天涯孤独のお人好し青年は神に与えられた加護でダンジョン世界を無双する 作:木刀
「で、これが
「はい、
閉店間際のCafe
残業を終わりに寄ってくれた常連の女性に、僕はお願いごとをしていた。ちなみにラストオーダーは過ぎているため、他のお客さんはもういない。
長く綺麗な黒髪をポニーテールにした勝気そうな雰囲気の美女で、スタイルも抜群。
公務員ということらしく、来店時はいつもパンツスーツ姿がキマっていた。
僕も、オーナーが店に出ている時は、よく世間話に巻き込まれていた。
「仕方ないなぁ、時間外労働だけど協力してあげますか」
「お願いします!! お礼は必ずしますんで……」
「え、ホント? じゃあ、張り切っちゃおうかなー」
礼依さんは半紙を手に取ってジーッと見た後、テーブルの紙ナプキンにバッグからペンを取り出して何かを書き出した。
「コレ、鑑定結果ね」
「え、もう終わったんですか!?」
「うん。読んでみて」
僕は手渡されたものを慌てて読む。
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半紙(A++)
耐久値 82/100
墨などで文字を書くために使われる紙。
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あれ、なんか普通……。
僕が拍子抜けしていると、彼女は微笑んで言う。
「大丈夫よ。品質は凄く高いけど、それだけ。呪われてたりってことはないわ」
「そうですか…良かった……あの、ありがとうございました」
僕が安堵の溜息をついていると、礼依さんは悪戯そうに笑った。
彼女に似合ったその表情に、僕は少しドギマギしてしまう。
「良いわよ別に。お礼してくれるって話だったし」
「はい、もちろん。…あ、でも、実はあまりお金は無くてですね……」
おずおずと正直に伝える。今あるお金は、家賃と、
そんな事情を知っている
あれ、そういえば一石二鳥ってなんのことだろう?
「宗太くんって、明日お休みよね。またボランティア?」
「いえ、明日は夕方頃に園の方に顔出そうかな、と」
「今日は、疲れてない?」
「え、ええ、全然平気ですけど……」
実際、呪われたかもだなんて騒いだ割に、あれ以降どこか怠いだの痛いだのということは無かった。むしろ体調的には、今まで生きてきた中で一番のコンディションかもしれない。
「じゃあ、宗太くんの仕事が終わったらデートしましょう」
「え? いやでも、お金が……」
「大丈夫。私が奢るわよ、年上だもの」
◇
「なんかこれ、ユニークスキルの名前みたいね」
「ユニークスキル?」
しかし、僕には何のことやらさっぱり分からない。
どこかで聞いたことがある気もするけど。ユニーク……面白い、スキル?
「そう。私の【鑑定】なんかもユニークスキルのひとつなんだけど……ちょっと書かせてね……有名なのだとSSRの【縮地】や【堅剛】、【強運】なんかもあって……」
またペンを取り出し、メモにサラサラと書き出していく礼依さん。
喫茶店を出る前と比べて顔や首元が少し赤くなっていて、色っぽい。
やがて、僕の書いた例の文字の一覧の横に、今言ったユニークスキルの名前を書いたものを見せてくれる。
「……少し似てますね」
「でしょ? しかも、その上位種として【鑑定+】や【強運+】みたいなものも存在するのよ」
「え、なんか凄く似てる気がしてきました」
「ね。ちなみに【鑑定+】になると、無生物だけでなく、生き物のステータスを見られるようになるのよ」
「生き物?」
「例えば、モンスターとか……人間とかね」
「ちょっと怖いですね……あ、もう残り少ないですね、次は何飲みます?」
タブレット端末を手に取って、次の注文を尋ねる。
僕は、さっきと同じ柚子レモンサワーにしよう。甘くて美味しかった。
「じゃあ、カシスオレンジで……まぁ、貴重で戦闘向きでないユニークスキル持ちが、モンスターと直接相対することなんてないけどね。特に【鑑定+】持ちなんて、好条件で大企業に囲われて、こんな田舎に出てこないわよ」
注文を終えて、タブレットを充電器に戻す。
そのタイミングで、ああ…と思い出す。
「そういえば、いくつかのエントリーシートにありましたね、ユニークスキルの欄。すっかり忘れてました」
「Cの【暗算】とか、希少性の低いユニークスキルでも、企業では有用なものもあるしね……そういえば【栄達】って、出世するとか、立派になるとかって意味よね」
「じゃあ【栄達】が消えて他の文字にプラスが付いたのって……あ、ありがとうございます」
居酒屋のスタッフさんが届けてくれた飲み物を受け取って、小さなテーブルのあちらとこちらに置く。代わりに、空いたグラスとお皿を下げてもらう。
「一度きり【ユニークスキルの強化をするユニークスキル】ってことなのかもね。私はそんなの、聞いたことないけど……まぁ、あり得ないとは言えないわ」
「そうなんですか?」
「ええ。何なら、宗太くんの見た文字が消えるトリックも、ダンジョン産のアイテムを使えば可能なのかもしれないわよ」
「え!?」
「もしかするとだけどね。ダンジョンのことなんて、ほとんど分かってないもの。駅裏の旧城跡ダンジョンもそうよ。今でも全然、新発見のアイテムが出てきたりするわ」
礼依さんのその言葉に、僕は驚いてしまった。
「なるほど。もしかすると……どこかの誰かがダンジョン産のアイテムを使って、未知のユニークスキルを妄想したり、再現したりしているのかもしれませんね」
フワフワとはしているけど納得できそうな説を見つけられただけで、僕は安心できた。
カシスオレンジのグラスに口を付けていた礼依さんは、ジーッと僕を見つめた後、少し考えて言った。
「それか、宗太くんが良い子過ぎて、神様が凄いユニークスキルを沢山プレゼントしてくれたのかもしれないわよ? いつも、プレゼントする側だものね」
「まさかそんなわけ……でも、ありがとうございます」
「ふふ、どういたしまして」
僕のお礼の言葉に、わざとらしくおどけたようにお辞儀をする礼依さん。
それが面白くて、少し笑ってしまった。
なんだか久しぶりに、身体の力が抜けたような気がした。
◇
「それにしても、宗太くんってお酒強いのね」
「あれ、そういえば全然平気ですね……前回、成人のお祝いでオーナーに飲まされた時は、すぐ前後不覚になっちゃったんですけど。身体が慣れたのかな」
「くっ、話が違うわよ由希子ママ……」
「え?」
「いえ、こっちの話よ」