突然病院に連れて行かれたと思ったらなんだか衝撃的な言葉を聞いた気がする。マイク越しに聞こえた言葉は聞き間違いじゃなければ異能検査。
もしかしてここは異世界なのか。
「魔力、平均値です。」
さらに衝撃的な言葉を聞いた気がする。え、俺魔力あんの。何日か瞑想してるけど感じたことないんですけど?
「続いて異能…反応なし。発現確認できません。」
なん…だと…
チートは無しか。まあ、転生だけでもあり得ないとこだしチートまで望むのは欲張りすぎか。でも一応なんか発現してないかステータス見てみよ。ちなみに念じるだけで出せるみたい。
水瀬 彼方 0歳
ステータス レベル1
特に変化なし。チート無双は出来ないけど、せっかく生まれ変わったんだから頑張って生きよう。異世界に来たことだし、いっちょ本気出しますか。
「っ‼︎待ってください!微弱な反応を確認!体内です!」
「頭部か。いや目か。おそらく視覚か脳機能の強化だな。」
おや、ステータス出した途端異能を検知したらしい。これ異能だったのか誰でも持ってるものかと思ってた。異能を持ってる人じゃないとみれないのかな。一旦消してみよう。
「反応消えました」
消えたってことはステータスは異能で間違いないようだ。
「施設長さん、彼方くんに微弱ながら異能の発現を確認しました。」
「そうですか。と言うことはやはり…」
運転手のおじさんじゃん、施設長だったんだ。
「…国営の収容施設に移るってことですか」
「…水瀬」
今のは最初にミルクを飲ませてくれた一番若そうなお姉さんか。え、水瀬さんて言うんですか。もしかしてあなたが僕のママですか?一番優しかったし他の人はなんだか流れ作業なところがあったような。いや待て今収容施設って言った?…まじで?
「収容施設なんて物は都市伝説に過ぎません。まあ、少々特殊ですが安心してください。保護施設です。犯罪者のように収容なんてことは絶対有り得ません。これは法律で決まっていることなので拒否はできませんが心配しないでください。一人につき一部屋の個室も用意されていますしね。」
そうなんですね安心しました。
考えてみればまだ喋れないどころか首も座ってないのに何かしらの超能力が使えるかもしれない子供なんて危険以外の何でもないな。強制的に保護施設にぶち込まれても致し方ないかもしれない。
声が聞こえなくなった。マイクが切られたのか。ともかく俺は国の保護施設に移されるらしい。どんな場所なのかなチートの使い方とかわかったりするんだろうかワクワク。
その後、やけに頑丈そうな金属製のカートに入れられ、警備員に運ばれた後犯人護送車みたいな車に乗せられるのであった。これじゃあ変な都市伝説が生まれるのも仕方ないと思いますよ。
初めての異能検査から一年がたった。あれから一度も空を見てないし人の顔も見ていない。
ここはおそらく人里離れたところにある。移動中にゲージの隙間から見えた景色は緑ばかりだったから多分間違い無い。保護施設とは名ばかりで隔離が目的だろう。収容施設と言っても過言ではないかもしれない。噂は真であったか。そして今生活している部屋は、地下深くにあると考えている。あの後、エレベーターにで降りたような浮遊感があった。
人自体とは毎日会っている。食べ物を届けにきたり、遊んでくれたり、読み聞かせをしてくれたりしてくれる。爆発物処理班みたいな格好をして。
全身に分厚い防護服を着ていて、頭には顔のイラストがはっつけてある。正直ちょっと怖い。ただ、抱かれると柔らかいのでシリコンみたいな素材も使われているかもしれない。あと、他の子供を見かけたことはない。
この異能、今の所名前と年齢が分かるだけなんだけどね。あれから毎日見てるがレベル1から上がっていない。
異能検査は何度もやってるし、毎度微弱な反応しか出ていないはずだが爆破物のような扱いは変わることはなかった。ハイハイとか掴まり立ちとか全力でやったせいなんだろうか。乳幼児の発達段階なんて記憶にないし、同じ誕生日の中で最速を目指して自重しなかったのが悪かったのかもしれない。それとも規則で決まっているのか。
これ俺は中身がアレだからまだ耐えられるけど、他の子供達はどうなんだろう。人肌が恋しい時期だと思うが。それに生まれてから物心つくまで腫れ物のように扱われるのは教育に悪い気がする。大丈夫?大人になったら闇堕ちとかしない?
他の子たちの心配しても今できることはないので置いくとして、自分のことに集中しよう。今は運動する部屋に来ている。柔らかいタイルが敷いてあって転んでもちょっと痛いだけですむ。今の所検査のない日は自室とこの運動部屋を行き来する以外移動することはない。
「彼方く〜ん まてまて〜」
「きゃっきゃ きゃっきゃ 」
俺は一歳にしてそれなりに走れるようになった。今は全身にプロテクターつけたお兄さんと鬼ごっこをしている。
「ふぎゃっ うええぇぇん」
「大丈夫だよー いたいのいたいのとんでけー」
この通り、自然にぶっころんで泣くことができる。一歳児の演技も板についてきた。しかしこのお兄さんちょっと棒読みすぎないか?もっと労わってくれないと泣き止まないぞ。
しかし、他の子供に会えないのは比較対象がいないと言う点で厳しいものがある。一歳すぎたあたりでそれなりに走れるというのも、発育が早い程度で済むのかわからない。こんなことになるなら家庭科の授業真面目に受けたおくべきだった。もう何年も前のこと悔やんでも仕方がない。今は本能に任せてなるべく自然に振る舞うことを心掛けている。
「それじゃあ、次はお部屋でお遊びしましょうね〜」
「きゃっきゃ」
推定お姉さんに抱き抱えられてご機嫌になった俺は意気揚々と部屋に戻った。
「彼方くん、何して遊びたい?」
そう言われて部屋の隅にある玩具箱を指差す。最近お気に入りの自分でコースを組み立てるビー玉転がしだ。最初与えられた時は小さな箱だったが、これにどハマりしてお世話係の人と一緒に大作を組み上げるようになってからどんどん増えて今では部屋の一角を占拠している。
…いや待て、これよく考えたら一歳児に与えるようなものじゃないよな。普通ならビー玉を飲み込んで喉につっかえるかもしれないし、絶対一歳児には与えないはずだ。まずいこんなことに気がつかないとは、体に思考が引っ張られていたか。だって楽しかったんだもん。
だがこれは罠だ。もしかしたら高度な知能()を見せすぎたかもしれない。今からでもビー玉口に入れたりした方がいいんだろうか。しかし床に落ちたものを口に入れるのは抵抗があるな。でも子供ってそうやって免疫を獲得するんだっけ。やばい俺の免疫ゼロかも。
「彼方君どうしたのかな〜?やっぱりビー玉の気分じゃないのかな〜?」
悪い方向に考えてたら、推定お姉さんの言葉が実験動物に話しかけるような話し方に聞こえてきた。今まで観察されていたということか…‼︎まあ、これは思い込みかもしれない。
ともかく、一旦ビー玉は飽きたことにしよう。あまりにも一歳児とかけ離れている。今はこの状況を自然に切り抜けなければならない。他に一歳児がやるようなことといえば何がある。考えろ。
そうだ、抱っこだ。一旦抱っこでお茶を濁すとしよう。最近気恥ずかしくてあんまりせがんでなかったが、これなら一歳児として不自然ではないはずだ。これからは遠慮なくせがむことにしよう。
くるっと振り向いてウルウルとした上目遣いの瞳で抱っこをせがむ。
「…だっこ」
「…どうしたのかな〜?さっきぶつけたところがいたいのかな〜?」
なんか今間があったようなきがする。きっと俺の瞳にハートを射抜かれたんだろう。実験動物が想定と違う動きをして落胆したわけではないと思いたい。気にせずしがみついてふるふると首を振る。
「よしよし 大丈夫です。どこにも行ったりしませんよ〜」
どうやら一歳児として自然な行動だったようだ。この調子で自然な演技を続けていきたい。
「主任、037番の件でご報告があります。」
「ああ、見ていた。どう感じた?」
「こちらの観察するような意図に勘付いた可能性があります。」
「同じ意見だ。」
「では彼が?」
「確かに、同年代の中では高い知能を有していると言える。」
「知能テストでは五歳児と同程度との結果が出ていますが。」
「だか五歳児の域を越えることはない。君の言葉を理解しているが、それを隠すそぶりはない。私が見た本物はあの程度ではない。」
「……左様ですか。」
「あれの監視は終了する。実験道具も撤収させろ。…世話役も板についてきた君には悪いがな。」
「………」
「失礼。失言だった。業務に戻れ。」