佐渡侵攻が終わってから3日後、俊道は、一条家に呼ばれた。
どうやら剛毅殿は先の戦いでの活躍が気になるようだ。
一条宅では現在、一条剛毅、俊道が剛毅の部屋で対話している。
「わざわざお呼びになってくださりありがとうございます。しかも、夕ご飯までもご馳走して下さって。」
「いえいえ、こちらが呼んだ身です。もてなしをするのは当然でしょう。」
挨拶も終わり、俊道から話を切り出す。
「それで私の先の戦争での活躍が知りたいのでしたら、私が答えられることは分かりませんとしか言いようがありません。」俊道は困った様に言う。
「何?....そうか。(この反応を見るにどうやら本当のようだな。)」
瞬間声が俊道と剛毅2人の頭の中で響く。
『いいよ。僕が話してあげる』
「えっ?!」 「?!」 突然の声に2人は戸惑う。
それでも俊道は意識が落ちる前に聞いた声であると認識し、剛毅はあの時の剣士の声であると認識した。
『でも流石に、思念を伝えて話すのは、かなり疲れるから。俊道。一度体を貸してくれないか?』
「どうやって?」俊道は困惑した様子で問う。
『簡単さ。君の中に僕が居るんだ。互いに認識している今なら、君の同意一つで簡単に切り替わることができる。』と剣聖は言う。しかし、
「貴様は妖魔の類ではないのか? 」
剛毅は力強く剣聖に問う。だが、その疑問に答えたのは剣聖ではなく俊道である。
「私には分かります。これは妖魔ではない。こんな澄み切った生気は見たことがない。」 すぐさま、剣聖が『さすがだね。よく視えてる。』と相槌を打った。
「分かった。私はあなたと切り替わることに同意しよう。
ただ、聞かせてほしい。あなたの名前は?」
『ジン......ただのジンだ。それじゃ変わろうか。でも安心してほしい僕は君の体で暴れたりはしないし、僕と剛毅殿との会話は君にも聞こえる。』
そうして、2人の意識が切り替わる。まるでその合図かの様に、俊道の綺麗で生まれつきサラサラな黒髪は、白銀の少しチクチクした髪型に変わる。さらに、元からとてつもない俊道のサイオン量がさらに2回り以上も増えた。
このサイオン量は十師族でも類見ない量であり、そのサイオンの嵐に剛毅は少し酔うも、サイオンの嵐はすぐ収まった。
「すまない。俊道との完全同意によって、この体が無意識に制限していたサイオンが漏れ出てしまった様だ。僕も驚いて、制御に少し時間が掛かってしまった。」
「そうか。わざとではないのなら良かった。」
実は剛毅は一瞬『爆裂』を使おうかどうか迷っていた。あと1秒でもサイオンの制御が遅れていたら、ジンと剛毅は互いに相打ちになっていただろう。
「それで先の戦争のことだっけ?良いよ。何から知りたい?」
剣聖は剛毅に問う。
「まずは何故今になって出てきた?」
「簡単だよ。主君が死にそうな時に駆けつけただけ。」
ケロッと答える。
「(主君?どうやら何故か分からないが俊道殿に忠誠を誓っている様だな。)
そうか。次の質問だ。あの艦隊を消滅させた魔法は何だ?魔法の発動が確認できなかったがそれは何故だ?」
「そうだなぁ。まずはあれは魔法じゃないよ。僕は魔法をまだ使ったことはないし、使う予定もしばらくない。使ったのは全部剣技だ。」
「何だと?!艦隊を壊滅させるのは戦略級魔法クラスでないと無理なんだぞ!それを魔法どころか剣技でとは、ますます頭が痛くなる。」
「まぁまぁ。落ち着きなよ。一応君らで言うサイオンとは違うエネルギーでかなり身体強化を施しているからあの技が使えるんだ。」
「.....そうか。まぁそういうことなら分かった。」
剛毅はこの答えに対して考えるのを放棄した。当然である。いくら考えようがこの世界の人間にあの超越した剣技を理解できるわけがないのだから。ただし1人だけ例外はいる。
「では最後の質問だ。貴様は魔法界の敵か味方どっちだ?」
「....僕は俊道が魔法界に味方する限り、絶対に魔法界の味方だ。でも俊道に危害を与えようとするのならば、どんな相手だろうが殺す。」
極限まで磨かれた殺気が剛毅を襲う。剛毅は息が出来なくなる。そして、ジンはまだ言う。
「たとえ敵が、人であろうが、国であろうが、神であろうが、俊道に危害を与ようとしたら許さない。ごめんね。殺気出し過ぎちゃった。」
ジンから出ていた殺気が収まると同時に剛毅はまた息が出来るようになる。
「分かった。では、一条家の名に懸けて、私たち一の者は君達に危害を加えさせないし、君たちが助けを必要とする時、必ず助けよう。その代わりといっては何だが、一度私の息子と戦ってみてほしい。」
『ジンさん。この提案に乗ってあげて下さい。私からもお願いします。』
(君に言われたら仕方ない。)
「分かった。俊道のからのお願いだし、僕達にも損することはない。
その提案受けてあげるよ。」
「本当にありがとう。さっきまで疑っていてすまなかったな。
君達がここに居なかったら被害はもっと酷くなっていただろう。
深く感謝する。」
「いいよいいよ。そんな感謝しなくても多分僕がいなくてもあの侵攻は止まってはいただろうし、僕はあくまで俊道を守っただけだ。」
「そう言って頂けるとは...ではこれ以上の長話も迷惑だろうから、今から将輝と戦ってほしい。今から将輝も呼ぶが、ジン殿何か欲しい物はあるか?」
「そうだなぁ。なら得物が欲しい。できれば業物、最悪木刀でもいい。」
「分かった。将輝もジン殿も準備する時間もあるから、その間に持って来させよう。」「有難いね。それじゃ待っとくよ。」 「あぁ。」
.......この会話が終わってから1時間後一条将輝とジンが対面する。
将来が楽しみな顔と体格な一条将輝は言う。
「お前があの『剣聖』か。佐渡侵攻を共に防いでくれてありがとう。
俺は、お前と戦えるを楽しみにしていた。」
これに対し、ジンは
「僕もあの侵攻で大活躍した『クリムゾン・プリンス』と戦えると聞いて、実はワクワクしてるんだ。」と本当に楽しそうな顔で言う。
2人は互い言い、見つめ合う。
そして剛毅が言う。
「ルールは、接触あり、致死性を伴う、または、治癒不能な怪我を負わせる攻撃は全て禁止とし、このエリアから出ること、戦闘不能になったら負けとする。私が危険だと判断したら試合は強制的に止めさせて貰う以上だ。何か質問はあるか?」
「「ない。」」
「では始め!」
開始と同時に将輝はCADの引き金を弾き、『偏倚解放』を使用する。
空気を圧縮し、解放することで爆風を当てる魔法。
一条将輝はこのルール下では『爆裂』を使用することができず、この年齢にしては、魔法の使い方は上手いが、それでもこの相手に下手な火力では通用しない。そのため爆風で場外負けを狙ったのだろう。
しかし、ジンには関係ない。
何故なら、将輝が魔法をCADを通して発動し終える前には既に手に持っていた得物を振り終えていた。そして、昔の様に刀を順手から逆手にして鞘に戻す。
将輝のCADが斬られたことに、ジン以外誰も気づかない。
魔法は発動しなかった。
恐ろしいことに魔法の発動失敗によるダメージは一切なく、CADを弾ききった時には、砂の様にバラバラになっていた。
『居合の位 極 極死剣』×『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎』の合わせ技によって誰も理解することなく将輝を戦闘不能にしたため、この勝敗はジンの圧倒的な勝利で終わった。
こうして石川県での話は全て終わりを迎えた。
遂に剣聖の名前が出ましたね。ジンですがこれは前世の主君から貰った名であり、本当の名前はジン自身ももう覚えていません。
ところで、勝負に負けた将輝の心情は九校戦で出すとして、『極死剣』を使ったことは剛毅に問い詰められましたが、狙った対象はCADであり、範囲も完璧にコントロールしていたため、不問となりました。やっぱりジンが強すぎるので戦闘描写が一瞬で個人的に助かります。ちなみに、ジンが持ってる得物は業物ではなく、通常の刀です。ただし、刻印魔法によって硬化魔法が刻まれているため、ジン曰く頑丈さは折り紙付きです。