天涯孤独のお人好し青年は神々に与えられた加護でダンジョン世界を無双する 作:木刀
「
閉店間際のいつもの時間帯。
僕の働く
「あの……とりあえずご注文をどうぞ」
「あ、ごめんなさい。いつもの、持ち帰りでお願い」
つまり、グリルサンドとアイスコーヒーのセットだ。
砂糖とミルクは要らない、と。
「はい、かしこまりました。お話なら、カウンターで聞きますよ」
もう他にお客さんもいないので、キッチンで作業しながら話を聞こう。
礼依さんがカウンター席に着いたのを見てから尋ねる。
「それで、急にどうしたんですか?」
「……ごめんなさい、先に質問しても良いかしら? きっと、その方が早いわ」
僕は「どうぞ」と言って肩をすくめる。
こちらをじーっと見つめながら、礼依さんは質問を始める。
「宗太くんって、ダンジョンに行ったことないわよね?」
「はい、ありません」
「どちらかと言えば器用な方?」
「そうだと思います」
「最近、凄く体調が良いでしょう?」
「まあ、そうですね」
「そして、不思議なくらい疲れない」
「……え?」
それを聞いて、僕は驚いた。
たしかにここのところ、仕事をしていても、ボランティア活動をしていても、ほとんど肉体的な疲れを感じなくて不思議に思っていたところだった。しかし、それを誰かに言ったことは無い。
なんか少し怖くなってきたぞ……。
「ごめんなさい、不躾に。私のユニークスキル、実は【鑑定+】なのよ」
「え? こないだは、ただの【鑑定】って言ってませんでした?」
「そうなんだけど……今はそうじゃないのよ。ちょっと説明が難しいのだけれど。
あ、宗太くん、これは秘密にしてね。上にバレると色々面倒くさいから」
「なんだかよく分からないですけど、了解です。
えーと【鑑定+】になると、生き物の
「ええ。名前、ジョブ、レベル、状態に各種ステータス値、そしてスキルね」
「それと、僕をダンジョンに誘うのと、どう関係するんです?」
「……ちょっと待ってね」
礼依さんはそう言って、カウンターに設置してある紙ナプキンを一枚手に取り、以前と同じように何かを書き出した。
そして、少し時間をかけて書いたそれを、僕の方へ置く。
作業中だった僕は、キリのいいところで手を洗ってから受け取った。
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【ステータス】
名前
ジョブ 無職
レベル 1
状態 健康
残存体力 100/100
残存魔力 100/100
筋力 10
知力 10
敏捷 11
器用 15
幸運 12
────────────────────────────
【戦闘スキル】
なし
【固有スキル】
天賦+(取得経験値、熟練度、ステータス成長率+700%)
巨蔵+(アイテムボックス容量700t)
戦勝+(戦闘スキルと魔法の効果+700%)
豪運+(通常ドロップ率700%、レアドロップ率350%)
無病+(全耐性獲得、状態異常を完全に無効化する)
豊穣+(体力と魔力が常時超回復する)
────────────────────────────
紙ナプキンには、見たことのある字面がいくつか並んでいた。
僕の書いたメモの中身を暗記していたのだろうか。
「それは宗太くんのステータスよ。今、私のスキルで貴方を見ながら書いたの」
「………え?」
じゃあ、あれって本物のユニークスキルだったの??
◇
話はまだまだ長くなりそうということで、続きは閉店作業を終わらせた後、僕の家でということになった。部屋に女性を入れるのは二度目。いずれも礼依さんだった。
部屋の電気とヒーターを点けて、二人でグリルサンドを齧る。
夕食を作る暇がなさそうだったので、僕も同じメニューを作って持ち帰ってきた。
ちなみに、
閉店時間帯がワンオペだった時のボーナスみたいなものだった。
僕は、先ほど書いて貰った紙ナプキンをちゃぶ台に広げて聞いた。
「えーと、結局これってどういう意味なんですか? 僕、こういうの疎くて」
「宗太くんってゲームとか……やらなそうね」
肩をすくめ、礼依さんに部屋の中を指し示す。
「ええ、見ての通り家にはテレビすらありませんし、スマホも一番安いやつですから」
「うーん、そうよねぇ」
どう説明するべきか、と困った様子を見せる礼依さん。
なんだか少し申し訳ない。
「つまり、すごく簡単に言えば……めちゃくちゃ稼げるってことよ」
「え、稼げるって、どれくらいですか?」
「そうね……まずは宗太くんにオススメの職業について教えるわ」
「お、お願いします」
礼依さんは畳に置かれたバッグから一冊のパンフレットを取り出した。
白く細い指でページがめくられ、止まる。
そこには大きな三つの円が描かれていて、それぞれの中央には、
【探索者】【討伐者】【冒険者】と書かれていた。
同時に取り出したペンの先で示しながら、説明が続けられる。
「まず、ダンジョンに潜る人たちは大きく三種類に分けられるわ。
ダンジョン内をマッピングして各種情報を持ち帰る、探索者。
強力なモンスターを倒してドロップ品や報酬を狙う、討伐者。
そして、最も危険な未踏破区域を進んで攻略をする、冒険者ね」
「は、はい」
「でも、探索用のユニークスキルを持たない宗太くんに探索者は向かないわ。
「なるほど……」
ぴっ、ぴっ、と【探索者】と【討伐者】の上にバツ印が重ねられる。
じゃあ【冒険者】か、と思っていたら……これにもバツがつけられた。
「宗太くんのスキル的には冒険者に最も向いてそうだけど、これも難しいわ」
「えっ、どうしてですか?」
「冒険者は上級者向けというか……例えるならチームでエベレストの登頂を目指すようなものなのよ。メンバーを集め、装備を整え、数日かけてアタックする。たしかに成功すれば実入りは大きいけれど、元手となるお金と時間の余裕が必要なの」
「それは無理ですね……でも、そうなると何も残ってませんよ」
「いいえ、大丈夫。ほら、こっち」
礼依さんがひとつページをめくると、そこには小さい文字で何か色々書かれている。
「“ダンジョンを支える人たち”?」
「主にさっきの三つをサポートする職業ね。多分、今の宗太くんにはこれが向いてるわ」
クルクルと、礼依さんがペンで二重丸をつけた場所に目をやる。
そこには小さく【収集者】と書かれていた。