本当に突然で申し訳ないが転生という言葉をご存知だろうか。死んだら別の人物や生き物に生まれ変わるアレである。もし、今までに経験したことのある人がいたら教えてほしい。
唐突にこんなことを赤の他人に言うと正気を疑われてしまうかもしれないが、今の俺にはのっぴきなない事情というものがある。
───どうやら俺は転生したらしい。
最初に感じたのはフワフワとした浮遊感、そして瞼越しの眩しさ。目を開けてみると視界がぼやけていて強烈な光以外認識できない。
「あぅあ、あおあ(どこだ、ここは)」
声がうまく出ない。それに、耳も聞こえづらい。何が起こった?
起き上がろうとしても、首を起こすこともできない。頭がぼんやりする。本当に何が起こったんだ。事故にでもあったのか?最後の記憶はなんだったか。
───思い出せない。マジで何があった?
大事故に巻き込まれて目以外動かせなくなったんだろうか。やばい想像してたら泣きそう。
「ほげっ ほげぇ」
「あら、かなちゃん起きちゃったんですか〜?
いまミルク準備してるから待っててくださいね〜」
なんだか声が聞こえた気がする。看護師の方だろうか。だとしたらやっぱりここは病院か。俺はもう一生このままなんだろうか。
「はい、今あげますからね〜。」
また声が聞こえた、と思っていたら体が持ち上げられた。少しの浮遊感のあと上下に揺らされる。
これはまさか
「ミルクですよ〜」
と思っていたら口の中に何か入ってきた。不確定事項の可能性について必死に頭を動かそうとするが体は意思に反して突起物にしゃぶりついて温かい液体を飲み干そうとする。
そして、満足した俺は背中を叩かれていた。
「げっぷ」
「はいよくできました。かなちゃんは元気ですね〜」
あぁ、眠たくなってきた。だかここまできたらもう確定だろう。むしろ違った方が怖い。おれはてんs すやー
やあ、久しぶり。あれから一月ぐらいたった。ぐらいと言うのは1日の大半を起きて飲んで寝てを繰り返してるから1日の長さが曖昧だからだ。
それに頭がぼんやりしていてなかなか思考がまとまらなかったが最近になってはっきりするようになってきた。
目の方だが頑張ってピントを合わせようとしていたらようやく見えるようになってきた。耳の方は気が動転して音が脳に入ってなかったみたいだ。良かった良かった。呂律は回らないが。
そしてわかったことはやはりこの体は乳幼児のものであること。俺は本当に転生したらしい。体が幼いからか感情が高ぶると泣きそうになるし、泣こうと思えば泣くこともできる。
そのおかげで乳幼児として疑われることなく過ごせていると自負している。
そして今世もちゃんとついてること。ちゃん付けで呼ばれてたからもしかしてts!? と思ったが触ったらあった。紛らわしい呼び方しないで欲しい。
それからここは病院ではないということ。これは推論に過ぎないがベビーベッドが病院にあるような透明のものではなく木製のものであること。左右に何台かあって俺以外の子供もいるらしい。
そしてお世話をしてくれる人達の服装が私服のようなものにエプロンだったこと。明らかに看護師の服装ではなかっため病院ではなく養護施設のような場所だと考えた。
記憶にある限りでは今まで一度も親らしき人物に会ったことはないので児童養護施設に預けられたということなのだろう。
そして気になるのはここが日本なのか、はたまた異世界なのか。ということでさっそく検証していきましょう。やることは一つ。
「あぇーあぅ あーう!(ステータスオープン!)」
水瀬 彼方 0歳
ステータス レベル1
………出るんかい。いや本当に出るんかい。完全に空振りするかと思ってたわ。驚愕
そして何気に今世の名前が判明、みなせかなたくんというのか。誰がつけた名前なんだこれは?それにステータスレベル1とはなんだ。細かい数値的なものもないし。レベルがあがればもっと詳しく見れるようになるんだろうか。
まあ今は置いとくとしてこれで異世界説の方が高まったな。なんせステータスなんてものがあるんだから。もしかしたらダンジョンなんてものもあったり?そしたら魔法が使えちゃったりするのかな。
なんかワクワクしてきた。もし異世界ならあるかもしれないよね魔力。いやでも日本語喋ってるし現代日本にチート持って転生した可能性もあるか。
まあでもせっかく乳幼児の段階で記憶があることだしやるっきゃないでしょ魔力鍛錬。もしここが魔力がある異世界ならいまからやっとけば将来無双できるかもしれないし、しないにせよ多いにこしたことないでしょ。
まずは己の中にあるかもしれない魔力を探そう。創作物では確か臍の下のあたりにあるってのが多いよな。
どこだ… 魔力… うーん
さっぱりわからん。
俺には魔力はないのだろうか。いやまだ決まったわけではない。毎日瞑想していればいつか見つかるかもしれないし、早速今日から始めよう。まずは目を閉じて、体のへそのあたりに意識を向ける。そのまま深く深呼吸する。
……………………………………
……………………
………すやー
気がついたら翌日になっていた。1日目は失敗だったらしい。簡単に見つかるとは思っていないので気落ちはしてない。瞑想は毎日続けていこう。
それに乳幼児にはやるべきことがほかにもある。まずば手足をバタバタさせること。こうすることによって運動機能を発達させるってどこかでみた気がする。あと寝返りの練習もいまの段階で始めてる。
ついでに首を持ち上げることにも毎日挑戦しておく。まだびくともしないが。
起きている時間はまだ短いので貴重な時間をいかに効率的に使うかが重要だ。おくるみに包まれていて動きにくいけどスタートから同年代との差をつけるため誰よりも激しく一生懸命じたばたしていきたい。
決意を漲らせてから数日、今日も飽きることなくバタバタしていたら持ち上げられてどこかに連れて行かれる。他の子供も一緒らしい。どこに行くのかと思っていたらなんと施設の外に行くらしい。そのまま玄関につけてある車に乗せられ移動が始まった。
一体どこに連れて行かれるんだろ。なんかワクワクしてきたな。十中八九健診かワクチン接種だろうが。
まあでも外に出た記憶はないので新鮮だ。車があるのでそれなり文明が発達した世界ということもわかった。この車小さめのバスのような大きさだが中は三列タイプで内二列はチャイルドシートだ。
子供二人を大人一人が見るらしい。施設の車だろうか。それにしては外観はただのシルバーだったし施設の規模にしてはチャイルドシートが多い気がする。
なんて考えていたら電話の着信音が聞こえた。そして俺は見てしまった。運転手のおじさんが手に取ったものがいわゆるガラケーと呼ばれるものであったことを、しかも丸みを帯びた懐かしい古いタイプのものだ。
今までスマホやガラケーを見たことがなかったためこの世界の年代がわからなかったが、これでなんとなく推測することができる。
今は90年代から00年代だ。あのおじさんが化石みたいなガラケーを使い続ける人の可能性もあるにはあるが。
職員さんたちは子供たちを起こさないようにマナーモードにでもしていたのだろう。この車もどこか古いタイプのように感じた気がする。朧げな前世の記憶では2026年だった気がするので俺は逆行転生というものをしてしまったのかもしれない。
衝撃な事実が判明してから俺は珍しく昼寝もせずに窓の外をきょろきょろみていた。この街はそれなりに大きい街らしい。おそらく市だろう。今は高架道路を走っていて立ち並ぶ街並みがよく見える。
しばらくもしないうちに高架を降りて街中を走り始めた。スマホを見ながら歩いてる人はいない。
そして大きな建物の地下駐車場に停まった。やはり病院だったか。
待合室で一人ずつ呼ばれるのを待っていると名前を呼ばれた。ようやく自分の番が来たようだ。長い廊下を通って診察室の前まで行くと警備員が立ったている。ん?なんで警備員が立ってるんだ?しかもプロテクターで全身を固めて盾まで持ってる。
診察室の中に入ると中は結構広い。だが広い部屋の割に設備は中央に台が一つ置かれているだけだった。人はいない。あたりを伺うとガラス越しにこちらを見ている。診察室と言うより検査室といった感じだ。
レントゲンでも撮るんだろうか。台の上に寝かされ手足と頭をベルトでがっちり固定された。そんなきつく締める必要ある?部屋に残ったのはベルトに固定された俺一人。そして天井から籠のようなものが降りてきて覆い被さった。
一体何が始まるんです?
「これより、水瀬 彼方君の異能検査を開始します。」
what?