魔法科高校の剣聖    作:非日常

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今回は1万字を超えてしまいました。出来る限り話の流れは本編に寄せましたが、一部一部細かい話は省略しているため、少し読むのが大変かもしれません。


模擬戦

学校の昼休み、俊道と達也と深雪は3人で生徒会室へと向かっていた。

 

───時間は少し遡り、今日の登校中、俊道は達也達と鉢合わせたため、一緒に行くことになったのだが、

「達也く〜ん、俊道く〜ん」と後ろから声がする、2人は恐る恐る後ろへと振り返ると、真由美がにこやかな顔で挨拶する。

「達也くん、俊道くん、オハヨー。

深雪さん、おはようございます」俊道と達也はの扱いが何故か雑だが、相手は3年生で生徒会長なため、文句を言いたくても言えない。

 

「おはようございます。会長」深雪は自然体で返し、

「「おはようございます。生徒会長」」と狙ったかのように息ぴったしで挨拶する俊道と達也の2人。それに対し真由美は、

「昨日一昨日もそうだけど、2人とも息ぴったりじゃないの。高校来てからこんなに仲が良くなるなんて、もう達也くんは深雪さんより俊道くんの方が仲がいいんじゃない?」とまるで、おもちゃを見つけた子供のように俊道と達也を弄る。

「お兄様?まさかこの私を差し置いて、トシくんの方が仲がいいなんて言いませんよね?」と顔は笑っているが、目が笑っていなく心なしか俊道は肌寒くなっていた。深雪はいつ俊道を殺ってしまってもおかしくないほどに冷たくそう言う。この様子を見て真由美は少しやり過ぎたか?と後悔しているが、

「そんなわけないだろ。深雪、俺はお前が1番大事だ。確かにトシとは相性もいいし仲もいいが、それでもお前程じゃない。」と達也は深雪に対して満点の答えを言い、場を収めた。

ここで俊道が言う。

「ところで、生徒会長。私たちに話しかけると言うことは何か大事な用事があるのではないのですか?」

「はっそうだったわ。貴方達3人ともお昼は暇かしら?話したい事があるのだけれど」この言葉に達也と俊道は全く同じことを考える。

(この誘い断ったら絶対に面倒なことになるな。なら達也(トシ)もいるし、行くとするか)

達也は俊道は一応一科生と行くだろうと思い、俊道は達也は深雪がいるし行くだろうと考え、「「分かりました。では昼にまた伺います」」とまたしてもハモってしまった。ちなみに深雪さんはもちろんのこと少し遠くでこの様子を見ていた雫もこの様子にまた嫉妬していました。

(トシくんはどうやら本当にお兄様と相性がいいみたいですね。どうやって離しましょうか?)

(トシさんとあんな気軽に話せるなんて羨ましい。私だってあんな風に話したい、トシさんはもっと私と仲良くしてほしい。でも達也さんが邪魔だな、どうやってどかそう?)2人ともかなり怖いことを言っているが、

刹那、深雪と雫の目が合い、何か察したのか互いに自分のために俊達排除同盟を心の中で設立した。という話が実はあったのだが、回想から現在に戻り、生徒会室前に3人とも到着した。深雪が扉の横に付いているドアホンを押す。

「1年A組司波深雪、1年A組神藤俊道、1年E組司波達也、ただいま到着しました」扉のロックが解除されたので、中に入る。

「いらっしゃい。遠慮しないで入ってきてね」正面、奥の机から真由美が声を掛ける。

「お昼は食べましたか?もし食べてなかったらそこにダイニングサーバーがあるから私達と一緒にどう?」と真由美は言う。

ダイニングサーバーは空港の無人食堂や長距離列車の食堂車両にある物だ。しかしそれがあるという事は生徒会の仕事はどうやら遅くまであるようだ。

だが、俊道達はまだ昼食を食べていなかったので、達也が「分かりました。俺たちも食べていませんからぜひ食べさせて頂きます」と丁寧に言い、真由美が「お肉とお魚と精進どれがいいかしら?」と聞いたので、俊道は魚、達也が精進を選び、深雪は達也と同じ物を頼む。

それを受けて、2年生、生徒会書記の中条 あずさがダイニングサーバーの近づき、操作する。あとは待つだけである。

 

ホスト席に真由美、真由美から見て左手前から、3年の女子生徒と 鈴音、風紀委員長の渡辺 摩利、中条 あずさが座る。また、その反対側に、深雪、達也、俊道と座ると真由美が話を切り出した。

「入学式で紹介しましたけど、念のため、紹介しますね。私の隣が、

会計の市原 鈴音、通称リンちゃん」

「...私のことをそう呼ぶのは会長だけです」

整っているが顔の各パーツはきつめの印象で、身長も高く手足も長いため、美少女と言うよりは美人な女性。リンちゃんではなく鈴音さんと言った方が合う。

「その隣は知ってると思いますけど、風紀委員長の渡辺 摩利。それからその隣が書記の中条 あずさ、通称あーちゃんです」

「会長...お願いですから、後輩の前で『あーちゃん』って言わないでください。私にも立場があるんですから」と真由美よりも小柄で童顔なため、本人にそのつもりがなくてもその瞳が潤んで子供のようにあずさ。

「それから、ここにはいないけど、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが今期の生徒会です」はんぞーくんとは、本名、服部刑部少丞範蔵(はっとりぎょうぶしょうじょうはんぞう)長い名前だが、本人は服部刑部で通しており、半蔵と言われるのを嫌がっている。

「私は違うがな」と摩利は言い、

「そうね。摩利は別だけど、あっ、来たようね」

ダイニングサーバーのパネルが開き、料理が出てくる。しかし数は6つと一つ足りないが、ここで摩利が弁当を出す。そしてあずさが立ち、それに深雪が続く。ダイニングサーバーには自動配膳機能がついているが、それに対応したテーブルではないため、人が運んだ方が早いのだ。

あずさは先に自分の分を置き、その後真由美と鈴音の分を置く。深雪は達也の分を先に置き、その後に俊道、自分と置く。

「深雪さんありがとうございます」とお礼を言い、食事が始まった。

まず、特に共通する話題が無いため、必然と話せる事は食べている食事のみとなる。そのため深雪は

「そのお弁当は、渡辺先輩がお作りになられたのですか?」と会話を潤滑に回すために、言う。

「そうだ。意外か?」と摩利は少し意地の悪い言い方で返す。

「いえ。少しも」深雪は全く動じず、否定する。

「....そうか」

俊道は摩利の手元を見ている、それに摩利は自分がどう料理をしているのか、どのくらい料理ができるかなど、全てを見透かされているように感じ、気恥ずかしくなる。

ここで深雪が達也に言う。「私達も明日からお弁当に致しましょうか」

「深雪の弁当か。魅力的だけど、食べる場所がな......。」「あっそうですね。....まずは場所を探さなくては」と会話をする。

「まるで恋人の会話ですね」と鈴音が言うと、達也が

「そうですね。血が繋がってなければ恋人にしたい。と思ったことはありますがね」と言う。鈴音が投げた爆弾は不発だったが、達也が別の爆弾を爆発させた。それに深雪とあずさは顔が赤くなり、周りも少しだけ驚いている。ジンに至っては精神世界で見ているのか『おいおい、こいつ面白いこと言ってるな』と楽しそうに言う。「.......もちろん冗談ですよ」と達也は淡々と言い、そこに焦りの色は全くない。

「面白くない男だな。君は」と摩利がつまらなそうに達也を評す。

「自覚してます」と棒読みで返す達也。

「はいはい。もう止めようね、摩利。口惜しいのは分かるけど達也くんは一筋縄じゃ行かないみたいよ」とこのままではキリがないと見て、真由美が止める。

「そうだな。やはり君は面白い男だよ。達也くん」

ニヤリと笑い、美人ではあるが随分と男前な笑みを浮かべる。

ここで、唐突だが全員そろそろ食べ終わっているため、真由美はフォーマルな口調で言う。

「それでは、そろそろ本題に入りましょうか」

これに達也と深雪そして俊道がコクリと頷く。

「当校の生徒会の生徒会長には、伝統的に権限が集められています。つまりは大統領制、一極集中型と言っても良いかもしれません」とこのセリフを聞いて達也と俊道は少し不安を覚えたのは、真由美に対する失礼なことなのだろう。なので、達也達はこの心の手綱を強く引っ張る。

「ですので、生徒会長は生徒達による選挙で決まるのですが、役員の任命権は生徒会長が持っていて、解任も委ねられています。各委員会の委員長も一部を除いて任命出来るのですよ」

「私が所属する風紀委員がその例外の一つだ。生徒会、部活連、教職員会の三者が三名ずつ選任する風紀委員の互選で選ばれる」

「というわけで、摩利はある意味私と同格の権限を持っているのです。

さてと」さらに真由美は続きを言う。

「生徒会には毎年恒例なのですが、例年一年生の総代を務めた生徒を入れています。なので深雪さん、私は貴女が入ることを希望します。引き受けてくれますか?」

と言うが、深雪は

「会長は、兄の入試の成績をご存知ですか?」

達也は深雪のこの突然の言葉を聞き驚く。

「ええ、知っていますよ。すごいですよねぇ......私も先生からこっそり答案を見せて貰った時には、自信を無くしてしまいました」

「成績優秀者、有能な人材を生徒会に迎えるのならば、私よりも兄の方がいいと思います」

「おいっ、み」「デスクワークのみならば、実技試験の成績は関係ないと思います。むしろ、知識や判断力に方が大事になるはずです」

達也が言葉を紡ごうとするが、深雪をそれを上から被せて言った。

深雪が達也の言葉を被せて言う事は殆どない。さらに、

「私を生徒会に迎えて頂けると言う話はとても光栄ですが、ぜひ兄も一緒にと言うのは駄目でしょうか?」

しかしこの事に、

「残念ながら、それは出来ません」と真由美からではなく、その隣から聞こえてくる。

「生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく規則です。生徒会長が与えられた任命権にある唯一の制限事項であり、これは生徒会発足当時から決められた事です。この制度を覆すためには、生徒総会に参加した生徒達の3分の2が投票に賛成する必要があり、現在の一科生と二科生の数が半々な状況では事実上改訂不可能です」と淡々と、すまなそうに鈴音はそう言う。

「申し訳ございませんでした。分を弁えぬ差し出口、どうかお許し下さい」だから、深雪は素直に謝る。このことを咎める者は誰もいない。

「ええと、それでは深雪さんは生徒会書記として、今期の生徒会に加わって頂いてもよろしいでしょうか?」と真由美が言い、

「はい。精一杯努めさせて頂くので、こちらこそよろしくお願いします」

と深雪は少し控えめに頭を下げ言う。「それじゃあ、今日の放課後からお願いね」それに真由美は笑顔になって言う。「はい。喜んで」と深雪も返す。

ここで摩利が口を挟む。

「ちょっといいか?」

全員摩利の方へ顔を向ける。

「風紀委員会の生徒会選任枠の内、前年度卒業生の枠がまだ一つ空いてる」

「ええ、そうね。でも今はまだ人選中と言っているじゃない。まだ入学してから1週間も経っていないのよ。もう急かさないでよ、摩利」

と真由美が言うが、ここで俊道は、

「会長、今更ですが一つ質問しても宜しいでしょうか?」

「ええ、何かしら?」

「一科生の縛りは生徒会の役員限定ですか?」

これに鈴音が「はい、そうですね」と言い、真由美は、

「そうじゃない!風紀委員なら問題ないじゃない。摩利。生徒会は達也くんを風紀委員に指名します」

「俊道くん。ナイス質問よ!」この展開に達也は、俊道を強く睨み、

「待ってください!俺の意思はどうなるんですか?大体風紀委員がどのような仕事をするのかも聞いていませんよ」と至極真っ当な意見を述べる。しかし、

「深雪さんにもまだ伝えていませんよ」と鈴音が冷静に返す。

達也の抗議は鈴音によって止められ、何も言い返せない。

「まぁまぁ、リンちゃん、いいじゃない。風紀委員は学校の風紀を守るのが仕事です」と真由美は言うが、

「.......本当にそれだけですか?」

「聞いただけでは物足りないでしょうけど、結構大変...いえ、やりがいのある仕事よ」と真由美は聞かれたことを無視して、笑って誤魔化す。

周りを見ると、鈴音は同情しているが、助け舟を出す様子はなく、

摩利は面白がっている。だが、あずさはオドオドとしており、達也はあずさをじっと見つめる。

「あ、あの当校の風紀委員会は、校則違反者を取り締まる組織です」

見た目通りの気弱さである()

「あのですね。俺は実技試験の結果が悪かったから、二科生なのですが!」と達也は強く言う。しかし、

「力比べなら私がいる、なんならお前の隣にいる俊道くんも部活連からの指名で風紀委員にいるんだ。俊道くんがいるなら達也くんも安心だろう?」と摩利が達也の言うことを一刀両断する。そして、

「おっと、そろそろ昼休みが終わるな。続きは放課後としよう」と続きを言い、達也は、

「分かりました」と放課後にまた行ってしまえばい外堀の中堀も埋まってしまいそうだがと考えるがそれでもこう言う。

そして、このまま解散した。

 

 

 

 

  ───◇◇◇

そして放課後、

達也達は生徒会室に行くが、扉を開き、そこに居たのは、先ほどのメンバーだけでなく、副会長の服部もそこに加わっていた。

「よっ来たな」

「いらっしゃい。3人とも」と摩利と真由美は言うが、

「こんにちは。司波さん、神藤さん。副会長の服部刑部です」と達也を態と無視する。深雪はこの態度にムッとするが、頑張って我慢する。

それから摩利が、「それじゃあ、達也くん、俊道くん、風紀委員会本部へ行こうか」と案内しようとするが、

「渡辺先輩、待ってください」と服部が呼び止める。

「どうした?服部刑部少丞範蔵副会長」

「フルネームで言わないでください!」

「じゃあ、服部範蔵副会長」

「服部刑部です!」

「それは官職だろ。お前の家の」

「今は官位なんてありません。『服部刑部』で学校には届けを出してますし、.....ってそんなことではなくて」

「お前が拘っているんじゃないか」

「まぁまぁ摩利、はんぞーくんにも色々と譲れないものがあるのでしょう?」と言う真由美に、一斉に視線が突き刺さる。

「「「「(お前が言うな)」」」だが彼女は全く動じない。否、気づいてないのかもしれない。しかし、誰も言えない。服部も言えない。服部は摩利を苦手としているが、どうやら服部は真由美にはそれとは違う何かがあるようだと、達也、ジンが興味深そうに見る。

「渡辺先輩、お話ししたいのは風紀委員の補充の件です」

服部は落ち着いて言う。

「何だ?」

「その一年をを風紀委員に任命するのは反対です」

冷静に、もしくは感情を押し殺して服部はそう言う。

「おかしなことを言うな。司波達也くんを生徒会選任枠で風紀委員に指名したのは、七草会長だ。例え、口頭であっても指名の効力は無くならない」

「ですが、本人は受託していないと聞いてます。本人が受け入れるまで、正式な指名になりません」

「それは達也くんの問題だな。生徒会としての意思表示は生徒会長によって行われた。最終的な決定は彼にあって君が決めるものではない」

服部はあえて達也の方を向かない。ずっと無視している。それどころか、

「過去、ウィードが風紀委員になった事は一度もありません」

この禁止用語の使用に、摩利は少し眉を上に吊り上げてこう言う。

「風紀委員長の私の前で堂々と禁止用語を使うとは、それは立派な摘発大賞だ、服部副会長。いい度胸だな」その叱責もしくは、警告その両方とも取れるその言葉に服部は怯まず、

「言い繕っても仕方ないでしょう。それとも全校生徒の3分の1以上を取り締まるつもりですか?

ブルームとウィードの区別は、学校制度に組み込まれた、学校が認めるものです。そして、ブルームとウィードと区別するには、十分な実力差があります。

風紀委員は規則を破る生徒を実力行使で取り締まる役職であり、実力に劣るウィードには無理な仕事です」傲慢とも言える態度に摩利は冷ややかな笑みで答えた。

「実力と言っても色々ある。単に力比べならば、私がいる。10人や20人いようが私には取り押さえることができる。私と対等に戦えるのは、七草会長と十文字会頭だけだ。

君の理屈通りならば、実戦能力に劣る秀才はいらない。それとも、私とやるか?副会長」摩利の言葉は今までの実績に打ちのめされた圧倒的な自信、これに服部は少したじろぎ、気圧されるが、服部は白旗を揚げるつもりがないようだ。

「私の事を言ってるのではありません。彼の適性の問題だ」

服部は自分の意見が絶対に正しいと確信しているようだ。力に劣る二科生に、実力行使が必要な風紀委員は務まらない。風紀委員に今まで二科生が居なかったことが、これを証明している。

しかし、摩利は服部以上に自信がある。

「実力にも色々ある、と言ったろう。達也くん、彼には展開中の機動式を読み取り、発動する魔法を予測する目と頭脳がある」

「.......何ですって?」

服部は反射的に言うというよりは信じられないように言う。

起動式を読み取る、そんな事はできるはずがない。それが彼にとっての「常識」だった。

「つまり彼は、実際に魔法が発動しなくても、その内容がわかると言う事だ」しかし、摩利の答えは変わらずこのまま言う。

「当校のルールでは、使おうとした魔法の種類と規模によって罰則が異なる。だが、真由美がやるように、魔法式発動前の状態で起動式を破壊してしまうと、どんな魔法か分からない。だからと言って、魔法の発動を待つのも本末転倒だ。起動式を展開中の段階でキャンセルできた方が安全だしな。しかし、彼は今まで罪状が確認出来ず、結果的に軽い罰で済まされてきた未遂犯への、強力な抑止力となる」

「....しかし、実際の現場で魔法の阻止をすることができないのならば、意味がないのでは」と服部は反論するが、

「そんなものは、1年の一科生でも同じことだ。2年でも、相手より後に魔法を発動して、相手の魔法の発動を阻止できる者が何人いるんだと言うんだ?それに私が彼を選ぶ理由はもう一つある」

さらに摩利はそれを一蹴したばかりかまだ理由があると言う。

服部も流石にすぐ言い返せず、

「今まで二科生が風紀委員に選ばれる事はなかった。つまりは、一科生がニ科生の魔法使用違反をを取り締まっても言う事だ。

君の言う通り、一科生と二科生の間には感情的に大きな溝がある。一科の生徒が二科の生徒を取り締まり、その逆はないことが、さらに溝を深めていた。私が指揮する委員会がそんな事を助長するのは、私の好むところではない」

だが、服部は冷静になる事はできず、感情的なって言う。

「会長.....私は副会長として、司波達也の風紀委員任命に反対します。

渡辺委員長が言うことにも一理あることは認めますが、風紀委員本来の役割は校則違反者の鎮静と摘発です。魔法力の乏しい二科生の彼には、風紀委員は務まりません。この誤った登用は必ずや、会長の顔に泥を塗るでしょう。どうかご再考を」

ここで遂に深雪が「待ってください!」と言おうとするが、俊道がここで口を出す。

「待ってください。服部副会長」その声は落ち着いているが、威厳があり、全員が俊道に視線を向ける。

「実力があればいいんですよね?ならば実際に試してみてはどうでしょう?この学校には生徒同士のいざこざを解決するために、模擬戦が出来ると聞いてます。それで達也の実力を試せばいいでしょう」

「トシ!お前」達也は俊道に強く言う。だが深雪は、

「トシさんの言う通りです!服部副会長、兄と模擬戦をして頂けませんか?お願いします」達也はこれ以上何も言えない。服部も、

「分かった。いいだろう、そこまで言うんだったら、司波達也!格の差遠分からせてやろう。そして、神藤俊道、お前ともやってやろう。会長お願いします」

「ええ....。分かりました。生徒会長の権限により、2年B組服部刑部と1年E組司波達也、1年A組神藤俊道の模擬戦を正式な試合として認めます」

「生徒会長の宣言に基づき、風紀委員長として、私も認める」

「時間はこれより30分後、場所は第3演習室、試合は非公開として、3人にCADの使用を許可します」

模擬戦は校則で禁じられている暴力行為を、喧嘩沙汰にしないための措置である。真由美と摩利は厳かな声で宣誓し、あずさが慌ただしく、パッドを叩き始めた。

 

 

◇◇◇

 

「トシ、お前どういうつもりだ」

「どういうつもりと言われても、私は達也がこれ以上あんなに言われるのが嫌だったんだ。最も深雪さんは私以上に限界だっただろうしね」

達也は深雪の方を向くと、

「申し訳ありませんお兄様。ですが、トシくんの言う通りです。お兄様どうかお願いします」

達也は言う。

「分かったよ、深雪、トシ、お前達の言う通り勝ってくる」こう言い、CADが入ったアタッシュケースを持っており、俊道は腰に刀を差しており、左腕にCADをつけて試合へと向かうのだった。

 

「それで君たち、自信はどうだい?」と摩利が聞き、達也達は答える。

「「勝ちますよ。絶対に」

第3演習室に着いて、中に入ると服部が先におり、先ほどのメンバーも全員揃っている。だが、もう1人巌のような人物がいる。

「来たか。俺の名前は部活連会頭十文字克人だ。この試合を受理したため、ここにきた。よろしく頼む」と十文字は言う。

ここで摩利が、

「では最初は誰から行く?」

「まずは自分から行きましょう」と達也が答える。アタッシュケースから拳銃形態の特化型CADを出し、服部の正面に入る。

服部は既に勝ちを確信していた。相手は魔法力で劣る二科生であり、自分一科生の中でも優秀と自負している。俊道ならまだしも達也には負ける訳ないと考えていた。

「では双方準備はできたな」と2人を見て言う。

どちらも準備完了しているのを見て、手を上に挙げて言う。

「では、ルールを説明する。直接攻撃、間接攻撃問わず相手を死に至らしめる術式は禁止。回復不可能となる障害を与える術式も禁止。相手の体を損壊させる術式も禁止とする。ただし、捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃は許可する。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。蹴りを使う場合は靴を脱ぎ、学校指定のソフトシューズに履き替えること。

勝敗は、どちらかの降参、もしくは審判の私が戦闘続行不可と判断した場合のみ決する。双方、開始線まで下り、合図があるまで、CADを起動しないこと。このルールを破る場合は負けとし、私が取り締まるから覚悟しておけ。以上だ!」「問題ありません」「こちらも問題ありません」

静寂が場を支配する。そして摩利は言う。「始め!」勝負は一瞬だった。

服部はCADを叩き、基礎単一系統の移動魔法を発動し、吹っ飛ばして達也を壁にぶつけることで勝とうとするが、それは達也は開始と同時に服部の目の前におり、服部は魔法を発動したが、それは不発だった。達也は服部の後ろに入ることで避け、服部へサイオンの激しい「波」を与え、服部はそのまま倒れた。

一瞬は言い過ぎたが、それでも5秒もない。

「.....勝者、司波達也」

(『達也くんは、結構出来るね』)とジンは思う。だが深雪を除き俊道達は唖然とする。摩利が

「待て、今の動きは....自己加速術式を予め展開していたのか?」と問いかける。真由美、鈴音、あずさの3人も、今の勝負を思い返した。

試合の開始とともに、達也は服部の目の前に移動しており、次の瞬間には彼の体は服部の後ろ正面数メートルほど離れた位置にあった。

瞬間移動とも思えるほどの速力。生身の肉体では為し得ない動きに見えた。しかし達也は、

「そんな訳がないのは、先輩が1番よくお分かりだと思いますが」

達也の言う通り、達也に魔法の発動兆候はなく、摩利もサイオンの流れをよく見ていたため、発動していないことは分かってる。

「しかし、あれは」

「魔法ではありません。正真正銘、身体的な技術ですよ」

「私も証言します。あれは兄の体術です。兄は、かの忍術使い・九重八雲先生の指導を受けているのです」

これに、摩利が息を呑む。対人戦闘に長けた彼女には九重八雲の名声をよく知っており、俊道も古式魔法の家に生まれたため、彼に会ったことがあるため驚く。摩利や俊道ほどではないが、真由美、鈴音、あずさ、十文字も、身体的技能だけで魔法によるアシストと同等の動きをする古流の武術に驚きを隠せずいた。だが、ジンは、(『九重八雲....俊道の中にいる時に見たけど、今まで見た中では強そうだった。でも、正直言って今の俊道の方が強いかな』)と考えていた。

ここで真由美が、

「じゃあ、あの攻撃に使ったのも忍術ですか?

私にはサイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったのですが」と硬い声で言う。他の魔法師が使った魔法を詮索するのは御法度なのだが、サイオンの弾丸を駆使する真由美はそれ以上に、興味を抑えられないようだ。

「忍術ではありませんが、サイオンの波動というのは正解です。

あれは振動の基礎単一形術式でサイオンの波を作り出しただけですよ」

「しかし、それでははんぞーくんが倒れた理由にはならないんじゃ....」

「酔ったんですよ」「酔った?一体、何に?」

首を傾げる真由美に達也は淡々と説明する。

「魔法師はサイオンを、可視光線や可聴音波と同じように知覚します。それは魔法師が魔法を使うための必須の技術ですが、その副作用で、予期せぬサイオンの波動に曝された時、実際に自分の体が揺さぶられたよう錯覚するのです。その錯覚によって、服部先輩は激しい船酔いと同じように倒れたということです」

ここで深雪は思い出す。食堂でジンによって森崎が倒れた時も、ジンのサイオンの嵐によるサイオンの波動に酔っていた。ここで真由美は言う。

「そんな...信じられない。魔法師は普段から、サイオンの波動に曝されていて、サイオン波に慣れているはずよ。無系統魔法は勿論、起動式や魔法式もサイオン波の一種だもの。それなのにどうして?どうやって魔法師が立っていられないサイオンの波動を出したの....?」これに鈴音が、

「波の合成、ですね」

「リンちゃん?」その一言だけでは真由美は気づかないみたいなので、鈴音は続けて言う。

「振動数の異なるサイオン波を3連続で出し、それを服部君が居る位置でちょうど合成することで、三角波のように強いサイオンの波動を作り出したようです。よくそんな精密な演算ができるものですね」

「お見事です。市原先輩」達也は手放しに賞賛する。

達也の演算能力もアレだが、それを一目で見抜く鈴音もおかしいのではと疑問に思う俊道達であるが、鈴音はそれ以上に疑問を持つことがある。

「それにしても、どうやってあんな短い時間で振動魔法を3回も発動できたのですか?それだけの処理速度があれば、実技の評価が低いはずありません。」正面から成績が低い言われて、達也は苦笑することしかできない。

ここで突然あずさが声を上げる。

「あっこれはもしかして、達也くんの持っているCADは『シルバー・ホーン』ですか?」

「シルバー・ホーン?シルバーってあの天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」と真由美が言うと、『デバイスオタク』と言われるあずさは嬉々と語り出した。

「そうです!フォア・リーブス・テクノロジー専属、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!

世界で初めて、ループ・キャスト・システムを実現した天才プログラム!

あっループ・キャストというのですはね、───」

「ストップ!ループ・キャストのことは知っているから」真由美は話が長くなりそうだったので急いで止める。

「そうですか....?

それでですね、シルバー・ホーンというのは、そのトーラス・シルバーがフルカスタマイズした特化型のCADのモデル名なんです!ループ・キャストに最適化されているのはもちろん、最小の魔法力でスムーズに魔法を発動できる点でも高い評価を受けていて、警察などにも使われているんですよ!現行の市販されているモデルであるにもかかわらず、プレミア価格で取引されるほどなんです!しかも、それ銃身が長い限定モデルですよね?

何処で手に入れたんですか?」「あーちゃん、ちょっと落ち着きなさい」

あずさは真由美が落ち着かせていなければ、達也の側に行って、CADを舐めるように(そのままの意味で)見ていただろう。一方で、真由美は新たな疑問が増える。

「でも、リンちゃん。それっておかしくない?いくらループキャストに特化した高価なCADでも、ループキャストじゃ、」話を振られて、鈴音も言う。

「ええ、おかしいですね。ループキャストはあくまでも全く同じ魔法を連続発動するためのものであり、同じ振動魔法と言っても、魔法師の設定する波長や振動数が変われば、起動式も微妙に異なります。同じ起動式を連続発動するループキャストでは『波の合成』に必要な振動数を作り出すことはできないはずです。振動数を定義する部分を変数に変更すれば、『波の合成』を生み出すための振動数が異なるサイオン波を連続で出すことはできるでしょうが、座標、強度、持続時間に加えて、振動数までを変数化をするとなると......いえ、まさかそれを実行しているというのですか?」

今度こそ驚愕で言葉を失った鈴音に達也は言う。

「多変数化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても評価されない項目ですからね」

真由美と摩利、そして十文字までもが、達也に目を向けるが、達也は醒めた口調でそう言った。

「.....なるほど。実技試験における魔法力の評価は、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。

.....すまない。司波達也、俺は君を見くびっていた。謝らせてくれ」と呻き声を上げながらも服部は達也に謝る。それに対し、達也は

「大丈夫ですよ。実際、俺の魔法力が低いのは事実ですから」と謝罪を受け入れる。

「ところで、私の模擬戦は?」俊道がここで口を挟む。

その言葉に全員黙り込んでしまう。対戦の予定だった服部は、すぐに動けるほど回復しきっていない。だが「俺が出よう」全員、その声の方向へ振り向く。十文字が言ったのだ。すると摩利と真由美が、

「待て!十文字、流石にお前がやるのダメだ」

「そうよ。十文字くん、いくら『剣聖』って言われてる俊道くんでも、十文字くんには勝てないわ」とこの言葉を聞き、ジンが出ようとする。俊道はそれを許可し、合図として胸を控え目に叩く。神は白銀に染まり、サイオンが増えるが、今回はサイオンの嵐は起こらない。「いや、大丈夫ですよ。やりましょう。十文字先輩」と軽い口調で言う。この急激な変化に周りは驚き、達也はエレメンタルサイトで視る。しかし、肉体の情報は俊道と全く同じなため、何もわからない。(なんだと?!エレメンタルサイトでも、この急激な変化によるエイドスの変更履歴が全くわからないだと)

摩利はこの様子で諦めて言う。「はぁ、分かった。十文字との模擬戦を認めよう」「ちょっと?摩利!」と真由美が強く言うが、

「七草、あくまでも試すだけだ。そんな大事にはならない。あと、どうやら俊道は俺らが思っている以上に強いみたいだ」と十文字は笑みを浮かべて言う。どうやら十文字がここに来たのは、俊道目当てのようだ。服部が達也に勝っても負けても、十文字が挑むつもりでいるらしい。その様子に真由美も諦めて、「分かったわ。私も認めます。摩利、審判をお願い」

「分かった。では十文字、俊道、双方開始線に立ってくれ。ルールは先程と同じだ。だから俊道くんその腰に差している得物は外しといてくれ」

「分かりました」とジンは言い、刀を壁際に置いてから、開始線に立つ。

再び静寂が場を支配する。

「初め!」

ジンは手始めに、俊道の真似をして、CADを叩いて魔法を発動する。移動系の6工程ほどの魔法を十文字に使用するが、十文字の障壁魔法に阻まれてしまう。

「へぇ、やるじゃん」

「ほう、なかなか速い魔法だな。だがそれで俺の『鉄壁』は超えられない。次は俺の番だ」と言い、十文字は、十文字家相伝の魔法『ファランクス』を発動する。これは並の魔法師では避けられず、そのまま壁へと吹っ飛ばされるだろうが、ジンはとある技を使う。

『無形の位 斬法 絶式』

ジンは素手でファランクスを真っ二つに切る。

これに周りは先程以上に驚愕を覚える。

(なんだと?!十文字家相伝の『ファランクス』、俺が仮に本気で壊そうとしても次々出される障壁によって、そのまま負けてしまうだろう。だがトシ、あいつは、それを素手で術式ごと斬ってしまった。)達也は次にエレメンタルサイトで視る。すると、(俊道の体のエイドスが全て変わっている!ありとあらゆる体を構成する筋肉と神経が、素手で斬ることに特化している。こんなもの普通の人間であれば、想像絶する痛みでショック死してしまう。だが、トシは平然としている。これがトシの秘密なのか?)

トシが秘密にしているのは別の事なのだが、これも十分秘密と言っても、過言ではない。『無形の位』を敢えて一言で言うのならば、自分のありとあらゆる細胞を、紙粘土で例え、その紙粘土で作品を好きな形に精密に形成するようなものだ。俊道はまだ脚にしか使うことができないが、ジンは、前世からの地獄のような修行によって全身の細胞を、氣で操作することが出来るのである。絶式とはその領域に入ってから使える、絶技なのである。そして、『ファランクス』を斬られ、動揺している十文字にジンは言う。「そろそろ、終わらせようか。渡辺先輩、CADを壊した場合は、勝敗はどうなりますか?」摩利は先程の光景、その言葉のせいで狼狽しながら言う。

「一応、CADの破壊をしても戦闘は続行出来るが、あると無いとでは、全く違うからな、その場合はCADを壊された側は負けと判定する」と言うとジンは、「分かりました。それじゃあ終わらせよっか」それに対し十文字は「舐めるなよ」と、もう一度『ファランクス』をを放つが、ジンはすぐに、居合の構えを取ると、

『居合の位 極 極死剣』×『無形の位 斬法 速式』さらに、

『無形の位 暗法 絶式』を掛け併せることで、誰にも悟られず、『極死剣』を素手で放つ。十文字の『ファランクス』は崩れ、サイオンが部屋中に霧散する。十文字のCADは、ジンが言った通りに砂のように崩れた。

そして、「...十文字のCADが破壊されたため..........しょ...勝者はし、神藤俊道の勝利」

「僕の勝ちですよ。十・文・字・先・輩」とジンは調子乗って言う。

そのことに十文字は「あぁ、俺の負けだ」と潔く負けを認めた。周りは何も言えなかった。全員が驚いている。上級生達は十文字が負けることを一切考えておらず、むしろ俊道が一方的に負けると思っていたのだ。それは当然だ。俊道の古式魔法『纏い』は対魔法に対して最強なのだが、『ファランクス』は大量の障壁魔法を同時に出す魔法にため、俊道のままであれば、有効打も与えられず、そのまま負けていただろう。しかし、ジンの圧倒的な強さに敵わず、このことには俊道も、驚いていた。

達也も十文字が負けたことに驚いたが、それ以上に俊道の圧倒的な強さと、エイドスを自由自在に変えれる異常性に驚いている。

「お兄様、これは....」深雪も動揺する。なぜなら、この一連の行動に魔法の発動が何もなかったのである。

ここで、摩利が聞く。

「おい、俊道。今のは全て、体術なのか?」

「うん、そうだよ。今の動きは全部僕の身体技術でやったんだ」とジンは無邪気に言う。この俊道のときとは違う言葉遣いに、周りは違和感を覚えるが、それ以上に異常な出来事が起きたため、このことは誰も追及しないのだった。




達也関連の話が多すぎましたが、頑張って俊道とジンの話をぶち込みました。十文字先輩には悪いですが、ジンの噛ませにさせてもらいました。達也と戦わせても良かったのですが、その場合は深雪との会話の際に、憎悪が入っていくだろうなと思ったため、やめときました。あと、十文字先輩なら、後々他の同世代の十師族との差を魅せれるので、こういう展開にしました。今回も読んでくださり、ありがとうございます。
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