。本当にそうか?

 

 

(ワインになんかあったのかもしんねえ。今まではあいつが世界を救う未来が見えてたのに、そうじゃなくなった……!! まさか、冒険してる途中に何か怪我でもしたんじゃ……!!)

 

 未来が変わった理由については、まだわからない。しかし、だからといってじっとはしていられなかった。彼女は、必要そうなものを手当たり次第に鞄に突っ込んで玄関から飛び出した。

 

(あいつが今どこを旅してるのか全然知らねーけど……!! ワイン、絶対にお前を見つけて……!!)

 

「あ、アザヤカじゃないか」

 

「いやなんで普通にここにいるんだお前ェーーーッッ!!」

 

 

 だが、本来なら田舎を出て仲間と冒険に出ているはずのワインは、普通に追放されてしまったので里帰りをしていた。そのおかげで、アザヤカが意を決して旅に出るまでもなく、あっさりと見つかったのであった。

 

 

 そして場面転換。

 

 

「つまり、宴会の準備中にじっとしてろと言われたのに皿を二十枚割り仲間とようやく見つけた聖剣を質屋に預け作戦会議中に寝たことを主に指摘され追放措置を取られたということだ」

 

「ごめん今なんつった?」

 

「つまり、宴会の準備中にじっとしてろと言われたのに皿を二十枚割り仲間とようやく見つけた聖剣を質屋に預け作戦会議中に寝たことを主に指摘され追放措置を取られたということだ」

 

「じゃあテメェのせいってことじゃねえかーーーッ!!!」

 

「そうだが」

 

 アザヤカは、旅支度を詰め込んだ鞄を家の中へ一度放り投げたあと、ワインを食事屋へと連れ込み里帰りまでに何があったのかを一から説明させていた。

 

 

 改めて説明すると、追放された彼の名前はワイン・カミュである。アザヤカと同じ、19歳の青年だ。ワインが名であり、カミュが姓である。

 

 ワインの名前の由来は、あのぶどう酒のワインだ。身長は170cmほどであり、アザヤカよりも少し低い。なんなら、この世界の剣士にしては小柄な部類に入る。だが、その身体は剣士らしく引き締まっており、剣の才能も十分すぎるほどにあった。

 

 その才能の素晴らしさといったら、冒険者の実技試験の際にゴブリン討伐を命じられたのにも関わらず、平気な顔でゴブリンにプラスしてドラゴンを倒し審査員を卒倒させかけたほどだ。なお、その後の面接試験では落ちかけたが実技試験の得点があまりにも高かったためなんとか通過できた。

 

 彼の父親はそこそころくでもない人間であった。いつもヘラヘラ笑いながら酒を飲んでおり、彼が生まれた際、父親の右隣にワインが置いてあったからそのまま「ワイン」と名付けた。

 

 ワインは幼い頃から母親がおらず、父親ともしばらく顔を合わせていない。しばらくというか、十二年くらいである。彼の父親は「俺、カレー作り極めるわ」と言って大剣を持ち家を出てから帰ってきていない。確かに、独り立ちした男がカレーやらチャーハンやらを極めようとして大剣を持って冒険に出るのはよくあることだが、ちょっと帰りが遅い。ワインは、「多分次はミュージシャンになろうとしているのだろうな」と考えていた。

 

 そのような家庭環境のせいか、ワインはあまり常識がなかった。学舎でたまたま隣の席になったアザヤカによく世話を焼かれ、喧嘩もありつつ自然と仲良くなった。喧嘩といっても、基本的にはワインが無遠慮な発言をして、アザヤカがワインをボコボコにするだけなのだが。

 

(多分だけど、こいつが追放されたせいで未来が変わっちまったんだこれ!!)

 

本来ならば、ワインは仲間と共に魔王を倒すはずだった。しかし、彼の空気の読めなさは神すらも予想以上だったのかもしれない。アザヤカは頭を抱えていた。

 

 アザヤカの予知能力は、好きな時に好きなように使えるわけではない。危険や大切なことがある時に、不意に未来が見えるだけだった。

 

 彼女は、ワインが冒険者の資格を取れたと聞いたとき、嬉しく思う反面、寂しくもあった。

 

 元々、彼女は15歳くらいの頃にワインが世界を救う未来を見てしまっていたのだ。だからこそ、彼がこの田舎から出ていくと知った時、「遠い世界に行くんだな」と感じていた。

 

「数ヶ月で帰ってきてこんなことになってるとはさすがに予想できなかったって……!!」

 

「三ヶ月と十二日だ」

 

「詳しい数字はどうでもいいんだわ!!!」

 

 ワインが世界を救うという予知については、誰にも話していない。誰にも信じて貰えないからだ。

 

 幼なじみのワインも、アザヤカの予知については知らない。だから、今このようにアザヤカが悩んでいるのを見て、ワインは「なんて友達思いなやつなんだ」と内心感動していた。実際のところのアザヤカは、世界が滅亡する未来に塗り替えられたのを見てしまい一人で可哀想なことになっているのだが。

 

 

「アザヤカ、君は元気だったか。俺は、君のことを良い友達だと思っているからたまに君のことを考えていた」

 

「そりゃありがとな……元気だったけど今はそんなに元気じゃねえよ……」

 

 アザヤカが項垂れた。

 

 さすがにここで、「実は自分は未来が見えるんですが君がパーティを追放されたことにより世界が滅亡しそうなんですよね」だなんて言えるわけがない。頭がおかしくなったと思われるだろう。

 

 しかし、この緊急事態を知っている以上、アザヤカは彼を放置するわけにもいかなかった。

 

「……あのさ、ちょっと聞きてえんだけど」

 

 アザヤカがおそるおそる尋ねた。

 

「…………なんでそんなやべえことしたの? お前」

 

 彼女は、彼の行った数々のやらかしについて疑問を持っていた。

 

 確かにワインはかなり空気が読めず生真面目が過ぎており、さらに変なところで価値観が古いことがある。それでも進んで人の嫌がるようなことをするような人間ではなかった。

 

『アザヤカ……それはもしかして写影機か!? 魂を取られると聞いたぞ、気をつけろ!!』

 

『アザヤカ、黒ジュースを飲むと骨が溶けると聞いたがそんなに飲んで平気か』

 

 アザヤカがふと、今までのワインの言動を思い出した。これだけでも、結構な問題人物に見えることは一旦置いておこう。

 

 ワインは、基本的に嘘をつかない。だからこそ、先程話していたやらかしは全て本当なのだろう。

 だが、アザヤカは知っていた。ワインという人間は、注意を受ければもう同じ過ちをしないように努力することを。ここまで物事が拗れて追放にまで至ったのには、何かしらのすれ違いがあったのではないかと思っていた。

 

「なんで、か」

 

 ワインは少し眉間に皺を寄せて悩んだ顔をした。

 

「あ……いや、お前を責めてる訳じゃないぞ言っとくけど。ただ、純粋にどういう経緯でそうなったのかが気になんだよ」

 

「つまり、経緯と俺がそうしようと思った感情について話すということか」

 

「まあ、そういう感じ」

 

 ワインはアザヤカの顔をじっと見たあと、やがて口を開いた。

 

「まず、皿を二十枚割ったことに関しては宴会用の酒場でパーティ内の聖女であるサロメ・ワイルドを見ながら自身の下半身をまさぐる不審者がいたためこのまま彼女を手伝いに行かせたら危険が及ぶと思い、俺はじっとしていろと言われていたにもかかわらず半ば無理やり手伝いに入った結果そいつに足を引っ掛けられた」

 

「ん?」

 

「そして剣を質屋に預けたことに関しては……」

 

「ちょ、ストップ。待て」

 

 アザヤカが手を前にやった。ストップと言われたため、ワインはストップをした。

 

「それ仲間に言ったか?」

 

 ワインがまっすぐに、本当にまっすぐにアザヤカを見て答えた。

 

「話していない」

 

「なんで言わねえんだそれをーーッ!!!」

 

 こうして、アザヤカによるワインの事情聴取が始まったのである。

 

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