天涯孤独のお人好し青年は神に与えられた加護でダンジョン世界を無双する 作:木刀
彼が生まれて間もなく両親は鬼籍に入り、それから親代わりに面倒を見てくれていた父方の祖母も12歳の頃に亡くなってしまった。彼は長子であるから兄弟もいない。
祖父は、彼が生まれるずっと前に亡くなっているし、両親はどちらも一人っ子で、母は家を捨てて出てきた人だった。
つまり、端的に言えば「天涯孤独」というのが彼の身の上だった。
祖母が亡くなって以降は行政の手を借りながら児童養護施設で多くを過ごし、高校を卒業してからはアルバイトで得た収入を使い、施設の子供たちを助けていた。
高卒で、保証人となる親戚なしという立場では就職が上手くいかず、また本人も他者と競争して勝ち残ろうという気質でなかった。
今は駅前の喫茶店「Cafe
くるくるとした癖毛に、母親似だと祖母に言われた中性的で優しい顔立ち。運動は得意じゃなかったが、なかなか引き締まった体付きをしていた。
面食いの女性オーナーは面接もせずに彼を雇い入れ、結果、女性客が増えて売り上げは増えた。
出勤時は誰よりも真面目に働き、休暇日には施設の子供たちを買い物に連れて行ったり、街の美化運動などのボランティア活動に励んだり。
どこかで災害があればアルバイトを休んで遠征し、炊き出しや被災家屋の片付けなど、復興ボランティアにまで参加していた。ちなみに、売り上げ増で気を良くしたオーナーにこうした活動を反対されることはなかった。
目の前で困っている人がいれば見過ごせず、損をすることもしばしば。
それでも笑って引き受けられるのは、祖母の遺した言葉のお陰だった。
『死ぬまで良い人間のフリを続けりゃ、本物さ』
良いことをしようとすると必ずぶつかる「偽善」という心無い言葉。
それに対する祖母の回答に、少年時代の彼は救われていた。
実際、祖父も最期まで「良い人」を続け、祖母は大分苦労したようだった。
それでも祖母は、祖父のことを語る時は楽しそうだった。
ただ「友達でも借金の保証人にだけはなるんじゃないよ」とは言っていたけれど。
以降、宗太は偽善だとなんだと言われようと気にしないようになり、より善行に励むようになっていった。
そんな彼は同年代の友人には恵まれなかった。
それはそうだろう。彼を誘えば、やることがあるからと言って断り、何をするのかと聞けばボランティアや近所のお年寄りの手伝いをすると言うのだ。
そんな答えを聞いてしまえば、周りの子は、感じなくて良い罪悪感を覚えることになる。
どの学校でも、しばらくすると誰も彼を誘わなくなっていった。
一方、良い人であり続ける彼に人望はあった。だが、それは彼が関わろうとする弱い人々からのものであり、何か見返りがあるわけではなかった。
ありがとうの一言が、彼にとっては何よりの糧だった。
可愛らしい顔立ちをしているため女性に言い寄られることもあったが、休みの日はボランティアなどやることがいっぱいで断るしかなく、まるで縁が無かった。
そんな姿を見た多くの者……特にお年寄りたちが地元の神社でこう祈ることになる。
『どうか、
そして、それは神々に聞き入れられることになった。