(まだまだ。次は、パパサーチだ。街中でも、スーパーバクテリアくんのクラフト方法が降りてきたんだから、材料が遠距離でもちゃんと明確なビジョンがあればサーチしてくれる……はず)
父性満タン!
(パパサーチ!荒地が緑地になるような、なんか良い方法を教えてくれ!)
――…………
(頼む!)
――…………
ライチの願い虚しく、脳内には何の声も響かない。
(……そうかぁ。そうだよな。“なんか街を綺麗にしたい!”ではスーパーバクテリアくんもクラフト方法を教えてもらえなかったし、“こんなものを作りたい”が具体化されてないと、作り方は教えてもらえないんだよな)
「具体化、ったってなぁ……。魔力ってなんなんだ? なんで魔力で緑化する? 貴族はどうやって魔力を土地に流してるんだ?」
具体的にイメージするには、ライチはまだ無知すぎたようだ。いや説明は一度受けているのかもしれないが、脳内には四十文字ほどしか残っていない。これはいかん。
ここは、最強のアドバイザーの出番である。アルフィアーナに頭を下げて、虫けらレベルまでレベルを下げて再度説明してもらうしかない。
(どうやって体内のエネルギーを土地まで届けるのか、だよなぁ)
「あ〜〜〜〜」
「ペサちゃん、終わったよ。ありがとう」
ペサに声をかけ、荒地を見渡す。
土を一つまみ拾い、さらさらと落としてみた。
この地面に直接父性エネルギーは流れなかった。
貴族はどうやって領地の各地に魔力を送っているのだろう。そこに乗っからせてもらうしかないのだろうか?
(サーチも無反応だったし、もしかして……この荒地を使う案がそもそもダメ?)
空いた土地に、郊外村の手すきの人がいるなら、それが一番だと思ったのだが。
(スピネラ村あたりの森に注ぐ魔力を、オスティアくらいまで増やしてもらえれば、収穫量は増えるはず……でも、大量生産とは言えないだろうし、やれるならとっくにやってるよな)
「ライチ?」
「ごめん、もうちょっと考え事させて」
ペサは「はーい」と返事をして、暇つぶしに石を集め始めた。ライチは思考を続ける。
(物理的に現代知識チートで荒地開発!とか?)
必要なものを考えてみる。
・カチカチの土地がふわふわになるまで耕すパワー。
・土壌を砂から栄養のある土に改良するもの。
(あっ、水も引いてこないと)
・水路
ショベルカーでもないと、どれも叶わなさそうだ。
(ショベルカーみたいなものをクラフト!……ってのも、無理だよなぁ。手仕事でできるクラフトを教えてくれるだけだもんな、俺のスキル。蒸気機関とかエンジンとか、作れる技術も知識もないし……)
「はぁぁぁ……」
ライチは乾いた荒地を眺めながら、大きくため息をついた。
「結構大ミエ切っちゃったからなぁ、やばいぞ」
(アルフィえも〜ん!土地の魔力のこと、教えてぇ〜!)
手詰まりになったライチは、空に心中で叫ぶ。
(さて困ったぞ。“大量生産とか無茶振りされても、神様のスキルもあるし、よゆーよゆー”くらいに構えていたのに……)
この調子では、首と胴体が泣き別れる未来もすぐそこだ。
「元気ないね? 悲しいことがあった? 鳥につつかれた?」
ペサが顔を青くするライチを心配して顔を覗き込んでくる。
「ありがとう。ちょっと次のものづくりが上手く進まなくて、この先が心配になったんだ」
頭を撫でながら笑いかけると、ペサが突然、しゃがみ込んだ。
「ペサのすごいとこ見せてあげるから、元気出して」
そう言うと、ものすごい正確さで、集めた石を積み上げ始める。ジンバブエのバランシングロックのように、平らな面だけでなく、斜めに傾けても難なく積み上がっていく様子に、ライチは釘付けになった。
「えっ、えっ、すごい、そんなガタガタな置き方で、こんなに高くできるの? 才能がすごい!」
中心がずれまくっているので、すぐにでも倒れそうだ。無意識に振動を与えないように、身体を固まらせてしまう。
「遊ぶものがたくさんはないから、こういう遊びはよくするんだ。いい場所が分かれば、どんなにズレてても積み上がるんだよ。――へへん、すごいでしょ。ペサは村で一番、石積みが上手いんだ。元気、出た?」
確かに、今このときは恐怖心やプレッシャーから解放されていた気がする。
「とっても元気になったよ。すごい特技を見せてくれて、ありがとう」
ペサはにっこりと満足気に笑って、ライチと手を繋いだ。
(天使だ……父性が滾る。……あ〜、荒地に使いたい……)
収穫がないことを収穫して、二人は村へ足を向けた。
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「おっ、おかえり。さっき入れ違いで、街への塗りつけが完了したって報告があったぞ」
ラボルが嬉しそうに報告しに来てくれた。
「おお〜!早すぎる!やった!これはお祝いですね!街をみんなでチェックしがてら、生モノを買いに行って、宴会にしましょう!」
きっとアルフィアーナが何かいいヒントをくれるはず。ライチはひとまずそう思い込んで、目の前のねぎらいに集中することにした。
自分の依頼を、二日もかけて全力でこなしてもらったのだ。お礼をせねば。
ドッと盛り上がる周りに、ラボルが釘を刺す。
「いや、もう充分報酬は先払いでもらってんだ。これ以上は施しのしすぎになっちまう。人によっかかりすぎたら、自分で立てなくなっちまうからな」
その言葉に「そういやそうだな」「そりゃそうだ」と同意の声が乗ってトーンダウンしていく。
「街が綺麗になったんで、今後、下水掃除を頼まれなくなると思う。だから、手が空いた分、代わりにライチさんの力になれることを、何かさせてほしい」
ラボルの提案に、ライチは、「う〜ん」と考えた。
「…………あっ! 今取り掛かってる事が落ち着いたら、俺支払いで小さめの桶を大量に購入してくれませんか? 街の各家庭に配っても余るくらい。その小さめの桶にスーパーバクテリアくんを塗った、“汚物や生ごみが消える小桶”を、大量に作ってほしいです」
「村でも作るように言ってたやつだな。確かに、何でも不要で臭いものを放り込めば、すぐにヘドロになってくれる優れもの、だもんな」
ラボルが一つ頷く。
「そうそう、それです。お試しで、小桶一つだけは各家庭に無償配布する予定なんです。追加で欲しい場合は、有料にする感じでいこうかなと、実は計画してて」
郊外村にお願いしたときから、街にも普及させたいなと思っていたものだ。こちらも、利益は出ないだろうから慈善事業だ。
これで、窓からべしゃべしゃとうんk……が降ってくる光景ともおさらばのはず。
「なるほどな。やるときにはいつでも声かけてくれや」
「新しい依頼もまたあるらしいぞ」「またさっさと終わらせてビックリさせてやろうぜ」などの声があちこちからあがる。皆、今回の依頼に全力を出し切ってくれたようで、達成感に満ちた顔つきで笑っている。
「では、次の依頼の報酬の前払いということで……」
ざわめきがピタリと止まる。
「今日は宴会だ〜〜!!」
ライチのあげた声に、世界大会で逆転勝利をしたかのような雄たけびがあがる。
「“えんかい”……ってなぁに? この間の“生モノ祭り”とは違うの?」
ペサが可愛らしく小首を傾げた。