凡夫転生物語   作:ぱめ

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第三話 スキル習得

 

 気付かぬうちに隠しきれない知能が滲みてしまっていた俺は、機転を効かせて一歳児としてごく自然な振る舞いをすることによって高まりすぎていた評価を平均的なものに軌道修正することができた。

 まあ、あくまで予想に過ぎないが、強ち外れていないだろう。次の日検査の後自室に戻ってみれば、部屋の一角を占めていたビー玉転がしの箱は綺麗さっぱり無くなっていた。

 

 

 …俺は今日から何をして過ごせばいいんだ。

 

 流石に一日遊ばなかっだけで全没収はひどくないすか。…気落ちしててもしょうがない。切り替えていこう。逆に考えればこれは過度な期待がなくなったと言うことだろう。

 あまり期待させておいて成長していくにつれがっかりさせるのも忍びない。知能で無双できるのは今のうちだけだろう。あのおもちゃたちも本物の天才を育てることに使った方がいいだろう。

 

 そこで閃いたことがある。それはブーブで遊ぶということだ。男児という生き物は恐竜か電車かブーブが大好きだ。これならいくら遊んでも過度な評価を受けることはないだろう。

 そして当然真の目的もある。ブーブを掴んで四つん這いで走り回ることによって足腰を鍛えるのだ。

 

 ミニカーを両手に持って、クラウチングスタートの構えをとる。そして、前方に向かって勢いよく走り出す。この時ブーンと言う奇声も忘れない。

 

 この動きによって腕肩腹筋体幹下半身などを一気に鍛えることができる。これほど完璧で効率的な運動もないだろう。あとは毎日続けるだけ、と思っていたのだが。

 この激しい全身運動は一歳児には早かったらしい。頭が重いし腕の力が無いから不安定で頭からずっこけまくってしまう。結果この動きは、ストップがかかってしまった。

 

 まあ自分でも危険かもって思ってたし、ちょうど良かったかも。仕方がない計画は変更だ。成長して体が出来上がるまでハイハイで代用しよう。

 

 結果自由時間の大半を奇声を発しながらミニカーを握り締めてハイハイする一歳児が完成したのであった。うん、一歳児なんてこんなもんだろ。

 

 

 

 

 

 

 2年後、三歳となった俺は毎日元気にミニカーを握りしめて四つん這いで走り回っていた。

 

 もちろん全ての時間をこの奇行に割いているわけではない。ひらがなもたどたどしい字でかけるように練習中だし、一桁の足し算も始まった。瞑想は続けているが未だ成果はない。

 

 その他1日の過ごし方も大きく変わった。

 

 「かなたくん、おはようございます。」

 

 「おはよーございます!」

 

 こんな感じで一人朝の会から1日が始まるようになったのだ。そしてお世話してくれる人も先生と呼ばされるようになった。相変わらず爆弾処理班みたいな格好は変わらない。

 だが、何人かいるはずなのに名前は教えてくれない。やはりこちらの事を実験動物としてみているのだろうか。不安は募るばかりである。

 

 1日の流れとしてはざっくり言うと午前お勉強、午後からお遊びタイムだ。お勉強の時間はひらがなや算数などが主だが勉強以外にも常識や社会について教わることもある。閉鎖的な環境では一般常識について知る機会がないのでこの時間も貴重だ。この授業で全く知らない地名や歴史聞いて改めてここが異世界であることを認識した。

 また、話に聞く一般常識と今の自分の置かれている状況があまりにも違うことを質問してみたところ、自分が他人にはない力を持っていることを教えてくれた。

 普通に教えてくれたのは意外だった。なぜ今まで黙っていたのだろうか。それから力の使い方や効果を知りたいと言ったら使ってみないとわからないと言われた。どうやらステータスは俺固有の異能らしい。

 

 お勉強の時間が終わればお遊びの時間だ。いままでの完全自由時間とは異なり、協調性や芸術性が問われるようなお遊びをするようになった。たまに複数人でやることもある。そんな時は先生方は色で識別される。

 この強制お遊びが終れば夕ご飯まで自由時間だ。時間にして2〜3時間くらいだ。

 

 そのほとんどが例の体力錬成に使われる。

 三歳児にしてはなかなかストイックな生活をしているだろ?俺自身もこんなに走り回れるようになるとは思ってなかったが子供の持っている可能性というのは思ってる以上に大きいみたいだ。

 さらにこれにバランスを鍛える動きを追加しようと思っている。子供のバランス能力はこれくらいの時期に伸びるってどこかでみたことがあるような気がするので、これまで以上にダイナミックな動きでミニカーを走らせていきたい。

 

 

 そんな日々を過ごしている中それは唐突に視界は現れた。

 

 

 能力値が規定値に達しました。ステータスのレベルが2に上がりました。

 

 

 

 huh?

 

唐突に視界のど真ん中に文字が現れた。

 ステータスのレベルが上がったらしい。早速みてみよう。

 

 水瀬 彼方 3歳

 

 ステータス レベル2

 

習得可能スキル

パッシブ

 呼吸

 代謝

 免疫

 記憶

 計算

 演技

 欺瞞

 歩行

 四足歩行

 

 

 おお、レベルが上がったことでスキルが習得できるようになったらしい。やばいチートきたこれ。

 あれでも戦闘系のスキルなくね。パッシブしかないし。なんか四足歩行なんてものもあるし。これあれだよね普段やってるやつ。

 スキルを習得するにはある程度の経験値が必要ってこと?

 何取ろう。てか呼吸とか代謝とかどういう効果なんだ?

 

 とりあえず取れるんならなんか取ってみるか。気になる四足歩行とか行ってみようかな。

 

 ポチ

 

 四足歩行を習得しますか?

 はい

 いいえ

 

 はい

 ポチ

 

 パッシブ

 四足歩行 レベル1を習得しました。

 

 ほお、こんな感じか早速やってみよう。ブーン

 

 ああ、確かに違う。けど、今以上の実力が出せるようになるわけではないな。なるほど、実力の底上げではなく最低値の引き上げか。レベル1なら全力の八割くらいの実力を意識せずとも出せる気がする。

 これはすごいことだ。どんなに気を抜いていも今の八割の実力を出せるようになるのだから。余裕ができた意識を他の思考や、全力を出すためにさらに使うことができる。

 実際常に全力で走っているわけじゃないし、いまの鍛錬だと意識の全てを別なことに回せるようになるだろう。

 …でも走ってる最中に一体何考えてればいいんだ?

 

 とりあえず、この能力は便利だしチートには間違いない。

 

 特に戦闘なんかでは役に立つだろう。

 

 意識と思考の全てとはいかないにしても大半を敵の分析や戦略の組み立てに使うことができるし、さらなる実力を出すこともできる。

 凡人にはありがたいスキルだ。戦闘中に奇策を考える漫画の登場人物みたいには絶対なれないと思っていたけど、このスキルがあれば思考に余裕ができるからそんなことも可能になるかも…

 

 でも、奇策を考えるには回転の速い頭が必要なんだよなぁ。俺にそんなことできるとは思えない。このスキルじゃ、100%以上の実力は出せないからなぁ。

 このスキルの使い方としては穴を埋めるような使い方、手広くいろんな技術を習得して咄嗟に使える手札をふやすとかだろうか。

 器用貧乏になる未来しか見えない。結局自分の実力を伸ばすしかないのか…

 

 

 …マイナスに考えるのはやめよう。ステータスにはまだ先があるみたいだし、まだアクティブスキルが解放されたわけじゃない。

 それに、どうやらスキルには熟練度があって、一定値に達するとレベルが上がるらしい。まだ諦める時じゃない。

 

 

 このスキルがあれば俺は俺の実力を超えることができるかもしれない。

 

 

 とりあえず、取れるスキルは全部取っちゃおう。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、心なしかスッキリ目覚める。そういえば睡眠スキルはなかったな、なんて考えなていたら先生が起こしに来た。先生が起こしに来るより先に起きるのは珍しい。

 

 

 「おはようございます。彼方くん。今日ははやおきですね。」

 

 「おはようせんせー のうりょく、わかったよ!」

 

 「ええ‼︎本当⁉︎」

 

 「うん!なんかすごいうごける!」

 

 能力について詳しいことは分からないふりをすることにした。三歳児が説明するのは難しそうだから。とりあえず報告するのは今まで以上のスピードでにミニカーを走らせるようになったことだけだ。

 

 その後、身体検査を受けた俺は2年ぶりに防護服を着ていない人間と対面することになる。

 

 

 

  

 

 

 

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