パパは異世界ATM   作:taniko

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第108話 石積み

 

(まだまだ。次は、パパサーチだ。街中でも、スーパーバクテリアくんのクラフト方法が降りてきたんだから、材料が遠距離でもちゃんと明確なビジョンがあればサーチしてくれる……はず)

 

 父性満タン!

 

(パパサーチ!荒地が緑地になるような、なんか良い方法を教えてくれ!)

 

 ――…………

 

(頼む!)

 

 ――…………

 

 ライチの願い虚しく、脳内には何の声も響かない。

 

(……そうかぁ。そうだよな。“なんか街を綺麗にしたい!”ではスーパーバクテリアくんもクラフト方法を教えてもらえなかったし、“こんなものを作りたい”が具体化されてないと、作り方は教えてもらえないんだよな)

 

 

「具体化、ったってなぁ……。魔力ってなんなんだ? なんで魔力で緑化する? 貴族はどうやって魔力を土地に流してるんだ?」

 

 具体的にイメージするには、ライチはまだ無知すぎたようだ。いや説明は一度受けているのかもしれないが、脳内には四十文字ほどしか残っていない。これはいかん。

 

 ここは、最強のアドバイザーの出番である。アルフィアーナに頭を下げて、虫けらレベルまでレベルを下げて再度説明してもらうしかない。

 

 

(どうやって体内のエネルギーを土地まで届けるのか、だよなぁ)

 

「あ〜〜〜〜」

 

「ペサちゃん、終わったよ。ありがとう」

 

 ペサに声をかけ、荒地を見渡す。

 

 土を一つまみ拾い、さらさらと落としてみた。

 

 この地面に直接父性エネルギーは流れなかった。

 貴族はどうやって領地の各地に魔力を送っているのだろう。そこに乗っからせてもらうしかないのだろうか?

 

(サーチも無反応だったし、もしかして……この荒地を使う案がそもそもダメ?)

 

 空いた土地に、郊外村の手すきの人がいるなら、それが一番だと思ったのだが。

 

(スピネラ村あたりの森に注ぐ魔力を、オスティアくらいまで増やしてもらえれば、収穫量は増えるはず……でも、大量生産とは言えないだろうし、やれるならとっくにやってるよな)

 

「ライチ?」

 

「ごめん、もうちょっと考え事させて」

 

 ペサは「はーい」と返事をして、暇つぶしに石を集め始めた。ライチは思考を続ける。

 

(物理的に現代知識チートで荒地開発!とか?)

 

 必要なものを考えてみる。

 ・カチカチの土地がふわふわになるまで耕すパワー。

 ・土壌を砂から栄養のある土に改良するもの。

 

(あっ、水も引いてこないと)

 

 ・水路

 

 ショベルカーでもないと、どれも叶わなさそうだ。

 

(ショベルカーみたいなものをクラフト!……ってのも、無理だよなぁ。手仕事でできるクラフトを教えてくれるだけだもんな、俺のスキル。蒸気機関とかエンジンとか、作れる技術も知識もないし……)

 

「はぁぁぁ……」

 

 ライチは乾いた荒地を眺めながら、大きくため息をついた。

 

「結構大ミエ切っちゃったからなぁ、やばいぞ」

 

(アルフィえも〜ん!土地の魔力のこと、教えてぇ〜!)

 

 手詰まりになったライチは、空に心中で叫ぶ。

 

(さて困ったぞ。“大量生産とか無茶振りされても、神様のスキルもあるし、よゆーよゆー”くらいに構えていたのに……)

 

 この調子では、首と胴体が泣き別れる未来もすぐそこだ。

 

「元気ないね? 悲しいことがあった? 鳥につつかれた?」

 

 ペサが顔を青くするライチを心配して顔を覗き込んでくる。

 

「ありがとう。ちょっと次のものづくりが上手く進まなくて、この先が心配になったんだ」

 

 頭を撫でながら笑いかけると、ペサが突然、しゃがみ込んだ。

 

「ペサのすごいとこ見せてあげるから、元気出して」

 

 そう言うと、ものすごい正確さで、集めた石を積み上げ始める。ジンバブエのバランシングロックのように、平らな面だけでなく、斜めに傾けても難なく積み上がっていく様子に、ライチは釘付けになった。

 

「えっ、えっ、すごい、そんなガタガタな置き方で、こんなに高くできるの? 才能がすごい!」

 

 中心がずれまくっているので、すぐにでも倒れそうだ。無意識に振動を与えないように、身体を固まらせてしまう。

 

「遊ぶものがたくさんはないから、こういう遊びはよくするんだ。いい場所が分かれば、どんなにズレてても積み上がるんだよ。――へへん、すごいでしょ。ペサは村で一番、石積みが上手いんだ。元気、出た?」

 

 確かに、今このときは恐怖心やプレッシャーから解放されていた気がする。

 

「とっても元気になったよ。すごい特技を見せてくれて、ありがとう」

 

 ペサはにっこりと満足気に笑って、ライチと手を繋いだ。

 

(天使だ……父性が滾る。……あ〜、荒地に使いたい……)

 

 収穫がないことを収穫して、二人は村へ足を向けた。

 

 

 

---

 

 

 

「おっ、おかえり。さっき入れ違いで、街への塗りつけが完了したって報告があったぞ」

 

 ラボルが嬉しそうに報告しに来てくれた。

 

「おお〜!早すぎる!やった!これはお祝いですね!街をみんなでチェックしがてら、生モノを買いに行って、宴会にしましょう!」

 

 きっとアルフィアーナが何かいいヒントをくれるはず。ライチはひとまずそう思い込んで、目の前のねぎらいに集中することにした。

 

 自分の依頼を、二日もかけて全力でこなしてもらったのだ。お礼をせねば。

 

 ドッと盛り上がる周りに、ラボルが釘を刺す。

 

「いや、もう充分報酬は先払いでもらってんだ。これ以上は施しのしすぎになっちまう。人によっかかりすぎたら、自分で立てなくなっちまうからな」

 

 その言葉に「そういやそうだな」「そりゃそうだ」と同意の声が乗ってトーンダウンしていく。

 

「街が綺麗になったんで、今後、下水掃除を頼まれなくなると思う。だから、手が空いた分、代わりにライチさんの力になれることを、何かさせてほしい」

 

 ラボルの提案に、ライチは、「う〜ん」と考えた。

 

「…………あっ! 今取り掛かってる事が落ち着いたら、俺支払いで小さめの桶を大量に購入してくれませんか? 街の各家庭に配っても余るくらい。その小さめの桶にスーパーバクテリアくんを塗った、“汚物や生ごみが消える小桶”を、大量に作ってほしいです」

 

「村でも作るように言ってたやつだな。確かに、何でも不要で臭いものを放り込めば、すぐにヘドロになってくれる優れもの、だもんな」

 

 ラボルが一つ頷く。

 

「そうそう、それです。お試しで、小桶一つだけは各家庭に無償配布する予定なんです。追加で欲しい場合は、有料にする感じでいこうかなと、実は計画してて」

 

 郊外村にお願いしたときから、街にも普及させたいなと思っていたものだ。こちらも、利益は出ないだろうから慈善事業だ。

 

 これで、窓からべしゃべしゃとうんk……が降ってくる光景ともおさらばのはず。

 

「なるほどな。やるときにはいつでも声かけてくれや」

 

 「新しい依頼もまたあるらしいぞ」「またさっさと終わらせてビックリさせてやろうぜ」などの声があちこちからあがる。皆、今回の依頼に全力を出し切ってくれたようで、達成感に満ちた顔つきで笑っている。

 

「では、次の依頼の報酬の前払いということで……」

 

 ざわめきがピタリと止まる。

 

「今日は宴会だ〜〜!!」

 

 ライチのあげた声に、世界大会で逆転勝利をしたかのような雄たけびがあがる。

 

「“えんかい”……ってなぁに? この間の“生モノ祭り”とは違うの?」

 

 ペサが可愛らしく小首を傾げた。

 

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