服部と達也、十文字と俊道(実際はジンだが、ジンのことは誰にも言っていないため、全員さっきのは俊道であると思っている。)の模擬戦が終わり、
真由美が言う。
「俊道くん、さっきのは何?どうやって十文字くんの『ファランクス』を破ったの?」と聞かれたので、ジンは、
「僕が使ってる体術を使って、素手で斬りました」と堂々と理解不能なことを言う。否、ここにいる全員は頭の中では素手で『ファランクス』を斬ったのは分かるが、そのことに理性は一向に納得を示さない。
なぜ素手で『ファランクス』を斬れるのか?、いくら体術といっても限界がある、と頭の中で混乱するのである。なので、仕方なくジンは、種明かしをする。
「僕が使ってる体術は、僕オリジナルのものだから、別に教えてもいいよ。」と言い、それにまずは達也が先に聞く。
「トシ、お前の体術の仕組みは何だ?」これにジンは、簡単に
「僕の体術の仕組みは、一回一回の動作ごとに、状況に合わせて体を最適化することで、高い精度の攻撃と防御をそれぞれ行うんだ」と言う。
「その体の最適化とはなんだ?」と十文字が聞くので、これまたジンは、
「一言で言うと、体の筋肉を一つの動きのためだけに、最も良いポジションに筋肉を動かすことだね」と堂々と言い張る。
「えっつまり、...俊道くんは体の筋肉を自由自在に動かせるってこと?」
「正解!」真由美のこの発言にジンは楽しげに言う。
この言葉を聞いて達也は、
(なるほど。だから、一回の行動でエイドスの情報が書き換わっているのか。だがこれは....)「トシ、その筋肉の移動に負荷は掛からないのか?」と疑問に思ったことを口にする。すると、
「そうだね。今ではもうスムーズに出来るから、何も感じないけど、最初の頃はまだまだ動かせなかったから、一回するだけで筋肉が断裂してたね」と昔を思い出すように言う。ちなみに、これはジンではなく、精神世界で、俊道が修行を始めた最初の頃の話である。ジンは5歳頃にやってみて、最初から使えていた()そんな話はさておき、真由美達は、俊道(ジン)をバケモノであると言うような目で見る。
摩利は、ここで「念の為聞くんだが、その技の名前は?」と聞き、
ジンは遂に言える時が来た!と楽しそうに
「『無形の位』って言います」と言うのである。
「『無形の位』か。もしお前がよければ、俺に教えてくれないか?」と十文字がジンに弟子入りを頼む。この言葉に周り、特に真由美が驚く。しかし、
「ごめんなさい。それは無理です。これを教えると色々と怒られるので....」とジンは断ってしまう。ジンは内心、
(別に教えてもいいんだけど、俊道みたいに精神世界で鍛錬できる訳じゃ無いし、もし教えて体を壊した時に僕じゃなくて俊道が困るから辞めておこう)とめちゃくちゃまともな事を考えていた。
「そうか、.....なら今後とも、俺と試合をしてくれないか?」と十文字は手を出して誘い、
「いいですよ。またやりましょう」とこの誘いにジンは十文字と手を握って言う。周りはもうこれ以上言わない。それを見て摩利は、
「もういいか?さて色々とイベントがあったが、当初の予定通り、それじゃあ、達也くん、俊道くん、風紀委員会本部へ行こうか」この言葉を聞いて、ジンは俊道と入れ替わり、黒髪へと戻る。
『俊道、あとは頑張れよ〜』と俊道を激励?して精神世界の奥へと戻って行った。こうして第3演習室での秘密の決闘が終わった。
───2人はCADを返却してから摩利についていくその途中で、
「俊道くん、達也くん、今更だが十文字に勝ったことは黙っててほしい」
「「分かりました」」2人はすぐに了承する。神藤家は名家だが、それでも『十師族』ほどではない。そのため、『十師族』に勝ったことは秘密にしないといけないと非常に面倒なことになるので了承した。
「助かる」と摩利はお礼を言い、3人は風紀委員会本部の中に入る。
「少し散らかっているが、適当に掛けてくれ」
確かに、足場がないとか、椅子に掛けれないとか、そこまで散らかってはいないが、模擬戦に前に綺麗に整理整頓されている生徒会室を見た2人からしたら、少し抵抗感を覚える。2人が座る椅子の前にある長机には大量の書類とCADが置かれている。
「風紀委員は男所帯だからな、あいつらにはいつも口酸っぱく言っているんだが...」と摩利は苦そうに言う。ここで達也は、
「そうですか、なら掃除をしてもよろしいでしょうか?魔工技師志望として、この惨状は耐え難いので」
「魔工技師志望?あれだけの対人戦闘スキルがあるのに?」
「俺の才能じゃ、頑張ってもC級ライセンスが限界ですからね」
「なるほど」と摩利が言う。しかし俊道は疑問に思う。
(達也に才能が無い?僕の眼には才能があるようにしか見えないんだけど....
『それは達也の本質だよ。俊道』
どういうこと?ジン。
『おそらくだけど、達也の力は抑えられてる。だから周りも達也の真の力に気づかない。でも、俊道の『心眼』はどんな物事の本質を掴み取ることができるからね。だから普通の人が気づかないことに気づける。もし俊道が、達也のためを思うならこれ以上のことはしないほうがいい』
分かった。....けど掃除ぐらいは手伝っていいよね?
『それぐらいならいいよ』)このような会話が行われたが、達也は実力を隠したいことに気づいた俊道はジンの助言でこれ以上の詮索をやめた。
(『僕は、達也に魔法師としての才能はないと思う。だけど、その代わりにある才能になぜか、震えそうになるんだ。恥ずかしいから、この話は俊道にも話さないでおこう』)
「達也、とりあえず掃除手伝うよ」
「ありがとうトシ。頼んだ」
ここから摩利を含めて3人で部屋を掃除にしていく。3人の手を動かす速さは変わらない。だが、摩利の前にある書類はあまり減っておらず、達也と俊道の前にある書類はどんどん片付きスペースが増えていく。
「すまん。私はこういう作業が苦手だ」と摩利が言う。
この現状は、摩利に最大の責任があるのでは?と2人は思うのであった。
「手を動かしながらでいいから、少し話を聞いてくれ」
「達也くん、君をスカウトした理由は、もうほとんど言ってしまったが、
未遂犯に対する罰則の適正化と二科生のイメージ改善だ」
「適正化はともかく、イメージ改善はむしろ悪化するのではないでしょうか?」
「どうしてそう思う?」
「いきなり下の二科生が、同じ立場の上級生や一科生を取り締まるとなれば、面白くないと思うのが普通でしょう」
「私は別にそうは思わなけどね。その人達がそう思うのはただの邪魔なプライドだ。例え、どんな人であろうとも自分のやった罪を認めない以上に醜いことはない」
「その通りだ俊道くん。達也くん、彼もこう言ってるし大丈夫だと思わないか?」と達也はこれ以上言っても無駄だと分かったため、
「分かりました。風紀委員指名の件受けさせていただきます」
と諦めて言うのだった。
掃除が終わった頃、2人の男が部屋に入ってくる。
「ハヨースッ」「オハヨーございまス!」と部屋に威勢のいい声が響く。
「おっ、姐さん、いらしたんですかい」
ここは何処で、何時の時代なんだろうなっと2人は思うのであった。
身長は特に高くないが、やけに体はゴツゴツとしており、ねじり鉢巻が似合いそうな男がそう言う。その姐さんと言うのはおそらく、
(渡辺先輩のことだろうなぁ....)と達也は思った。
当の本人は恥ずかしそうにしており、まともな神経をしてるのに意外と驚き俊道達であった。
「委員長、本日の巡回終了ました!本日の逮捕者、ありません!」
もう1人の男はわりと普通の外見に、比較的丁寧な発言だが、やたらと威勢がいい声を出す。ここで、
「.....もしかして、この部屋姐さんが片付けたんですかい?」
この部屋の変わりようを訝しげに見ていた男が達也と俊道に近づいてくる。それを遮るように、摩利が前に立ち男の頭をスパァン!といつの間にか持っていたノートでいい音出して叩く。
「いってぇ!」
「誰が姐さんだ!いつも言うなと言ってるだろう!何度も言えば理解するんだ!鋼太郎、お前の頭は飾りか!」
「そんなにポンポン叩かないでくださいよ。あ.....いえ、委員長。ところでそいつらは新入りですかい?」
「あぁ、2人は1-E司波達也と1-A神藤俊道、期待の新入りだ」
「へぇ、そうですかい。右の奴はデカいし、強そうだが、もう1人は紋無しですかい」と鋼太郎は達也達を見て、次に2人の体つきを見る。
「辰巳先輩、その表現は避けるべきかと。規則に抵触する可能性があります。言うのであれば、二科生と言うべきかと思われます!」
とそう言いながらも、冷やかすような、値踏みするような態度は指摘しない。
「お前達、そんな単純な了見では、足を掬われるぞ。ここだけの話だが、服部はもう足を掬われたぞ」このニヤニヤしながら言う摩利のセリフに
2人は真剣な顔つきになる。
「そいつがあの服部に勝ったってことですかい?」
「あぁ、正式な試合でな」
「何と!あの入学以来負け知らずな服部が、新入生、しかも二科生に敗れただと?」
「声が大きいぞ、沢木。ここだけの話だと言ってるだろう」
どうやらこの2人は上級生で風紀委員の先輩のようだ。
「これは確かに期待の新人だな」
「はい。逸材ですね。先輩」
「意外だろ?達也くん」
「この学校は、ブルームやらウィードやらそんなつまらない肩書きで優越感に浸って劣等感に溺れる奴らばかりだ。正直言ってうんざりしていたんだ。幸い、十文字や真由美は私がこんな性格だって知ってるからな。そういう意識が比較的ない奴らを選んでくれてる。それでも優越感がないって訳じゃないが、ちゃんと実力で評価できる奴らだ。まぁ教職員枠の3人までは、そうはいかなかったが、ここは達也くん、君とっては悪くない場所だと思うよ」
「3-C辰巳鋼太郎だ。司波、神藤、よろしくな」
「2-D沢木碧だ。君たち2人を歓迎するよ。よろしくね」
2人は達也達に握手を求める。これを見ると2人はエンブレムを見ていたのではなく、実力の有無を確認しようとしてただけのようだとわかる。
沢木は2人と同時に強く握手をし、言う。
「自分のことは、沢木、と苗字で呼んでほしい」
どうやら沢木は、自分の碧という名前にコンプレックスを持っているようだ。だが、挨拶には挨拶で返すように、達也は力を込める。
俊道は「はい。分かりました。沢木先輩」と言って、その握手から抜け出す。それを見て、達也も「心得ました」と腕を細かく捻ることで脱出する。このことに沢木よりも、鋼太郎が驚く。
「沢木の握力は、ほぼ100キロ近くだってのに」
「それはすごいですね」
「.....魔法師の体力ではないですね」と2人は自分を棚に上げていうのだった。こうして3日の学校生活が終わった。
◇◇◇精神世界にて、ジンは久しぶりに、技の伝授をする。
「俊道、お前にはそろそろ『無形の位』を完璧にしてもらう。
正直言って、練度は低すぎる」
「分かってる。もし今の私が十文字先輩と戦っていたら負けていたと思う」
「そうだ。俊道は相性よる有利不利の差が酷すぎる。『無形の位』は本来全身の筋肉、練度を高めれば細胞すらも移動できる。けど俊道は細胞はおろか全身の筋肉操作ができない。しかもできるのは、いまだに下半身だけ。それじゃあ、スキルとステータスが勝っていても、勝てないよ」
『無形の位』はその名の通り、決まった形がない。代わりに、何でもできる。だが、家を買うのにたくさんのお金がいるように、『無形の位』でやろうとすることにも、それ相応の力、技術、精度がいるのだ。しかも、
「俊道は『縮地』だって5mまでなら問題ないけど、それ以上の距離でしようとすれば、硬直するでしょ。これは戦いじゃ、致命的な欠陥だ。だから、上半身でも使えるようにする」
下半身は上半身よりも筋肉が多く、内臓といった特殊な器官はないので、まだ簡単なのだが、上半身はそのせいで、失敗した時のリスクが遥かに大きい。下手をすればそのまま死ぬほどにはだ。
「今日は、上半身が出来て、そこから更に全身でできるまではここに居てもらうから。分かった?拒否権はないよ」
こうしてジンによる俊道強化計画が進行していくのだった。
修行の内容は....想像したくもありませんね。絶対に1、2回は死んでるでしょう。ちょっと、俊道達の活躍は少ないですが、あくまでもこの魔法科高校の劣等生の主人公は司波達也で、ジンと俊道は違います。
しかし、この物語の主人公がジンと俊道だけです。
大事なとこでは大活躍するのでこれからも見守ってあげてください