始まりは些細なことだった。
いつも通りの日常。
その日は親の命日だった。
どうしようもない親だったけど焼香くらいは立ててやろうと決めた。
だからイギリスから飛行機で日本に帰ることにした。
それがいけなかった。
今までバレたことのない偽造パスポート、偽造住民票。
嘘の出生記録に嘘の死亡届、偽造免許証などなど全部バレた。
なんでさ。
それも4回分。
なんなら、嘘の婚姻届けもバレた。
すごい目で警官に見られた。
恥ずかしくて死にたかった。
いや、4回分だけでよかったのかもしれない。
ただ警察は超能力者だと思う。
だって、魔術で隠していたはずなのにバレたから。
陰陽師なのに魔術を使うなって?
陰陽師より魔術師の方が向いてんの俺は。……多分。
そんな中で救世主は現れた。
名前はマリスビリー・アニムスフィア。
時計塔のロードの一人。
そんな男が俺の無実を証明した。
一体どうやったんだろうね。
事実を嘘にしやがったよあの人。
まあ、時計塔のロードを務められるような人間が何の見返りも無く助けてくれるわけもなく。
彼が作る組織、カルデアとやらへの参加を要求された。
勿論、速攻で了承した。
それが私がカルデアに来るまでのあらすじだ。
「と、こんな感じでいいかい。精霊さん」
目の前にいる見た目少女の中身BBAに聞く。
「あんた、頭の中で変なこと考えてるでしょ」
「そんなことないさ。至って真面目に今後の生活について考えているさ」
見た目少女の中身BBAこと芥ヒナコの問いにそう答える。
彼女とは古い顔見知りだ。
他にも数人、カルデアには顔見知りがいて嬉しい。
平安生まれ、平安育ちの私にとっては顔見知りは少ないのさ。
「今はなんだったっけ?ヒナコだった?随分と日本人らしい名を名乗ってるね」
「別に、マリスビリーが勝手に決めたものだし」
「あっそ、というかその本面白い?」
「別に」
同じ日本人同士というカバーストーリーのお陰で二人で話していても違和感がないのはありがたかった。
他の知り合いはみんな時計塔のメンバーだからね。
腹を割って話しにくいわけよ。
派閥争いも存在しているわけだしさ。
ああ、そういえば一人、派閥争いと無縁そうな人がいたな。
ベリル・ガット。
正直、あんまり話したくない。
言ってることと内心の感情の違いが気持ち悪いからね。
あれってどっちも本心なのかな?
なんて考えていると、ヒナコに無言で部屋を追い出された。
ひどいよね。
***
「ロマ二~、お菓子ある?」
「わぁ!急に来るなよ吉明、びっくりするじゃないか」
ロマ二・アーキマン。カルデアの医療部門のトップ。
さぼり癖があるが仲のいい職員の一人だ。
「いいじゃないか、減るもんじゃないし」
「食べたら減るよ!」
「体重は増えるけどな」
「やかましい!」
こんな感じで冗談を言い合えるのはいいよね。
今も昔も権力争いばかりで辟易するから、これくらいの関係の友達がいないと疲れ果てて死んでしまうよ。
今更ながら私はレイシフト適正とやらもマスター適正とやらも一応あるらしい。
まあ、緊急事態でもない限りどっちもやらないわけだが。
立場的には戦闘面での指導役、ということになっているが、先ほどのヒナコやベリルを始めとするAチームの面々に指導なんていらないと思うからね。名誉職のような物さ。
要するに社内ニートという奴だね。
「ロマ二~、落雁ってある?」
「キミが食べたじゃないか」
「そうだった。年を取ると忘れやすくなって大変だよね」
「キミも僕もそんな年じゃないと思うんだけど…」
まあ、戸籍上は28歳くらいにしてたはずだしね。
実年齢は100を越えたあたりから数えるのをやめた。
今は大体1000歳くらい?
数え間違いだと思いたいよね。
これでも4分の3人間なんだぜ、信じられる?
2分の1人間の父親ですら80代で死んだというのに。
他の兄たちも100には届かなかった。
そう考えると寿命だけは祖母に似たのかな?
見たことないけど。
「ロマ二、今の私たちって職務放棄してるわけじゃん」
「そうだね」
「君の後ろに呆れ顔の金髪イケメンがいるのは気のせいだよね」
「……」
「気怠そうな苦労人も増えた」
「……」
「仕事、再開しよっか」
「そうしよう」
こうして私たちのさぼりは終了した。
***
そうこうしているうちにレイシフト当日。
「レフかい。何の用か聞いてもいいかい?」
目の前にはレフ・ライノール。
「吉明、ロマ二がどこにいるか知らないか?Bチームの中に不調を訴える者がいる」
「知らん。医務室じゃねえの。大方、所長からさぼりへのお叱りを受けることが怖いんだろ」
「そうか、通信で呼びかけてくるよ」
「ああ、そうしろ」
レフはロマ二に呼びかけている。
ん?ちょっと待てよ。レフが通信で手が離せない今、所長の愚痴は全てこっちに向くと。
よ~し、あいつは後で殺す。
「ちょっと、吉明。レフは?ロマ二もいないじゃない」
「そんなことを言われましても。ロマ二はさぼり、レフは呼びに行きました」
オルガマリー・アニムスフィア。マリスビリーの娘でカルデアの新所長。
マリスビリーの死後跡を継ぐ形で所長に就任した。
そして、機嫌が悪い。
今日はいつにも増して機嫌が悪い。
「そう、もうすぐレイシフトが決行されるというのに」
「そんなにイライラしていたら成功するものも成功しないよ。私たち凡人は天才様方とは違うんだ、凡人は凡人らしく、ゆっくりと一つ一つ積み重ねればいいんだよ」
「貴方にそう言われると嫌味にしか聞こえないんだけど」
「酷くないですか所長」
その言葉とほとんど同時だった。
ドン!!
そんな音がした。
「守符!」
結界用の符を展開するが間に合わない。
いや、自分を囲うには足りた。
周りの者達が燃えて消える。
爆発。
何故?
今は考えるべきではないと分かっている。
煙が晴れる。そこにはカルデアスが浮かぶのみ。
人の姿は見えない。
先ほどまで目の前にいたオペレーターも隣で話していた所長も
少し離れた場所にいたレフもコフィンの中にいたマスター候補たちも。
「吉明!」
声がする。ロマニだ。
「済まん。俺しかいない」
「誰ですか、この怪しい人」
ロマ二の後ろから声がする。
優しそうな少年だった。
「怪しいとは心外な。まあ、こんな爆発で生きてたら怪しいか。安部吉明。カルデアの職員だよ」
「藤丸立香です」
「自己紹介の途中で悪いが、発電量が足りていない。僕は地下の発電所に行く。吉明、藤丸君のことを任せたよ」
「全く。疑いもせずにお人よしが」
ロマニが走り去っていく。
「それじゃあ私たちは戻るよ。藤丸君」
返事がない。
辺りを見渡す。
藤丸は……いた
「藤丸君!そっちは危険だ!」
───観測スタッフに警告。
───カルデアスの状態が変化しました。
───シバによる近未来観測データを書き換えます
───近未来100年までの地球において人類の痕跡は発見できません。
───人類の生存は 確認 出来ません。
───人類の未来は 保証 出来ません。
藤丸の元へ走る。
そこには倒れたマシュという少女がいた。
「駄目だ、もう助からない。君は一刻も早く戻るべきだ!」
───適応番号48“藤丸立香”をマスターとして再設定します。
カルデアスによる放送は続く。
───アンサモンプログラムスタート霊子変換を開始します。
「せん…ぱい…」
「…うん」
「手を…握ってもらっていいですか───?」
聞こえてねえ。
───全工程完了ファースト・オーダー実証を開始します。
次の瞬間、目の前に入ってきたのは、燃え盛る町だった。
炎上汚染都市:冬木
人物紹介
安部吉明
本作の主人公。日本出身の陰陽師。
本人曰く実力は下の上。(平安基準)
一応時計塔に所属しており、数十年ごとに表の世界では戸籍を変更している。
マリスビリーの勧誘でカルデアに入る。
クリプターで仲がいいのは
ヒナコ>カドック>キリシュタリア≧ペペロンチーノ≧オフェリア≧ベリルの順番。
そもそも作者が2部攻略の途中なのでクリプターのキャラを掴めてないという。